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築山
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つきやま
ふりがな文庫
“
築山
(
つきやま
)” の例文
庭には
藤
(
ふじ
)
が咲き重つてゐた。
築山
(
つきやま
)
を
繞
(
めぐ
)
つて
覗
(
のぞ
)
かれる花畑にはヂキタリスの細い
頸
(
くび
)
の花が夢の
焔
(
ほのお
)
のやうに冷たくいく筋もゆらめいてゐた。
汗
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
正面の
築山
(
つきやま
)
の頂上には自分の幼少のころは
丹波栗
(
たんばぐり
)
の大木があったが、自分の生長するにつれて反比例にこの木は老衰し枯死して行った。
庭の追憶
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
寝所のすぐ前の
築山
(
つきやま
)
の
木立
(
こだち
)
の陰に入って、じっと木立の
内
(
なか
)
の暗い処を見廻わしたが別に異状もないので、そこにあった岩へ腰をかけた。
頼朝の最後
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そこにまた庭があって、池や泉水や
築山
(
つきやま
)
があるのが見えました。そうして縁のところに一人の男の人が腰をかけている様子であります。
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
が、焼ける前の昔の面影を
偲
(
しの
)
ばすものは、
嘗
(
かつ
)
て庭だったところに残っている
築山
(
つきやま
)
の岩と、麦畑のなかに見える井戸ぐらいのものだ。
永遠のみどり
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
▼ もっと見る
むかし小野
浅之丞
(
あさのじよう
)
といふ少年があつた。
隣家
(
となり
)
の猫が
度々
(
たび/\
)
大事な
雛
(
ひな
)
つ
児
(
こ
)
を盗むので、ある日
築山
(
つきやま
)
のかげで、吹矢で猫を
狙
(
ねら
)
ひ
討
(
うち
)
にした。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
近頃は勝手口の横を庭へ通り抜けて、
築山
(
つきやま
)
の陰から向うを見渡して障子が立て切って物静かであるなと見極めがつくと、
徐々
(
そろそろ
)
上り込む。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
築山
(
つきやま
)
の辺からお
船蔵境
(
ふなぐらざかい
)
の木立——または大殿の屋根から床下に至るまで、弦之丞を
尋
(
たず
)
ねる武士が、今や、右往左往に入り乱れて見える。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、天幕とその松のあります、ちょっと小高くなった
築山
(
つきやま
)
てった下を……温泉場の屋根を黒く小さく下に見て、通りがかりに、じろり……
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
裏山つづきの
稲荷
(
いなり
)
の
祠
(
ほこら
)
などが横手に見える庭石の間を登って、
築山
(
つきやま
)
をめぐる位置まで出たころに、寿平次は半蔵を顧みて言った。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
泉水の岸、
築山
(
つきやま
)
の裾に、盛りを過ごした桜の花が、それでも枝に群れていて、ひっきりなしに散っていた、
老鴬
(
ろうおう
)
の声もしきりに聞こえた。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
周延
(
ちかのぶ
)
が描いた千代田の大奥と云う三枚続きの絵にあるような
遣
(
や
)
り
水
(
みず
)
、
築山
(
つきやま
)
、雪見燈籠、瀬戸物の鶴、洗い
石
(
せき
)
などがお誂い向きに配置されて
少年
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
もとからあった池や
築山
(
つきやま
)
も都合の悪いのはこわして、水の姿、山の趣も改めて、さまざまに住み主の希望を入れた庭園が作られたのである。
源氏物語:21 乙女
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
中庭には
琵琶
(
びわ
)
のかたちをした池があり、それには石造りの太鼓橋が渡してあるし、芝を植えた
築山
(
つきやま
)
には腰掛の
亭
(
ちん
)
があった。
滝口
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
但馬守
(
たじまのかみ
)
は
懷
(
なつ
)
かしさうに
言
(
い
)
つて、
築山
(
つきやま
)
の
彼方
(
かなた
)
に、
少
(
すこ
)
しばかり
現
(
あら
)
はれてゐる
東
(
ひがし
)
の
空
(
そら
)
を
眺
(
なが
)
めた。
紀
(
こつな
)
も
身體
(
からだ
)
がぞく/\するほど
東
(
あづま
)
の
空
(
そら
)
を
慕
(
した
)
はしく
思
(
おも
)
つた。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
下生
(
したばえ
)
を奇麗に払った自然の
築山
(
つきやま
)
、砂地の
踏心地
(
ふみごこち
)
もよく、公園の名はあっても、あまり
人巧
(
じんこう
)
の入って居ないのがありがたい。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
庭のすみに、
築山
(
つきやま
)
があります。じいさんは、その上にかけあがって、山のうしろの木のしげみのなかに、かくれました。
