“井(ゐ)” の例文
で、翌日は、早くから、同勢十二人がお茶の水駅へ集合し、そこから省線で吉祥寺まで行き、ぞろぞろと井(ゐ)ノ頭(かしら)公園へ繰り込んだ。
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
常(つね)は何(なん)とも思(おも)はぬ島田(しまだ)がめ今日(けふ)斗(ばかり)は恥(はづ)かしいと夕(ゆふ)ぐれの鏡(かゞみ)の前(まへ)に涕(なみだ)くむもあるべし、菊(きく)の井(ゐ)のお力(りき)とても惡魔(あくま)の生(うま)れ替(がは)りにはあるまじ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
井戸は江戸時代にあつては三宅坂側(みやけざかそば)の桜(さくら)ヶ井(ゐ)も清水谷(しみづだに)の柳(やなぎ)の井(ゐ)、湯島(ゆしま)の天神(てんじん)の御福(おふく)の井(ゐ)の如き、古来江戸名所の中(うち)に数へられたものが多かつたが
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
バグダツドの市場(いちば)の噴き井(ゐ)の上には大きい無花果(いちぢく)が葉を拡げてゐます。その噴き井の右ゐるのはハアヂと名乗つた先刻の商人、左にゐるのは水瓶(みづかめ)をさげた、美しい一人(ひとり)の娘です。
三つの指環 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
優(やさ)しさよ、松蔭(まつかげ)の清水(しみづ)、柳(やなぎ)の井(ゐ)、音(おと)に雫(しづく)に聲(こゑ)ありて、旅人(たびびと)に露(つゆ)を分(わか)てば、細瀧(ほそだき)の心太(ところてん)、忽(たちま)ち酢(す)に浮(う)かれて、饂飩(うどん)、蒟蒻(こんにやく)を嘲(あざ)ける時(とき)、冷奴豆腐(ひややつこ)の蓼(たで)はじめて涼(すゞ)しく、爪紅(つまくれなゐ)なる蟹(かに)の群(むれ)
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
言はるるままに客間に通りて、端近(はしちか)う控ふれば、彼は井(ゐ)の端(はた)なりし婢(をんな)を呼立てて、速々(そくそく)主(あるじ)の方(かた)へ走らせつ。莨盆(たばこぼん)を出(いだ)し、番茶を出(いだ)せしのみにて、納戸(なんど)に入りける妻は再び出(い)で来(きた)らず。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
相待ち懷姙(くわいにん)の子を大切(たいせつ)に致すべしとて御手元(おてもと)金百兩を澤(さわ)の井(ゐ)へ遣(つか)はされたり澤の井は押戴(おしいたゞ)き有難(ありがたき)よしを御禮(おんれい)申上左樣なれば仰(おほせ)に隨がひ私儀(わたくしぎ)は病氣の積(つも)りにて母の許(もと)へ參るべし併(しかし)ながら御胤(おんたね)を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
白萩 あの晩(くれ)の鐘は、寺の深い井(ゐ)の底から湧いてくるといふは真かいなあ。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
そこには自分と昔馴染の福岡鉱務署長三井(ゐ)米松(よねまつ)氏が立つてゐた。
貧しき乙女の半裸なるしばしは井(ゐ)のほとりにくぐもりゐしが
駱駝の瘤にまたがつて (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
『信(しん)』の井(ゐ)の龍頭(りうづ)より、なほ
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
掘らぬ井(ゐ)に
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
菊(きく)の井(ゐ)のお力(りき)は土方(どかた)の手傳(てつだ)ひを情夫(まぶ)に持(も)つなどゝ考違(かんちが)へをされてもならない、夫(それ)は昔(むか)しの夢(ゆめ)がたりさ、何(なん)の今(いま)は忘(わす)れて仕舞(しまつ)て源(げん)とも七とも思(おも)ひ出(だ)されぬ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
就中(なかんづく)、河間(かかん)王深(わうしん)の居邸(きよてい)、結構(けつこう)華麗(くわれい)、其(そ)の首(しゆ)たるものにして、然(しか)も高陽王(かうやうわう)と華(くわ)を競(きそ)ひ、文柏堂(ぶんはくだう)を造營(ざうえい)す、莊(さかん)なること帝居(ていきよ)徽音殿(きおんでん)と相齊(あひひと)し、清水(しみづ)の井(ゐ)に玉轆轤(ぎよくろくろ)を置(お)き、黄金(わうごん)の瓶(つるべ)を釣(つ)るに
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
進(すゝみ)申樣天一坊樣御身分の儀は只今(たゞいま)の書付にて委(くは)しく御承知ならんが御腹の儀御不審(ふしん)御尤(もつ)ともに存候されば拙者より委細(ゐさい)申上べし抑(そも)當(たう)將軍樣紀州(きしう)和歌山(わかやま)加納將監方(かなふしやうげんかた)に御部屋住にて渡らせ給ふ節(せつ)將監(しやうげん)妻(さい)の召使(めしつか)ふ腰元(こしもと)澤(さは)の井(ゐ)と申婦女(ふぢよ)の上樣(うへさま)御情(おんなさけ)懸(かけ)させられ御胤を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
蒲團(ふとん)やの時代(じだい)から左(さ)のみの男(をとこ)と思(おも)はなんだがあれこそは死花(しにばな)、ゑらさうに見(み)えたといふ、何(なに)にしろ菊(きく)の井(ゐ)は大損(おほぞん)であらう、彼(か)の子(こ)には結搆(けつこう)な旦那(だんな)がついた筈(はづ)
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お前のお娘の産(うみ)し孫(まご)ありて幼年に果(はて)られしや开(そ)は又如何なる人の子にて有(あり)しぞと問(とふ)に婆は彌々(いよ/\)涙にくれ乍(なが)らも語り出る樣(やう)私(わし)に澤(さは)の井(ゐ)といふ娘あり御城下の加納將監樣といふへ奉公に參らせしが其頃將監樣(しやうげんさま)に徳太郎樣と申す太守樣(たいしゆさま)の若君が御預(おあづか)りにて渡(わた)らせ給へり其若君が早晩(いつか)澤の井に御手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
櫻(さくら)の花(はな)に梅(うめ)が香(か)とめて柳(やなぎ)の枝(えだ)にさく姿(すがた)と、聞(き)くばかりも床(ゆか)しきを心(こヽろ)にくき獨(ひと)りずみの噂(うはさ)、たつ名(な)みやび男(を)の心(こヽろ)を動(うご)かして、山(やま)の井(ゐ)のみづに浮岩(あくが)るヽ戀(こひ)もありけり
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)