居間ゐま)” の例文
仲冬のすゑ此人居間ゐまの二階にて書案つくゑによりて物をかきてをられしが、まどひさしさがりたる垂氷つらゝの五六尺なるがあかりにさはりてつくゑのほとりくらきゆゑ
おくへ通じたれば天忠聞て大膳とあら我甥わがをひなり遠慮に及ばず直に居間ゐまへ通すべしとの事なれば取次の侍案内に及べば大膳は吉兵衞きちべゑ左京さきやうの兩人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
第一 毎日まいにちき、寢衣ねまき着替きかへ、蒲團ふとんちりはらひ、寢間ねま其外そのほか居間ゐま掃除さうじし、身體しんたい十分じふぶん安靜しづかにして、朝飯あさはんしよくすること
養生心得草 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
其れからたヽみの破れを新聞で張つた、はしらゆがんだ居間ゐまを二つとほつて、横手の光琳の梅を書いたふるぼけた大きい襖子ふすまを開けると十畳敷許の内陣ないぢん
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
けゃ、けゃ、さういふやからがあさましい最期さいごぐる。さゝ、豫定通さだめどほり、戀人こひゞともとて、居間ゐまのぼり、はやなぐさめてやりめされ。
宗助そうすけ障子しやうじてゝ座敷ざしきかへつて、つくゑまへすわつた。座敷ざしきとはひながらきやくとほすから左樣さうづけるまでで、じつ書齋しよさいとか居間ゐまとかはう穩當をんたうである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「えゝ。奧の居間ゐまがあの人と私共の書齋でしたから。あの人は窓際まどぎはに掛けてたし、私共は卓子テエブルの方にゐましたの。」
二階にかい體裁ていさいよき三個みつつへやその一室ひとままどに、しろ窓掛まどかけかぜゆるいでところは、たしか大佐たいさ居間ゐまおもはるゝ。
最早もうしめたものと、今度は客間きやくまに石をかず、居間ゐまとこ安置あんちして何人にもかくして、只だひとたのしんで居た。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
全くわるくないね。間数まかずはと? ぼく書斎しよさいけん用の客に君の居間ゐま食堂しよくだうに四でふ半ぐらゐの子ども部屋べやが一つ、それでたく山だが、もう一つ分な部屋へやが二かいにでもあれば申分なしだね。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
ひろ園生そのふめに四季しきいろをたゝかはし、みやびやかなる居間ゐまめに起居きゝよ自由じゆうあり、かぜのきばの風鈴ふうりんつゆのしたゝる釣忍艸つりしのぶ、いづれをかしからぬもきを、なにをくるしんでか
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
短き秋の日影もやゝ西に傾きて、風の音さへ澄み渡るはづきなかばの夕暮の空、前には閑庭を控へて左右は廻廊をめぐらし、青海のみす長く垂れこめて、微月の銀鈎空しく懸れる一室は、小松殿が居間ゐまなり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
わし居間ゐま燭火あかして! はれやれ、おそうなったわい、こりゃやがておはやうとはねばなるまい。……さゝ、おやすみなされ。
こめのろくれんと三郎兵衞の人形ひとがたこしらへ是へくぎうつて或夜三郎兵衞が裏口うらぐちよりしのび入り居間ゐまえんの下にうづめ置是で遺恨ゐこん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
爾来長井は何時いつでも、之を自分の居間ゐまに掛けて朝夕眺めてゐる。代助は此額の由来を何遍かされたか知れない。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
お濱さんは裏口うらぐちから廻つて、貢さんの居間ゐまえんに腰を掛けて居た。眉のうへで前髪を一文字にそろへて切下げた、雀鬢すゞめびん桃割もヽわれに結つて、糸房いとぶさの附いた大きいかんざしを挿して居る。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
私は露臺バルコンじつとしてゐました。『彼奴らはこの居間ゐまにやつて來るに相違ない、』と私は考へた。
居間ゐまかくして置いた石が何時いつにか客間のとこすゑてあつた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
あらため見るに我が居間ゐまえんの下より怪きはこさがし出しふたあけけるにおのれのろ人形ひとがたなれば大いに怒り夫より呪咀しゆそ始末しまつ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
乳母 御方樣おんかたさま只今たゞいま居間ゐまらせられます。けた、もし、油斷ゆだんなうこゝろくばって。
居間ゐまにはもう電燈がいてゐた。代助は其所そこで、梅子と共に晩食ばんしよくました。子供二人ふたりたくを共にした。誠太郎にあに部室へやからマニラを一本つてさして、それかしながら、雑談をした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
居間ゐまに戻らうとするらしかつた。この時まで、私は一心になつて彼女達から眼を放さなかつた。そして、彼女達の樣子や會話が鋭く私の興味をそゝつた爲め、自分のみじめな境遇を半ば忘れて了つてゐた。