かぞ)” の例文
だれが、そのあいだにやってきてもあわないつもりで、ぐちかためた。そして、まめふくろからして、熱心ねっしんかぞえはじめました。
幸福の鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
猶太ユダヤ心理学派のり方だが、事実どうかぞえたって千フランには二法足らないんだから、やすいこた安いわけで、誰だって文句は言えまい。
婚姻のごとき古くからの人の大礼ですら、いつとなしにこれだけ変化したのである。その原因は二つは少なくともかぞえることができる。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
打続きて宮が音信たよりの必ず一週に一通来ずと謂ふこと無くて、ひらかれざるに送り、送らるるにひらかかざりしも、はやかぞふれば十通にのぼれり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
初めは慰み半分に手をつけて見た雪の研究も、段々と深入りして、かぞえて見ればもう十勝岳とかちだけへは五回も出かけて行ったことになる。
同じ女の顏を何度見たかといふ度數をかぞへることが好きで、數多く見たといふことはそれほど彼女達への親愛度をふやすものであつた。
めたん子伝 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
夫人おくさま、ただいま、お薬を差し上げます。どうぞそれを、お聞きあそばして、いろはでも、数字でも、おかぞえあそばしますように」
外科室 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
右に挙げた三主品がすなわち彼岸ザクラの一グループをなしているが、これに附属する園芸的変種をかぞうるとそこに多くの異品がある。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
このベートーヴェンの編んだ『スコッチ・アリア』全曲をクルプに吹込ませなかったのは、レコード界残念事の一つに私はかぞえている。
彼女は静かに珠数の珠をかぞえながら、鋪石に跫音あしおと一つ立てないで歩いて行った。そばへ寄ると何となくこうや湿った石の匂いがした。
老嬢と猫 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
然れども事実として、我は牢獄のうちにあるなり。今更に歳の数をかぞふるもうるさし、かくに我は数尺の牢室に禁籠きんろうせられつゝあるなり。
我牢獄 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
入日の雲が真紅に紫にあるいは黄色に燃えて燦爛さんらんの美を尽すのも今だ。この原の奇観の一つにかぞえられている大旋風の起るのもこの頃である。
木曽御嶽の両面 (新字新仮名) / 吉江喬松(著)
原価といっても、無論まんもっかぞえる価格である。その貴重な宝石が福田氏の奇怪な死と共に、消失せてしまったのである。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
泣出しそうな空の下に八百八町は今し眠りから覚めようとして、川向うの松平越前や細川能登のとの屋敷の杉が一本二本とかぞえられるほど近く見えていた。
私は沖縄中の根神の数をかぞえたらアマミキョの移住当時の人数(そうでなくとも上古の人口)が大略わかるのではなかろうかと考えたこともあります。
ユタの歴史的研究 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
人も同じく多数の者が同種類の仕事に従事していても、仕事の能率の上に非常なる差があっても、白痴はくちでなければ、みな一人前とかぞえらるるであろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
そして十四日の薄暮に(ユダヤ人のかぞえ方では、日没時から次の日の日没時までを一日とする。したがってユダヤ風にいえば、これは十五日の初めです)
口の中で、数をかぞえて見たり、深呼吸をして気持を落ち着けようと試みたりした。が、それもこれも無駄だった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
おにこころになりったわたくしは、両親りょうしん好意こういそむき、同時どうじまたてんをもひとをもうらみつづけて、生甲斐いきがいのない日子ひにちかぞえていましたが、それもそうながいことではなく
袋に盛って邪視する者に示し、彼これをかぞえ尽くすの後にあらざれば、その力かずと信ずると同義である。
だから字を習い数を算えることをよく習うのでございますという。数を算えることは先にも説明したように石や棒あるいは数珠じゅずかぞえる外に遣り方はないのです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
あけ六ツならんとこゝろうれしくかぞへて見ればはなくしてしば切通きりどほしの七ツなればさては兄の長庵殿が我が出立を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
火事の数はかぞえ切れぬ、消防の人は空の火熱と身辺の火熱とに攻められ、焦熱の底に奮闘している。
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)
其外峡谷の所々に点在する部分的のものをかぞえたならば、其数は決して少くないのであるが、全峡谷の七、八分通りを占めている闊葉樹林とは元より較べ物にならない。
黒部峡谷 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
ときどき彼を見舞いに来る高田と会ったとき、梶は栖方のことを云い出してみたりしたが、高田は死児のよわいかぞえるつまらなさで、ただ曖昧あいまいな笑いをもらすのみだった。
微笑 (新字新仮名) / 横光利一(著)
写生文と普通の文章との差違をかぞえ来るといろいろある。いろいろあるうちで余のもっとも要点だと考えるにも関らず誰も説き及んだ事のないのは作者の心的状態である。
写生文 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
下唇を突き出し、鼻の穴をふくらがして銭をかぞえた。モスクワまで、まだあと五日か、チェッ!