黄金豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
あの粋な
築山
(
つきやま
)
も古木も見えず。支那風のくりぬきから中をのぞけば、奥の方に桃色の腰巻が乾してあるのが目についた。僅かに南浦園のかおりがする。
海野十三敗戦日記
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
苔
(
こけ
)
むした
築山
(
つきやま
)
、
石灯籠
(
いしどうろう
)
、泉水などの広い庭、表や奥の書院から
仲間
(
ちゅうげん
)
部屋、女中部屋にいたるまで、ありし日のおもかげをそのままにしのばせているのです。
亡霊怪猫屋敷
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
庭の隅にはよく繁った桜の林があった。それに沿って楡の並木が連なっていた。中央の小さな
築山
(
つきやま
)
の上には、庭じゅうで一ばん美しい花壇が作ってあった。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
研
(
と
)
ぎ出したような月は中庭の赤松の
梢
(
こずえ
)
を屋根から廊下へ投げている。
築山
(
つきやま
)
の上り口の鳥居の上にも、山の上の小さな弁天の
社
(
やしろ
)
の屋根にも、霜が白く見える。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
左側の方は支那風を摸したので桐や竹が植ゑてある。後側は日本固有の造り庭で
泉水
(
せんすい
)
や
築山
(
つきやま
)
が
拵
(
こしら
)
へてある。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
地下道の揚げ蓋を刎ね上げて、
縋
(
すが
)
り合いながら、裏庭、
築山
(
つきやま
)
蔭に出た広海屋夫婦。二人とも、その瞬間、瞳を射るあまりに猛烈な焔の色に、思わず目を
蔽
(
おお
)
うた。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
池の
縁
(
ふち
)
を廻って
築山
(
つきやま
)
の処へ行くと、黙って僕の手を握るのだ。それから手を引いて歩いた。愉快だったよ
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
庭などは多くはシナ風に
摸
(
かたど
)
って
築山
(
つきやま
)
などがありますが、と言ってまた外に広い芝原の庭があり、その真中にちょいと花があるというようなインド風のところもある。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
瓢箪
(
へうたん
)
なりの池も澄んでゐれば、
築山
(
つきやま
)
の松の枝もしだれてゐた。
栖鶴軒
(
せいかくけん
)
、
洗心亭
(
せんしんてい
)
、——さう云ふ
四阿
(
あづまや
)
も残つてゐた。池の
窮
(
きは
)
まる裏山の崖には、
白々
(
しろじろ
)
と滝も落ち続けてゐた。
庭
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
コチョコチョと石を積上げた
築山
(
つきやま
)
をつくり、風入れや、日光をわざと
遮
(
さえぎ
)
ってしまって、
漆喰
(
しっくい
)
の池に金魚を入れ、夏は、
硝子
(
ガラス
)
の管で吹きあげる噴水のおもちゃを釣るした。
旧聞日本橋:23 鉄くそぶとり(続旧聞日本橋・その二)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
と叫びながら
築山
(
つきやま
)
のふもとに竿をおっ立てた。鯉が一ぴき、
五月幟
(
さつきのぼり
)
のようにへんぽんとしている。
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
この御言葉だけでも、わたくしにはどれほど心づよく思われましたことか。のみならず夕暮どきなど、裏庭の
築山
(
つきやま
)
のあたりからこっそり忍んで参られることもございました。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
築山
(
つきやま
)
のむこうに、
鉾杉
(
ほこすぎ
)
が四五本ならんでいて、そのむこうに、ぼんやりと
灯影
(
ほかげ
)
が見える。
顎十郎捕物帳:16 菊香水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
千に余るバビロンの俘囚はことごとく舌を
抜
(
ぬ
)
いて殺され、その舌を集めたところ、小さな
築山
(
つきやま
)
が出来たのは、誰知らぬ者のない事実である。舌の無い死霊に、しゃべれる訳がない。
文字禍
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
私の狭い庭には
築山
(
つきやま
)
がある。彼は六月の中旬頃からひょこりとそこに現れた。彼は山をめぐる
躑躅
(
つつじ
)
の茂みを根拠地として、朝に晩にそこらを
這
(
は
)
い歩いて、日中にも平気で出て来た。
二階から
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
さりとも一
盞
(
つ
)
二
盞
(
つ
)
は
逃
(
のが
)
れがたければ、いつしか
耳
(
み
)
の
根
(
ね
)
あつう
成
(
な
)
りて、
胸
(
むね
)
の
動悸
(
どうき
)
のくるしう
成
(
な
)
るに、
外
(
は
)
づしては
濟
(
す
)
まねども
人
(
ひと
)
しらぬうちにと
庭
(
には
)
へ
出
(
い
)
でゝ
池
(
いけ
)
の
石橋
(
いしばし
)
を
渡
(
わた
)
つて
築山
(
つきやま
)
の
背後
(
うしろ
)
の
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
私はそんな人達から一尺程の金魚の沢山沢山居ると云ふ池やら、綺麗な花の咲いた
築山
(
つきやま
)
やら、
梯子段
(
