“這:は” の例文
“這:は”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花64
太宰治35
中里介山32
夏目漱石26
吉川英治22
“這:は”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語11.6%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)4.9%
文学 > 日本文学 > 日記 書簡 紀行4.3%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
「しっかりするから、少し待ってくれえ」と碌さんは一生懸命に草のなかをい上がる。ようやく追いつく碌さんを待ち受けて、
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
外国人の入り込む開港場へ海から何かうようにやって来るやみの恐ろしさは、それを経験したものでなければわからない。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
裏の畠には、前の年に試みた野菜の外に茄子なす黄瓜きうりなどを作り、垣根には南瓜かぼちゃつるわせた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
夕焼のあかね色が空の高みに残り、白いもやが道の前方をつて来る、その空気に包まれると、彼は何だか平和だつた。
姉弟と新聞配達 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
そして身をかがめてうようにしながら、小屋のうしろの井戸側のかげへついと走って行きましたが、とたんに彼等は、
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そして崩れた波はひどい勢いで砂の上にあがって、そこらじゅうを白い泡で敷きつめたようにしてしまうのです。
溺れかけた兄妹 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
朝、眼をさましてからもあわてて寝床からい出すようなことはなく、二時間ほどは眼をつぶって眠ったふりをしているのである。
ロマネスク (新字新仮名) / 太宰治(著)
「王様さよなら。ばかな私共は彗星ほうきぼしだまされました。今日からはくらい海の底の泥を私共はいまわります。」
双子の星 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
遠くのこおりの山からは、白い何ともえずひとみいたくするような光が、日光の中をってまいります。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
スコッチ・ファーと云う常磐木ときわぎの葉が、きざ昆布こんぶに雲がいかかって、払っても落ちないように見える。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかし隊長は一向号令を下さない。さすがは捜査課長だ。いつくばって崩れた土のにおいを熱心にいでいるのだ。
地中魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
知らぬまに、高かったその陽がおちたとみえて、うっすらと夕ぐれがい寄った。――同時のように、ひたひたと足音が近づいた。
流行暗殺節 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
ところが、この毛虫が成長するに随ってゾロゾロい出し、盛んに家宅侵入、安眠妨害をるので、人民の迷惑一通りでない。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
泥がりあらされ、おがくずの山がおしひろげられ、木材は巨大な虫がいずるようにずるずると小屋に運ばれて行った。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
ホテルの門前を警衛する騎兵の銀の冑が霜夜しもよ大通おほどほりに輝き、馬の気息いきが白くつて居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
博士は、部屋の片隅にある犬のくぐり戸のようなまるい形の扉をあけて、次の部屋へいこんだ。先生も、そのあとに続いた。
火星兵団 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ひます、這ひます、這ひまして帰ります。つちを這ひまして帰ります。其の方が、どれほどおなさけか分りませぬ。」
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
穴倉へもい込んだ、洞穴どうけつにも入った、少しでもふたおおいのある下へは、皆き入ろうと努めた。
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)
棚を作っているのもあり、あるいは大木にからませているのもあり、軒から家根へわせているのもあるが、皆それぞれに面白い。
我家の園芸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「裁判長、僕は猫の頭に頬冠ほほかむりをさせて、そこいらを逆さに、はせたらいいと思ふな。どうだい、おもしろいぞオ。」
仔猫の裁判 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
便所の窓からい出して、稼業柄汲み置きの水をブッ掛けてようやく消しましたが、宵に一と雨来て、鉋屑が湿っていなきゃア
「まあ、お母さん、どうしたんです? こんな所までして来て。お母さんったら。――甲野さん、ちょっと来て下さい。」
玄鶴山房 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
