“前栽:せんざい” の例文
“前栽:せんざい”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治9
泉鏡花4
谷崎潤一郎4
泉鏡太郎2
紫式部2
“前栽:せんざい”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 絵画 > 日本画2.0%
文学 > 日本文学 > 小説 物語0.8%
文学 > 日本文学 > 詩歌0.2%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
大太刀をさしたわらじ穿きの男が、前栽せんざいがきをたてとして、後ろ向きにつッ立っていたのであった。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小さい庭にしゃれた姿の竹が立っていて、草の上の露はこんなところのも二条の院の前栽せんざいのに変わらずきらきらと光っている。
源氏物語:04 夕顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ひとつ、ひとつ、前栽せんざいの飛び石をさぐりながら、弦之丞とお綱とは黙々としておぼろな影を新吉の後に添わせてゆく。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この辺はもう本丸の玄関に近い前栽せんざいらしく、所々に、枝ぶりのよい男松が這っていてふるいにかけたような敷き砂が光っていた。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
縁先に垂れたすだれの外には、前栽せんざいたかむらがあるのですが、椿つばきの油を燃やした光も、さすがにそこまでは届きません。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ごめんと通って——藤吉郎は門内の前栽せんざいたたずんだ。庭へ通う道と、入口へ向う道との、いずれへ通ったものか一思案という顔だった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あまり樹の数をおかない上方かみがたふうの広い前栽せんざいで、石の八ツ橋をかけた大きな泉水がある。
顎十郎捕物帳:16 菊香水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
だが、心配はない。さっきの家司も雑色も、彼を置き忘れてはいなかった。紙燭の影が揺れて来、ふたたび、以前の平門前の前栽せんざいまで連れて行かれた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところが筑紫へ赴任する前に、ある日前栽せんざいで花を見ていると、内裏だいりを拝みに来た四国の田舎人たちが築地ついじの外で議論するのが聞こえた。
砂村すなむらせいぞろひにおよんだ、一騎當千いつきたうせん前栽せんざい強物つはものの、はないたゞき、蔓手綱つるたづな
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
光悦はその時から、灰屋の門の前に立って、そこの鳴子に訪れを通じ、ほうきを持って出て来た下僕しもべに案内されて、前栽せんざいの中へ入っていた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
○さんざいとは綾瀬川の隅田川に合するところの南の岸を呼ぶ俗称なり。おもふに前栽せんざいの訛にして、往時むかし御前栽畑ありし地なりしを以てなるべし。
水の東京 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
塵を払って前栽せんざいのほうを眺めていると、庭木の間をくぐって近寄ってくる影がある。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
前栽せんざいつくろはせ給へる頃人々あまた召して御遊ぎょゆうなどありける後定家ていか中納言ちゅうなごんいまだ下﨟げろうなりける時に奉られける
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それから跣足はだしになって、南向の居間の前栽せんざいへ出て、草毟くさむしりをした。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今しがたまで見えた隣家の前栽せんざいも、蒼然そうぜんたる夜色にぬすまれて、そよ吹く小夜嵐さよあらしに立樹の所在ありかを知るほどのくらさ。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
食堂から奥の座敷へ通うところは廻廊風に出来ていて、その間に静かな前栽せんざいがある。
刺繍 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
これではならぬと思い、私は考えた末、これを私の前栽せんざいへ解放してやろうと思った。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
借家普請ぶしんの新建ちで二階が三間に階下が四間前栽せんざいも何もない家で家賃五十五円と云うのですから、まだ見ていないのですけれども狭さは想像されます。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そしてりょうに、足もとの土をすくい取り、それを持ったまま彼方へ向って歩きだした。前栽せんざいから大庭へ入ったひだりに、まろい山芝の築山がある。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昔わざ/\都の橐駝師うゑきやを連れて來て造らせたといふ遠州流ゑんしうりう前栽せんざいも殘らず草にうづもれて、大きな石の頭だけがニヨキツと見えてゐた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
それに人間が干渉をして、前栽せんざいと名づけたわずかな草むらに七草を雑居させてみたり、はなはだしきは一鉢の平たい土器に、小さくしてことごとく花を咲かしめようとする。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
神棚が店の間に二つ、仲の間に大きいのが一つ、庭に二つ、薬屋だったからその製造場に一つ、前栽せんざい稲荷いなり様が一つ、仏間に仏壇が一つ、合計すると相当の数に上った。
