より)” の例文
既に我が身に引請んとするを暫時しばしと引留千太郎進みより否々いへ/\久八にては御座らぬと言んとするを押留おしとゞ尻目しりめかけて夫となく知らする忠義の赤心まごころ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これを腰にさげて居れば犬が怖れてよりつかぬというて、大きな豹だか虎だかの皮の巾着を貰ったので、それを腰にぶらぶらと下げて歩いたが
少年時代 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
其方そちらおもよりもあらばつてれとてくる/\とそりたるつむりでゝ思案しあんあたはぬ風情ふぜい、はあ/\ときゝひとことばくて諸共もろとも溜息ためいきなり。
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
よりつく処もなくなって、一人は職人として、一人は註文取として、夫婦で築地の方の或洋服店へ住込むことになったのは
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
この路を去る十二三町、停車場よりの海岸に、石垣高く松をめぐらし、廊下でつないで三棟みむねに分けた、門には新築の長屋があって、手車の車夫の控える身上しんしょう
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ただそこここと見廻しているばかりでしたが、「モット側へおより」と徳蔵おじにいわれて、オジオジしながら二タ足三足、奥さまの御寝おやすみなってるほうへよりますと
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
さるにても此まゝにてむすめごがうせ給はゞ我が命をめされ候へ、こゝにをられ候人々こそよき証人しようにんなれといひつゝ、赤裸あかはだかになりてかみをもさばき井のもとにはしりよりしたゝかに水をあび
歌ひながらに恋人は、飛ぶ蜂のつばさきらめく光のかげ、暮方の食事にと、庭の垣根の果実くだものと、白きパン、牛の乳とをととのへ置きて、いざや、より添ひて坐らんと、わが身のほとりに進み来ぬ。
「な、何を、より合いじゃアあるめえし、人の名前をならべているんだ」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
家の娘おあさの小花さんが待つておいでなれば帰にはおよりでせうねといふをうしろに聞きて、朝倉にしは点燈頃ひともしごろなり、こちらは一中を二段まで聞かせられ、夕飯もそのまま済ました処、本人の兼吉のみか
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
焼野やけの雉子きぎすよるの鶴、錆田さびたの雀は子をかばう。いわんや、鯨は魚の長。愛情の深さはまたなかなか。……さて、皆々さま、これなるは、つき鯨のより鯨のながれ鯨のとそんな有りふれた鯨ではござりませぬ。
申分の無いポーズで、話して歩いている間中、私に腕をい込んだり、私の肩へ手を置いたり、私の胸へよりかかったり、絶えずコクコクうなずいて、私の話へ合槌を打ったり、同情して眉をひそめたり
奥さんの家出 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
又「じゃア帰りには屹度きっとよりなすって」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
でもいつかお年がおよりになって
のぞみ立身を心懸こゝろがけ心底しんていには候はず左樣の存じよりあらば何とて今日御役宅へ御密談おみつだんに參り可申や配下はいかの身として御重役ごぢうやく不首尾ふしゆび
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其方そちらに思ひよりも有あらば言つて見てくれとてくるくるとそりたるつむりを撫でて思案にあたはぬ風情、はあはあと聞ゐる人も詞は無くて諸共もろとも溜息ためいきなり。
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
業平朝臣なりひらあそんの(名にしおはゞいざこととはむ)歌の心をまのあたり、鳥の姿に見たいと言ふ、花につけ、月につけ、をりからのきく紅葉もみじにつけてのおもよりには相違あるまい。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ともあれあの子も両親の手で育てられまするに、つまらぬ事を思ひよりまして、貴君にまでやな事を御聞かせまをしました
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さゝれぬ私し勿々なか/\以て然樣さやう成事なること思ひよらずおゆるし成されて下されと云まぎらすを忠兵衞はなほ種々さま/″\よりつゝやがて言葉をやはらげて言ひ出しけるは然云さういふ御前の心底しんてい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
八幡様よりの米屋に、米搗こめつきをしていた、渾名あだなをニタリの鮟鱇あんこう、鮟鱇に似たりで分かる。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もあれ兩親れうしんそだてられまするに、つまらぬことおもよりまして、貴君あなたにまでやなこと御聞おきかせまをしました
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いただいたのは新しい夏帽子、着たのは中形の浴衣であるが、きっと改まった様子で、五ツ紋の黒絽くろろの羽織、白足袋、表打おもてうち駒下駄こまげた蝙蝠傘こうもりがさを持ったのが、根岸御院殿よりのとある横町を入って
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あゝいやだ/\と道端みちばた立木たちき夢中むちうよりかゝつて暫時しばらくそこにたちどまれば、わたるにやこわわたらねばと自分じぶんうたひしこゑそのまゝ何處どこともなくひゞいてるに
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「何、今度ばかしゃ仲間のよりでさ、少々その苦情事なんでして、」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
みなのもの祝義しうぎでもつかはしませうとてこたへもかずずん/\と引出ひきいだすを、きやくはしらよりかゝつてながめながら小言こゞともいはず、諸事しよじおまかせ申すと寛大かんだいひとなり。
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
嬉しきは月の夜の客人まらうど、つねは疎々うと/\しくなどある人の心安こゝろやすげによりたる、男にてもうれしきを、ましてをんなともにさる人あらば如何いかばかり嬉しからん、みづからいづるにかたからばふみにてもおこせかし
月の夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
町子まちこにはかにもののおそろしく、たちあがつて二あしあし母屋おもやかたかへらんとたりしが、引止ひきとめられるやうに立止たちどまつて、此度このたび狛犬こまいぬ臺石だいいしよりかゝり、もれ坐敷ざしきわさぎをはるかにいて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うれしきは月の客人まれびと、つねは疎々うとうとしくなどある人の心安げによりたる。男にても嬉しきを、まして女の友にさる人あらば、いかばかり嬉しからん。みづからいづるにかたからばふみにてもおこせかし。
あきあはせ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
つきそひのをんなかゆぜん持來もちきたりて召上めしあがりますかとへば、いや/\とかぶりをふりて意氣地いくぢもなくはゝひざよりそひしが、今日けふわたし年季ねんあきまするか、かへこと出來できるで御座ござんしやうかとてひかけるに
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)