莞爾につこ)” の例文
いつはりではけれどくすとはなにを、デハわたしからまをしませう深山みやまがくれのはなのおこゝろひさして莞爾につことすれば、アレわらふてははぬぞよ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
打ち見やりて時頼莞爾につこと打ちみ、二振三振ふたふりみふり不圖ふと平見ひらみに映る我が顏見れば、こはいかに、内落ち色蒼白あをじろく、ありし昔に似もつかぬ悲慘の容貌。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
美女たをやめまたかぞへて、鼓草たんぽゝこまつて、格子かうしなかへ、……すみれはないろけて、しづか置替おきかへながら、莞爾につこ微笑ほゝゑむ。……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
左仲が煙管きせるもと差出さしいだすにぞ左仲は愕然ぎよつとなし思はずふるへ出せし體を見るより彼の者は莞爾につこと笑ひ左仲が側へ同じくこし打掛うちかけ旅人りよじんは何等のようにてかく夜道を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この一言いちごん! こゝろなきひといたらなんでもなからうが、わたくし武村兵曹たけむらへいそうとはおもはずかほ見合みあはして莞爾につことしたよ。
にはかにノゾき込んで声打ちひそめ「君、僕は昨夜ゆうべからの疑問だがネ、梅子さんの胸底にはし、ラブが潜んでるのぢや無からうか」大橋は莞爾につこと打ち笑み「勿論もちろん! 彼女の心が恋愛こひの聖火に燃ゆること、 ...
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
すると丹泉は莞爾につこと笑つて
骨董 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
とばかりありて眼のさきにうつくしき顔のろうたけたるが莞爾につことあでやかにみたまひしが、そののちは見えざりき。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
受人に相頼み申候といさゝはゞかいろなく申立ければ越前守殿莞爾につこと笑はれりやこそ長庵なんぢの口より追々しり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
燈火あかりをつけて蚊遣りふすべて、お初は心細く戸の外をながむれば、いそ/\と歸り來る太吉郎の姿、何やらん大袋を兩手に抱へて母さん母さんこれを貰つて來たと莞爾につことして驅け込むに
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
こたへるとかれ莞爾につこ打笑うちえみ、こも/″\三人みたり握手あくしゆして、其儘そのまゝ舷梯げんていくだり、先刻せんこくから待受まちうけてつた小蒸滊船こじやうきせんうつすと、小蒸滊船こじやうきせんたちまなみ蹴立けたてゝ、波止塲はとばかたへとかへつて
そのままおそれげもなう翼を休めたるに、ざぶりと水をあびせざま莞爾につことあでやかに笑うてたちぬ。手早くきぬもてその胸をばおおへり。鳥はおどろきてはたはたと飛去とびさりぬ。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
殘らず取出し盜賊の前に差出せば次郎は莞爾につこと打笑ひ夫れで能い心持こゝろもちだらうドリヤ路用ははずんでくれようと額銀がくぎん一ツ投出なげだしサア是で何處へなりとゆきをれへ言捨道玄次郎は悠々いう/\と金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そのかたはらには、日出雄少年ひでをせうねんは、れい水兵すいへい姿すがたで、左手ひだり猛犬まうけん稻妻いなづま」の首輪くびわとらへ、右手ゆんで翩飜へんぽん海風かいふうひるがへる帝國軍艦旗ていこくぐんかんきいだいて、そのあいらしい、いさましいかほは、莞爾につこ此方こなたあほいでつたよ。
糸子いとこさまにははやさだまるひとおはすなりそれゆゑのおことはりぞと莞爾につこめば、家從かじゆうすこすゝませて、はじめてうけたまはりたり何方いづかたへの御縁組ごえんぐみにやくるしからずはおほせきけられたしと雪三せつざうおもてキツとれば
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
治脩公ちしうこうこれを御覽ごらんじ、おもはず莞爾につこと、打笑うちゑたまふ。とき炊烟すゐえん數千流すうせんりう爾時そのときこう左右さいうかへり
鉄槌の音 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
何やらん大袋を両手に抱へてかかさん母さんこれをもらつて来たと莞爾につことして駆け込むに、見れば新開の日の出やがかすていら、おやこんないお菓子を誰れに貰つて来た、よくお礼を言つたかと問へば
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
やがて着流きなが懷手ふところでにて、つめたさうな縁側えんがは立顯たちあらはれ、莞爾につことしていはく、何處どこへ。あゝ北八きたはち野郎やらうとそこいらまで。まあ、おはひり。いづれ、とつてわかれ、大乘寺だいじようじさかのぼり、駒込こまごめづ。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
なにやらん大袋おほぶくろ兩手りようてかゝへてかゝさんかゝさんこれをもらつてたと莞爾につことしてむに、れば新開しんかいやがかすていら、おや此樣こんいお菓子くわしれにもらつてた、よくおれいつたかとへば
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
幼君えうくん莞爾につこ打笑うちゑたまひて
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ましてや他人たにんそこふかき計略けいりやくふちるべきならねばおとしいれられてのち一悔恨ひとくわいこんむなしくなみだくてりかゝる憂苦いうくつながるゝ情緒じやうちよ思慮しりよ分別ぶんべつ烏羽玉ぬばたまやみくらきなかにも星明ほしあかりに見合みあはせて莞爾につことばかり名殘なごり笑顏ゑがほうらさびしくいざとうながせばいざとこたへて流石さすがにたゆたは
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)