断片(Ⅰ)だんぺん(いち)
神保町から小川町の方へ行く途中で荷馬車のまわりに人だかりがしていた。馬が倒れたのを今引起こしたところであるらしい。馬の横腹から頬の辺まで、雨上がりの泥濘がべっとりついて塗り立ての泥壁を見るようである。あらわな肋骨の辺には皮が擦り剥けて赤い血 …