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這
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は
ふりがな文庫
“
這
(
は
)” の例文
初冬の夕陽が
這
(
は
)
い寄る縁側、今までガラッ八の八五郎を相手に、
将棋
(
しょうぎ
)
の詰手を考えている——といった、泰平無事な日だったのです。
銭形平次捕物控:035 傀儡名臣
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
まことにつまらない思いで、湯槽から
這
(
は
)
い上って、足の裏の
垢
(
あか
)
など、落して銭湯の他の客たちの配給の話などに耳を傾けていました。
トカトントン
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「困つた事を言ふのネ、あ、さう/\
蟹
(
かに
)
……、蟹を食べた事があつて? あの赤アい
爪
(
つめ
)
のある、そうれ横に、ちよこ/\と
這
(
は
)
ふ……」
熊と猪
(新字旧仮名)
/
沖野岩三郎
(著)
瀬
(
せ
)
が動くと、クスクスと笑うものがあるので、誰と低くきくと、あたしだよと答えるのは姉さんで、そっと
這
(
は
)
うようにして
上陸
(
あが
)
る——
旧聞日本橋:03 蕎麦屋の利久
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
燃えひろがる早さも、焼け焦げ独特のジワジワした感じであるが、それが千倍万倍の速さになって、顔面の皮膚を
這
(
は
)
いひろがるのだ。
暗黒星
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
▼ もっと見る
そら
雲
(
くも
)
が
日
(
ひ
)
を
隱
(
か
)
くした!
薄
(
うす
)
い
影
(
かげ
)
が
野
(
の
)
の
上
(
うへ
)
を、
海
(
うみ
)
の
上
(
うへ
)
を
這
(
は
)
う、
忽
(
たちま
)
ち
又
(
また
)
明
(
あか
)
るくなる、
此時
(
このとき
)
僕
(
ぼく
)
は
決
(
けつ
)
して
自分
(
じぶん
)
を
不幸
(
ふしあはせ
)
な
男
(
をとこ
)
とは
思
(
おも
)
はなかつた。
湯ヶ原より
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
村子はそちらへ行こうとするが、やめて、
這
(
は
)
いずりながら中央のガンドウの方へ来て、ガンドウを動かして、二人の方へ光を向ける。
胎内
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
のこのこと床から
這
(
は
)
い出した歌麿は、手近の袋戸棚を
開
(
あ
)
けると、そこから、
寛政
(
かんせい
)
六年に出版した「
北国五色墨
(
ほっこくごしきずみ
)
」の一枚を抜き出した。
歌麿懺悔:江戸名人伝
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
なきさけぶおかみさんを、いすはぐいぐいとおし、
部屋
(
へや
)
の外につきだした。ホールは
這
(
は
)
うようにして、いっしょに外にころがりでた。
透明人間
(新字新仮名)
/
ハーバート・ジョージ・ウェルズ
(著)
それがさ、一件じゃから
耐
(
たま
)
らぬて、乗るとこうぐらぐらして柔かにずるずると
這
(
は
)
いそうじゃから、わっというと
引跨
(
ひんまた
)
いで腰をどさり。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
蟹は、この
期
(
ご
)
になってもまだじぶんの運命をなんとかして
打開
(
だかい
)
しようとでもいうように、せまい
籠
(
かご
)
の中をがさごそ
這
(
は
)
いまわっていた。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
言い知らぬ
侘
(
わび
)
しさが襲いかかり、死の幻想に浸るのだったが、そうした寂しさはこのごろの彼女の心に時々
這
(
は
)
い寄って来るのだった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
十二月始めのある日、珍しくよく晴れて、そして風のちっともない午前に、私は病床から
這
(
は
)
い出して縁側で
日向
(
ひなた
)
ぼっこをしていた。
浅草紙
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
まわりに、何かガヤ/\という騒ぎが聞えてきましたが、しばらくすると、私の足の上を、何か生物が、ゴソ/\
這
(
は
)
っているようです。
ガリバー旅行記
(新字新仮名)
/
ジョナサン・スウィフト
(著)
私は半分寝床から体を
這
(
は
)
ひ出しながら、口を
尖
(
とが
)
らせながら、
呟
(
つぶや
)
くやうに云つた。さう云ふ私を、兄は非難しようとさへしなかつた。
イボタの虫
(新字旧仮名)
/
中戸川吉二
(著)
丈の高い
樫
(
かし
)
の
椅子
(
いす
)
が、
厳
(
いか
)
つい背をこちらへ向けて、掛けた人の姿はその蔭にかくれて見えぬ。雪のやうな
裳
(
も
)
すそのみゆたかに床に
這
(
は
)
ふ。
ジェイン・グレイ遺文
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
多分
(
たぶん
)
被害者
(
ひがいしゃ
)
は、
苦
(
くる
)
しみもがき、
金魚鉢
(
