棄てる金すてるかね
その日は暮の二十五日だった。 彼女は省線を牛込で降りると、早稲田行きの電車に乗り換えた。車内は師走だというのにすいていた。僅かな乗客が牛の膀胱みたいに空虚な血の気のない顔を並べていた。 彼女も吊皮にぶら垂ったまま、茫然(ぼうぜん)と江戸川の …