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鏤
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ちりば
ふりがな文庫
“
鏤
(
ちりば
)” の例文
この
壁柱
(
かべはしら
)
は
星座
(
せいざ
)
に
聳
(
そび
)
え、
白雲
(
はくうん
)
に
跨
(
また
)
がり、
藍水
(
らんすゐ
)
に
浸
(
ひた
)
つて、
露
(
つゆ
)
と
雫
(
しづく
)
を
鏤
(
ちりば
)
め、
下草
(
したくさ
)
の
葎
(
むぐら
)
おのづから、
花
(
はな
)
、
禽
(
きん
)
、
鳥
(
とり
)
、
虫
(
むし
)
を
浮彫
(
うきぼり
)
したる
氈
(
せん
)
を
敷
(
し
)
く。
十和田湖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
象眼の模様から、
鏤
(
ちりば
)
めてあるダイヤモンドの大きさまで。それは、彼女に取ってかけ替のない、たった一つの時計ではなかったのか。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
更に其左に銀の短冊でも懸け連ねたように雪を
鏤
(
ちりば
)
めた、大海のはての蒼波かと怪まれる山の空線は、遠い北アルプスの連嶺である。
大井川奥山の話
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
彼女はその薄暗い中に
青貝
(
あおがい
)
を
鏤
(
ちりば
)
めた古代の
楽器
(
がっき
)
や古代の
屏風
(
びょうぶ
)
を発見した。が、
肝腎
(
かんじん
)
の
篤介
(
あつすけ
)
の姿は
生憎
(
あいにく
)
この部屋には見当らなかった。
春
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そこを挾んで、両辺の床から壁にかけ
胡桃
(
くるみ
)
と
樫
(
かし
)
の切組みになっていて、その所々に象眼を
鏤
(
ちりば
)
められ、渋い中世風の色沢が放たれていた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
▼ もっと見る
(すばらしき大演武会の司会者は、また
欧羅巴
(
ヨーロッパ
)
の国王間にも到底見られない華麗豪壮な
扮装
(
ふんそう
)
に
鏤
(
ちりば
)
められた端正なる一貴人であった——)
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
かれはその光線の中までもその自分の持つてゐる恋心が細かに
鏤
(
ちりば
)
められたやうに雑つて入つて行つてるのを感じた。何といふ美しさだらう。
赤い鳥居
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
「昔、ある天才が自分の書いたものを真珠を
鏤
(
ちりば
)
めた箱に入れて
密
(
そ
)
つと藏つておいたと云ふ話がある、そんな気持ちはお前にはわかるまい。」
静物
(新字旧仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
あの唐津郡各地の窯跡は今も青磁の破片で
鏤
(
ちりば
)
められているといってよい。(二)それに工人たちは全く無学な民衆であった。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
素気
(
すげ
)
なきカーフの背を
鈍色
(
にびいろ
)
に緑に
上下
(
うえした
)
に区切って、双方に文字だけを
鏤
(
ちりば
)
めたのがある。ざら目の紙に、
品
(
ひん
)
よく朱の書名を配置した
扉
(
とびら
)
も見える。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
緑の山々は、髻に揷む玉鴛鴦と云ふべく、碧洋に浮ぶ滿艦飾の
鏤
(
ちりば
)
みは、裙に綴る金蛺蝶と見紛ふて理の當然であつたらう。
緑の軍港
(旧字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
「マア、非常に綺麗な腕環が入って居る」と、
夜光珠
(
ダイヤモンド
)
や真珠の
鏤
(
ちりば
)
めてある、一個の
光輝燦爛
(
こうきさんらん
)
たる
黄金
(
おうごん
)
の腕環を取出した。
黄金の腕環:流星奇談
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
