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研
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と
ふりがな文庫
“
研
(
と
)” の例文
しかも陰二月暮れの北風はまだ雪と霜に
研
(
と
)
がれて身をきりさいなんだ。爺はがたがた歯を
慄
(
ふる
)
わせつつ街外れの市場をうろつき廻った。
土城廊
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
また
研
(
と
)
ぎすました短い刀が落ちている。尊氏に投げつけられたものであろう。隅には小さくなって、うずくまっている人影があった。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
露西亜
(
ロシア
)
の軍艦がどこで沈没したろうかなどと思い浮かべる暇も出なかった。ただ頭へぴかぴかと、平たい
研
(
と
)
ぎ
澄
(
すま
)
したものが映った。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
だから私は御苦労にもヨーロッパくんだりまで出かけ、もう少し了見を改めて自分のダダ的精神に
研
(
と
)
ぎをかけて見たいと考えているのだ。
え゛りと・え゛りたす
(新字新仮名)
/
辻潤
(著)
二人
(
ふたり
)
がいよいよ
門
(
もん
)
を出ようという
時
(
とき
)
に、ちょうど
明
(
あ
)
け
方
(
がた
)
の
月
(
つき
)
が
西
(
にし
)
の
方
(
ほう
)
の
空
(
そら
)
に、
研
(
と
)
ぎすました
鏡
(
かがみ
)
のようにきらきら
光
(
ひか
)
っていました。
鉢かつぎ
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
▼ もっと見る
みなこれ
屈竟
(
くっきょう
)
の
大男
(
おおおのこ
)
、いずれも
手拭
(
てぬぐ
)
いに
面
(
おもて
)
を
覆
(
つつ
)
みたるが五人ばかり、手に手に
研
(
と
)
ぎ澄ましたる
出刃庖丁
(
でばぼうちょう
)
を
提
(
ひさ
)
げて、白糸を追っ取り巻きぬ。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかもそれは時代の潮流に適合するため、変装された
女性化主義
(
フェミニズム
)
の仮面の下で、いつも本能獣の
牙
(
きば
)
を
研
(
と
)
ぎ光らしているのである。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
「
剣大刀
(
つるぎたち
)
いよよ
研
(
と
)
ぐべし」や、「
丈夫
(
ますらを
)
は名をし立つべし」の方が、同じく発奮でも内省的なところがあり、従って慈味が
湛
(
たた
)
えられている。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
また一方、毒瓦斯の出ない工場にはまた色々別の危険が潜伏していて、そうして
密
(
ひそ
)
かに犠牲者の油断のすきを狙って爪を
研
(
と
)
いでいるであろう。
KからQまで
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
刃
(
は
)
鈍
(
にぶ
)
る時は
貯
(
たくは
)
へたる
砥
(
と
)
をもつて
自
(
みづから
)
研
(
と
)
ぐ。此
道具
(
だうぐ
)
も
獣
(
けもの
)
の
皮
(
かは
)
を以て
鞘
(
さや
)
となす。此者ら春にもかぎらず冬より山に入るをりもあり。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
それと反対に出来るだけ
研
(
と
)
ぎ出してピカピカに光らせる淡路の方では、大阪のやりかたを細工がぞんざいだと云うのである。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
それでも
其
(
そ
)
の
頃
(
ころ
)
まではさういふ
仕事
(
しごと
)
が
幾
(
いく
)
らも
無
(
な
)
かつたので、
其
(
そ
)
の
賃錢
(
ちんせん
)
は
仕事
(
しごと
)
を
始
(
はじ
)
める
時
(
とき
)
其
(
そ
)
の
研
(
と
)
ぎ
減
(
へ
)
らした
唐鍬
(
たうぐは
)
の
刄先
(
はさき
)
を
打
(
う
)
たせる
鍛冶
(
かぢ
)
の
手間
(
てま
)
と
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
「私は洋傘直しですが何かご用はありませんか。
若
(
も
)
しまた何か
鋏
(
はさみ
)
でも
研
(
と
)
ぐのがありましたらそちらのほうもいたします。」
チュウリップの幻術
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
まるで
研
(
と
)
ぎだしたような鋭い美しい顔つきになり、よく動くはしこそうな眼が、日本人にはめずらしい大胆な表情をつくりあげているのですが
ハムレット
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
親王様に貞盛がこれだけの事を申したとすれば、もう此時貞盛と将門とは心中に刃を
研
(
と
)
ぎあつてゐたとしなければならぬ。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
この句は朝草を刈るべき鎌を
研
(
と
)
いでいる場合らしい。水郷などの実景であろうか。朝まだきの静な空気の中に水雞の声が聞える、という趣である。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
貝塚
(
かいづか
)
發見
(
はつけん
)
物中に猪の牙を
