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かつ
ふりがな文庫
“
嘗
(
かつ
)” の例文
嘗
(
かつ
)
てランケは云つた、「ゲーテはまた大歴史家になることもできたであらう。けれどもシラーは歴史家たるの天分を有しなかつた。」
ゲーテに於ける自然と歴史
(新字旧仮名)
/
三木清
(著)
嘗
(
かつ
)
てそこに松井源水が住んでいたというのをもって源水横町、その横町が「大風呂」という浴場をもっていたのをもって大風呂横町
雷門以北
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
「僕は本当のことを君に言うが、僕は
嘗
(
かつ
)
て君に友情を抱いたことは一度もない。
此処
(
ここ
)
へ来るのも自分の打算から来るのであって——」
母
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
珙
(
こう
)
と道衍とは
本
(
もと
)
より
互
(
たがい
)
に知己たり。道衍又
嘗
(
かつ
)
て道士
席応真
(
せきおうしん
)
を師として
陰陽術数
(
いんようじゅっすう
)
の学を受く。
因
(
よ
)
って道家の
旨
(
し
)
を知り、仙趣の微に通ず。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
嘗
(
かつ
)
てあんなにも恋い
焦
(
こが
)
れていたその人を、
一顧
(
いっこ
)
の価値もない腐肉の塊であると観じて、清く、貴く、
豁然
(
かつぜん
)
と死んで行ったであろうか。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
嘗
(
かつ
)
て森田節斎の「項羽本紀」の講義に参ず。これよりして「項羽本紀」を手ずから
謄写
(
とうしゃ
)
するものおよそ四回、随って批し随って読む。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
だから探偵小説は、
嘗
(
かつ
)
て流行していた、あらゆる種類の文芸の中から進化し生まれた、より新しい、より深い、より痛い文芸であった。
甲賀三郎氏に答う
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
手足が冷えると、二階か階下かの炬燵の空いた座を見付けて、そつと温まりに行くが、
嘗
(
かつ
)
て家族に向つて話を仕掛けたことがなかつた。
入江のほとり
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
が、焼ける前の昔の面影を
偲
(
しの
)
ばすものは、
嘗
(
かつ
)
て庭だったところに残っている
築山
(
つきやま
)
の岩と、麦畑のなかに見える井戸ぐらいのものだ。
永遠のみどり
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
女隱居は、六十前後、
嘗
(
かつ
)
ては日本橋あたりの
大店
(
おほだな
)
の主人の圍ひ者だつたさうで、下女一人を使つて、つゝましく暮して居りました。
銭形平次捕物控:077 八五郎の恋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
狭苦しく見えることよ!
嘗
(
かつ
)
てはあんなにもあどけなく思っていた私の昔の恋人の、いまは何んと私の目には、一箇の、よそよそしい
麦藁帽子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
吾人は今少なくとも有史以来の『得意』の舞台に大踏歩しつゝあり、と共に又
未
(
いま
)
だ
嘗
(
かつ
)
て知らざる大恐怖の暗雲を
孕
(
はら
)
み来りつゝあり。
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
從
(
したが
)
つて
其方
(
そのはう
)
の
談判
(
だんぱん
)
は、
始
(
はじ
)
めから
未
(
いま
)
だ
嘗
(
かつ
)
て
筆
(
ふで
)
にした
事
(
こと
)
がなかつた。
小六
(
ころく
)
からは
時々
(
とき/″\
)
手紙
(
てがみ
)
が
來
(
き
)
たが、
極
(
きは
)
めて
短
(
みじ
)
かい
形式的
(
けいしきてき
)
のものが
多
(
おほ
)
かつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
嘗
(
かつ
)
ての総国分寺たる権威と、四天王護国寺たる理想はすでに失われ、その伝統と時勢はむしろ南都の位置を政治的権力たらしめていた。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
ラゲさんは、自分の
生国
(
しやうこく
)
が、クリストフが
嘗
(
かつ
)
て居住してゐた土地であるといふ話し
等
(
など
)
が出たので、
一寸
(
ちよつと
)
因縁
(
いんねん
)
をつけて考へたものであつた。
風変りな作品に就いて
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そこで、彼は年中
汚
(
きたな
)
い下宿の一室に寝転んだまま、それで、どんな実際家も
嘗
(
かつ
)
て経験したことのない、彼自身の夢を見つづけて来ました。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
母様は
嘗
(
かつ
)
て悪い事をしたことがなかった。そしていろんな事を知って居た。夜も昼も子供のことを見ておいでなさる神様をも知って居た。
少年・春
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
そして、その次に、浮び出す景色は、
嘗
(
かつ
)