瑠璃珊瑚
(
るりさんご
)
を
鏤
(
ちりば
)
めた金冠の重さに得堪えぬなよやかな体を、ぐったり勾欄に
靠
(
もた
)
れて、
羅綾
(
らりょう
)
の
裳裾
(
もすそ
)
を
階
(
きざはし
)
の中段にひるがえし、右手に大杯を傾けながら
刺青
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
閃光が半ば沈みかけた
帆檣
(
ほばしら
)
を
浮彫
(
うきぼり
)
にし、その上には黒い大きな鵜が翼に飛沫を浴びつゝとまつてゐる。その
嘴
(
くちばし
)
には寶石を
鏤
(
ちりば
)
めた腕環を啣へてゐる。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
相談も
纏
(
まと
)
まったのか、その頃に我々の前には金銀や宝石を
鏤
(
ちりば
)
めて眼も
絢
(
あや
)
に飾った
燦爛
(
さんらん
)
たる
轎
(
かご
)
が現れてきたのであった。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
朱く輝く瑠璃色の斑点を
鏤
(
ちりば
)
めたように浮かせ、あまたの魚類のうちで岩魚は、まれに見るおしゃれであるのである。
岩魚
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
ヒマラヤ山下のハイドラバッド王国の寺院に、仏像の目に
鏤
(
ちりば
)
められた、鳩の卵ほどの、見事なダイヤがありました。
呪の金剛石
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
黒い柄に青貝を
鏤
(
ちりば
)
めた薙刀もかゝつてゐる。自分は生れてこのかた覺えたことのない、寂しさと悲しさとに、蒲團へ頬摺りして、涙を擦り付けてゐた。
父の婚礼
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
刺繍
(
ししゅう
)
の衣をまとい、金銀を光らし、リボンで飾り立て、宝石を
鏤
(
ちりば
)
め、絹の
靴足袋
(
くつたび
)
をはき、白い鳥の羽をつけ、黄色い手袋をはめ、漆塗りの靴をうがち
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
空が
螺鈿
(
らでん
)
を
鏤
(
ちりば
)
めたようになったころ、やっと春子がやって来た。次郎は、彼女が縁台に腰をかけた時、ほのかに化粧の匂いが闇を伝って来るのを感じた。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
赤熊百合
(
しやぐまゆり
)
、王の
御座所
(
ござしよ
)
の
天幕
(
てんと
)
の
屋根飾
(
やねかざり
)
、夢を
鏤
(
ちりば
)
めた
笏
(
しやく
)
、
埃及王
(
ばろ
)
の
窮屈
(
きゆうくつ
)
な禮服を無理に
被
(
き
)
せられた
古風
(
こふう
)
な
女王
(
ぢよわう
)
。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
尚ほ熟視すると、この虫の平たい頭の丁度真中あたりに、極く微小な、紅玉色でそれよりももつと
燦然
(
さんぜん
)
たる何ものかが、いみじくも
鏤
(
ちりば
)
められて居るのであつた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
細くてキチンと服装を整えた男、背中を丸出しの女、二人とも揃って肥った体に宝石を
鏤
(
ちりば
)
めて居る夫婦。
ドーヴィル物語
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
奢侈
(
しゃし
)
嫌い、諸事御倹約の殿の事であるから、却って金銀を
鏤
(
ちりば
)
めたのから見ると本物という事が
点頭
(
うなずか
)
れるけれども、これは時として臣下に拝領を許される例もあるので
備前天一坊
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
これも充分支那風の、南京玉で
鏤
(
ちりば
)
めた、切子型の燈籠が、天井から一基下っていて、
菫
(
すみれ
)
色の光を落としているので、この部屋は朦朧と、何となく他界的に煙っている。
前記天満焼
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
低くなつた
北岸
(
きたぎし
)
の川原にも、
円葉楊
(
まるばやなぎ
)
の繁みの
其方此方
(
そちこち