細
(
ほそ
)
く
研
(
と
)
ぎ
减
(
へ
)
らしたるが如き形のもの有り。其用は未だ詳ならざれど、明かに
貝殼
(
かいがら
)
の一つなり。
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
道具を家で
研
(
と
)
ぎすましておいて仕事場に来る大工があってたまるものか。いい加減な眼腐れ金をくれているのにつけあがって、我儘もほどほどにしろ。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
その兇器とは、今さら言ふまでもないことだが、彼が戰時ちゆう
孜々
(
しし
)
として
研
(
と
)
ぎつづけた美といふ匕首であつた。
三島由紀夫:ナルシシスムの運命
(旧字旧仮名)
/
神西清
(著)
先
(
ま
)
ず時間前は、当日も六人の畜養員が、
庖丁
(
ほうちょう
)
を
研
(
と
)
いだり、籠を明けたり、これでなかなか忙しく立ち働きました。
爬虫館事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
おかしな腰つきで、
鯱張
(
しやちこば
)
つてゐるやうな自分の姿が彼は恥づかしくなつた。今朝、駒平が
研
(
と
)
いだばかりの鎌の刄が、夏の朝の日ざしに、徒らに白く光つた。
生活の探求
(旧字旧仮名)
/
島木健作
(著)
その時から孤独のきびしい世界が二人の眼の前に見えて来たようだった。彼は追詰められた気分のなかにも何か新しく心が
研
(
と
)
がれて澄んでゆくようだった。
美しき死の岸に
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
研
(
と
)
ぎ出したような月は中庭の赤松の
梢
(
こずえ
)
を屋根から廊下へ投げている。
築山
(
つきやま
)
の上り口の鳥居の上にも、山の上の小さな弁天の
社
(
やしろ
)
の屋根にも、霜が白く見える。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
自分の本質がそこまで
研
(
と
)
ぎ込まれないうちは生きることをやめられない。生きるのはそこへ行く道だと思う。
日記:15 一九二九年(昭和四年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
第一、あのお経を読んでいる咽喉がステキじゃないか、咽喉が吹切れている、あれを
研
(
と
)
いで板にかければ、断じてものになる——とお角さんが鑑定しました。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それは、
寒
(
さむ
)
い、
寒
(
さむ
)
い
冬
(
ふゆ
)
の
夜
(
よ
)
のことでありました。
空
(
そら
)
は、
青々
(
あおあお
)
として、
研
(
と
)
がれた
鏡
(
かがみ
)
のように
澄
(
す
)
んでいました。
ある夜の星たちの話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
もちろん、酒のせいも手伝つてはいようが、彼は、自分の精神と感覚がこれほど鋭く
研
(
と
)
ぎすまされた状態を、これまで一度も経験したことはないように思つた。
光は影を
(新字新仮名)
/
岸田国士
(著)
「それにしちや
拵
(
こしら
)
へが新しいぢやないか。刄の色も近頃
研
(
と
)
いだ上、念入りに手を入れたものらしいが——」
銭形平次捕物控:116 女の足跡
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
顔は以前に変らず美しかったが眼にはいやな光りがあり、夫の山刀を
井戸端
(
いどばた
)
にしゃがんで熱心に
研
(
と
)
いでいる時の姿などには鬼女のような
凄
(
すご
)
い気配が感ぜられた。
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
美しくして晴れがましからず、心もおのづから靜まりぬべき室なり。窓の前には厚き質の
幌
(
とばり
)
を垂れたるが、長く床を拂へり。
鏃
(
やじり
)
研
(
と
)
ぐ愛の神の童の大理石像あり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
朝夕はきまって、お杉の手籠を持ってやるし、たびたび賄所へいって刃物を
研
(
と
)
いだり、
俎板
(
まないた
)
を削ったり、ときには菜を洗う手伝いまでする、ということであった。
赤ひげ診療譚:04 三度目の正直
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
鏡磨
(
かがみと
)
ぎ師は柘榴の実を
使用
(
つか
)
ったもの、古い絵草子などにも鏡
研
(
と
)
ぎの側には柘榴の
実
(
み
)
がよく
描
(
か
)
いてある……でその名の意は、
屈
(
かが
)
み入る(鏡入る)の
洒落
(
しゃれ
)
から来たもの
幕末維新懐古談:05 その頃の床屋と湯屋のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
するともうきっと頭が良くなるのだ。——床屋の親父は迷惑した。
剃刀
(
かみそり
)
のいたむことといったらものの三日も
研
(
と
)
がなければならないだろう。そこで彼はこう言った。
勉強記
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
あの時ぐらい首を斬った事はなかったが、ワシの刀は一度も
研
(
と
)
がないまま始終切味が変らんじゃった。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
山の上では、また或る日
拗
(
しつこ
)
く
麦藁
(
むぎわら
)
を
焚
(
た
)
き始めた。彼は暇をみて病室を出るとその火元の畠の方へいってみた。すると、青草の中で、