と申しますのは、ある時この男が深い林の中を通りますと、小さな蜘蛛くもが一匹、路ばたをって行くのが見えました。
蜘蛛の糸 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
軒先のきさきに垂れたすだれの上には、ともし火の光を尋ねて来たのでしょう、かすかに虫のう音が聞えています。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そこで、娘は、折を計って、相手の寝息をうかがいながら、そっと入口までって行って、戸を細目にあけて見ました。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そこは、天はひくく垂れ雲が地をい、なんと幽冥ゆうめい界の荒涼たるよと叫んだバイロンの地獄さながらの景である。
人外魔境:03 天母峰 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
寝台ねだいい下りて、北窓の日蔽ブラインドき上げて外面そとを見おろすと、外面は一面にぼうとしている。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
地をう煙の飛ばんとして飛び得ざるごとく、わがたましいの、わがからを離れんとして離るるに忍びざるていである。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
五秒は十秒と変じ、十秒は二十、三十と重なっても誰一人いちにん塹壕ざんごうから向うへあがる者はない。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
蛇も、私と同様にお父上の逝去を悲しんで、穴からい出てお父上の霊を拝んでいるのであろうというような気がしただけであった。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
白砂にい、ひろがれる千本松原、または紅葉に見えかくれする清姫滝、そのような絵はがきよりも浅草仲店の絵はがきを好むのだ。
頭上の屋根裏につて居る名物の守宮やもりがクク、ククと日本の雨蛙の様に鳴くのはクラリネツトを聞くおもむきがあつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
屋根はかなりの傾斜けいしゃだが、身のかるい少年には、天窓のところまでっていくのは、大してむずかしい仕事でもなかった。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
空気のかげんによっては、道志谷の山のひだが驚くばかりハッキリして、そこをう蟻の群までが見えるような心持がする。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
雨落あまおち敷詰しきつめたこいしにはこけえて、蛞蝓なめくぢふ、けてじと/\する
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さそりぼしが向うをっていますね。あの赤い大きなやつをむかし支那しなではと云ったんですよ。」
土神ときつね (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
と、声の下で、ささやきつれると、船頭が真先まっさきに、続いて青坊主あおぼうずつにつたのである。
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
村子はそちらへ行こうとするが、やめて、いずりながら中央のガンドウの方へ来て、ガンドウを動かして、二人の方へ光を向ける。
胎内 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
愕然とした彦太郎はいつくばったまま、異様の惑乱に戸惑いながら、自分の名を呼んだ女を穴のあくほど見つめはじめた。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
朝陽のもるる中に、彼はあざやかな藤の花を見た。すぐ窓の下までっていって、手をのばしてみたが、花のふさには届かない。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
浮世の波に漂うておぼるる人を憐れとみる眼には彼を見出さんことかたかるべし、彼は波の底をうものなれば。
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
その上得体も知れぬ虫がウジウジ出て来て、誰かの顔へは四寸程の蚰蜒げじげじあがったというので大騒ぎ。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
それだけでは万一に死ななかったにしても、谷からい上がってくるまでには熊のために食い殺されるに相違ないから……
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
それから人に見付からないように、お縁側からい上って、奥の押入の中に在る長持と、壁の間にはさまってジイッとしていたの。
狂人は笑う (新字新仮名) / 夢野久作(著)
荷担ぎバガジスは、荷がかさんだので値増しを騒ぎだし、土はあかく焼けて亀裂がい、まさに地の果か地獄のような気がする。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
東京を立つ時にはまだい出しもしなかった末の妹が、黒い顔に例のどんよりした目をして、飾りだなの後ろからよちよち歩き出し
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
行手に当って、真黒な潮騒しおさいのような、何とも言えずすさまじいわめき声が、地をうようにひびいているのだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