はしごだん
)
の幾つにも折曲つたと云ふ二階や、中二階、離座敷の話をして貰ふのが楽みでした。
私の生ひ立ち
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
その
辺
(
あたり
)
は、その
孟宗竹
(
もうそうちく
)
の藪のようになっているのだが、土の崩れかけた
築山
(
つきやま
)
や、欠けて
青苔
(
あおごけ
)
のついた
石燈籠
(
いしどうろう
)
などは、
未
(
いま
)
だに残っていて、以前は
中々
(
なかなか
)
凝
(
こ
)
ったものらしく見える、が
何分
(
なにぶん
)
にも
怪物屋敷
(新字新仮名)
/
柳川春葉
(著)
植木屋は色々の木を色々に取まぜ、或所へは谷合のやうな趣きをとり、或所へはまた
築山
(
つきやま
)
などを
拵
(
こしら
)
へたりした方が、と勧めてみたが、主人はそんな風な事にはあまり興味を持たなかつた。
夢
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
その
時分
(
じぶん
)
、うちわの
絵
(
え
)
には、庭の池に
築山
(
つきやま
)
があったり、ほたるが飛んでいたりするのがたくさんありました。清造はそういう絵を張っていると、いつでもあの沼のことを思い出しました。
清造と沼
(新字新仮名)
/
宮島資夫
(著)
中央に一つの
築山
(
つきやま
)
があり、その上に円錐形をなして
梢
(
こずえ
)
のとがったりっぱな
樅
(
もみ
)
の木が一本あって、ちょうど
円楯
(
まるたて
)
の
槍受
(
やりう
)
けの丸い中心から
溝
(
みぞ
)
が出てるように、そこから四つの大径が出ていた。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
ふけ行く夜に奧も表も人定まりて、
築山
(
つきやま
)
の
木影
(
こかげ
)
に
鐵燈
(
かねとう
)
の光のみ
侘
(
わび
)
しげなる
御所
(
ごしよ
)
の
裏局
(
うらつぼね
)
、女房曹司の室々も、今を盛りの
寢入花
(
ねいりばな
)
、
對屋
(
たいや
)
を照せる燈の
火影
(
ほかげ
)
に迷うて、妻戸を打つ蟲の音のみ高し。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
「ここの庭さ、
己
(
おれ
)
が手を入れたというのは……」壮太郎は飛石伝いに、
築山
(
つきやま
)
がかりの庭へ出てゆくと、お島に話しかけたが、そこから上へ登ってゆくと、小さい公園ほどの広々した土地が
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ふと枯蘆の中に枯れた松の大木が二、三本立っているのが目についた。近寄って見ると、松の枯木は広い池の中に立っていて、その木陰には半ば朽廃した神社と、灌木に蔽われた
築山
(
つきやま
)
がある。
元八まん
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ある大名の
下屋敷
(
しもやしき
)
の池であったのを埋めたのでしょう、まわりは
築山
(
つきやま
)
らしいのがいくつか
凸起
(
とっき
)
しているので、雁にはよき隠れ場であるので、そのころ毎晩のように一群れの雁がおりたものです。
あの時分
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
わしは中島に渡した
小羽板
(
こばいた
)
ばしの上に立って、池の面を見渡して居たが、何処からともなく枯葉を
焚
(
た
)
く匂いと、話し声がきこえる様なので、眼を移すと
築山
(
つきやま
)
に続く松林に二人の人間を見つけた。
面
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
まだ真新しく土を掘り返して、狭い庭に小さい
築山
(
つきやま
)
が
拵
(
こしら
)
えてあります。
銭形平次捕物控:102 金蔵の行方
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「あすこんとこよ。
築山
(
つきやま
)
があって、大きな松の木があるでしょ。」
遺産
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
池
(
いけ
)
を
廻
(
まわ
)
って、
築山
(
つきやま
)
の
裾
(
すそ
)
を
走
(
はし
)
るお
蓮
(
れん
)
の
姿
(
すがた
)
は、
狐
(
きつね
)
のように
速
(
はや
)
かった。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
渡れば
築山
(
つきやま
)
、稲荷はそのかげに当たる。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
物古
(
ものふ
)
る
木立
(
こだち
)
築山
(
つきやま
)
の
孔雀船
(旧字旧仮名)
/
伊良子清白
(著)
松林の多い裏山つづきに樹木をあしらった昔の人の意匠がそこにある。硬質な岩の間に
躑躅
(
つつじ
)
、
楓
(
かえで
)
なぞを配置した
苔蒸
(
こけむ
)
した
築山
(
つきやま
)
がそこにある。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
おぼろな月がさしてきて、広い池のあたり、木の多い
築山
(
つきやま
)
のあたりが寂しく見渡された時、まして須磨の浦は寂しいであろうと源氏は思った。
源氏物語:12 須磨
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
“築山”の解説
築山(つきやま)とは、人工的に作られた山。測量の目的で作られる、または山を見立て庭をつくる観賞用として庭園や中庭に作られたり、子供の遊具として公園に作られたりしたものがある。
(出典:Wikipedia)
築
常用漢字
小5
部首:⽵
16画
山
常用漢字
小1
部首:⼭
3画
“築山”で始まる語句
築山陰
築山殿
築山道
築山風
築山夫人
築山捧盈