寒気かんき)” の例文
旧字:寒氣
なお妾と互い違いにして妾の両足りょうそくをば自分の両腋下えきかはさみ、如何いかなる寒気かんきもこのすきに入ることなからしめたる、その真心の有りがたさ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
その年の京都の冬は、音を立てずに肌をとお陰忍いんにんたちのものであった。安井はこの悪性の寒気かんきにあてられて、ひどいインフルエンザにかかった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
夜中よなかごろ、汽車きしゃ山間やまあいにかかりました。やまにはゆきがつもっていました。きゅう寒気かんきがくわわって、わすれていた傷口きずぐちがずきずきといたしました。
村へ帰った傷兵 (新字新仮名) / 小川未明(著)
我国の寒行かんぎやうは、ことはこれにてその行ははなはだこと也、我国の寒中は所として雪ならざるはなく、寒気かんきのはげしき事はまへにいへるがごとし。
寒気かんきいとわれるからである。で、石炭ストーブが、書斎を暖めるに間に合わない時は、瓦斯ストーブで暖めるらしい。
小酒井不木氏スケッチ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
いや寒気かんきだとか、疼痛とうつうだとかはかんじないことが出来できるです。マルク、アウレリイがったことがありましょう。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
一つの小道こみちには神官しんかん見張小屋みはりごやっています、それでおそくなりました。なにしろ二十一日間、ものをべないでは夜の寒気かんきや雨の日にえきれません。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして寒気かんきは刺すようで、山のの月の光がこおっているようである。僕は何とも言えなく物すごさを感じた。
鹿狩り (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
話はいつかその頃の寒気かんきの厳しさに移つてゐた。彼は如何いかに庭の土の季節を感ずるかと言ふことを話した。就中なかんづく如何に庭の土の冬を感ずるかと言ふことを話した。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
洋服で出掛けて行つたのも一つは自分の不覚であつたが、岩村田いはむらたで馬車を下りる頃には私の身体からだ最早もはや水を浴びせ掛けられたやうに成つて居た。恐しい寒気かんきだつた。
突貫 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
くて夜半やはんまで草を分けて詮議したが、安行の行方は依然不明であった。加之しかも夜の更けると共に、寒い雨が意地悪く降頻ふりしきるので、人々も寒気かんきうえとに疲れて来た。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
文「う致して、あとからまいって上座じょうざは恐入る、私は何分なにぶんにも此の寒さにこたえられないから、なるたけ囲炉裏の側へ坐らして貰いたい、今日の寒気かんきは又別段ですなア」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
恐らくは万古不融ばんこふゆうの雪にして混々こん/\として利根水量をおうからしむるの大原因たるべし、当夜の寒気かんきおもふに堪へたり、宿所をらんとするも長一丈余の熊笹くまささ繁密せるを以て
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
着飾きかざった芸者たちがみがき上げた顔をびりびりするような夜寒よさむに惜しげもなく伝法でんぽうにさらして、さすがに寒気かんきに足を早めながら、ばれた所に繰り出して行くその様子が
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
というような訳でその観念の為にその夜は寒気かんきの苦しみにも打たれず、また夜の明けぬにも頓着せずについ暁まで坐禅をそのままに押し通したというようなことでございました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
微曇ほのぐもりし空はこれが為にねむりさまされたる気色けしきにて、銀梨子地ぎんなしぢの如く無数の星をあらはして、鋭くえたる光は寒気かんきはなつかとおもはしむるまでに、その薄明うすあかりさらさるる夜のちまたほとんど氷らんとすなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
おお、それは、この寒気かんきに、傷口きずぐちがおいたみになりはしませんか? わたしは、わか時分じぶんシベリア戦役せんえきにいったものです。
村へ帰った傷兵 (新字新仮名) / 小川未明(著)
時しも寒気かんきはだへつらぬくをりふしなれば、こゞえすべきありさま也。ふたおやはさら也人々もはじめてそれと知り、にもとてみな/\おなじく水をあびていのりけり。
峰と峰とのあいだの空ががれた鏡のように明るかった。寒さは宵とは比較にならない、この寒気かんきおかして、この深夜をこえて、兄は一体どこへ出て行ったのか。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここまで来ると、流石さすがのお葉も寒気かんきと疲労とにえ兼ねて、ある大きな岩の蔭に這い寄ったが、再びあがる元気は無かった。彼女かれは殆ど夢のように倒れてしまった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ながく水流中に在りし冷気れいき露営ろえい寒気かんきあはせ来るにひ、此好温泉塲をはじめて蘇生そせいするのおもひあり、一行の内終夜温泉に浴してねむりし者多し、しんに山中の楽園らくえんと謂ふべし
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
しかしかれをして露西亜ロシヤすまわしめたならば、かれかならず十二がつどころではない、三がつ陽気ようきっても、へやうちこもっていたがるでしょう。寒気かんきためからだなに屈曲まがってしまうでしょう。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
かういふ晩に車に乗るは却て寒気かんきを増すばかりなることを僕はよく知つて居ますから、此寒さにも客まちして居る車夫の一人を見ましたけれども乗りません。どし/\歩きました。
夜の赤坂 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
寒気かんき相加わり候処そろところ如何いかが御暮し被遊候あそばされそろや。不相変あいかわらず御丈夫の事と奉遥察候ようさつたてまつりそろ。私事も無事」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ガードをくぐると、そこだけは、一にちじゅう日蔭ひかげで、寒気かんきがきびしく、はだしました。やみらす電燈でんとうひかりは、うすにごってぼうっとかすんでいます。
とびよ鳴け (新字新仮名) / 小川未明(著)
皆之を押臥わうぐわし其上に木葉或はむしろきて臥床となす、炉をかんとするに枯木かれきほとんどなし、立木を伐倒きりたをして之をくすふ、火容易やうゐうつらず、寒気かんき空腹くうふくしのぶの困難亦甚しと云ふべし
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
「何をしておられるのか。この寒気かんきに、しかも夜、河の中へなど身を沈めて」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一同は寒気かんきを防ぐために盛んに焼火たきびをして猟師を待っているとしばらくしてなの字浦の方からたくましい猟犬が十頭ばかり現われてその後に引き続いて六人の猟師が異様な衣裳なりで登って来る
鹿狩り (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
毎年一丈以上の雪中に冬をなせども寒気かんきは江戸にさまでかはる㕝なしと、江戸に寒中せし人いへり。五雑組ござつそにいへる霜はつゆのむすぶ所にしていんなり、雪は雲のなす所にしてやうなりとはむべなり。
寒気かんきしのぐ為に落葉を焚く者もあった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
つきも、ほしも、またゆきまでも、ああして感心かんしんしてあわれなうたをきき、音楽おんがくみみましているのに、寒気かんきだけが用捨ようしゃなくつのることを、すずめははらだたしくも
春になる前夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
毎年一丈以上の雪中に冬をなせども寒気かんきは江戸にさまでかはる㕝なしと、江戸に寒中せし人いへり。五雑組ござつそにいへる霜はつゆのむすぶ所にしていんなり、雪は雲のなす所にしてやうなりとはむべなり。
先刻さっきまでまったくなかったかぜが、意地悪いじわるはじめて、寒気かんきつのり、なが北窓きたまどけてはいられませんでした。
火事 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし、山吹やまぶきは、この寒気かんきたたかって、ついにけませんでした。やがて、はるがめぐってきたときに、緑色みどりいろを、あわれながったえだやしたのであります。
親木と若木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すずめは、つくづく寒気かんきというものをなさけなしな、冷酷れいこくなものだとおもいました。
春になる前夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)