向う前栽せんざい小縁こえんの端へ、千鳥と云ふ、其の腰元こしもとの、濃いむらさきの姿がちらりと見えると、もみぢの中をくる/\と、まりが乱れて飛んでく。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
所在なさそうに前栽せんざいのけしきを眺めている自分の童姿であった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しかし島君はこう訊かれても早速にいらえをしようともしない。ふと彼女は立ち上がった。フラフラと縁先へ歩いて行き、かぐわしい初夏の前栽せんざいへつとその眼を走らせたが、
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ひと住まぬ大き家の戸をあけ放ち、前栽せんざいに面した座敷に坐り
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
私はある日、雪晴れのした道路をシロをつれて、いそいで行った。私はひそかに姉の嫁った家の前を通りたいためでもあった。川べりの前栽せんざいに植え込のある、役員の住みそうな家であった。
幼年時代 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
が、肥料なしに、前栽せんざいもの、実入みいりはない。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私は、何の気もなく、どんな人間が帰ってゆくのかと思って、ちょっと起ち上がって縁側の障子を開いて、小さい前栽せんざいと玄関口の方の庭とを仕切った板塀いたべいの上越しに人の帰るのを見ると
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
背中で聞きながら、武蔵は灰屋の前栽せんざいへはいって、すぐ門を閉めていた。一歩そこへはいると騒音の世間は百里も後になったように、いとも静かな生活の天地をこの家の見えない塀が囲んでいた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして前栽せんざいにある車井戸のほうへ戻って来ると、髪もすそも埃にまみれた——しかしどこか気品のある若い女が——門前から中を覗いて、恟々おずおずと、去りがてに佇立たたずんでいる。
大谷刑部 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「又此の男の家には、前栽せんざい好みて造りければ、面白き菊などいとあまたぞ植ゑたりける」とある平中日記の一段には、或る月の美しい夜に、平中の留守をうかゞって女たちがひそかに菊の花を見物に来
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
彼の輿こしは、ほどなく佐女牛さめうしの宏壮な邸内へ入っていた。師直は、みずみずと打水された前栽せんざいを見、家臣一同の色代しきたい(出迎え)をうけ、のっしのっしと、奥殿へ通って行った。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その部屋は表庭つづきの前栽せんざいを前に、押入れ、床の間のついた六畳ほどの広さで、障子の外に見える古い松の枝が塀越へいごしに高く街道の方へ延びているのは、それも旧本陣としての特色の一つである。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
海老塚医師は土間の入口から別れたが、私たちが前栽せんざいを廻って洋館へ行こうとすると、母屋の表座敷、昼は葬場であった所に四名の坊さんが並び、多門老人と由良婆さまを混えて食膳についているではないか。
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
前栽せんざいの水の名誉でございます」
源氏物語:02 帚木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
一體いつたい、これには、きざみねぎ、たうがらし、大根だいこんおろしとふ、前栽せんざいのつはものの立派りつぱ加勢かせいるのだけれど、どれもなまだからわたしはこまる。
湯どうふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
地震で焼けた向島むこうじまの梵雲庵は即ち椿岳の旧廬きゅうろであるが、玄関の額もれんも自製なら、前栽せんざい小笹おざさの中へ板碑や塔婆を無造作に排置したのもまた椿岳独特の工風くふうであった。
前栽せんざい
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
障子を開放した前栽せんざいの方に足を投げ出してじっと心を澄ましていると、塀の外はすぐ円山まるやま公園につづく祇園社ぎおんしゃの入口に接近しているので、暖かい、ゆく春の宵を惜しんで、そぞろ歩きするらしい男女の高い笑い声が
黒髪 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
離れの書斎に逃げ込んでいた貞之助は、四時が過ぎてもまだ女達の支度が済まないらしいので、そろそろ時間を気にしていたが、ふと、前栽せんざいの八つ手の葉の乾いた上にパサリと物の落ちる音がしたので、机にったなり手を伸ばして眼の前の障子を開けて見ると
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それでなくても牡鹿山の秋がけて、村しぐれをさそう風のひゞき、落葉のおとが身に沁むのに、分けても奥御殿は火の消えたようにひっそりとして、夜になると前栽せんざいの草葉のがさ/\と鳴るのが物凄く、とき/″\遠くの方で鹿や狐のくこえが谷間にこだまする。
椿岳の伝統を破った飄逸ひょういつな画を鑑賞するものは先ずこの旧棲を訪うて、画房や前栽せんざいただよう一種異様な蕭散しょうさんの気分に浸らなければその画を身読する事は出来ないが、今ではバラックの仮住居かりずまいで、故人をしのぶ旧観の片影をだも認められない。
竜之助は、そんな考えで飲んでいるのではない、舌ざわりの、とろりとして、含んでいるうちに珠玉たまの溶けてゆくような気持を喜んで、一杯、一杯と傾けている——蚊遣火かやりびけむり前栽せんざいから横になびき、縦に上るのを、じっと見ている様子は、なんのことはない、蚊遣火をさかなにしているようなものです。