ズラかった信吉 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
うんにゃ、通りがかりの人が水気が欲しくなって瓜を一つ取って食うなんてのは、おらがの方じゃ泥棒のうちへはかぞえねえや。番をしなけりゃならぬのは穴熊や針鼠やチャーだ。
故郷 (新字新仮名) / 魯迅(著)
自分の孫たちのとしかぞえて見て、絢子の方はもう四年五ヶ月以上になって居るのだから、私が死んだ後からでも何か思い出してくれる事があるかも知れぬ、などと考え及んだ。
御萩と七種粥 (新字新仮名) / 河上肇(著)
えてこのなき者の若きは、鄙夫ひふ小人と爲す、碌碌ろく/\としてかぞふるに足らざるもののみ。
永田から来た為替かわせを引き出して、定子を預かってくれている乳母うばの家に持って行こうと思った時、葉子は紙幣の束をかぞえながら、ふと内田の最後の言葉を思い出したのだった。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
その日、弟が鬼にあたって、兄と彼女とが手をたずさえてげた、弟は納屋なやの蔭に退いて、その板塀にもたれながら、あおく澄んだ空へ抜けるほどの声で一から五十まで数をかぞえ初めた。
青草 (新字新仮名) / 十一谷義三郎(著)
或は鬼となりみづちとなりてたたりをなすためし、往古いにしへより今にいたるまでかぞふるに尽しがたし。
これは十五万とかぞえられ、董卓とうたく自身が率いて、虎牢関ころうかんの固めにおもむいたのである。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不完全の論派といえども人心を感化するものは吾輩これを一の論派としてかぞえざるを得ず、時としては主権在民論者も勤王説を加味し、時としてはキリスト崇拝論者も国権説を主張す
近時政論考 (新字新仮名) / 陸羯南(著)
湯村はと気が付いて当月の収入を胸の中にかぞへ上げた。間に合ふだけはある。来月も来々月も書きさへすれば充分にくらしは立つ。先生の周旋は無くとも買ひに来る本屋も二三軒はある。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
今夜、寝る前に、わたしは空の星をかぞえる。星はことごとくそこにる。それで、わたしは、人生について、自分でもに落ちないと思われるほど、きわめて下らない考察をめぐらす。
永「うんうか、今金を遣るから、し渡し口の方から此方こっちゃへ人でも来ると何うも成らぬから、模様を見て居てくれ、金の勘定をするからよう、封を切ってかぞえる間向うを見て居ろよ」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ヂュリ 内實なかみの十ぶん思想しさうは、言葉ことばはなかざるにはおよばぬ。かぞへらるゝ身代しんだいまづしいのぢゃ。わしこひは、分量ぶんりゃうおほきう/\なったゆゑに、いまその半分はんぶんをも計算かんぢゃうすることが出來できぬわいの。
山城国以外で京都に近い三条西家の荘園をかぞうれば、先ず丹波に今林の庄というがあった。本来どれほどの収入があったのか知れぬが、文明九年には十石の分を竜安寺に寄進したとある。
ほとんど破格の事として許しがたき無礼の振舞にかぞえらるるよしなるも、しょうは少しもその事を知らず、ある日巡廻し来れる署長を呼び止めしに、署長も意外の感ありしものの如くなりしが
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
怪しい女は蘆を折り敷いた上に胡坐あぐらをかいて盗み集めたらしい金をかぞえていた。算えながらたれさがって来る頭髪かみ隻手かたてうるさそうにきあげていた。その指の間は蛇のうろこのようにきらきら光った。
女賊記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「梅子さん」突如銀子は梅子のひざに身を投げ出し、涙に濡れたる二つの顔を重ねつ「梅子さん——寄宿舎の二階からきらめく星をかぞへながら、『自然』にあこがれた少女をとめ昔日むかしが、恋しいワ——」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
それゆゑ大きい方は今年数へ年五つになるわけだが、満でかぞへると年が減つて三つになり、小さい方は一つといふことになる。(この満で算へる新しい約束は、万国同等で、まことに結構である)
(新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
歩み掛けた足をも止め「ア十二時か知らん」と殆ど我知らずの様に呟いて其の数を指でかぞえ始めた、十二時が何故恐ろしいか、彼の顔は全く色を失い、幽霊にでも出会ったと云う様に戦いて居る
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
こんなことはかぞえたてれば際限さいげんもない。もっとひどいのになると、わざと私に過失をさせたり、自分でどうかしておいて、それを私の過失かのように言い張って、この同じ刑罰を私に加えるのだった。
一万円の束から千円かぞえてひきぬいて、それを七千円にたして
日本に可惜あたらきずの随一にかぞへてゐられる。
露都雑記 (新字旧仮名) / 二葉亭四迷(著)
まず字数をかぞえてみる。
だが諸君、だがね諸君、歯磨はみがきにも種々いろいろある。花王歯磨、ライオン象印、クラブ梅香散……ざっとかぞえた処で五十種以上に及ぶです。
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)