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蟻
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あり
ふりがな文庫
“
蟻
(
あり
)” の例文
次の丘を回ったときには、はるか下の赤土の傾斜地に、桃色の鉢巻きをした漁師たちが
蟻
(
あり
)
のように並んで網を繕っているのが見えた。
暴風雨に終わった一日
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
「あ、来たな。
蟻
(
あり
)
のやうにやつてくる。おい、さあ、早くベルを鳴らせ。今日はそこが日当りがいゝから、そこのとこの草を刈れ。」
どんぐりと山猫
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
泥濘
(
ぬかるみ
)
は、
荊棘
(
とげいばら
)
、
蔦葛
(
つたかずら
)
とともに、次第に深くなり、絶えず踊るような足取りで
蟻
(
あり
)
を避けながら、腰までももぐる野象の足跡に落ちこむ。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
パラパラッと
蟻
(
あり
)
のような人影が走り出て、たちまち、二ちょうの駕籠は、まるで黒い帯を引いたよう……ワイワイいってついてくる。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
こおろぎや
蜘蛛
(
くも
)
や
蟻
(
あり
)
やその他名も知らない
昆虫
(
こんちゅう
)
の繁華な都が、虫の目から見たら天を摩するような緑色の
尖塔
(
せんとう
)
の林の下に発展していた。
芝刈り
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
▼ もっと見る
この小さな、緑色に
繁茂
(
しげ
)
り栄えた島の中には、
稀
(
まれ
)
に居る大きな
蟻
(
あり
)
のほかに、私たちを
憂患
(
なやま
)
す
禽
(
とり
)
、
獣
(
けもの
)
、
昆虫
(
はうもの
)
は一匹も居ませんでした。
瓶詰地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
地べたの
蟻
(
あり
)
を不審そうに観察したり、
蝦蟇
(
がま
)
を恐れて悲鳴を挙げたり、その様には私も思わず失笑することがあって、憎いやつであるが
畜犬談:―伊馬鵜平君に与える―
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
こんな時のために用意された町内の若者が数十名、天城屋の内外を始め、神楽坂の上下、
蟻
(
あり
)
の
這
(
は
)
い出る隙間もなく固めてしまいました。
銭形平次捕物控:096 忍術指南
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
深閑
(
しんかん
)
として、
生物
(
いきもの
)
といへば
蟻
(
あり
)
一
疋
(
ぴき
)
見出せないやうなところにも、
何處
(
どこ
)
となく祭の
名殘
(
なごり
)
を
留
(
とゞ
)
めて、人の
香
(
か
)
が
漂
(
たゞよ
)
うてゐるやうであつた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
私も子供のときリリパットの国の話を聞いて、縁側で
蟻
(
あり
)
の行列を眺めていたら、自分がガリバーになったような気がしたものです。
ガリバー旅行記
(新字新仮名)
/
ジョナサン・スウィフト
(著)
いやいやここで腕立てなどしたら、師匠の迷惑は言うまでもなく、殊更、自分は、大望ある
身体
(
からだ
)
、千丈の
堤
(
つつみ
)
も
蟻
(
あり
)
の一穴。辛抱だ——
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
蟻
(
あり
)
の性急な活動を、歩きながら踊ってるように見える足長
蜘蛛
(
ぐも
)
を、横っ飛びに
跳
(
は
)
ね回る
蝗
(
いなご
)
を、重々しいしかもせかせかした
甲虫
(
かぶとむし
)
を
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
土を穿ち、土を移し、土を
平
(
な
)
らし、土を積む。彼等は工兵の
蟻
(
あり
)
である。同じ土に仕事する者でも、農は
蚯蚓
(
みみず
)
である。蚯蚓は蟻を恐れる。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
といいも終らず、滝太郎はつかつかと庭に出て、飛石の上からいきなり
地
(
つち
)
の上へ手を伸ばした、
疾
(
はや
)
いこと!
