不都合ふつがふ)” の例文
ちてからるとすれば、此方こちらみとめられない便宜べんぎがあると同時どうじに、くらなかとほひとかほわからない不都合ふつがふがあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
『切符を賣つといて停車しないのは不都合ふつがふぢやないか。通過驛なら通過驛だと乘る時にさう言つて呉れないぢや困る。』
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
(この故に売り立てに「さしもの」をするのは他人の作品に筆を入れるのと同じ位道徳的に不都合ふつがふである。)
蒐書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
外國語ぐわいこくごやくして日本語にほんごとするのは勿論もちろん結構けつこうであるが、そのやく適當てきたうでなかつたり、拙劣せつれつであつたり不都合ふつがふなものが隨分ずゐぶんおほい、あらたに日本語にほんごつくるのであるから
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
縁附えんづきてよりすで半年はんとしとなるに、なに一つわがかたみつがぬは不都合ふつがふなりと初手しよて云々うん/\の約束にもあらぬものを仲人なかうどなだむれどきかずたつて娘を引戻ひきもどしたる母親有之候これありそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
いれ利足りそく何程なにほどにても出し申さんと云へば彦兵衞も氣の毒に思ひ我等も問屋の方ふさが不都合ふつがふなれども此譯このわけ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「おのれえ、でも、おにでも、約束やくそくたがへる、と不都合ふつがふがあるか、なんつた、なんつた。」
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
山田やまだます/\親密しんみつになるにけて、遠方ゑんぱうから通ふのは不都合ふつがふであるから、ぼくうち寄宿きしゆくしては奈何どうです、と山田やまだつてくれるから、ねがうても無きさいわひと、すぐきふをつて、郷関きやうくわんを出た
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
りやうさんは。りやうさんはおまへ枕元まくらもとにそらみぎはうにおいでなさるよ。阿母おつかさんりやうさんにおへりをねがつてください。何故なぜですかぼくては不都合ふつがふですかヱてもわるひことはあるまい。
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
教頭けうとう隨分頑固ずゐぶんぐわんこをとこで、こんな不都合ふつがふ示威運動じゐうんどう讓歩ぢやうほしては學校がくかう威嚴ゐげんたもたれないとつて、葉書はがきなんまいようと見向みむきもしなかつたが、状態じやうたい一月ひとつきばかりもつゞいて
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
たい日本にほんけんよりちひさいものにぐんけてゐるのは不都合ふつがふだと、吉田東伍よしだとうごさんなんぞは不服ふふくとなへてゐる。りよはたして台州たいしう主簿しゆぼであつたとすると日本にほん府縣知事ふけんちじくらゐ官吏くわんりである。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
一年とさだめたる奉公人ほうこうにん給金きうきんは十二箇月のあひだにも十兩、十三月のあひだにも十兩なれば、一月はたゞ奉公ほうこうするか、たゞ給金きうきんはらふか、いづれにも一ぽうそんなり。其外そのほか不都合ふつがふかぞふるにいとまあらず。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
其方儀そのはうぎおもき役儀をも勤ながら百姓九郎兵衞より賄賂わいろの金銀をうけそれため不都合ふつがふの吟味に及びつみなき九助を一たん獄門ごくもんに申付候條重々ぢう/\不屆至極ふとゞきしごくに付大小取上とりあげ主家しうか門前拂もんぜんばらひ申付る
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いか御恩ごおんかうむりましたに、いざおいへが、ところには、ろく暑寒見舞しよかんみまひにも御伺おうかゞひいたしません。手前てまへ不都合ふつがふ料簡方れうけんがたと、おいへばちで、體裁ていさいでございます、へい。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
京城けいぜうを「シウル」新高山にひたかやまを「マウント・モリソン」などといふものがあるのは不都合ふつがふである。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
ピエル・ルイの Aphrodite なども、金瓶梅に比ぶれば、子供の玩具おもちやも同じ事なり、もつとも後者は序文にある通り、楽欲主義げうよくしゆぎと云ふ看板もあれば、一概に比ぶるは不都合ふつがふなるべし。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
あのころ旦那だんなさまが離縁りえんをやると一言ひとことおつしやつたが最期さいごわたし屹度きつと何事なにごと思慮しりよもなくいとまいたゞいて、自分じぶん不都合ふつがふたなげて、此樣こん不運ふうんな、なさけない、口惜くちをしいてんめておきなさるなら
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ば知らぬ者なりと申せしが其後に至り三次は知己ちかづきの趣きに申立る等前後ぜんご不都合ふつがふなり且此程より追々おひ/\取調とりしらべる通り八ヶ年以前に弟十兵衞をしばふだつじに於て殺害せつがいに及びめひの文を賣たる金子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
長刀なぎなたちたるが姿すがたなるなり。東遊記とういうきなるは相違さうゐあらじ。またあらざらむことを、われらはねがふ。観聞志くわんもんしもしあやまちたらむには不都合ふつがふなり、王勃わうぼつところなどはうでもよし、こゝろすべきことならずや。
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さうかと思へば Cercidas と云ふ所謂いはゆる犬儒派けんじゆはの哲学者は「蕩児たうじ守銭奴しゆせんどとは黄白くわうはくに富み、予ばかり貧乏するのは不都合ふつがふである! ……正義は土豚どとんのやうに盲目なのか? Themis(正義の女神)のめいおほはれてゐるのか?」
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)