そうして、馬糞ばふんの重みに斜めに突き立っているわらの端から、裸体にされた馬の背中まであがった。
(新字新仮名) / 横光利一(著)
……で悚気ぞっとしたが、じっると、鼠か、溝鼠どぶねずみか、降る雨に、あくどく濡れてっている。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鼻のさきにただよう煙が、その頸窪ぼんのくぼのあたりに、古寺の破廂やれびさしを、なめくじのようにった。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「人間の娘も、鷺のおんなも、いのち惜しさにかわりはないぞの。」といわれた時は、俎につくばい、鳥にかがみ、媼にって
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
井戸はねえかな、井戸は……やむことを得なけりゃあ、さきほどの、あの高札場の屑屋のい出した井戸まで引返すかね。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そこで、先生のハイキングぶりが甚だ怪しいもので、ハイキングというよりは「いキング」とでもいった方がふさわしいかも知れぬ。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
まわりに、何かガヤ/\という騒ぎが聞えてきましたが、しばらくすると、私の足の上を、何か生物が、ゴソ/\っているようです。
ハルビンあたりから骨になつて帰つて来るものもあれば、色も香もせはてて、人の台所をつてゐるものもあつた。
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
そしてっていくように落ちていったが、空をかすめてゆく彗星すいせいのようで、そのまま水の中へ落ちてしまった。
汪士秀 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
彼が盾の上にねていた時、二疋の大きな毒蛇がゆかの上をって来て、おそろしい口をあけて彼を呑もうとしました。
刑事の抱きとめる手がおくれて、あやか夫人は下へくずれ、二三度床板をつかむようにいだして、やがて、くずれて、動かなかった。
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
火事のあとで、村の人達が上つて行つて見ますと、百穴の中から、ひ出して来た古狸も仔狸こだぬきも、皆な焼け死んでゐました。
馬鹿七 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
深い息づかい、れたくちびる、「自然」はまっ暗闇の中にいつくばって、一心に、秘密の物のけはいを偵察していたのだ。
一しきり何か物凄ものすごい音がして、途方もなく大きな火のへびが、ざざーつとひ過ぎたのをはつきり覚えてゐるさうです。
死児変相 (新字旧仮名) / 神西清(著)
何うして其処までひ出して行つたかさへ疑問にされる程の体で、彼女は高い枝に其の身体を吊した紐をかけてゐました。
白痴の母 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
煙の底をってゆく――低い所ほど煙がうすい。次の間から次の間へと、目明しの万吉は、だんだん深入りをしていった。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けむりかれたら、地面ぢめんふこと、手拭てぬぐひにて鼻口はなくちおほふこと。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
時にはまたかにはさみをあげていよるのをさじですくって水のなかへ投げてやるとそのまま深みへはい込んでしまう。
島守 (新字新仮名) / 中勘助(著)
第一の毛虫 この教官はいつちょうになるのだろう? 我々の曾々々祖父そそそそふの代から、地面の上ばかりいまわっている。
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
蔦代は兄の吐き出すようなその声に驚いて、顔を上げた。そのほおには蛞蝓なめくじい跡のように、涙の跡が鈍く光っていた。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
拝殿にくくりつけられた子は、暗闇くらやみの中で、細帯のたけのゆるす限り、広縁の上をい廻っている。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
玻璃障子の直ぐ外にある植込には、はぎ薔薇ばらなどを石垣の外までもわせて、正太がよく眼をよろこばした場所である。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
古風な中庭には泉水などがあって、躑躅つつじいひろがり、かえでの若葉がこんもりした陰影を作っていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
つんのめり、いあがり、ずり落ち、木の根にすがり、土をき掻き、少しずつ少しずつかず枝のからだを林の奥へ引きずりあげた。
姥捨 (新字新仮名) / 太宰治(著)
午後一時半に、小牛田こごた行きの汽車が白河駅にはいりましたので、親子四人、その列車の窓からい込みました。
たずねびと (新字新仮名) / 太宰治(著)
焚火の烟は、油紙の屋根の継ぎ目から洩れて、白い柱が立っては崩れ、風に折れて地をいながら、谷中を転げてゆく。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
その本体はかえって差措さしおき、砂地にった、朦朧もうろうとした影に向って、たしなめるように言った。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それと見た博徒や破落戸ならずものの連中は同じように丸太を足場にして、見世物小屋へい上って追っかけました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「よかろ」二人は、ハンモックを離れて、畳のように海面に拡がった風船にい上った。大きな麻袋なので、二人を乗せても平気だった。