掴
(
つかま
)
えたのは一疋の小さな
蟻
(
あり
)
。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
相沢から根岸の競馬場へとつづいているその道筋には、ほとんど、
蟻
(
あり
)
の行列のような
夥
(
おびただ
)
しい人間の流れが動いてゆくのが見える。
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
怜悧
(
れいり
)
に見えても
未惚女
(
おぼこ
)
の事なら、
蟻
(
あり
)
とも
螻
(
けら
)
とも
糞中
(
ふんちゅう
)
の
蛆
(
うじ
)
とも云いようのない人非人、利の
為
(
た
)
めにならば人糞をさえ
甞
(
な
)
めかねぬ
廉耻
(
れんち
)
知らず
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
蟻
(
あり
)
のように四方から集ってくる群衆のうえに、
梅雨
(
つゆ
)
らしい蒸暑い日が照りわたり、雨雲が陰鬱な影を投げるような日が、毎日毎日続いた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
だが、大総督から、とつぜんの命令が下ったので、その闇の中にアカグマ国の軍隊が
蟻
(
あり
)
の大群のように、真黒に集まってきた。
二、〇〇〇年戦争
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
不在に主僧がその
室
(
へや
)
に行ってみると、竹の皮に食い
余
(
あま
)
しの餅菓子が二つ三つ残って、それにいっぱいに
蟻
(
あり
)
がたかっていることなどもあった。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
夫人はそう言いながら、美奈子達を
促
(
うなが
)
して改札口の方へ進んだ。若い紳士達は、
蟻
(
あり
)
の甘きに
従
(
つ
)
くように、夫人の後から、ゾロ/\と続いた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
言うかと思う間もなく、
大勢
(
おおぜい
)
の小さい人間が
蟻
(
あり
)
のように群集してきて、机に登り、床にのぼって、滅茶苦茶に彼をなぐった。
中国怪奇小説集:05 酉陽雑爼(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
柱につかまって地上を見下すと、
蟻
(
あり
)
の様な群集が、塔のまわりに集って、
凡
(
すべ
)
ての顔が空を見上げ、口々に何かわめいている。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
少し高い所からは
何処
(
どこ
)
までも見渡される広い平坦な耕作地の上で二人は巣に帰り
損
(
そこ
)
ねた二匹の
蟻
(
あり
)
のようにきりきりと働いた。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
さて私が前回に葉切り
蟻
(
あり
)
の話をしたのは、
昆虫
(
こんちゅう
)
社会にもなかなか経済の発達した者がいるという事を示さんがためであった。
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
「
蟻
(
あり
)
は六本の足を持つ」と云ふ文章は或は正硬であるかも知れない。しかし芭蕉の俳諧は度たびこの翻訳に近い冒険に功を奏してゐるのである。
続芭蕉雑記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
幸
(
さいはひ
)
にして
一人
(
ひとり
)
では
食
(
く
)
ひきれぬ
程
(
ほど
)
の
實
(
み
)
が
房々
(
ふさ/\
)
と
實
(
な
)
つて
居
(
ゐ
)
るので
其
(
その
)
憂
(
うれひ
)
もなく、
熟過
(
つえすぎ
)
た
實
(
み
)
がぼて/\と地に
落
(
お
)
ちて
蟻
(
あり
)
の
餌
(
ゑ
)
となり
怠惰屋の弟子入り
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
うまくランデブーすれば、
雄蝉
(
おすぜみ
)
は
莞爾
(
かんじ
)
として
死出
(
しで
)
の
旅路
(
たびじ
)
へと急ぎ、
憐
(
あわ
)
れにも木から落ちて
死骸
(
しがい
)
を地に
曝
(
さら
)
し、
蟻
(
あり
)
の
餌
(
え
)
となる。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
蟻
(
あり
)
の巣のように人がたかっており、
蜜蜂
(
みつばち
)
の巣のように勤勉で勇敢でたけり立っているその古い郭外は、動乱の期待と希望とのうちに震えていた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
夜になって雨が降りだして珍らしい
暴風雨
(
あらし
)
になったが、その暴風雨の中で山田家のあの
中央
(
まんなか
)
の
蟻
(
あり
)
の塔のある土蔵が
潰
(
つぶ
)
れた。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
店臺
(
みせだい
)
へは
暑
(
あつ
)
い
頃
(
ころ
)
には
蟻
(
あり
)
の
襲
(
おそ
)
ふのを
厭
(
いと
)
うて四つの
足
(
あし
)
へ
皿
(
さら
)
や
丼
(
どんぶり
)
の
類
(
るゐ
)
を
穿
(
は
)
かせて
始終
(
しじう
)
水
(
みづ
)
を
湛
(
たゝ
)
へて
置
(
お
)
くことを
怠
(
おこた
)
らないのであつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
煙の絶え間より望めば、
黄竜旗
(
こうりょうき
)
を翻せる敵の旗艦の前部は黄煙渦まき起こりて、
蟻
(
あり
)
のごとく敵兵のうごめき騒ぐを見る。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
ちょっと諸君に話しておくがいやしくも蝉と名のつく以上は、地面の上に
転
(
ころ
)
がってはおらん。地面の上に落ちているものには必ず
蟻
(
あり
)
がついている。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
群衆は窓から投げられたひと塊の砂糖を目がけて集まる
蟻
(
あり
)
のように、百貨店の取った商策に雲集してきたのであった。
或る嬰児殺しの動機
