)” の例文
しかも陰二月暮れの北風はまだ雪と霜にがれて身をきりさいなんだ。爺はがたがた歯をふるわせつつ街外れの市場をうろつき廻った。
土城廊 (新字新仮名) / 金史良(著)
またぎすました短い刀が落ちている。尊氏に投げつけられたものであろう。隅には小さくなって、うずくまっている人影があった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
露西亜ロシアの軍艦がどこで沈没したろうかなどと思い浮かべる暇も出なかった。ただ頭へぴかぴかと、平たいすましたものが映った。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
だから私は御苦労にもヨーロッパくんだりまで出かけ、もう少し了見を改めて自分のダダ的精神にぎをかけて見たいと考えているのだ。
え゛りと・え゛りたす (新字新仮名) / 辻潤(著)
二人ふたりがいよいよもんを出ようというときに、ちょうどがたつき西にしほうそらに、ぎすましたかがみのようにきらきらひかっていました。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
みなこれ屈竟くっきょう大男おおおのこ、いずれも手拭てぬぐいにおもてつつみたるが五人ばかり、手に手にぎ澄ましたる出刃庖丁でばぼうちょうひさげて、白糸を追っ取り巻きぬ。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかもそれは時代の潮流に適合するため、変装された女性化主義フェミニズムの仮面の下で、いつも本能獣のきばぎ光らしているのである。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
剣大刀つるぎたちいよよぐべし」や、「丈夫ますらをは名をし立つべし」の方が、同じく発奮でも内省的なところがあり、従って慈味がたたえられている。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
また一方、毒瓦斯の出ない工場にはまた色々別の危険が潜伏していて、そうしてひそかに犠牲者の油断のすきを狙って爪をいでいるであろう。
KからQまで (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
にぶる時はたくはへたるをもつてみづからぐ。此道具だうぐけものかはを以てさやとなす。此者ら春にもかぎらず冬より山に入るをりもあり。
それと反対に出来るだけぎ出してピカピカに光らせる淡路の方では、大阪のやりかたを細工がぞんざいだと云うのである。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それでもころまではさういふ仕事しごといくらもかつたので、賃錢ちんせん仕事しごとはじめるときらした唐鍬たうぐは刄先はさきたせる鍛冶かぢ手間てま
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「私は洋傘直しですが何かご用はありませんか。しまた何かはさみでもぐのがありましたらそちらのほうもいたします。」
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
まるでぎだしたような鋭い美しい顔つきになり、よく動くはしこそうな眼が、日本人にはめずらしい大胆な表情をつくりあげているのですが
ハムレット (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
親王様に貞盛がこれだけの事を申したとすれば、もう此時貞盛と将門とは心中に刃をぎあつてゐたとしなければならぬ。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
この句は朝草を刈るべき鎌をいでいる場合らしい。水郷などの実景であろうか。朝まだきの静な空気の中に水雞の声が聞える、という趣である。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
貝塚かいづか發見はつけん物中に猪の牙をほそらしたるが如き形のもの有り。其用は未だ詳ならざれど、明かに貝殼かいがらの一つなり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
道具を家でぎすましておいて仕事場に来る大工があってたまるものか。いい加減な眼腐れ金をくれているのにつけあがって、我儘もほどほどにしろ。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
その兇器とは、今さら言ふまでもないことだが、彼が戰時ちゆう孜々ししとしてぎつづけた美といふ匕首であつた。
ず時間前は、当日も六人の畜養員が、庖丁ほうちょういだり、籠を明けたり、これでなかなか忙しく立ち働きました。
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
おかしな腰つきで、鯱張しやちこばつてゐるやうな自分の姿が彼は恥づかしくなつた。今朝、駒平がいだばかりの鎌の刄が、夏の朝の日ざしに、徒らに白く光つた。
生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
その時から孤独のきびしい世界が二人の眼の前に見えて来たようだった。彼は追詰められた気分のなかにも何か新しく心ががれて澄んでゆくようだった。
美しき死の岸に (新字新仮名) / 原民喜(著)
ぎ出したような月は中庭の赤松のこずえを屋根から廊下へ投げている。築山つきやまの上り口の鳥居の上にも、山の上の小さな弁天のやしろの屋根にも、霜が白く見える。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
自分の本質がそこまでぎ込まれないうちは生きることをやめられない。生きるのはそこへ行く道だと思う。
第一、あのお経を読んでいる咽喉がステキじゃないか、咽喉が吹切れている、あれをいで板にかければ、断じてものになる——とお角さんが鑑定しました。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それは、さむい、さむふゆのことでありました。そらは、青々あおあおとして、がれたかがみのようにんでいました。
