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蓑
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みの
ふりがな文庫
“
蓑
(
みの
)” の例文
のみならず、矢竹の墨が、ほたほたと太く、
蓑
(
みの
)
の毛を羽にはいだような形を見ると、古俳諧にいわゆる——狸を
威
(
おど
)
す
篠張
(
しのはり
)
の弓である。
木の子説法
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ちょうどその夜は、小雨でもあったので、長兵衛は、
蓑
(
みの
)
、
笠
(
かさ
)
にすがたを包み、城下
端
(
はず
)
れのなまず橋を西へ、
高台寺道
(
こうだいじみち
)
をいそぎかけた。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
横手からそう遠くない
千屋
(
せんや
)
村あたりの
蓑
(
みの
)
や
深沓
(
ふかぐつ
)
で大変細工のよいのを見かけます。蓑はここでも襟飾りに
矢絣
(
やがすり
)
などを入れて
凝
(
こ
)
ります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
○
蓑
(
みの
)
をやち○笠をてつか○人の死をまがつた又はへねた○
男根
(
なんこん
)
をさつたち○
女陰
(
ぢよいん
)
を
熊
(
くま
)
の
穴
(
あな
)
。此
余
(
よ
)
あまたあり、さのみはとてしるさず。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
歌っている声や、話をする声は誰にも聞えますが、
肝心
(
かんじん
)
の姿は
隠
(
かく
)
れ
蓑
(
みの
)
という、姿を隠すものを着ていますので、誰にも見えないのです。
蕗の下の神様
(新字新仮名)
/
宇野浩二
(著)
▼ もっと見る
彼は髪を乱して腰に垂れ、麻の帯をしめて
蓑
(
みの
)
を着て、手に大きい袋を持っていた。袋のなかにはたくさんの
鵝鳥
(
がちょう
)
や鴨の鳴き声がきこえた。
中国怪奇小説集:17 閲微草堂筆記(清)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
三人はまだくすくすと笑いながら、戸口を閉め、雪帽子や
蓑
(
みの
)
をぬいで、板壁の
釘
(
くぎ
)
に掛け、それから、三人かたまって挨拶をした。
樅ノ木は残った:02 第二部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
しかしなおその以外に、麦飯正月と名づけて麦飯をうんと食い、あるいは出雲の大原郡のように、麦畠の上に
蓑
(
みの
)
をしいてその上に転がり
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
と駒に打ち乗り、濁流めがけて飛び込もうとするので式部もここは必死、
篠
(
しの
)
つく雨の中を
蓑
(
みの
)
も
笠
(
かさ
)
もほうり投げて若殿の駒の
轡
(
くつわ
)
に取り
縋
(
すが
)
り
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
千両
函
(
ばこ
)
、大福帳、
蕪
(
かぶ
)
、隠れ
蓑
(
みの
)
、隠れ
笠
(
がさ
)
、おかめの
面
(
めん
)
などの宝尽くしが張子紙で出来て、それをいろいろな
絵具
(
えのぐ
)
で塗り附ける。
幕末維新懐古談:42 熊手を拵えて売ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
煙霧は
模糊
(
もこ
)
として、島の
向
(
むこ
)
うの合流点の明るく広い水面を去来し、濡れに濡れた高瀬舟は墨絵の中の
蓑
(
みの
)
と笠との
舟人
(
かこ
)
に操られてすべって行く。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
女房の荒栲は、縮を
小腋
(
こわき
)
に当てて、右の手には竹笠を持って、
蓑
(
みの
)
を着て外へ出て行こうとしているところを描いてあります。
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
何んに致せ、あの大勢のいる宴会の中で、隠れ
蓑
(
みの
)
、隠れ
笠
(
がさ
)
をでも持っているように致す事の出来た二人でございますから。
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
何年来置き古し見古した
蓑
(
みの
)
、笠、
伊達正宗
(
だてまさむね
)
の額、
向島百花園
(
むこうじまひゃっかえん
)
晩秋の景の
水画
(
みずえ
)
、雪の林の水画、
酔桃館蔵沢
(
すいとうかんぞうたく
)
の墨竹、何も書かぬ赤短冊などのほかに
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
井上出雲守は、小脇差を差し、笠と、
蓑
(
みの
)
とに身体をつつんで、人目につかぬ脇道から、城下を離れるため、急いでいた。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
彼等
(
かれら
)
は
雨
(
あめ
)
を
藁
(
わら
)
の
蓑
(
みの
)
に
避
(
さ
)
けて
左手
(
ひだりて
)
に
持
(
も
)
つた
苗
(
なへ
)
を
少
(
すこ
)
しづつ
取
(
と
)
つて
後退
(
あとずさ
)
りに
深
(
ふか
)
い
泥
(
どろ
)
から
股引
(
もゝひき
)
の
足
(
あし
)
を
引
(
ひ
)
き
拔
(
ぬ
)
き
引
(
ひ
)
き
拔
(
ぬ
)
き
植
(
う
)
ゑ
退
(
の
)
く。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
圭介の空け切った眼には、そこら一帯の