)
、青く瞬く星を
鏤
(
ちりば
)
めた其
隅々
(
くまぐま
)
には、
暗
(
やみ
)
に仄めく月見草が、しと/\と露を帯びて、
一団
(
ひとかたまり
)
づゝ処々に咲き乱れてゐる。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
晨
(
あした
)
に金光を
鏤
(
ちりば
)
めし
満目
(
まんもく
)
の雪、
夕
(
ゆうべ
)
には
濁水
(
じょくすい
)
と
化
(
け
)
して
河海
(
かかい
)
に落滅す。
今宵
(
こんしょう
)
銀燭を
列
(
つら
)
ねし
栄耀
(
えいよう
)
の花、暁には
塵芥
(
じんかい
)
となつて泥土に
委
(
い
)
す。三界は波上の
紋
(
もん
)
、一生は
空裡
(
くうり
)
の虹とかや。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
その蕾や花として無数の真珠と青光りのダイヤが
鏤
(
ちりば
)
められ、その両尖端の五六枚の葉先が、何の意味もなく、その素晴らしく大きな青光りのダイヤを支えているのだった。
指と指環
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
褐色のねばっこいような
嫩葉
(
わかば
)
と共に、青い海を背景にして、その
絢爛
(
けんらん
)
たる花をひらき、やがて、花吹雪の時には、花びらがおびただしく海に散り込み、海面を
鏤
(
ちりば
)
めて漂い
人間失格
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
これを磨き、これに
鏤
(
ちりば
)
むるときは、金とも銀とも見ゆることあらん。されば世の中の詩人には、金の詩人、銀の詩人、銅の詩人、鐵の詩人などありとも謂ふことを得べし。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
上の方の、星を
鏤
(
ちりば
)
めたあたりは摺り切れない。ちょうど、
裾
(
すそ
)
を引く着物と同じように、砂利や木立の
隙間
(
すきま
)
から、不健康なトンネルや、じめじめした穴倉の奥まで摺り切れる。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
空は濃いい瑠璃色に星屑の金を
鏤
(
ちりば
)
め、五月の末にもう天の河がべつとりと乳を流してゐる。舫の上では、月と水明りとが呉劉二夫人の水色のマントオを白く見せるのであつた。
満蒙遊記:附 満蒙の歌
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
彼等には再生の機会は全くなく、要するに彼等は、純然たる霊界居住者なのである。
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、彼等が
曾
(
かつ
)
て
鏤
(
ちりば
)
めたる宝玉は、歳と共に光輝を加えて、
不朽
(
ふきゅう
)
の生命を
有
(
も
)
っている。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
そこに、金の星が
鏤
(
ちりば
)
めてある。星は、嬰児が始めて眼を瞠って認めた星のように大きい。
長崎の印象:(この一篇をN氏、A氏におくる)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
六連島
(
むつれじま
)
を背景にして、一隻の汽船が、左に赤、右に緑、
檣
(
ほばしら
)
に白の航海燈をともして、こちらに、近づいて来る。霞んだ暗い海のうえに、光を
鏤
(
ちりば
)
めた黒い船体が、幻のようである。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
珠玉
(
しゅぎょく
)
を
鏤
(
ちりば
)
めた
翡翠色
(
ひすいいろ
)
の王座に
招
(
しょう
)
じ、若し男性用の貞操帯というものがあったなら、僕は自らそれを締めてその鍵を、呉子女王の胸に懸け、常は
淡紅色
(
たんこうしょく
)
の
垂幕
(
たれまく
)
を
距
(
へだ
)
てて遙かに三拝九拝し
振動魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼が驚いたのは当然であつた。彼が何心なくぽかんと
視入
(
みい
)
つてゐた大空の一角には、実に
故
(
ことさ
)
らに星を其形に並べて
鏤
(
ちりば
)
めたとしか思はれぬ巨大な十字形の一星座が判然と見えるのであつた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
