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叢
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くさむら
ふりがな文庫
“
叢
(
くさむら
)” の例文
彼女はそっと寝床から起き
上
(
あが
)
って、半分開いてあった窓の戸を押し開いた。蒼白い月の光は、静かな芝草の上や
叢
(
くさむら
)
の上に流れていた。
奇巌城:アルセーヌ・ルパン
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
さっと
躱
(
かわ
)
しざま、相手が逆に下から払いあげた、踏込んだ方は危く半身を反らして避けたが、剣は手を放れて彼方の
叢
(
くさむら
)
へ飛んでいた。
おもかげ抄
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その地下茎は盛んに泥土中を縦横に走り、それから茎すなわち稈が出て生長するから、そのこれある処は
忽
(
たちま
)
ちに
叢
(
くさむら
)
を成して繁茂する。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
宿屋の角の所に、一群のあひるの泳いでいる池のそばに、よく石の敷いてない小道が
叢
(
くさむら
)
の中に走っていた。旅人はその小道にはいった。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
大きな砂利が靴の裏ですべって、やっと両側の
叢
(
くさむら
)
が尽きかけるあたりまできたとき、慣れない男は、やはり少し
喘
(
あえ
)
ぎはじめていた。
箱の中のあなた
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
▼ もっと見る
緑のスロープも、高地になるに随って明るく、陰影が
一刷毛
(
ひとはけ
)
に撫で下ろされた。
蘆
(
あし
)
の
叢
(
くさむら
)
の多い下の沢では、
葦切
(
よしき
)
りが
喧
(
やかま
)
しく
啼
(
な
)
いていた。
土竜
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
行く手の萩の
叢
(
くさむら
)
の根もとの辺りに、一人の男が身を伏せて、そこから透けて見える館の座敷の、無礼講の様子を見ているからであった。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
頭も鬚も
半白
(
はんぱく
)
で、それがどちらももじゃもじゃと、まるで
叢
(
くさむら
)
の様に乱れ、その真中に巨大な
鼈甲縁
(
べっこうぶち
)
の眼鏡がキラキラと光っている。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
叢
(
くさむら
)
の陰から子供の歌がきこえる。やがて子供四人登場。女の子ばかり。手ぬぐいをかぶり、
籃
(
かご
)
を持っている。唯円、かえで離れる。
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
昨夜と
均
(
ひと
)
しく、月は水の如く、大空に漂つて、山の影はくつきりと黒く、五六歩前の
叢
(
くさむら
)
にはまだ虫の鳴く音が我は顔に聞えて居る。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
水道道路のガード近くの
叢
(
くさむら
)
に、白い小犬の
死骸
(
しがい
)
がころがっていた。春さきの
陽
(
ひ
)
を受けて安らかにのびのびと
睡
(
ねむ
)
っているような
恰好
(
かっこう
)
だった。
永遠のみどり
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
日本のどこでもの海岸の浅い砂浜や
叢
(
くさむら
)
に棲んでいる飛
沙魚
(
はぜ
)
と、九州有明湾や豊前豊後の海岸にいる
睦五郎
(
むつごろう
)
と、誰にもおなじみの
鰒
(
ふぐ
)
である。
飛沙魚
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
やがて退屈して酒樽へ戻らうと足のフラフラを踏みしめて
叢
(
くさむら
)
の中へわけ入つたのだが——(ああ、これも呪ふべき行者の幻術であらうか)
木枯の酒倉から:――聖なる酔つ払ひは神々の魔手に誘惑された話――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
二人は秋草を分け、木の間を分けて、早くもめざしたところの
樅
(
もみ
)
の大木の二本並んだ木の蔭へ来て、
叢
(
くさむら
)
の茂みに身を隠してしまいました。
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
白い花の咲いてる
叢
(
くさむら
)
から出て来たのは白い絹をまとい、そしてその女達が池の緑の青草の上に集まって、歌ったり、踊ったりし始めました。
魔法探し
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
ニストリの
向桿
(
ポール
)
もジアンドロの
向桿
(
ポール
)
も見る間にそこにぶっ倒れて、
叢
(
くさむら
)
から飛び出した野獣のように、狂気した二人が私のほうへとんで来た。
令嬢エミーラの日記
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
すると、沼の水面で大きな魚が跳ねたとみえ、ポチャリと音がすると、そのとき池畔の
叢
(
くさむら
)
の中から、それは異様なものが現われて出て来た。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
