覗込のぞきこ)” の例文
「まあ何んと云う綺麗な腕環でしょう、之れは屹度きっと伯父様から、わたくしに贈って下さったのですよ」と云えば、二番目の娘は横合から覗込のぞきこんで
黄金の腕環:流星奇談 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
跫音きようおんみだれて、スツ/\とれつゝ、ひゞきつゝ、駅員えきゐん驚破すわことありげなかほふたつ、帽子ぼうしかたひさしめて、そのまどをむづかしく覗込のぞきこむだ。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おとらは作の隠れて寝ている物置のような汚いその部屋を覗込のぞきこみながら毎時いつものお定例きまりを言って呶鳴どなった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
狭く暗い路地裏のいやに奥深く行先知れず曲込まがりこんでいるのを不思議そうに覗込のぞきこむばかりであった。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
院長ゐんちやうのアンドレイ、エヒミチは玄關げんくわんから病室びやうしつなか覗込のぞきこんで、物柔ものやはらかにふのでつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
その哀れな男は、不安そうにまゆを寄せると、じっと私の顔を覗込のぞきこんだ。
腐った蜉蝣 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
女は驚いたように、細い襟足を延ばし、男の顔を覗込のぞきこんだ。
甲州鎮撫隊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と頭巾を取って此方こっち覗込のぞきこみました。
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
汀のお珊は、つまをすらりと足をちょいと踏替えた。奴島田やっこしまだは、洋傘こうもりを畳んでいて、直ぐ目の下を、前髪に手庇てびさしして覗込のぞきこむ。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
せまく暗い路地裏ろぢうらのいやに奥深おくふか行先ゆくさき知れず曲込まがりこんでゐるのを不思議さうに覗込のぞきこむばかりであつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
院長いんちょうのアンドレイ、エヒミチは玄関げんかんから病室びょうしつなか覗込のぞきこんで、物柔ものやわらかにうのであった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
その男は、覗込のぞきこむように、私の顔を見上げた。
腐った蜉蝣 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
さてはまさしくうなされた? この夜更けに、男が一人寝た部屋を、庭から覗込のぞきこんで、窓を開けて、と言うおんなはあるまい。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
言淀いいよどんで見えたので、ここへ来い、とかまえを崩して、すきを見せた頬杖ほおづえし、ごろりと横になって、小松原の顔を覗込のぞきこみつつ
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
和尚をしやうが、わたしまへこしかゞめて、いたあかざ頤杖あごづゑにして、しろひげおよがせおよがせ、くちかないで、身體中からだぢうをじろ/\と覗込のぞきこむではござんせんか。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あなた、私の心が見えましょう、と覗込のぞきこんだ時に、ああ、堪忍しておくんなさい、とその鏡を取って俯向うつむけにして、男がぴったりと自分の胸へ押着おッつけたと。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
閑耕は、その背けた顔を覗込のぞきこむようにして、胸を曲げ、膝を叩きながら、鼻の尖に、へへん、と笑って
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
筆を持った小児こどもの手を持添えて、その小児こどもの顔を、上から俯目ふしめ覗込のぞきこむようにして、莞爾にっこりしていると、小児こどもは行儀よくつくえに向って、草紙に手習のところなんだがね。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かさなりあふれて、ひょこひょことうりの転がるていに、次から次へ、また二ツ三ツ頭が来て、額で覗込のぞきこむ。
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
で、川通りを歩行あるきながら、ふと八郎の覗込のぞきこんだのが、前に言った、骨董屋の飾窓だったのである。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
引取ひっとって、ぐいと開けた、気が入って膝を立てた、顔の色が厳しくなった。と見てきもを冷したのは主税で、小芳は何の気も着かないから、晴々しい面色おももちで、覗込のぞきこんで
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
壇の上口あがりくち気勢けはいがすると、つぶしの島田が糶上せりあがったように、欄干てすり隠れに、わかいのがそっ覗込のぞきこんで
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しきりとその懐中ふところ覗込のぞきこみますのを、じろじろ見ますと、浅葱あさぎ襦袢じゅばんはだけまするまで、艶々つやつや露も垂れるげな、べにを溶いて玉にしたようなものを、こぼれまするほど、な、貴方様あなたさま
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……幾干いくら小遣こづかひがあるとえて、時々とき/″\前垂まへだれ隙間すきまから、懷中くわいちう覗込のぞきこんで、ニヤリとる。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
八郎は、すぐ前の台所へ出て、ながしに立ったお悦の背後うしろから、肩越しに覗込のぞきこんでいたが
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三人揉重もみかさなって、車掌台へされて出ると、せんから、がらりと扉を開けて、把手ハンドルに手を置きながら、中を覗込のぞきこんでいた運転手が、チリン無しにちょうどそこの停留所に車を留めた。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それでも、幕が開いて芝居に身がって来ると、身体からだをもじもじ、膝を立てて伸上って——背後うしろ引込ひっこんでいるんだから見辛いさね——そうしちゃ、舞台を覗込のぞきこむようにしていたっけ。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
驚いて白髪しらがを握ると、耳が暖く、ふすまが明いて、里見夫人、莞爾にっこりして覗込のぞきこんで
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さては婆さんに試されたか、と一旦いったんは存じましたが、こう笠を傾けて遠くから覗込のぞきこみました、勝手口の戸からかけて、棟へ、高く烏瓜からすうりの一杯にからんだ工合ぐあいが、何様、何ヶ月も閉切しめきりらしい。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あの白粉おしろいの花の蔭から、芋※ずいきの葉を顔に当てた小児こどもが三人、ちょろちょろと出て来て、不思議そうに私を見ながら、犬ころがなつくようにそばへ寄ると、縁側から覗込のぞきこんで、手毬を見つけて
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いてもうでつたのに……と肩越かたごし見上みあげたとき天井てんじやうかげかみくろうへから覗込のぞきこむやうにえたので、歴然あり/\と、自分じぶん彫刻師てうこくしつたおさなとき運命うんめいが、かたちあらはれた……あめ朧夜おぼろよ
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
藤三郎はそのまま土手の方へ行こうとして、フト研屋とぎやの店を覗込のぞきこんで
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(立って欄干に出づ、はるかに下を覗込のぞきこむ)……まあ、御覧なさいまし。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わか駅員えきゐん二人ふたり真黒まつくろかたちで、店前みせさきつたのが、かくれする湯気ゆげなぶるやうに、湯気ゆげがまた調戯からかふやうに、二人ふたり互違たがひちがひに、覗込のぞきこむだり、むねひらいたり、かほそむけたり、あご突出つきだしたりすると
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
少し坂を上って、こう、すかしますと、向うななめにずッと覗込のぞきこむ、生垣と、門の工合ぐあいで、赤い頭ばかりがまりのように、ぴょんぴょんと、垣の上へ飛ぶのと——柱を前へ乗出した和尚の肩の処が半分見える。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
袴腰に両腕を張って覗込のぞきこむ、運八翁に、再び蒼白あおじろい顔を振上げた。
とかくして沼の中を、身動きもしないで覗込のぞきこんだ……
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ちょっと黒い頭だけ出して、上から籠を覗込のぞきこむ。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
中に大高源吾が、笠を覗込のぞきこんで、前へかが
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
横顏よこがほ憎々にく/\しい覗込のぞきこんで
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
挨拶あいさつするのに、段を覗込のぞきこんだ。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
じつと覗込のぞきこんで居るのである。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ヌイと覗込のぞきこんで
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)