)” の例文
表紙を附けてじるのなどが楽しみでもあるらしく、「そんなことはよしたらよかろう」と、何度いってもやめなかったとの事です。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
と、越前守はふと手を伸ばして、目安の机から一じの書類を取って、膝の上でひらいた。与力の一名が、燭台をかれの横へ寄せた。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新薬のビラのじ込みや、カード式の診断簿等というものが、色々の文房具や、薬品などと一緒に一パイに取り散らしてあった。
復讐 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
などとも源氏は言っていて、書かない無地の草紙もまた何帳か新しくじさせた。表紙やひもなどを細かく精選したことは言うまでもない。
源氏物語:32 梅が枝 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ニッとほくそ笑んで、懐中ふところから巻き紙を切って、じた手製の帳面を取り出したかと思うと、ちびた筆の穂先を噛んでそこらを見まわした。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
次郎はしばらく窓わくにこしをおろしてそとをながめていたが、やがて陽を背にして畳にあぐらをかき、名簿をじはじめた。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
一通はじ紙でございます。ずっと前からお父様が、こっそり妾にお預けなされて、このようにおっしゃってでございます。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それも十三行のけいを五六十枚もじて、一行に一地名ずつを書いたのだから、少なくとも二千三千の小字を存する町村は稀でなかったのである。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その温みを慕って来たものか、あわせた縁板の隙間すきまからちろちろと這いあがって来るものがある。見れば小さな蜥蜴とかげである。背の色が美しい。
採菊翁は最後の四幕目を書く筈であったが、半途で病気のために筆を執ることが出来なくなったので、私が年末の急稿でそのあとをじ合せた。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
一度も掲載けいさいされなかったので、今はまったくそんな望みを絶って、ただ自作の英文は絹糸でじた洋紙の帳簿に綺麗に書留めておくに止めている。
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
かれはふたたび日記を書くべく罫紙けいしを五六十枚ほど手ずからじて、その第一ページに、前の三か条をれいれいしくかかげた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
したが、このこひ一卷ひとまき只一たゞひとらはぬことゝいふは、表紙おもてがみがまだかず、うつくしうぢてもい。うをはまだ沖中おきなかにぢゃ。
今日この原稿をじて終り、ふと毎月「新潮」の竹山道雄氏の手帖を読む例にならって、愛読の眼を凝らしてゆくと
蜜のあわれ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
この言葉と共にブロクルハースト氏は、私の手に表紙をぢ付けた薄いパンフレットをれた。そして呼鈴ベルを鳴らして、馬車を呼んで、歸つて行つた。
これだけの文句がかんぜよりでじた二枚の改良半紙へ、すこぶる丹念な毛筆の細字で、せせこましい字配りで、一点一画の消しもなく書かれているのである。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
母が階下へ降りてから、早速こわごわ封を切って見ますと、中には用箋が四五枚じた手紙が出て来ました。
三角形の恐怖 (新字新仮名) / 海野十三(著)
なめらかな石の上に折重ねて小さなつちでコンコンたたいてくれたりした、その白い新鮮な感じのする足袋のじ紙を引き切って、甲高な、不恰好ぶかっこうな足に宛行あてがって見た。
足袋 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それは、思った通り、原稿用紙をじたものであった。が、どうしたことか、表題も署名もなく、突然「奥様」という、呼びかけの言葉で始まっているのだった。
人間椅子 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ともかく革表紙、仏蘭西フランスじの立派なノートである。そのノートに、ペンでビッシリと書いてある。
仁王門 (新字新仮名) / 橘外男(著)
内儀の小遣帳といふのは、半紙五六枚を四つ折にぢたものですが、のたくらせた文字は右下りの下手へたな字で、死骸の床の下にあつた書置きの文字とそつくりです。
その本はわれわれが近頃よく見るような立派な装幀そうていの、金縁きんぶちの本みたいになりましたが、指を紙の間に通すと、これはしたり! それは金箔をじたようになって
今まではこの五彩ごさいまばゆいうちに身を置いて、少しは得意であったが、気が付いて見ると、これらは皆異国産の思想を青くじたり赤く綴じたりしたもののみである。
『東洋美術図譜』 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
瓦版はたいてい一枚摺りだが、ときに三枚じ五枚綴じのこともあった。綴じの多いときは小説ふうのこしらえ記事で、赤絵を使った、わじるしのような内容のものが多かった。
へちまの木 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
たとへば半紙で帳面をぢさせて見るに高等科の生徒でありながら殆ど満足に綴ぢ得る者はない。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
田舍ゐなかりしとき先生せんせいなりしゆゑ其和歌そのわか姉樣ねえさまにおにかけておどろかしたまへ、それこそかならず若樣わかさまかちるべしとへば、はや其歌そのうためとせがむに懷中ふところよりぶみいだ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これに反してわたくしは遺物中に、小形の短册二葉を絲でぢ合せたものゝあるのを見た。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