鎌
(
かま
)
を
研
(
と
)
いでいた若者が彼を仰いだ。
花園の思想
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
私が裏の池のほとりにつくばつて草刈鎌を
砥石
(
といし
)
で
研
(
と
)
いでゐるところへ、父はその葉書を持つて来て
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
明皎々
(
めいこうこう
)
たること南蛮渡来の
玻璃鏡
(
はりきょう
)
のごとき、曇りなく
研
(
と
)
ぎみがかれた職業本能の心の鏡にふと大きな疑惑が映りましたので、間をおかず伝六に不審のくぎを打ちました。
右門捕物帖:02 生首の進物
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
検事長閣下が絞首索を
綯
(
な
)
い、首斬斧を
研
(
と
)
ぎ、処刑台に釘を打ち込まんがために立ち上った時に、裁判官は、ずうっと見𢌞していた眼を元へ戻し、自分の座席で
反
(
そ
)
り返って
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
切り剖く庖丁はじき切れなくなって何遍も
研
(
と
)
ぎ直さねばならなかった。男は考えた。こう一々研ぎ直すのでは手数がかかってやり切れない。一遍に幾度分も研いどいてやろう。
愚かな男の話
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
異
(
ちが
)
う。爪を
研
(
と
)
ごうとする。——なんにもない。おそらく彼はこんなことを何度もやってみるにちがいない。そのたびにだんだん今の自分が昔の自分と異うことに気がついてゆく。
愛撫
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
この中心ができあがったうえでさらに
研
(
と
)
ぎをしあげ、
舞錐
(
まいぎり
)
で
目貫
(
めぬき
)
穴をあけ銘を打ち、のち
白鞘
(
しらざや
)
なり
本鞘
(
ほんざや
)
なりに入れて、ようよう一刀はじめてその鍛製の過程を脱する——のだが!
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
その湖畔の
都
(
みやこ
)
松江市は松平氏の城下町で、今もその古城の下に、町々が休みます。この町に「
八雲塗
(
やくもぬり
)
」なるものがあって、
色漆
(
いろうるし
)
で模様を内に沈め、これを
研
(
と
)
ぎ出す手法を用います。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
奥白根はかなり雪が白く、峰頭をかすめて雲が去来する毎に、
研
(
と
)
ぎ澄した鏡のように光る雪面が曇ったり輝いたりする。庚申山の如きはいわゆる俯してその
髻
(
もとどり
)
をとるべしという形だ。
皇海山紀行
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
ひとりの学生はなお
剖
(
さ
)
いて見る気か、しきりに
刀
(
とう
)
を
研
(
と
)
いでる。死体は二つであった。
廃める
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
孝助は玄関に参り、
欄間
(
らんま
)
に
懸
(
かゝ
)
ってある槍をはずし、手に取って
鞘
(
さや
)
を
外
(
はず
)
して
検
(
あらた
)
めるに、
真赤
(
まっか
)
に
錆
(
さ
)
びて居りましたゆえ、庭へ
下
(
お
)
り、
砥石
(
といし
)
を
持来
(
もちきた
)
り、槍の身をゴシ/\
研
(
と
)
ぎはじめていると
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
その時の一体の事情を申せば、前に申した通り、私は十二、三年間、夜分外出しないと云う時分で、最も
自
(
みず
)
から
警
(
いまし
)
めて、
内々
(
ないない
)
刀にも心を用い、
能
(
よ
)
く
研
(
と
)
がせて
斬
(
き
)
れるようにして居ます。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
丘はいつもとは違つて見える——丘の雑木林の上には烏が群れて居た。うすれ日を上から浴びて、丘の横腹は、その凸凹が
研
(
と
)
ぎ出されたやうな丸味を見せて、
滑
(
なめ
)
らかに緑金に光つて居る。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
東京へ出て我が才識を
研
(
と
)
ぎ世を驚かすほどの大功業を建てるか、天下第一の大学者とならんと一詩をのこして新潟の学校を去り
在所
(
ざいしょ
)
にかえりて伯父に出京の事を語りしに、伯父は眉を
顰
(
ひそ
)
め
良夜
(新字新仮名)
/
饗庭篁村
(著)
水辺に夕暮の淡い色を
滲
(
に
)
じみ出した
紫陽花
(
あじさい
)
の一と群れに交わって、丸裸のまま、ギイギイ声を立て、田から田へ
忙
(
せわ
)
しく水を配ばり、米を
研
(
と
)
ぎ、材木を
挽
(
ひ
)
いたりして、精を出して働いている。
不尽の高根
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
よく
研
(
と
)
がれた包丁のようなものである。彼は両刃を、すなわち困窮と悪意とを持っている。それゆえ隠語では、それを gueux といわないで、réguisé(研がれたる者)という。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
研
常用漢字
小3
部首:⽯
9画
“研”を含む語句
研究
研究室
研桶
研水
研磨
鏡研
研澄
手研耳命
研究会
研石
研究資料
薬研形
薬研
薬研堀
研鑽
研屋
研師
藥研
研鑚
理研
...