て関東大震災で経験したところの火焔の幕が、見る見るうちに、四方へ拡がってゆくのであった。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
この青年の
嘗
(
かつ
)
て動き流れていたものが、誰からかたった
錐
(
きり
)
一本を心の利目に打ち込まれたために、停ってしまったのではないか。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
スパニアの王とボエムメの王(この人
嘗
(
かつ
)
て徳を知らずまた求めしこともなし)との
淫樂
(
いんらく
)
と
懦弱
(
だじやく
)
の生活と見ゆべし 一二四—一二六
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
唯懐
(
ただおもひ
)
を
亡
(
な
)
き人に寄せて、形見こそ
仇
(
あだ
)
ならず書斎の壁に掛けたる半身像は、
彼女
(
かのをんな
)
が十九の春の色を
苦
(
ねんごろ
)
に
手写
(
しゆしや
)
して、
嘗
(
かつ
)
て
貽
(
おく
)
りしものなりけり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
初めに書いた、
嘗
(
かつ
)
てぼくの
童貞
(
どうてい
)
とやらに興味を持ったN子という女給もいれば、松山さんも沢村さんの女達もいるカフエでした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
この様な句を読むとすると、
嘗
(
かつ
)
てロデンバックの短篇集を
繙
(
ひもと
)
いたことのある人ならきつとあの廃都ブリュジュの夕暮を思ひ描くに相違ない。
水に沈むロメオとユリヤ
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
嘗
(
かつ
)
てイプセンの邦訳(誰のだつたか忘れたが)を読んで、当時多くの人々と共に少からず感心し、なるほど、近代劇の巨匠と云はれる筈だ
舞台の言葉
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
われ
嘗
(
かつ
)
てゴツトシヤルが詩學に
據
(
よ
)
り、理想實際の二派を分ちて、時の人の批評法を論ぜしことありしが、今はひと昔になりぬ。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
嘗
(
かつ
)
て彼は或る知人が三人の女を愛していて、そこに通うことで生きていたが、彼はその三人のうちで誰をあなたは一等愛していられるのか
陶古の女人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
私は
嘗
(
かつ
)
て一つの創作の中に妻を犠牲にする決心をした一人の男の事を書いた。事実に於てお前たちの母上は私の為めに犠牲になってくれた。
小さき者へ
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
嘗
(
かつ
)
て加藤博士が国会猶早しと呼びたるの時代ありき、嘗て文部省は天下に令して四書五経を
村庠
(
そんしやう
)
市学の間に復活せしめんとせし時代もありき
英雄論:明治廿三年十一月十日静岡劇塲若竹座に於て演説草稿
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
尚
(
な
)
ほ
其
(
そ
)
の
人
(
ひと
)
が、
嘗
(
かつ
)
て
修學旅行
(
しうがくりよかう
)
をした
時
(
とき
)
、
奈良
(
なら
)
の
然
(
さ
)
る
尼寺
(
あまでら
)
の
尼
(
あま
)
さんに
三體
(
さんたい
)
授
(
さづ
)
けられたと
云
(
い
)
ふ。
其
(
そ
)
の
中
(
なか
)
から
一體
(
いつたい
)
私
(
わたし
)
に
分
(
わ
)
けられた
阿羅漢
(
あらかん
)
の
像
(
ざう
)
がある。
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
それにしても彼女の晩年において唯々一つの心残りであったのは、
嘗
(
かつ
)
て困苦を共にして来た最愛の
良人
(
おっと
)
の不慮の死であったに違いありません。
キュリー夫人
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
ところで、その緊張の頂点に於て僕の頭脳に
閃
(
ひらめ
)
いたものがあるんだ。僕は
嘗
(
かつ
)
て、一通人から、いわば騎士道上の忠言を受けたことがあるのだ。
メフィスト
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
ラヴィニア、恐怖が僕を
掴
(
つか
)
む。僕は死にこんなに近寄ったことは
嘗
(
かつ
)
てない。我等は凡て死す。この言葉は今後決して念頭を離れないでしょう。
チチアンの死
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
いや
嘗
(
かつ
)
ては住んでいたが、現在は、少くも今日の夜は、
殆
(
ほとん
)
ど誰もが住んでいない。——と、そんなように思われるのでした。
さまよう町のさまよう家のさまよう人々
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それはちょうど、彼女が
南京玉
(
なんきんだま
)
へ糸を通すように、これこそ
慣
(
な
)
れっこになっていて、
未
(
いま
)
だ
嘗
(
かつ
)
て見当を
外
(
はず
)
したことはないのだ。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
彼
(
かれ
)
は
反目
(
はんもく
)
して
居
(
ゐ
)
るだけならば
久
(
ひさ
)
しく
馴
(
な
)
れて
居
(
ゐ
)
た。
然
(
しか
)
し
彼
(
かれ
)
は
從來
(
じゆうらい
)
嘗
(
かつ
)