その
鍔
(
つば
)
といいその
小柄
(
こづか
)
といい黄金を装い宝玉を
鏤
(
ちりば
)
め、意気揚々として市中を横行するのときにおいては、道傍の人たれもあっぱれ貴人なりと指さし語るを見てみずから得意となすがごとく
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
羊の皮の手ざはりに金の箔押すわがこころ、思ひあがればある時は、
紅玉
(
ルビ
)
サフアイヤ、
緑玉
(
エメラルド
)
、
金剛石
(
ダイヤモンド
)
をも
鏤
(
ちりば
)
めむとする、何んといふ
哀
(
かな
)
しさぞや、るりいろ空に花咲かば忘れなぐさと思ふべし。
「わすれなぐさ」はしがき
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
司祭
(
しさい
)
の肩なる
鉤鈕
(
かぎぼたん
)
の如く、
色
(
いろ
)
燦爛
(
さんらん
)
たる
寶玉
(
ほうぎよく
)
を
鏤
(
ちりば
)
めたる
莊嚴
(
さうごん
)
に似たるを知る。
頌歌
(旧字旧仮名)
/
ポール・クローデル
(著)
と云いながら、ルビーと真珠を
鏤
(
ちりば
)
めたネックレースの環を外してやった。
梟の眼
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
その楽曲の結構は、主要の筋道は、彫刻的の明確さで影から浮き出してる
眩
(
まばゆ
)
いばかりの楽句を、ところどころに
鏤
(
ちりば
)
めた
覆
(
おお
)
いを通して、おのずから見えていた。それは一つの
閃光
(
せんこう
)
にすぎなかった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
そこかしこに点々と輝く鏡のような五湖の冷たい水の光を
鏤
(
ちりば
)
めて鮮かにも奇怪な一大裾模様を織りなし、寒々と彼方に屹立する富士の姿をなよやかな薄紫の腰のあたりまでひッたりとぼかしこむ。
闖入者
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
冷徹無比の結晶母体、鋭い
輪廓
(
りんかく
)
、その中に
鏤
(
ちりば
)
められた変化無限の花模様、それらが全くの透明で何らの濁りの色を含んでいないだけに、ちょっとその特殊の美しさは
比喩
(
ひゆ
)
を見出すことが困難である。
雪を作る話
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
外出する時はお梅さんという
玄冶店
(
げんやだな
)
の髪結いに番を入れさせ、水々した
大丸髷
(
おおまるまげ
)
を結い、金具に真珠を
鏤
(
ちりば
)
めた、ちょろけんの
蟇口型
(
がまぐちがた
)
の丸いオペラバックを
提
(
さ
)
げ、どこともいわず昼間出て行くのだったが
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
霜枯れた草原に、
野生
(
やせい
)
松葉独活
(
アスパラガス
)
の
実
(
み
)
が紅玉を
鏤
(
ちりば
)
めて居る。不図白木の
鳥居
(
とりい
)
が眼についた。見れば、子供が
抱
(
かか
)
えて行って
了
(
しま
)
いそうな小さな
荒削
(
あらけず
)
りの
祠
(
ほこら
)
が枯草の中に立って居る。誰が
何時
(
いつ
)
来て建てたのか。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
お前の上に美しく
鏤
(
ちりば
)
めてある、種々の絵摸様を
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
薄い夕靄の中に電燈の火が
鏤
(
ちりば
)
められていた。
棄てる金
(新字新仮名)
/
若杉鳥子
(著)
星を
鏤
(
ちりば
)
め乳汁のやうな海の
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
正面には紫藍の肌に雪を
鏤
(
ちりば
)
めた白馬三山から奥不帰岳、唐松岳に至る連嶺の姿を天半に望んで、清爽な朝の気分が一しおの壮快を覚える。
白馬岳
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
鏤
漢検1級
部首:⾦
19画
“鏤”を含む語句
鏤刻
彫心鏤骨
彫鏤
鏤骨
蝕鏤師
金鏤
鏤入
撥鏤
鏤刻琢磨
鏤心彫骨
鏤心砕骨
鏤梓
鏤版
鏤美
鏤行
鏤金螺鈿
刻鏤