きんぎょばち
)
のところまで
這
(
は
)
いよつてきて、
口
(
くち
)
をゆすぐか、または、
鉢
(
はち
)
の
中
(
なか
)
の
水
(
みず
)
を
飲
(
の
)
もうとしたのだろう。
金魚は死んでいた
(新字新仮名)
/
大下宇陀児
(著)
棚を作っているのもあり、あるいは大木にからませているのもあり、軒から家根へ
這
(
は
)
わせているのもあるが、皆それぞれに面白い。
我家の園芸
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
建物の前面の屋根のところから電光状に壁を
這
(
は
)
いさがり、沼の陰気な水のなかへ消えているのを、見つけることができたであろう。
アッシャー家の崩壊
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
電柱がたおれ、電線が低く
舗道
(
ほどう
)
を
這
(
は
)
っていた。灰を吹き散らしたような雨が、そこにも落ちていた。廃墟の果てるところに海があった。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
こういうわけで、少年はすぐさまその
申
(
もう
)
し
出
(
いで
)
を
承知
(
しょうち
)
しました。そして、小人が
這
(
は
)
いだせるように、網をゆり動かすのをやめました。
ニールスのふしぎな旅
(新字新仮名)
/
セルマ・ラーゲルレーヴ
(著)
白井はこの機会をのがさず
這
(
は
)
ふやうに
折屈
(
をりかゞ
)
んで、片手を常子の額に載せて見た。
体
(
てい
)
よく
除
(
の
)
けられるかと思ひの外常子はにつこり微笑み
来訪者
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
知らぬまに、高かったその陽がおちたとみえて、うっすらと夕ぐれが
這
(
は
)
い寄った。——同時のように、ひたひたと足音が近づいた。
流行暗殺節
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
そのうちに全身を
濡
(
ぬ
)
れ流れた汗が冷え切ってしまって、タマラナイ
悪寒
(
おかん
)
がゾクゾクと背筋を
這
(
は
)
いまわり初めた時の情なかったこと……。
木魂
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
やり過して地びたを
這
(
は
)
って後へ廻った鉄公の手がお鶴の裾にかかったかと思うと紅が
翻
(
ひるがえ
)
って高く捲れた着物から真白な
脛
(
はぎ
)
が見えた。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
そこには、露をつけた、背の低い、名の知れない植物が
這
(
は
)
い回っていて、遠く浜から、かすかな
鹹気
(
しおけ
)
と藻の匂いが飛んでくるのだ。
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
それはちょうど、
紺屋
(
こんや
)
の
藍瓶
(
あいがめ
)
の中へ落ちた者が、あわてふためいて瓶から
這
(
は
)
い上るような形であります。
面
(
かお
)
も着物も真黒でありました。
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
刑事の抱きとめる手がおくれて、あやか夫人は下へくずれ、二三度床板をつかむように
這
(
は
)
いだして、やがて、くずれて、動かなかった。
不連続殺人事件
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
高柳君は
床
(
とこ
)
のなかから
這
(
は
)
い出した。
瓦斯糸
(
ガスいと
)
の
蚊絣
(
かがすり
)
の綿入の上から
黒木綿
(
くろもめん
)
の羽織を着る。机に向う。やっぱり翻訳をする
了簡
(
りょうけん
)
である。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
何の
艶
(
つや
)
もない濁った煙色に
化
(
な
)
り、見る/\
天穹
(
てんきゅう
)
を
這
(
は
)
い上り、大軍の散開する様に、東に、西に、天心に、ず、ずうと広がって来た。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
と書きて贈りしその花に
候
(
さふらふ
)
。奥村氏の
前庭
(
ぜんてい
)
の
紅木槿垣
(
べにむくげがき
)
に
這
(
は
)
ひまつはりしもその花に
候
(
さふらふ
)
。翌日は
早
(
はや
)
ほろほろと船室の中に
紅
(
べに
)
を
零
(
こぼ
)
し
候
(
さふらふ
)
。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
と金右衛門は、断崖の
這
(
は
)
い松に引ッかかっていた月江の帯を輪に巻き、谷底を目がけてポーンとそこから真っすぐ下へ
抛
(
ほう
)
り投げました。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
子供のキャッチボールのそれ球をわんわんのように
這
(
は
)
って
椽
(
えん
)
の下にさがしに行ったりどろだらけな靴下をつくろってやることもあります。
家庭愛増進術:――型でなしに
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
すると花の列のうしろから、一ぴきの茶いろの
蟇
(
ひきがえる
)
が、のそのそ
這
(
は
)
