後を顧みれば馬士のイブラヒム君土耳其帽を横ちよにかぶり、真黒く焼けし顔を日に曝し、荷物の上に両足投げ出して、ほくほく歩ます。
馬上三日の記:エルサレムよりナザレへ (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
馬上三日の記:エルサレムよりナザレへ (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
菊川の宿場に程近く、後になり先になって行く馬士どものワヤク話を聞くともなく聞いて行くうちに、銀之丞はフト耳を引っ立てて、並んで曳かれて行く馬の片陰に近付いた。
その馬士というのはまだ十三、四の子供であったが、余はこれと談判して鳥井峠頂上までの駄賃を十銭と極めた。この登路の難儀を十銭で免れたかと思うと、余は嬉しくって堪まらなかった。
子之介 十年以前野洲の河原で馬士を殺したはわが仕業と、あからさまに名乘つて出て、ゆかりのものを探し求め、むかしの罪を償ふために、あつく扶持して取らせると