それだから仕事しごと予定よてい肥料ひりょうの入れようも見当がつかないのだ。ぼくはもう少しならったらうちの田をみんな一まいずつはかって帳面ちょうめんじておく。そして肥料だのすっかり考えてやる。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
しばらく西太后せいたいこうで持ち切っていたが、やがてそれが一転して日清にっしん戦争当時の追憶になると、木村少佐は何を思ったか急に立ち上って、室の隅に置いてあった神州日報のじこみを
首が落ちた話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
蝶子はチラシをじて家計簿かけいぼを作り、ほうれん草三銭、風呂銭ふろせん三銭、ちり紙四銭、などと毎日の入費を書き込んで世帯を切り詰め、柳吉の毎日の小遣い以外に無駄な費用はつつしんで
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
観世捻をよる事を知らざれば紙をずることができない。紙を綴ることを知らざれば書抜を書くも用をなさぬわけである。事をなすに当って設備の道を講ずるはごうも怪しむに当らない。
十日の菊 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
松の根方に腰を下ろして、呼吸いきをしずめているM君は、思い出したように古トンビの懐中をガサガサさぐって、小型のチンマリとじこんだ小説原稿をひっぱりだして、鷲尾にわたした。
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
復一はかっとなって、端のじがわずか残っている金網をいかりの足でり放った。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
じたりえぐったりぎ合わせたり編んだりした木工品がうずたかく積みあげてある。
机の上には小形の原稿用紙をじたのがのっていた。周平は眼を見張った。
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
はすの糸、一筋を、およそ枚数千頁に薄く織拡げて、一万枚が一折ひとおり、一百二十折を合せて一冊にじましたものでありまして、この国の微妙なる光にひらきますると、森羅万象しんらばんしょう、人類をはじめ、動植物
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ぶみの七、八枚はすべて鬼六が配下にさぐらせてあつめた千早、金剛の貯水池の図や埋樋うめどよ(隠し水の水路)の資料であった。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのしたためてある生紙きがみ二つ折り横じの帳面からしていかにもその人らしく、紙の色のすこし黄ばんだ中に、どこかかぞの青みを見つけるさえ彼にはうれしかった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
記録というのは、真赤なかわ表紙であわせた、二冊の部厚ぶあつな手紙の束であった。全体が同じ筆蹟ひっせき、同じ署名で、名宛人なあてにんも初めから終りまで例外なく同一人物であった。
悪霊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「こんなきたないところで……」と、お里は恥かしそうに言い訳をしながら、じくっていた小切れを片付けて薄い座蒲団を出した。林之助は長火鉢の前に坐らせられた。
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
村で酒を造るには村桶があり、また贈答用の角樽つのだるもできていたようだが、いずれもひのきの板を曲げてじた曲げ物だから、そう大きな入れ物にならなかったかと思われる。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
思わず手に持っていた書物をパタリと地上じべたに取り落すと、間もなくさっと吹いて来た秋風に、がバラバラと千切れて、そのまま何千何万とも知れぬ銀杏の葉になって
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
ソレモ一枚ヤ二枚デハナイ。恐ラク一冊ニジタ厚味ノアルモノガ慌テテ荒々シク座布団ノ下カ何カヘ押シ隠サレル音デアッタ。僕ノ家庭デ雁皮ヲ使ウヿハメッタニナイ。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
半紙を四枚じて毛筆で書いてあります。年月はありませんが、三十三年の秋の頃でしょう。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
手本帳にじさせるつもりの字や絵をいろいろに書いて見せたりしていた。皆美しかった。
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
他の一品の秘密文書のほうは——紙につづられているところから、じ紙といってもよいだろう——久しい前から武左衛門が、深く蔵して世に現わさず、娘の君江に預けておいた。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
まだ何ごとをも知らぬ小娘、長旅の疲労に伴って起こった男のはげしい慾望、彩色を施した横じの絵、——二十分の後、旅客の大跨おおまたで走ってげていくのをお作は泣きながら追った。
ネギ一束 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「まずうちへ帰ると婆さんがよこじの帳面を持って僕の前へ出てくる。今日こんにちは御味噌を三銭、大根を二本、鶉豆うずらまめを一銭五厘買いましたと精密なる報告をするんだね。厄介きわまるのさ」
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なに度胸どきよう半紙はんし四五まい二つをりにして、すみつぎうすふみらぬかまぎらはし、わざぢて表紙へうしにもき、此趣向このしゆかううまくゆけかしとくるをちけるが、ひとしらぬこそ是非ぜひなけれ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼は右手に藁半紙をじたパンフレットのようなものを大事そうに持っていた。
人造人間事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)