屍骸
(
しがい
)
の肉を
貪
(
むさぼ
)
っていたらしい犬が一匹、不意に
叢
(
くさむら
)
の間から跳び出して慌てゝ何処かへ逃げ去ったが、父はそんなものにも眼もくれなかった。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
其処らの
叢
(
くさむら
)
にも路にもいくつともなく牛が群れて居るので余は少し当惑したが、幸に牛の方で逃げてくれるので通行には邪魔にならなかった。
くだもの
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
滝の水は物思いをする人に
威嚇
(
いかく
)
を与えるようにもとどろいていた。
叢
(
くさむら
)
の中の虫だけが鳴き弱った
音
(
ね
)
で悲しみを訴えている。
源氏物語:40 夕霧二
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
鳥の羽音、
囀
(
さえず
)
る声。風のそよぐ、鳴る、うそぶく、叫ぶ声。
叢
(
くさむら
)
の蔭、林の奥にすだく虫の音。
空車
(
からぐるま
)
荷車の林を
廻
(
めぐ
)
り、坂を下り、
野路
(
のじ
)
を横ぎる響。
武蔵野
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
暗い星月夜の空の下で、しばらく二人は組んず、ほぐれつして争っていたが、間もなく、二人の体は組みあったまま
叢
(
くさむら
)
の坂径をころがり落ちた。
霧の蕃社
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
しかしそれはもはやこの村からなくなっていたのです。私がその跡を
弔
(
とむら
)
った時、ただ一基の石塔が昔を語って
叢
(
くさむら
)
の中に捨ててあるばかりでした。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
此処はただ草のみ生ひて、樹は
稀
(
まれ
)
なれば
月光
(
つきあかり
)
に、路の
便
(
たより
)
もいと
易
(
やす
)
かり。かかる処に
路傍
(
みちのほとり
)
の
叢
(
くさむら
)
より、つと走り出でて、鷲郎が前を横切るものあり。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
車について野原を行く時にも、風そよぐ運河の岸の
叢
(
くさむら
)
に並んでねころぶときにも、きまって、これをささやくのでした。
フランダースの犬
(新字新仮名)
/
マリー・ルイーズ・ド・ラ・ラメー
(著)
あな
凄
(
すさま
)
じ、と貫一は
身毛
(
みのけ
)
も
弥竪
(
よだ
)
ちて、
縋
(
すが
)
れる枝を放ちかねつつ、看れば、
叢
(
くさむら
)
の底に
秋蛇
(
しゆうだ
)
の行くに似たる
径
(
こみち
)
有りて、ほとほと
逆落
(
さかおとし
)
に
懸崖
(
けんがい
)
を
下
(
くだ
)
るべし。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
なんでもこの
山巓
(
さんてん
)
を少し
降
(
くだ
)
った
叢
(
くさむら
)
の中には、どこかに岩間から湧き
出
(
いづ
)
る
清泉
(
せいせん
)
があるとは、日中
麓
(
ふもと
)
の村で耳にしたので
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
光線が斜に射す午後、その狭い並木、
叢
(
くさむら
)
の風景は、荒廃した園の趣と初夏の緑の活々した輝きとを相交え美しかった。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
ヂュリ おゝ、パリスどのと
祝言
(
しうげん
)
をせう
程
(
ほど
)
なら、あの
塔
(
たふ
)
の
上
(
うへ
)
から
飛
(
と
)
んで
見
(
み
)
い、
山賊
(
やまだち
)
の
跳梁
(
はびこ
)
る
夜道
(
よみち
)
を
行
(
ゆ
)
け、
蛇
(
へび
)
の
棲
(
す
)
む
叢
(
くさむら
)
に
身
(
み
)
を
潛
(
ひそ
)
めいとも
言
(
い
)
はッしゃれ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
セーニャと黒い牝牛とが、ぽつりぽつりと、砂浜の
叢
(
くさむら
)
に残されてしまった。いつまでもいつまでも黒く
突立
(
つった
)
っていた。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
而
(
しこう
)
して彼はかえって
叢
(
くさむら
)
を
衝
(
つ
)
いて蛇を出し、その自首したるがために、遂に彼をして死刑に致さざるべからざるまでの罪を
羅織
(
らしょく
)
せらるるに至りしなり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
翌朝になると
早速
(
さっそく
)
に、前夜の
同伴
(
つれ
)
の男と一緒に、昨夜の場所に行ってみると、その
処
(
ところ
)
から少し離れた
叢
(
くさむら
)
の中に、古狐が一匹死んでいたとの事であった。
月夜峠
(新字新仮名)
/
水野葉舟
(著)
四方山
(
よもやま
)
の物語に時移り、
入日
(
いりひ
)
の影も
何時
(
いつ
)
しか消えて、冴え渡る空に星影寒く、階下の
叢
(
くさむら
)
に蟲の鳴く聲露ほしげなり。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
若い経営主は紫色の花だけ眼のように涼しく開けて、葉はまだ閉じて眠っているポインシャナの
叢
(