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
夜が地面からい上がって来て、次第に私たちを包んだ。林の中の狭い空地で、父は鴫の来るのを待っていたのである。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
屋根をみつめておりますと、その上をう薄い黒煙のなかに太閤たいこう様のお顔が自然かさなって見えて参ります。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
わたくしはその谷間をようようい上りますと、ああ今おもい出しても総身そうみあわだつことでございます。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
屋根をみつめてをりますと、その上をふ薄い黒煙のなかに太閤たいこう様のお顔が自然かさなつて見えて参ります。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
わたくしはその谷間をやうやうひ上りますと、ああ今おもひ出しても総身そうみあわだつことでございます。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
五助は片膝立て、中腰になり、四ツにいなどして掻探かいさぐり、膝かけをふるって見て、きょときょとしながら、
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼は、女房の手を離れて、い出して来た五人目の女のを、片手であやしながら、窓障子のすきから見える黒い塀を見ていた。
(新字新仮名) / 徳永直(著)
重兵衛 さっき寝かし付けたのだが、何かうなされたように怖い怖いと云って、又ここへして来たのだ。
影:(一幕) (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
どうやら雷雨らいうが来そうな模様で、黒い雨雲がきだして空をい、しきりにそのもやもやした輪郭りんかくを変えていた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
わたしは、何に身をかくしていたわけでもないけれど、地面にいつくばらんばかりに小さく縮こまっていたのである。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
きげんのいいロオラが、大きな籠の中をグロテスクな足とくちばしとでいまわり、籠の天井にぶらさがったまま、
オカアサン (新字新仮名) / 佐藤春夫(著)
柳の根もとにある穴からかにが出てきて不思議そうに見てるのでそっと指をだしたら チカ とはさんでそこそこに穴へい込んだ。
島守 (新字新仮名) / 中勘助(著)
陳は咄嗟とっさゆかうと、ノッブの下にある鍵穴かぎあなから、食い入るような視線を室内へ送った。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
自分はいながら、咽喉仏のどぼとけかどとがらすほどにあごを突き出して、初さんの方を見た。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
このおかを甲州街道の滝阪たきざかから分岐ぶんきして青山へ行く青山街道が西から東へとって居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
まことにつまらない思いで、湯槽からい上って、足の裏のあかなど、落して銭湯の他の客たちの配給の話などに耳を傾けていました。
トカトントン (新字新仮名) / 太宰治(著)
兵馬が燈心を掻き立てた途端のこと、その行燈あんどんの下から、ぬっとい寄った人のかお、それとぴったり面を合わせた兵馬が、
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
さそりぼしが向ふをってゐますね。あの赤い大きなやつを昔は支那しなではくゎと云ったんですよ。」
土神と狐 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
日本を背負って立とうという意気と、女に稼がせて、台所をいずっている男と、どっちに惚れるといやあ、お前さんだって、私の心変りを
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十二月始めのある日、珍しくよく晴れて、そして風のちっともない午前に、私は病床からい出して縁側で日向ひなたぼっこをしていた。
浅草紙 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
二人の人夫が石垣をってあがって来た。組頭の松蔵とこれも組頭の一人の寅太郎とらたろうの二人であった。松蔵はにこにこしていた。
海神に祈る (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
けたてのしんほそめた台洋燈だいらんぷが、かげおほきくとこはして
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そこには、露をつけた、背の低い、名の知れない植物がい回っていて、遠く浜から、かすかな鹹気しおけと藻の匂いが飛んでくるのだ。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
つまりませんわ、少し渦でも巻かなけりや、あんましずかで、橋の上をつてゐるやうですもの、」
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
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