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
大きな山
蟻
(
あり
)
が逃出すのを面白がる。
或
(
ある
)
時は
蟇
(
ひきがえる
)
と
睨
(
にら
)
めっこしながら盥の中にかしこまっている。涼しい風にくしゃみをするとおばあさんが声をかける。
旧聞日本橋:12 チンコッきり
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
老鶯
(
ろうおう
)
の声が聞こえている。が、一人の人通りもない。
血溜
(
ちだま
)
りの中で幾匹かの
蟻
(
あり
)
が、もがき苦しんで這いまわっている。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
台所の流しの下には、
根笹
(
ねざさ
)
や、
山牛蒡
(
やまごぼう
)
のような
蔓草
(
つるくさ
)
がはびこっていて、
敷居
(
しきい
)
の根元は
蟻
(
あり
)
の
巣
(
す
)
でぼろぼろに
朽
(
く
)
ちていた。
清貧の書
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
蟻
(
あり
)
の穴に小便をしたり、蛇を殺してその
口中
(
こうちゆう
)
に
蛙
(
かへる
)
を無理におし込んだり、さういふ
悪戯
(
いたづら
)
をしながら、時間が迫つてくると皆学校まで駈出して行つた。
念珠集
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
だが、にんじんは、早くなる足並みを、やっとのことで
緩
(
ゆる
)
めているのである。足の中を
蟻
(
あり
)
が
這
(
は
)
っているような気持だ。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
ただにこれを得て一時の満足を取るのみならず、
蟻
(
あり
)
のごときははるかに未来を図り、穴を掘りて居処を作り、冬日の用意に食料を
貯
(
たくわ
)
うるにあらずや。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
上皇は、二十九日、美しく飾られた船で還御されようとしたが、途中、烈風にあふられて海上が荒れたので、厳島のうちの
蟻
(
あり
)
の浦まで漕ぎもどられた。
現代語訳 平家物語:04 第四巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
五郎は幻覚のことを、たとえばブザーのことや壁に這う
蟻
(
あり
)
のことを、あまり語りたくなかった。自分は正常である。その方に話を持って行きたかった。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
何
(
なん
)
でもないことだよ。それは、
玉
(
たま
)
の
片
(
かた
)
かたの
穴
(
あな
)
のまわりにたくさん
蜂蜜
(
はちみつ
)
をぬっておいて、
絹糸
(
きぬいと
)
に
蟻
(
あり
)
を一
匹
(
ぴき
)
ゆわいつけて、
別
(
べつ
)
の
穴
(
あな
)
から
入
(
い
)
れてやるのです。
姨捨山
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
私は眼をもって、夫のあの非常に線の細い、神経質なペン字が性急に走っているページ面を、
蟻
(
あり
)
が
這
(
は
)
うのを見るように見るだけですぐページを伏せる。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
美人連を
分取
(
ぶんど
)
ろうとの興味から、
蟻
(
あり
)
の甘きに附くが如く、投げられようと払われようと離れることではありません。
大菩薩峠:09 女子と小人の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
また
蟻
(
あり
)
の普通な種の速度を計った結果、普通に歩いて蟻は、一マイル行くのに一日と七時間かかることを知った。これ等はごくざっとした計算である。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
私は、この、細い脚を持った
蟻
(
あり
)
のような人たちの、驚くべき多数の努力を目前にして、同じような光景を呈したであろうピラミッド工事の当時を思った。
踊る地平線:12 海のモザイク
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
修羅
(
しゆら
)
に大
綱
(
つな
)
をつけ左右に
枝綱
(
えだつな
)
いくすぢもあり、まつさきに本願寺御用木といふ
幟
(
のぼり
)
を二本
持
(
も
)
つ、信心の老若男女
童等
(
わらべら
)
までも
蟻
(
あり
)
の如くあつまりてこれをひく。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
ある小駅につづく露次では、うず高くつみ重ねられた芋俵をめぐって、人が
蟻
(
あり
)
のように動いていた。よじくれた
榎
(
えのき
)
と
叢
(
くさむら
)
のはてに、浅い海が白く光っていた。
秋日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
一揆の群は早くもそれを認めたらしく、松林の中から
蟻
(
あり
)
の塔を突崩したように、手に手に得物を持った人々がばらばらと道の方へ押出して来るのが見えた。
松風の門
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
高架鉄道の堤とそちこちの人家ばかりとが水の中に取り残され、そのすき間というすき間には
蟻
(
あり
)
の穴ほどな余地もなくどっしりと濁り水が押し詰まっている。
水籠
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
“蟻(アリ)”の解説
アリ(蟻、螘)は、ハチ目アリ上科アリ科(Formicidae)に属する昆虫の総称である。体長は1 - 30 mmほどの小型昆虫で、人家や畑の近くにも多く、身近な昆虫の一つに数えられる。原則として、産卵行動を行う少数の女王アリと、育児や食料の調達などを行う多数の働きアリ、餌を得るための狩りや巣の防衛を担う兵隊アリが大きな群れを作る社会性昆虫である。
(出典:Wikipedia)
蟻
漢検準1級
部首:⾍
19画
“蟻”を含む語句
蟻王宮
蟻通
羽蟻
山蟻
白蟻
赤蟻
蟻地獄
蟻塚
螻蟻
黒蟻
小蟻
蟻虱
蟻田
蟻蜘蛛
蟻行列
蟻走
蟻通明神
蟻道
蟻酸
蟻門渡
...