葡萄畑
(
ぶどうばたけ
)
の間に五六人ずつ
蓑
(
みの
)
をつけた人達が立って何やら喚き合っているような光景がいかにも異様に映った。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
田圃
(
たんぼ
)
の中に出る。稲の植附はもう済んでいる。おりおり
蓑
(
みの
)
を着て
手籠
(
たご
)
を担いで
畔道
(
あぜみち
)
をあるいている農夫が見える。
鶏
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
『
新著聞集
(
しんちょもんじゅう
)
』十四篇には、京の富人溝へ飯を捨つるまでも乞食に施さざりし者、死後蛇となって池に住み、
蓑
(
みの
)
着たように
蛭
(
ひる
)
に取り付かれ苦しみし話を載す。
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
そこへ下男の佐吉も
蓑
(
みの
)
と
笠
(
かさ
)
とで
田圃
(
たんぼ
)
の見回りから帰って来て、中津川の大橋が流れ
失
(
う
)
せたとのうわさを伝えた。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
万一の用意に四人分の
蓑
(
みの
)
をつめこんで、これまたよろめくように背負い、そして足ばやに勝に追いついて一言の下にたしなめると、やがてすたすたと追い抜き
米
(新字新仮名)
/
犬田卯
(著)
良平
(
りょうへい
)
の
家
(
うち
)
では蚕に食わせる桑の
貯
(
たくわ
)
えが足りなかったから、父や母は
午頃
(
ひるごろ
)
になると、
蓑
(
みの
)
の
埃
(
ほこり
)
を払ったり、古い
麦藁帽
(
むぎわらぼう
)
を探し出したり、畑へ出る
仕度
(
したく
)
を急ぎ始めた。
百合
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
お
伽噺
(
とぎばなし
)
に
隠
(
かく
)
れ
蓑
(
みの
)
というものがありますが、天井裏の三郎は、云わばその隠れ蓑を着ているも同然なのです。
屋根裏の散歩者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
だから、そこにもし殺人動機があるものとすれば、ファウスト博士の隠れ
蓑
(
みの
)
——あの
五芒星
(
ペンタグラムマ
)
の円が判るよ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「
獲
(
と
)
れる」とさも何物をか取ったように云った。やがて
蓑
(
みの
)
を着たまま水の中に下りた。勢いの
凄
(
すさま
)
じい割には、さほど深くもない。立って腰まで
浸
(
つか
)
るくらいである。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
灸は柱に
頬
(
ほお
)
をつけて歌を
唄
(
うた
)
い出した。
蓑
(
みの
)
を着た旅人が二人家の前を通っていった。屋根の虫は丁度その濡れた旅人の蓑のような形をしているに相違ないと灸は考えた。
赤い着物
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
蓑
(
みの
)
を着た人夫がどっさり出ていて、そこいらに腰をおろしたさんだわらがいくつも散っている景色は物々しい眺めでした。汽車はそういうところは徐行いたしますしね。
獄中への手紙:08 一九四一年(昭和十六年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
路のほとりに軒の
傾
(
かた
)
むいた小さな百姓家があって、壁には
鋤
(
すき
)
や
犁
(
くわ
)
や古い
蓑
(
みの
)
などがかけてある。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
大きな
蓑
(
みの
)
を着た百姓が、何かの苗を山とつんだ田舟を曳いてゆくのが、うごきが遅いので、どうかするととまっているようで、ちょうど
案山子
(
かかし
)
のように眺められるのだった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
二人はその板敷の上へ
蓑
(
みの
)
を着て横になったが、昼間の疲れがあるのですぐ眠ってしまった。
雪女
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
それは
昨日
(
きのう
)
の夕方顔のまっかな
蓑
(
みの
)
を
着
(
き
)
た大きな男が来て「知って
置
(
お
)
くべき
日常
(
にちじょう
)
の
作法
(
さほう
)
。」
紫紺染について
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
夏の葉盛りには
鬱青
(
うっせい
)
の石壁にも
譬
(
たと
)
へられるほど、蔦はその肥大な葉を
鱗
(
うろこ
)
状に積み合せて門を埋めた。秋より初冬にかけては、金朱のいろの
錦
(
にしき
)
の
蓑
(
みの
)
をかけ連ねたやうに美しくなつた。
蔦の門
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
長押
(
なげし
)
に
槍
(
やり
)
、
塀
(
へい
)
に鉄砲、
笠
(
かさ
)
、
蓑
(
みの
)
など掛けてある。舞台の右にかたよって門がある。外はちょっとした広場があって通路に続いている。雪が深く積もって道のところだけ低くなっている。
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
現にこの爺さんは、先年代馬さがしの折にも、とうとうかくれ
蓑
(
みの
)
を被り通した。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
桑畑
(
くわはた
)
や女
蓑
(
みの
)
著
(
き
)
て
頬被
(
ほおかむ
)
り
