じゅく)” の例文
かぜかなくても、ちているよ。」と、きよちゃんは、このごろ、がよくじゅくして、ひとりでにちるのをっていました。
いちょうの葉 (新字新仮名) / 小川未明(著)
思わず二人ふたりともまっすぐに立ちあがりました。カムパネルラのほおは、まるでじゅくした苹果りんごのあかしのようにうつくしくかがやいて見えました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
命はたけるがそう言いおわるといっしょに、そのあらくれ者を、まるでじゅくしたまくわうりを切るように、ずぶずぶと切りほうっておしまいになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
花は芍薬に比べるとすこぶる貧弱だが、その果実はみごとなもので、じゅくしてけると、その内面が真赤色しんせきしょくていしており、きわめて美しい特徴とくちょうあらわしている。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
かく動揺されるときは、さなきだに思慮分別ふんべつじゅくせぬ青年はいよいよ心の衡平こうへいを失い、些事さじをも棒大ぼうだいに思い、あるいは反対に大事を針小しんしょうに誤る傾向がある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
せっかく、方々ほうぼうの国から送られてくるこれらのおいしいじゅくしたくだものが、店にかざられたまま、毎日毎日こうもたくさんくさっていくのはどうしたことだろう。
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
いわゆるおのずか天機てんきじゅくすというものでもござろうか。——就いては、元よりわれ等は一心同体。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
丸くじゅくした、温室のメロンのような円満な日日を送っているふうだったが、そのころ、山川が、混血児あいのこじみた若い娘と、お茶の水の焼跡を歩いているのを見たというものがあった。
蝶の絵 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
やがて大きな桑畠くわばたけへ入って、あのじゅくした桑の実を取って食べながら通ると、二三人葉をんでいた、田舎いなかの婦人があって、養子を見ると、あわててたすきをはずして、お辞儀じぎをしたがね
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
日本海軍の起源きげんは、安政初年のころより長崎にて阿蘭人オランダじんつたうるところにして、伝習でんしゅうおよそ六七年、学生の伎倆ぎりょうほぼじゅくしたるにき、幕議ばくぎ遠洋えんようの渡航をこころみんとて軍艦ぐんかん咸臨丸かんりんまる艤装ぎそう
時機のじゅくするのを待っている、かれらは早晩自分らの住まいをもとめるだろう、いまは東方川の口に宿やどっているが、一歩転ずれば平和湖を発見するだろう、湖畔こはんにそってさまよううちには
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
主婦しゅふの誕生日だが、赤の飯に豆腐汁で、いわしの一尾も無い。午前に果樹園かじゅえんを歩いて居たら、水蜜の早生わせが五つばかりじゅくして居るのを見つけた。取りあえず午餐の食卓にのぼす。時にとっての好いお祝。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
戦機せんきじゅくした。
せい一は、勇気ゆうきして、くさけてはいっていきました。くわえだろうとすると、じゅくしきったあかが、ぽとぽととちました。
芽は伸びる (新字新仮名) / 小川未明(著)
川下のこうぎしに青くしげった大きな林が見え、そのえだにはじゅくしてまっ赤に光るまるいがいっぱい、その林のまん中に高い高い三角標さんかくひょうが立って
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
また昔時せきじシナのきさきが庭園を散歩し、ももじゅくしたのを食い、味の余りになりしに感じ、独りこれをくろうに忍びず、い残しの半分を皇帝にささげ、その愛情の深きを賞せられ
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
筒中とうちゅうに五雄蕊ゆうずいと一雌蕊しずいとが見られる。花後かごには、宿存花冠しゅくそんかかんの中で長莢ちょうきょう状の果実がじゅくし、二つにけて細かい種子が出る。このように果実が熟した後くきれ行き、根は残るのである。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
「そんなものおれとらない。」タネリはいながら黒くじゅくしたこけももの間の小さなみちをすなはまに下りて来ました。
サガレンと八月 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「なるほど、みんなじゅくしていますね。しかし、わたしたちがあれをとってべたら、人間にんげんおこるでありましょう。」
汽車の中のくまと鶏 (新字新仮名) / 小川未明(著)
人の生まるるはじゅくして死するためなれば、幼少青年時代は準備じゅんびの時代で、人生の目的時代はその後に存すると知れば、青年時代の活気を憧憬しょうけいするはちょうを花を楽しむに異ならない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
花がわると果実ができ、じゅくしてそれが開裂かいれつすると、中の褐色かっしょく種子が出る。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
太郎たろうは、たか竹馬たけうまうえから、をのばして、いちばんよくじゅくしたうまそうなのからることができたのです。
竹馬の太郎 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ある夕焼ゆうやけのうつくしい晩方ばんがたわたしどものれは、いよいよたびのぼりました。そして、一にちはやはないている、じゅくしているあたたかなくにかえろうとおもいました。
つばめの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ああ、ここだったなとおもってながめますと、そのときとおなじように、とちのは、黄色きいろにいろづいて、じゅくしたがいくつも、いくつもぶらさがっていました。
猟師と薬屋の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、二、三十メートルかなたに、おおきなとちのがあって、じゅくしたがぶらさがっていましたが、そのしたくろいものがしきりにうごいているのをつけたのです。
猟師と薬屋の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるなつのこと、ちょうど休暇きゅうかわりかけるころから、年郎としろうくんのいえのいちじゅくは、たくさんむすんで、それは紫色むらさきいろじゅくして、るからにおいしそうだったのです。
いちじゅくの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いろいろの小鳥ことりは、はやしなかにないていましたし、オレンジのは、やはり黄色きいろじゅくしていました。
気まぐれの人形師 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あきになると、田舎いなかは、たんぼや、野原のはらにかきのがあって、にうまそうにじゅくしました。
竹馬の太郎 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しろうちには、さびしいあきがきました。つぎにのことごとくちつくしてしまうふゆがきました。いろいろなあかじゅくし、それがちてしまうとゆきりました。
お姫さまと乞食の女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしども親子おやこのものは、このくにもだんだんさむくなったから、みなみあたたかな、はないて、じゅくしているなつくにかえろうとおもいまして、あるちいさなしままでやってまいりました。
つばめの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いつしか、ほうせんかはすっかりってしまいました。そして、そのには、とうがらしがあかいろづきました。やまには、くりが紫色むらさきいろじゅくすときがきました。あきになったのであります。
二番めの娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
やまからんできた小鳥ことりも、たいていはちょっとえだまることがあるばかりで、いずれも、あきならばあかじゅくしたへ、はるならば、つぼみのたくさんについているえだりていって
大きなかしの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
もう一人ひとりは、ぐみののえだをわけて、じゅくしたをさがしていました。
風七題 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、あきからふゆにかけては、黄色きいろじゅくしたのであります。
楽器の生命 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ここにはもう長年ながねんいるけれど、そんな心配しんぱいはすこしもない。それにやまには、あかじゅくしたがなっているし、あのやま一つせば、たんぼがあって、そこにはわたしたちの不自由ふじゆうをしないほどの食物しょくもつちている。
兄弟のやまばと (新字新仮名) / 小川未明(著)