トップ
>
後方
>
うしろ
ふりがな文庫
“
後方
(
うしろ
)” の例文
ソクラテスの死をあらわした例の古い銅版画の掛った壁を
後方
(
うしろ
)
にして、寝台に近く岸本は腰掛けた。そして自分の半生を思い続けた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「ああ!」とおかみさんが
答
(
こた
)
えた。「
家
(
うち
)
の
後方
(
うしろ
)
の
庭
(
にわ
)
にラプンツェルが
作
(
つく
)
ってあるのよ、あれを
食
(
た
)
べないと、あたし
死
(
し
)
んじまうわ!」
ラプンツェル
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
ある
日
(
ひ
)
のこと、ものすごい
波
(
なみ
)
の
音
(
おと
)
を
後方
(
うしろ
)
に
聞
(
き
)
きつつ
宝石商
(
ほうせきしょう
)
は、さびしい
野原
(
のはら
)
を
歩
(
ある
)
いていますと、
空
(
そら
)
から
雪
(
ゆき
)
がちらちらと
降
(
ふ
)
ってきました。
宝石商
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
しかしてわが影消ゆるを見て我もわが
聖等
(
ひじりたち
)
も我等の
後方
(
うしろ
)
に日の沈むをしりたる時は、我等の試みし
段
(
きだ
)
なほ未だ多からざりき 六七—六九
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
しかも二人の立っている位置は、
前方
(
むこう
)
を見ても
峨々
(
がが
)
たる山、
後方
(
うしろ
)
を見ても聳える山、右も左も山と谷の、
荒涼寂寞
(
こうりょうせきばく
)
たる境地である。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
露八はつい
後方
(
うしろ
)
にばかり気を
奪
(
と
)
られているのだった。そのときも、
振
(
ふ
)
り
顧
(
かえ
)
っていた。そして思わず、あっ……と
佇立
(
たたず
)
んでしまった。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
庭つづきになった
後方
(
うしろ
)
の丘陵は、一面の
蜜柑畠
(
みかんばたけ
)
で、その先の山地に茂った松林や、竹藪の中には、終日鶯と
頬白
(
ほおじろ
)
とが
囀
(
さえず
)
っていた。
十六、七のころ
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
と、自分を励ましたが——そう思う次の瞬間に、
後方
(
うしろ
)
の襖の中から、鬼のような、化物のような奴が、こっちを見ているような気がした。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
氏はまた
蜻蜓
(
とんぼ
)
をも
捕
(
と
)
る。蜻蜓は相場師と同じやうに
後方
(
うしろ
)
に目が無いので、尻つ尾の方から手出しをすると、
何時
(
いつ
)
でも捕へられる。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「さあ、早く行きましょう」と
不図
(
ふと
)
後方
(
うしろ
)
を振向くと、また
喫驚
(
びっくり
)
。岩の上には、
何時
(
いつ
)
しか、娘の姿が消えていて、ただ
薬瓶
(
くすりびん
)
のみがあるばかり。
テレパシー
(新字新仮名)
/
水野葉舟
(著)
変だとは思ッたが、ぶら/″\電車の路に
従
(
つ
)
いて進むと、
愈
(
いよいよ
)
混雑を極めてたが、突然
後方
(
うしろ
)
から、僕の背をつゝく者が有ッた。
東京市騒擾中の釣
(新字旧仮名)
/
石井研堂
(著)
『オイ。十分間だぞ……それ以上は待たねえぞ』とルパンは
後方
(
うしろ
)
から声をかけた。『十分間経ったら置き去りだぞ。よいか』
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
見ない
振
(
ふり
)
、知らない振、雪の
遠山
(
とおやま
)
に向いて、……溶けて流れてと、唄っていながら、
後方
(
うしろ
)
へ来るのが自然と分るね、鹿の寄るのとは違います。
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
女の方は三十二三で
床
(
とこ
)
から乗り出して子供を抱えようとした所を
後方
(
うしろ
)
からグサッと一
刺
(
さし
)
に之も左肺を貫かれて死んでいる。
琥珀のパイプ
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
月はもう庭先をはずれて、今では教会の
後方
(
うしろ
)
にかかっていた。往還の片側は月の光に溢れ、片側は影になって黒かった。
女房ども
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
お勢もまた
後方
(
うしろ
)
を振反ッて
顧
(
み
)
は顧たが、「誰かと思ッたら」ト云わぬばかりの索然とした情味の無い
面相
(
かおつき
)
をして、急にまた
彼方
(
あちら
)
を向いてしまッて
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
彼地
(
あちら
)
の若い衆は顔を出して皆
後方
(
うしろ
)
へ冠ります、
成
(
なる
)
たけ顔を見せるように致しますから、髷の先と
月代
(
さかやき
)
とが出て居ります。
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
だが暫くすると、警官たちは云いあわせたように、
呀
(
あ
)