てなかつた
卯平
(
うへい
)
の
行爲
(
かうゐ
)
に
始
(
はじ
)
めて
恐怖心
(
きようふしん
)
を
懷
(
いだ
)
いたのであつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
口より身体までを両断せしに、
他
(
た
)
の
狼児
(
らうじ
)
は
狼狽
(
らうばい
)
して
悉
(
ことごと
)
く
遁失
(
にげう
)
せ、又或時は幼時
嘗
(
かつ
)
て講読したりし、十八
史略
(
しりやく
)
中
(
ちゆう
)
の事実、即ち
母となる
(新字旧仮名)
/
福田英子
(著)
嘗
(
かつ
)
て天皇の行幸に御伴をして、山城の宇治で、秋の野のみ草(
薄
(
すすき
)
・
萱
(
かや
)
)を刈って
葺
(
ふ
)
いた
行宮
(
あんぐう
)
に
宿
(
やど
)
ったときの興深かったさまがおもい出されます。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
一方を横にさせて、自分は
嘗
(
かつ
)
て横になるということをしないで終ろうとするこの旅路——その辺は、旅に慣れた兵馬には、あえて苦とはならない。
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「ほんの數分でいゝ。ジエィン、あなたは私がこの家の長男ではなく、
嘗
(
かつ
)
て、私に、兄があつたといふことを聞くなり知るなりしてゐましたか?」
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
一未決囚徒たる私、即ち島浦英三は、其の旧友にして
嘗
(
かつ
)
ては兄弟より親しかりし土田検事殿に、此の手紙を送ります。
悪魔の弟子
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
次に鯉坂君がどんな研究題目を選ぶかを例をもって説明しますならば、彼は
嘗
(
かつ
)
て、人間の身体を流れて居る赤血球の目方をはかることを企てました。
新案探偵法
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
牧師の着物を被た或詩人は、
嘗
(
かつ
)
て彼の村に遊びに来て、路に竜胆の花を
摘
(
つ
)
み、
熟々
(
つくづく
)
見て、青空の一片が落っこちたのだなあ、と趣味ある言を吐いた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
そこで、
嘗
(
かつ
)
て震災前に加藤一夫等によって始めて提唱された民衆芸術とは、如何に違っているのか、ということを明らかにしておく必要があると思う。
大衆文芸作法
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
嘗
(
かつ
)
てボズさんと
辨當
(
べんたう
)
を
食
(
た
)
べた
事
(
こと
)
のある、
平
(
ひらた
)
い
岩
(
いは
)
まで
來
(
く
)
ると、
流石
(
さすが
)
に
僕
(
ぼく
)
も
疲
(
つか
)
れて
了
(
しま
)
つた。
元
(
もと
)
より
釣
(
つ
)
る
氣
(
き
)
は
少
(
すこ
)
しもない。
都の友へ、B生より
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
主の名に託りて多くの
異能
(
ことなるわざ
)
を為ししに非ずやと云う者多からん、其時我れ彼等に告げて言わん、我れ
嘗
(
かつ
)
て汝等を知らず、悪を為す者よ我を離れ去れと
聖書の読方:来世を背景として読むべし
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
訳者
嘗
(
かつ
)
て十年の昔、
白耳義
(
ベルギー
)
文学を紹介し、
稍
(
やや
)
後れて、仏蘭西詩壇の新声、特にヴェルレエヌ、ヴェルハアレン、ロオデンバッハ、マラルメの事を説きし時
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
或いは初のウヒ、産のウムなどと
繋
(
つな
)
がった音であって、
嘗
(
かつ
)
て一年の巡環の
境目
(
さかいめ
)
を、この月に認めた名残かというような、一つの想像説も成り立つのである。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
この一刹那に、この女優が
嘗
(
かつ
)
て舞台に
上
(
のぼ
)
した事のある
沙翁
(
さおう
)
劇の女主人公、
埃及
(
エヂプト
)
の女王クレオパトラの最後が、強い暗示として閃かなかつたと誰が言ひ得よう。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
それは
蛍
(
ほたる
)
か何かであろう。彼は
嘗
(
かつ
)
て
支那
(
しな
)
の随筆の中で読んだことのある蛍に関する怪奇な
譚
(
ものがたり
)
を思いだした。
馬の顔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
嘗
(
かつ
)
て
此麽
(
こんな
)
事
(
こと
)
をしたことはないのですが、
兄
(
にい
)
さんの
拉典語
(
ラテンご
)
の
文典
(
ぶんてん
)
に、『
鼠
(
ねずみ
)
は——
鼠
(
ねづみ
)
の——
鼠
(
ねずみ
)
に—
鼠
(
ねずみ
)
を——おゥ
鼠
(
ねず
)
ちやん!』と
書
(
か
)
いてあつたのを
覺
(
おぼ
)
えて
居
(
ゐ
)
ましたから
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
嘗
漢検準1級
部首:⼝
14画
“嘗”を含む語句
大嘗
新嘗
新嘗祭
未嘗
舌嘗
嘗試
一嘗
大嘗祭
臥薪嘗胆
大嘗会
新嘗忌
神嘗祭
総嘗
神嘗
相嘗
總嘗
践祚大嘗祭
飴嘗
新嘗会
新嘗屋
...