もと)” の例文
玄妙観げんみょうかん法師はもとの開府の王真人おうしんじんの弟子で、おまじないでは当今第一と称せられているから、お前も早くいって頼むがよかろう」
世界怪談名作集:18 牡丹灯記 (新字新仮名) / 瞿佑(著)
「鳥あり、鳥あり、丁令威。家を去る千年、今始めて帰る。城廓もとの如くにして、人民非なり。なんぞ仙を学ばざるか、塚纍々るいるいたり」
張交はりまぜふすまには南湖なんこだの鵬斎ぼうさいの書だの、すべて亡くなった人の趣味をしのばせる記念かたみと見るべきものさえもとの通りり付けてあった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そうだね、玄妙観へ行って、魏法師に頼むより他に途がないね、魏法師は、もとの開府王真人おうしんじんの弟子で、符籙かじふだにかけちゃ、天下一じゃ」
牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それをもとの社主は放任していたのである。新聞は新しい社主の手に渡った。少壮政治家の鉄のようなかいなが意識ある意志によってふるわれた。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
王は庚娘をれて自分の家へ帰って、おくへ入って母親に逢った。母親は王の細君がもとの女でないのを不審がった。王はいった。
庚娘 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
真宗ぎ立て即位式に先導せしむると鳴吠めいはい徘徊して意忍びざるがごとし、先帝の葬式に従えとさとせば悦んで尾を揺るがしもとのごとく飲食す。
(一〇九)もと貴戚きせきことごと呉起ごきがいせんとほつす。悼王たうわうするにおよんで、宗室大臣そうしつだいじんらんして呉起ごきむ。呉起ごきはしつてわうきてこれす。
孝陵の山川は其のもとに因れとは、土木を起す勿れとなり。嫁娶を妨ぐる勿れとは、民をしてさいわいあらしめんとなり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
狐などのしわざにやと思へば、かく荒れ果てぬれどもと住みし家にたがはで、広くつくせし奥わたりより、はしの方、稲倉いなぐらまで一一七好みたるままのさまなり。
さて食を供するに至りて、賊の中にはわが肩を敲きて、皿に肉塊を盛りて呉るゝもありき。唯だ彼媼はもとの如く、室隅に坐して、飮食の事にはあづからざりき。
但し口をきかないのは妻君の内に居る時に限るので山の神が外へ出た時には依然としてもとのペンである。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
従って何程なにほど古手の思想を積んで見ても、木地の吾は矢張やっぱりもとのふやけた、秩序だらしのない、陋劣ろうれつな吾であった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
先に立つた見物人が足をとゞめてもとの墓地の名やたま/\ある墓標のぬしの姓氏を読んだり、又英米の旅客りよかくが自身の名を石壁せきへきの上にとゞめたりするので生きた亡者まうじやの線は幾度か低徊ていくわいする。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
もとの首相ソールズベリー侯は自宅に化学実験室を設けておいて、役所から帰ると、暇さえあれば化学の研究をしていた。前首相バルフォアの如きは二、三種の哲学書を著している。
教育の目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
かけづつ紙につゝみ盜取ぬすみとりあともとの如くにして何知らぬ體にて半兵衞が歸るを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
もとの太閤ですらも我々へ常々申し聞けらるるには、家康の儀は知勇共にそなわりたる人であるによって、我等のよき相談相手と思って馳走いたすのじゃ、お前たちの合点がてんのいくことではないと
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
○延喜五年八月十九日同所安楽寺にはじめて 菅神の神殿を建らる。味酒あぢさけ安行やすゆきといふ人是をうけたまはる。同九年神殿成る。是よりさき四人の御子配流はいるをゆるされ玉ひ、おの/\もとの位にかへされ玉ふ。
めて福州の第中に居る。茘枝あり初めてみのる。絶大にして美、名づけて亮功紅と曰ふ。亮功は深家御書閣の名なり。靖康中、深、建昌軍に謫せられ、既に行く。茘枝復た実らず。明年深帰りしに、茘枝復たもとの如し。云々
玄妙観げんみょうかん魏法師ぎほうしもとの開府の王真人おうしんじんのお弟子で、おまじないでは当今第一ということであるから、お前も早く行って頼むがよかろう」
「そうだね、玄妙観げんみょうかんへ往って魏法師ぎほうしに頼むより他にみちがないね、魏法師は、もと開府王真人かいふおうしんじんの弟子で、符籙かじふだにかけては、天下第一じゃ」
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
早速箒とハタキと、それから馬尻ばけつと雑巾迄借りて急いで帰つてくると、女は依然としてもとの所へ腰をかけて、高い桜の枝を眺めてゐた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
茶山は蘭軒の返信を促すに、一たび間接の手段を取つて、書を今川槐庵に与へたが、又もとの直接の手段に立ち戻つて此書を蘭軒に寄せた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
そこで夫人は元豊から取りあげてあったねだいもとの処へかえして、更めて寝床をしつらえて注意していた。元豊は自分の室へ入ると婢を出した。
小翠 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
都内に移し撃たしむるに声出ず、本寺に帰せば声もとのごとし、士人磬神聖にして、光政寺をしたうとうわさしたとある。
そのはじらひを含める姿はもとの如くなりき。男は其名を呼び、女は紛※てふきを振りたり。花束の雨はそのかうべの上に降れり。幕再び下りしに、呼ぶ聲いよ/\はげしかりき。
