麹町かうぢまち)” の例文
一町いつちやうばかり、麹町かうぢまち電車通でんしやどほりのはうつた立派りつぱ角邸かどやしき横町よこちやうまがると、其處そこ大溝おほどぶでは、くわツ、くわツ、ころ/\ころ/\とうたつてる。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
自分が十六の時始めて東京に遊学に来た頃の事だから、もう余程古い話だが、其頃麹町かうぢまちの中六番町に速成学館といふ小さな私立学校があつた。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
第一回は麹町かうぢまちの富士見軒、第二回は上野の精養軒、第三回は日本橋の東洋軒で食べたのだが、そのあとでは何時いつでもきまつたやうに病気になつた。
下谷したやから浅草あさくさへ出たらう、それから本郷台ほんがうだいあがつて、牛込うしごめへ出て四谷よつやから麹町かうぢまちへ出てかへつてた、いやもうがつかりした。
年始まはり (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
車夫くるまやの足が何時より遅いやうに思はれて、御好物の飴屋あめやが軒も見はぐりました、此金これは少々なれど私が小遣の残り、麹町かうぢまちの御親類よりお客の有し時
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
中氏が武彦さんの姻戚なることは上に云つた。武彦さんは麹町かうぢまち区土手三番町四番地に住んでゐる。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
佐伯さへき叔母をば安之助やすのすけ其後そのごとん宗助そうすけうちへはえなかつた。宗助そうすけもとより麹町かうぢまち餘暇よかたなかつた。また夫丈それだけ興味きようみもなかつた。親類しんるゐとはひながら、別々べつ/\二人ふたりいへらしてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かうぶるに及んでは僞りてのがるゝみちなくかざつておほべきの理なくされば大岡越前守殿の裁許さいきよあづかりし者其善惡そのぜんあく邪正じやせいわかたざるなしじつ賢奉行けんぶぎやうとやいつつべし仰々そも/\村井長庵といふは麹町かうぢまち三丁目に町醫まちいと成つて世を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
麹町かうぢまちは三番丁なる清風せいふう女学校には、今日しも新年親睦会
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「嫁の里が麹町かうぢまちの櫻井屋で」
巖谷氏いはやし住所ぢうしよころ麹町かうぢまち元園町もとぞのちやうであつた。が麹町かうぢまちにも、高輪たかなわにも、千住せんぢゆにも、つこと多時たじにして、以上いじやう返電へんでんがこない。今時いまどきとは時代じだいちがふ。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「あなたも知つて居るだらうが、麹町かうぢまちに金尾文淵堂といふ書肆ほんやが居る。あすこの主人に娘さんをめあはさないかね。さうするときつと私の原稿をあげる。」
下谷したやから浅草あさくさ𢌞まはつて、それから貴方あなた本郷台ほんがうだいへかゝりました、それから牛込うしごめへ出まして、四谷よつやから麹町かうぢまち𢌞まはつてかへつてまゐりまして、いやもうがつかりいたしました。
年始まはり (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
は、二筋ふたすぢけた、ゆる大蛇おろち兩岐ふたまたごとく、一筋ひとすぢさきのまゝ五番町ごばんちやうむかひ、一筋ひとすぢは、べつ麹町かうぢまち大通おほどほりつゝんで、おそちかづいたからである。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大燒原おほやけはらつた、下町したまちとおなじことほとん麹町かうぢまち九分くぶどほりをいたの、やゝしめりぎはを、いへ逃出にげでたまゝの土手どて向越むかうごしにたが、黒煙くろけむりは、殘月ざんげつした
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
先年せんねん麹町かうぢまち土手三番町どてさんばんちやう堀端寄ほりばたよりんだ借家しやくやは、ひど濕氣しけで、遁出にげだすやうに引越ひつこしたことがある。
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
麹町かうぢまち番町ばんちやう火事くわじは、わたしたち鄰家りんか二三軒にさんげんが、みな跣足はだし逃出にげだして、片側かたがは平家ひらや屋根やねからかはら土煙つちけむりげてくづるゝ向側むかうがは駈拔かけぬけて、いくらか危險きけんすくなさうな、四角よつかどまがつた
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ようをきいて、ところをたづねるから、麹町かうぢまちらしてかへると、すぐその翌日よくじつ、二十四——の赤帽君あかばうくんが、わざ/\やま番町ばんちやうまで、「御免ごめんくださいまし。」と丁寧ていねいかどをおとづれて
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
二日ふつか——正午しやうごのころ、麹町かうぢまち一度いちどえた。立派りつぱ消口けしぐちつたのを見屆みとゞけたひとがあつて、もう大丈夫だいぢやうぶはしに、待構まちかまへたのがみな歸支度かへりじたくをする。家内かない風呂敷包ふろしきづつみげてもどつた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……さきへ/\、くのは、北西きたにしいちはうで、あとから/\、るのは、東南ひがしみなみ麹町かうぢまち大通おほどほりはうからである。かずれない。みち濡地ぬれつちかわくのが、あき陽炎かげろふのやうに薄白うすじろれつゝ、ほんのりつ。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)