くさむら
)
を靴の底でいじらしそうに
擵
(
さす
)
りながら、こう云った。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
道路の傍には松の
生
(
お
)
い茂った崖が際限もなく続いていた。そしてその裾に深い
叢
(
くさむら
)
があった。月見草がさいていた。
蒼白い月
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
銀はその後、勝手に一人、この
叢
(
くさむら
)
へ遊びに行くようになったが、私がその名を呼んで手を
叩
(
たた
)
くと、彼女はどこからともなく私の足もとへ
直
(
すぐ
)
に帰って来た。
大切な雰囲気:03 大切な雰囲気
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
この鳥くらい物おじをせぬ快活な鳥はないと言った人があるが、なるほど冬のさ中にも里から遠くへは去らず、いつも路傍の
叢
(
くさむら
)
の上ばかりを飛んでいる。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
そこで城太郎も、これは油断がならないと思いだし、わざと道のない尾花の
叢
(
くさむら
)
へかくれて、少年の挙動を
窺
(
うかが
)
っていると、ふいに先の姿を見失った伊織は
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
また高い天蓋の隙間から幾つもの偶然を貫いて陰濕な
叢
(
くさむら
)
へ屆いて來る
木洩
(
こも
)
れ
陽
(
び
)
は掌のやうな小宇宙を寫し出した。しかし木洩れ陽程氣まぐれなものはない。
闇への書
(旧字旧仮名)
/
梶井基次郎
(著)
彼等の追跡者達は、鹿狩りをする人のような可笑しな格恰をして、灌木林のかげにかくれたり、ながくのびた
叢
(
くさむら
)
の中をざわざわ歩かなければならなかった。
青玉の十字架
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
すると常磐木の
繁
(
しげ
)
り、石の間なる菊の
叢
(
くさむら
)
まで、庭中のありとあらゆる
草木
(
そうもく
)
の葉は、何とも言えぬ悲愁の響を伝えますが、
直
(
す
)
ぐとまたもとの静寂に立返って
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
汽車のやうな郊外電車が、勢ひよくゴッゴッゴッゴッと走つて来て、すぐそばの
土堤
(
どて
)
の上を通るごとに、子供
達
(
たち
)
は躍り上つて、思はず
叢
(
くさむら
)
から手を挙げました。
原つぱの子供会
(新字旧仮名)
/
槙本楠郎
(著)
わずかに低く薄く生えた
叢
(
くさむら
)
の上に伏すもなお見分けにくい、それを支那人が誤って骨があるいは伸び
脹
(
ふく
)
れあるいは縮小して虎の身が大小変化するとしたんだ。
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
畑の中を、
畦
(
うね
)
から畦へ、土くれから土くれへと、踏みつけ踏みつけ、
耙
(
まぐわ
)
のように、
固
(
かた
)
め、
平
(
な
)
らして行く。鉄砲で、
生籬
(
いけがき
)
や
灌木
(
かんぼく
)
の茂みや、
薊
(
あざみ
)
の
叢
(
くさむら
)
をひっぱたく。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
若
(
も
)
し溪谷釣りで、山中の流れを釣り登るのであるならば、一つの釣場から次の釣場迄岩をよぢ上り、山吹の
叢
(
くさむら
)
を踏み分け、思ひもよらぬ
萬古
(
ばんこ
)
の雪に足を滑らせ
健康を釣る
(新字旧仮名)
/
正木不如丘
(著)
「若し僕の考えが当っているとしたら、兇器は先ずこの空地の、その辺の
叢
(
くさむら
)
に捨てられてある筈だが——」
撞球室の七人
(新字新仮名)
/
橋本五郎
(著)
初秋の空に、星は美しく輝いていたが、地上の
叢
(
くさむら
)
には、生死の間を縫って、わずかに息づいている人間の黒いからだが、いくつとなく不体裁にころがっていた。
論語物語
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
第三発の放たれしを、避けつつわざと撃たれし体にて
叢
(
くさむら
)
に僵れしに、果せるかな悪人
輩
(
ばら
)
は
誑死
(
そらじに
)
に
欺
(
あざむ
)
かれぬ。
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
叢
(
くさむら
)
の中からぬっと
迫
(
せ
)
り出して来て笠を
撥
(
は
)
ね
除
(
の
)
け、
脇差
(
わきざし
)
を抜いて見得を切るあの顔そっくり。その顔で
癇癪玉
(
かんしゃくだま
)
を破裂させるのだから、たいがいの者がぴりぴりした。
桜林
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
翁いふ。
吾主
(
わぬし
)
遠くゆき給ひて後は、夏の
比
(
ころ
)
より
干戈
(
かんくわ
)
を
揮
(
ふる
)
ひ出でて、里人は所々に
遁
(
のが
)
れ、
弱
(
わか
)
き者どもは
軍民
(
いくさびと
)
に召さるるほどに、
一四一
桑田
(
さうでん
)
にはかに
狐兎
(
こと
)
の
叢
(
くさむら
)
となる。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
叢
漢検準1級
部首:⼜
18画
“叢”を含む語句
叢林
叢生
一叢
叢中
樹叢
草叢
叢立
叢雲
竹叢
叢竹
矮叢
木叢
叢葉
孔叢子
叢咲
叢書
葉叢
淵叢
稲叢
萩叢
...