此の里の二七上の山に一宇の二八蘭若てらの侍る。もと二九小山氏の三〇菩提院ぼだいゐんにて、代々よよとこの住み給ふなり。
申不害しんふがい(三九)京人けいひとなりもとてい賤臣せんしんなり。(四〇)じゆつまなび、もつ(四一)かん昭矦せうこうもとむ。
昇にれ親んでから、お勢はもとの吾をくした、が、それには自分も心附くまい※お勢は昇を愛しているようで、実は愛してはいず、只昇に限らず、総て男子に、取分けて、若い
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
三族をちゅうし、その家を没するに、家たゞ図書数巻のみ。卓敬と道衍と、もとよりげきありしといえども、帝をして方孝孺ほうこうじゅを殺さゞらしめんとしたりし道衍にして、帝をして敬を殺さしめんとす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
天下三品の御短刀と稱す斯て越前守は拜見はいけんし終りてもとへ收め俄に高き床より飛下低頭平身してかくの如き御證據ある上は疑ひもなく將軍の御息男ごそくなんに相違有ましく越前役儀やくぎとは申乍まをしながら上へ對し無禮過言を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
○延喜五年八月十九日同所安楽寺にはじめて 菅神の神殿を建らる。味酒あぢさけ安行やすゆきといふ人是をうけたまはる。同九年神殿成る。是よりさき四人の御子配流はいるをゆるされ玉ひ、おの/\もとの位にかへされ玉ふ。
質屋に奉公していたときのもと朋輩が、堀の内の近所に住んでいるのを思い出して、千次郎はその足ですぐ堀の内へたずねて行った。
半七捕物帳:08 帯取りの池 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
本郷の通り迄たが惓怠アンニユイの感は依然としてもとの通りである。何処どこをどうあるいても物足りない。と云つて、ひとうちたづねる気はもうない。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それと同時に二三羽の雁が鳴きつつ羽たたきをして、水面を滑って散った。しかし飛び起ちはしなかった。頸を垂れた雁は動かずにもとの所にいる。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
みん宣宗せんそうの宣徳年間には、宮中で促織こおろぎあわせの遊戯を盛んにやったので、毎年民間から献上さしたが、この促繊はもとは西の方の国にはいないものであった。
促織 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
同年の男の傍にいる者が、鬼に祟られているものは、その鬼の家へ往って、鬼となった者がもとつけていたそでなしをもらって、それを煎じて飲むと癒ると言った。
水莽草 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
第三日に至りて、醫師我を診して健康の全くもとかへりたるを告げ、己れも我等の一行と共に歸途に就きぬ。
したがって支那にも『淮南子』に神蛇自らその尾を断ち自ら相続あいつぐ、その怒りに触ればすなわち自ら断つ事刀もてつごとし、怒り定まれば相就あいついてもとのごとし。
かくて里人あつまりて、寺内を清め、修理しゆりをもよほし、禅師をしたふとみてここに住ましめけるより、一五九もと密宗みつしゆうをあらためて、一六〇曹洞さうとう霊場れいぢやうをひらき給ふ。
もと平助二男じなん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
本郷の通りまで来たが倦怠アンニュイの感は依然としてもとの通りである。何処をどう歩いても物足りない。と云って、人のうちを訪ねる気はもう出ない。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
暫く立って、F君は第一高等学校に聘せられたが、矢張同じ下宿にいて、そこから程近い学校に通うので、君と安国寺さんとの関係はもとのままであった。
二人の友 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
廊下のめに暗室があって、そこに棺桶かんおけがあって紙をり、もとの奉化府州判のむすめ麗卿のひつぎと書いてあった。
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
羅はびっくりしてほとんど気絶しそうになったので、いたずら心もなくなって、きちんとずまいを直して坐っていると、だんだん変って来てもとの着物になった。
翩翩 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
また代王の内蔵の物失せて戸締りはもとのごとし、士嘉これきっと猴牽さるひきが猴を使うたのだと言いて、ぬさを庭につらね、群猴をしてよぎらしめて伺うに、一つの猴がつかみ去った
お辰というのはお熊のもと朋輩で、福田の屋敷が滅亡の後、四谷のお城坊主の家へ奉公換えをした者である。その名は宇兵衛も聞き知っていたと見えて、俄かに打ち解けたように会釈えしゃくした。
半七捕物帳:61 吉良の脇指 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
座敷のなかにこの二句を点じただけで、あともとのごとく静になる。ところへこいがぽちゃりとまたはねる。池は東側で、小野さんの背中に当る。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これより先八月二十一日に浜松県を廃して静岡県にあわせられたのである。しかし保の職はもとの如くであった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
孫はまだもとの所に白痴ばかのようになって立っていた。友人達は声を揃えて呼んでみたが、孫は返事もしなければ見向きもしなかった。友人達は皆で往って引っぱった。
阿宝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)