ってでてきました。タネリは、ぎくっとして立ちどまってしまいました。
タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
「まあ、お母さん、どうしたんです? こんな所まで
這
(
は
)
い
出
(
だ
)
して来て。お母さんったら。——甲野さん、ちょっと来て下さい。」
玄鶴山房
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そして友禅の模様の上を
這
(
は
)
いながら袂の中に忍び込んだらしく、お
納戸
(
なんど
)
のたけしぼの地を透かして
仄
(
ほの
)
かに光っているのが見える。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
予がこの谷をまるで歩き過ごした時に汝はまだこの小川の底を
這
(
は
)
い渡ってしまわぬ位だろうと言うと守宮そんなに言われると一言も出ぬ
十二支考:02 兎に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
そして人気なく寂然として、
蔓
(
つる
)
蔦
(
つた
)
の壁に
這
(
は
)
うた博士邸の古びた入り口に
佇
(
たたず
)
んで待つことしばし、やがて奥に
嗄
(
しわが
)
れた声が聞えたかと思うと
令嬢エミーラの日記
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
虱は慌てて
其辺
(
そこら
)
を
這
(
は
)
ひ回つたが、職人の掌面は職人の住むでゐる世界よりもずつと広かつた。虱は方角を
取
(
と
)
り
損
(
そくな
)
つて中指にのぼりかけた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「よかろ」二人は、ハンモックを離れて、畳のように海面に拡がった風船に
這
(
は
)
い上った。大きな麻袋なので、二人を乗せても平気だった。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
火
(
ひ
)
が
天井
(
てんじよう
)
まで
燃
(
も
)
え
上
(
あが
)
つたならば、
屋根
(
やね
)
まで
打拔
(
うちぬ
)
いて
火氣
(
かき
)
を
拔
(
ぬ
)
くこと。これは
焔
(
ほのほ
)
が
天井
(
てんじよう
)
を
這
(
は
)
つて
燃
(
も
)
え
擴
(
ひろ
)
がるのを
防
(
ふせ
)
ぐに
效力
(
こうりよく
)
がある。
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
若君は
乳母
(
めのと
)
の所で寝ていたのであるが、目をさまして
這
(
は
)
い寄って来て、院のお
袖
(
そで
)
にまつわりつくのが非常にかわいく見られた。
源氏物語:37 横笛
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
蒙々
(
もうもう
)
たる灰煙の中に誰かかがんでいる者がある、なおも近寄ってみるとそれはあの男で、床の上へ
這
(
は
)
うようにして何かをじっと覓めている
蛮人
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼は、女房の手を離れて、
這
(
は
)
い出して来た五人目の女の
児
(
こ
)
を、片手であやしながら、窓障子の
隙
(
すき
)
から見える黒い塀を見ていた。
眼
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
人類の幼稚時代のあるとき、一人の気ばたらきのある人間が岩の中のくぼみに
這
(
は
)
いこんで身をかばったと想像できるであろう。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
二人の人夫が石垣を
這
(
は
)
ってあがって来た。組頭の松蔵とこれも組頭の一人の
寅太郎
(
とらたろう
)
の二人であった。松蔵はにこにこしていた。
海神に祈る
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
ところが、この毛虫が成長するに随ってゾロゾロ
這
(
は
)
い出し、盛んに家宅侵入、安眠妨害を
遣
(
や
)
るので、人民の迷惑一通りでない。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
この時雌鼠は恐る恐る黄金丸の前へ
這
(
は
)
ひ寄りて、
慇懃
(
いんぎん
)
に前足をつかへ、
数度
(
あまたたび
)
頭
(
こうべ
)
を垂れて、再生の恩を謝すほどに、黄金丸は
莞爾
(
にっこ
)
と打ち
笑
(
え
)
み
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
博士は、部屋の片隅にある犬のくぐり戸のようなまるい形の扉をあけて、次の部屋へ
這
(
は
)
いこんだ。先生も、そのあとに続いた。
火星兵団
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
わたしはすっかり
怖気
(
おじけ
)
づいて、こそこそ彼女たちの
傍屋
(
はなれ
)
へ
這
(
は
)
いこんでは、なるべく老夫人のそばに、くっついているようにしたものである。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
這
漢検準1級
部首:⾡
11画
“這”を含む語句
這入
這出
這々
這般
四這
腹這
這奴
這上
出這入
這込
這個
這箇
這裏
横這
這入込
這奴等
這麽
夜這
御這入
這廻
...