ある夜の星たちの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
もちろん、酒のせいも手伝つてはいようが、彼は、自分の精神と感覚がこれほど鋭くぎすまされた状態を、これまで一度も経験したことはないように思つた。
光は影を (新字新仮名) / 岸田国士(著)
「それにしちやこしらへが新しいぢやないか。刄の色も近頃いだ上、念入りに手を入れたものらしいが——」
顔は以前に変らず美しかったが眼にはいやな光りがあり、夫の山刀を井戸端いどばたにしゃがんで熱心にいでいる時の姿などには鬼女のようなすごい気配が感ぜられた。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
美しくして晴れがましからず、心もおのづから靜まりぬべき室なり。窓の前には厚き質のとばりを垂れたるが、長く床を拂へり。やじりぐ愛の神の童の大理石像あり。
朝夕はきまって、お杉の手籠を持ってやるし、たびたび賄所へいって刃物をいだり、俎板まないたを削ったり、ときには菜を洗う手伝いまでする、ということであった。
鏡磨かがみとぎ師は柘榴の実を使用つかったもの、古い絵草子などにも鏡ぎの側には柘榴のがよくいてある……でその名の意は、かがみ入る(鏡入る)の洒落しゃれから来たもの
するともうきっと頭が良くなるのだ。——床屋の親父は迷惑した。剃刀かみそりのいたむことといったらものの三日もがなければならないだろう。そこで彼はこう言った。
勉強記 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
あの時ぐらい首を斬った事はなかったが、ワシの刀は一度もがないまま始終切味が変らんじゃった。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
山の上では、また或る日しつこ麦藁むぎわらき始めた。彼は暇をみて病室を出るとその火元の畠の方へいってみた。すると、青草の中で、かまいでいた若者が彼を仰いだ。
花園の思想 (新字新仮名) / 横光利一(著)
私が裏の池のほとりにつくばつて草刈鎌を砥石といしいでゐるところへ、父はその葉書を持つて来て
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
明皎々めいこうこうたること南蛮渡来の玻璃鏡はりきょうのごとき、曇りなくぎみがかれた職業本能の心の鏡にふと大きな疑惑が映りましたので、間をおかず伝六に不審のくぎを打ちました。
検事長閣下が絞首索をい、首斬斧をぎ、処刑台に釘を打ち込まんがために立ち上った時に、裁判官は、ずうっと見𢌞していた眼を元へ戻し、自分の座席でり返って
切り剖く庖丁はじき切れなくなって何遍もぎ直さねばならなかった。男は考えた。こう一々研ぎ直すのでは手数がかかってやり切れない。一遍に幾度分も研いどいてやろう。
愚かな男の話 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ちがう。爪をごうとする。——なんにもない。おそらく彼はこんなことを何度もやってみるにちがいない。そのたびにだんだん今の自分が昔の自分と異うことに気がついてゆく。
愛撫 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
この中心ができあがったうえでさらにぎをしあげ、舞錐まいぎり目貫めぬき穴をあけ銘を打ち、のち白鞘しらざやなり本鞘ほんざやなりに入れて、ようよう一刀はじめてその鍛製の過程を脱する——のだが!
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その湖畔のみやこ松江市は松平氏の城下町で、今もその古城の下に、町々が休みます。この町に「八雲塗やくもぬり」なるものがあって、色漆いろうるしで模様を内に沈め、これをぎ出す手法を用います。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
奥白根はかなり雪が白く、峰頭をかすめて雲が去来する毎に、ぎ澄した鏡のように光る雪面が曇ったり輝いたりする。庚申山の如きはいわゆる俯してそのもとどりをとるべしという形だ。
皇海山紀行 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
ひとりの学生はなおいて見る気か、しきりにとういでる。死体は二つであった。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
孝助は玄関に参り、欄間らんまかゝってある槍をはずし、手に取ってさやはずしてあらためるに、真赤まっかびて居りましたゆえ、庭へり、砥石といし持来もちきたり、槍の身をゴシ/\ぎはじめていると
その時の一体の事情を申せば、前に申した通り、私は十二、三年間、夜分外出しないと云う時分で、最もみずからいましめて、内々ないない刀にも心を用い、がせてれるようにして居ます。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
丘はいつもとは違つて見える——丘の雑木林の上には烏が群れて居た。うすれ日を上から浴びて、丘の横腹は、その凸凹がぎ出されたやうな丸味を見せて、なめらかに緑金に光つて居る。
東京へ出て我が才識をぎ世を驚かすほどの大功業を建てるか、天下第一の大学者とならんと一詩をのこして新潟の学校を去り在所ざいしょにかえりて伯父に出京の事を語りしに、伯父は眉をひそ
良夜 (新字新仮名) / 饗庭篁村(著)
水辺に夕暮の淡い色をじみ出した紫陽花あじさいの一と群れに交わって、丸裸のまま、ギイギイ声を立て、田から田へせわしく水を配ばり、米をぎ、材木をいたりして、精を出して働いている。
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
よくがれた包丁のようなものである。彼は両刃を、すなわち困窮と悪意とを持っている。それゆえ隠語では、それを gueux といわないで、réguisé(研がれたる者)という。