七百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
蓑
(
みの
)
着
(
き
)
よ
冬の木立
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
はらはらとその壇の
許
(
もと
)
に、振袖、詰袖、揃って手をつく。階子の上より、まず水色の
衣
(
きぬ
)
の
褄
(
つま
)
、
裳
(
もすそ
)
を引く。すぐに
蓑
(
みの
)
を
被
(
かつ
)
ぎたる姿見ゆ。
天守物語
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
なにか
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
でつくった
蓑
(
みの
)
のようなものが、彼のからだに
着
(
き
)
せられた。その時から、忍剣がなにをきいても、
猿
(
さる
)
は
返辞
(
へんじ
)
をしなかった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
蓑
(
みの
)
だとか
雪沓
(
ゆきぐつ
)
だとか、
背中当
(
せなあて
)
とか背負袋とか、そういう民具に立派な手の技を示します。集めたら心をそそる陳列となるでありましょう。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
笠をかぶり、
蓑
(
みの
)
をつけているけれども、それは茂太郎に相違ありません。彼は物に追われたように走るけれども、別段、追いかけて来る人はない。
大菩薩峠:28 Oceanの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
藤尾は雨支度がないので、合羽も笠も大助のを借りた、大助は
蓑
(
みの
)
と
筍笠
(
たけのこがさ
)
で間に合わせた。宿を出てから提灯をつけた。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
病室の片側には綱を掛けて
陸中
(
りくちゅう
)
小坂
(
おさか
)
の木同より送り来し
雪沓
(
ゆきぐつ
)
十種ばかりそのほかかんじき
蓑
(
みの
)
帽子など掛け並べ
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
バンドリとは
藁
(
わら
)
で製した一種の
蓑
(
みの
)
のことで、雀の毛の色とむくむくした様子とが、あたかもバンドリを着ているように見えたからそういうと考えられている。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
車掌や渡し船の切符切りが、隠れ
蓑
(
みの
)
となる。いつも目の前にいるのに、まるで気がつかないのである。
探偵小説の「謎」
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
蓑
(
みの
)
をきた男に手綱をとられながら、一ぱい背中に湿った草を積んだ馬が、その道をとぼとぼと登って往った。その馬の傍には、かわいらしい仔馬が一匹ついていく。
晩夏
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
昨日
(
きのう
)
の雨を
蓑
(
みの
)
着て
剪
(
き
)
りし人の
情
(
なさ
)
けを
床
(
とこ
)
に
眺
(
なが
)
むる
莟
(
つぼみ
)
は一輪、巻葉は二つ。その葉を去る三寸ばかりの上に、天井から
白金
(
しろがね
)
の糸を長く引いて一匹の
蜘蛛
(
くも
)
が——すこぶる
雅
(
が
)
だ。
一夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
平助はそこにかけてある
蓑
(
みの
)
を引っかけて、小さい
掬
(
すく
)
い網を持って小屋を出ると、外には風まじりの雨が暗く降りしきっているので、いつもほどの水明かりも見えなかったが
青蛙堂鬼談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
さて
壇
(
だん
)
の
中央
(
まんなか
)
に杉のなま木をたてゝ
柱
(
はしら
)
とし、正月かざりたるものなにくれとなくこの
柱
(
はしら
)
にむすびつけ又は
積
(
つみ
)
あげて、
七五三
(
しめ
)
をもつて上よりむすびめぐらして
蓑
(
みの
)
のごとくになし
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
しばらく彼は書記官としての自分の勤めも忘れて、大坂
道頓堀
(
どうとんぼり
)
と淀の間を往復する川舟、その屋根をおおう画趣の深い
苫
(
とま
)
、雨にぬれながら
櫓
(
ろ
)
を押す船頭の
蓑
(
みの
)
と
笠
(
かさ
)
なぞに見とれていた。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
雨過山房の午後——鎌
研
(
と
)
ぐ姿、その
蓑
(
みの
)
からたれた雨の雫。縄なう機械の踏み動く音、庭石の苔の間を流れる雨の細流。空が徐徐に
霽
(
は
)
れるに随い、竹林の雫の中から蝉の声が聞えて来る。
夜の靴:――木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
“蓑”の解説
蓑(みの)は、稲藁などの主に植物を編んで作られた伝統的雨具の一種。雨により身体が濡れるのを防ぐために衣服の上からまとう外衣の一種である。日本における素材としては他にイラクサや麻といった草類の皮、シナノキやフジ、ヤマブドウの樹皮など。地域ごとに材料や形状は異なり、海岸部では海藻も使われた。
なお、下半身を覆うような短いものを腰蓑(こしみの)という。
(出典:Wikipedia)
蓑
漢検準1級
部首:⾋
13画
“蓑”を含む語句
蓑笠
蓑毛
蓑笠軒隠者
蓑掛
蓑虫
猿蓑
腰蓑
半蓑
古蓑
蓑浦
蓑亀
破蓑
続猿蓑
小蓑
藁蓑
蓑吉
蓑火
蓑虫庵
蓑笠漁隠
隠蓑
...