ッと悲鳴をあげると、将棋だおしに、
後方
(
うしろ
)
へひっくりかえった。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
後方
(
うしろ
)
から追駈けられるような
慌
(
あわただ
)
しさを感じながら、さっそく長い間の逗子の生活を切り上げる仕度に取りかかった。
逗子物語
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
お登和嬢に心の
名残
(
なごり
)
を惜しみつつ
夜
(
よ
)
に
入
(
い
)
りて中川の家を出でたるが下宿屋へは足の進まずしてとかく心は
後方
(
うしろ
)
へ戻る
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
わたしの騾馬は
後方
(
うしろ
)
の丘の十字架に繋がれてゐる。そして
懶
(
ものう
)
くこの日長を所在なさに糧も惜まず鳴いてゐる。
聖三稜玻璃:02 聖三稜玻璃
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
……ハドルスキーがいつも嬢の直ぐ
後方
(
うしろ
)
に馬を立てて、
恰
(
あたか
)
も嬢を監視しているかのように見えた事……。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
しばらくすると風呂場でうがい茶碗が
金盥
(
かなだらい
)
にかちりと当る。今度は
後方
(
うしろ
)
だと振りむく途端に、五寸近くある
大
(
おおき
)
な奴がひらりと歯磨の袋を落して
椽
(
えん
)
の下へ
馳
(
か
)
け込む。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
否
(
いいえ
)
、たった五人です。一番の
流行児
(
はやりっこ
)
が選ばれて此処まで練って来るのです。斯ういう具合に若い衆が
後方
(
うしろ
)
から日傘を翳しかけましてな。綺麗な
禿
(
かむろ
)
が供をしましてな。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
その時刻にまだ起きていた例の「
涙寿
(
なみだす
)
し」の
前
(
まえ
)
まで来て、やっと一息ついて、
立止
(
たちどま
)
ったが、
後方
(
うしろ
)
を見ると、もう何者も見えないので、やれ安心と思って
漸
(
ようや
)
くに帰宅をした
青銅鬼
(新字新仮名)
/
柳川春葉
(著)
先方
(
さき
)
でも
何言
(
なにごと
)
も云わずにまた
後方
(
うしろ
)
へ
居
(
お
)
って、
何処
(
どこ
)
ともなく出て行ってしまった、
何分
(
なにぶん
)
時刻が時刻だし、第一昨夜私は寝る前に確かに閉めた
闥
(
ドア
)
が外から
明
(
あ
)
けられる道理がない
闥の響
(新字新仮名)
/
北村四海
(著)
この小屋がけは従来の方式とは違って、今日普通に見るサーカスの小屋がけ、日本でいえば相撲の場所とほぼ同じように、円心に舞台を置いて
桟敷
(
さじき
)
が輪開して
後方
(
うしろ
)
に高くなる。
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
春枝夫人
(
はるえふじん
)
は
私
(
わたくし
)
の
後方
(
うしろ
)
に、
愛兒
(
あいじ
)
をしかと
抱
(
いだ
)
きたる
儘
(
まゝ
)
、
默然
(
もくねん
)
として
言
(
ことば
)
もない、けれど
流石
(
さすが
)
に
豪壯
(
がうさう
)
なる
濱島武文
(
はまじまたけぶみ
)
の
妻
(
つま
)
、
帝國軍人松島海軍大佐
(
ていこくぐんじんまつしまかいぐんたいさ
)
の
妹君
(
いもとぎみ
)
程
(
ほど
)
あつて、
些
(
ちつと
)
も
取亂
(
とりみだ
)
したる
姿
(
すがた
)
のなきは
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
其の時の気持と云つたらありませんでした。丁度
後方
(
うしろ
)
から、いきなり首でも締められたやうに、一時に呼吸が止つてしまひました。本当に其の時の悲しさと云つたらありませんでした。
忘れ難きことども
(新字旧仮名)
/
松井須磨子
(著)
あの時佐々村佐次郎は、お茶を呑みに
母屋
(
おもや
)
へ帰って、遥かの
後方
(
うしろ
)
に居たはずです。
銭形平次捕物控:057 死の矢文
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
今
(
いま
)
まで
前面
(
ぜんめん
)
に
見
(
み
)
てゐた
五月山
(
さつきやま
)
の
裏
(
うら
)
を、これからは
後方
(
うしろ
)
に
振
(
ふ
)
りかへるやうになつた。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
先方は正しく
後方
(
うしろ
)
を振り返つたのでなく横を向いただけらしかつたので。
煤煙の匂ひ
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
その
聯隊
(
れんたい
)
の秋季機動演習は、
会津
(
あいづ
)
の
若松
(
わかまつ
)
の
近傍
(
きんぼう
)
で、師団演習を終えて、
後
(
のち
)
、我
聯隊
(
れんたい
)
はその地で同旅団の
新発田
(
しばた
)
の歩兵十六
聯隊
(
れんたい
)
と分れて、若松から
喜多方
(
きたかた
)
を経て、
大塩峠
(
おおしおとうげ
)
を越え、
磐梯山
(
ばんだいさん
)
を
後方
(
うしろ
)
にして
雪の透く袖
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
高価な毛皮で縁どった
天鵞絨
(
びろうど
)
の服や、レエスの着物や、刺繍のある衣服や、
駝鳥
(
だちょう
)
の羽根で飾った帽子——
貂
(
てん
)
の皮の
外套
(
がいとう
)
、それから小さな手袋、
手巾
(
ハンケチ
)
、絹の靴下——帳場の
後方
(
うしろ
)
に坐っていた婦人達は
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
『どうだね鷺太郎君。僕が君の
後方
(
うしろ
)
に廻ったのを知ってるかい——』
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
六日
(
むいか
)
目に同室の婦人は
後方
(
うしろ
)
の
尼様
(
あまさん
)
の様な女の居る室に空席が出来たと云つて移つて行つた。汽車は
玉
(
たま
)
の様な色をした白樺の林の間
許
(
ばか
)
りを走つて居る。稀には牛や馬の多く放たれた
草原
(
くさはら
)
も少しはある。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
後方
(
うしろ
)
に
蹲踞
(
しゃがん
)
でいた五十余りの男はその時ツト起ち上って
美人鷹匠
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
車夫は
数次
(
あまたたび
)
腰
(
こし
)
を
屈
(
かが
)
めて主人の
後方
(
うしろ
)
より
進出
(
すすみい
)
でけるが
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
甘つたれて、彼女は
後方
(
うしろ
)
に頭を反らし
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
このとき我見しに、白き衣を着(かくばかり白き色世にありし
例
(
ためし
)
なし)、己が導者に從ふごとく
後方
(
うしろ
)
より來る民ありき 六四—六六
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
その時になって見ると、旧庄屋として、また旧本陣問屋としての半蔵が生涯もすべて
後方
(
うしろ
)
になった。すべて、すべて後方になった。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
手に大きな箱を
垂下
(
ぶらさ
)
げていた。盲目で竹の杖を突きながらとぼとぼと私の
後方
(
うしろ
)
について来たが、途中から、私に手を引いてくれいといった。
黄色い晩
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
ふと
後方
(
うしろ
)
を振り返つてみると、いつも見馴れた立派な神様達の代りに薄汚い乞食のやうな仏様が一人居る。道命はお経を誦みさして訊いた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
私はもう
後
(
あと
)
は聴いていなかった。
誰
(
たれ
)
を
憚
(
はばか
)
る必要もないのに、
窃
(
そっ
)
と目立たぬように
後方
(
うしろ
)
へ
退
(
さが
)
って、
狐鼠々々
(
こそこそ
)
と奥へ
引込
(
ひっこ
)
んだ。ベタリと机の前へ坐った。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
先頭の隊で太鼓を打てば
後方
(
うしろ
)
の隊でも太鼓を打つ、白人隊で
喇叭
(
らっぱ
)
を吹けば土人軍でも喇叭を吹く。そして時々喊声を上げて猛獣の襲来を防ぐのであった。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それが、ぱっとふたりの
踵
(
かかと
)
が雪煙を揚げ、
後方
(
うしろ
)
へ離れあうと——どちらの身もまだ健在であって、白雪の大地に、
一滴
(
ひとたら
)
しの血しおもこぼれていないことが
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「僕は、美人の新型を作るよ。一方の眼が大きくて、一方が細いとか、前にも、
後方
(
うしろ
)
にも顔があるとか——」
ロボットとベッドの重量
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
いきなり
後方
(
うしろ
)
から、「檀那、そこまで入れてってよ。」といいさま、傘の下に真白な首を突込んだ女がある。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
その途端に、足許に転がっていたものが解けるようにムクムクと起き上って、激しい怒声と共に格闘を始めたから、捜査課長は
胆
(
きも
)
を
潰
(
つぶ
)
してハッと
後方
(
うしろ
)
へ下った。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
雪
(
ゆき
)
の
下
(
した
)
へ
行
(
ゆ
)
くには、
來
(
き
)
て、
自分
(
じぶん
)
と
摺
(
す
)
れ
違
(
ちが
)
つて
後方
(
うしろ
)
へ
通
(
とほ
)
り
拔
(
ぬ
)
けねばならないのに、と
怪
(
あやし
)
みながら見ると、ぼやけた
色
(
いろ
)
で、
夜
(
よる
)
の
色
(
いろ
)
よりも
少
(
すこ
)
し
白
(
しろ
)
く
見
(
み
)
えた、
車
(
くるま
)
も、
人
(
ひと
)
も
星あかり
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
“後方”の意味
《名詞》
後 方(こうほう)
後ろの方。
(出典:Wiktionary)
後
常用漢字
小2
部首:⼻
9画
方
常用漢字
小2
部首:⽅
4画
“後方”で始まる語句
後方羊蹄
後方羊蹄山