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納戸
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なんど
ふりがな文庫
“
納戸
(
なんど
)” の例文
人間のこしらえてやった寝床ではどうしても安心ができないと見えて、
母猫
(
ははねこ
)
はいつのまにか
納戸
(
なんど
)
の高い
棚
(
たな
)
の奥に四匹をくわえ込んだ。
子猫
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
申分の無い普請で、部屋の外、
納戸
(
なんど
)
になつて居る板敷の長四疊には、
面
(
めん
)
や
籠手
(
こて
)
、
塗胴
(
ぬりどう
)
や、
竹刀
(
しなひ
)
などが、物々しくも掛けてあるのです。
銭形平次捕物控:295 万両息子
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
あとのほうはひとり言のようにいって、
納戸
(
なんど
)
にふとんをしきだした母親を見ると、さすがに松江も泣きやみあわてて家をとびだした。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
さわは
納戸
(
なんど
)
や
箪笥
(
たんす
)
をあけ、さし当り必要だと思われる着替えや帯を二三と、金になりそうな道具を集めて包にし、財布の中をしらべた。
榎物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
絵をならい始めていた頃の、まずいデッサンの幾枚かが、茶色にやけていて、
納戸
(
なんど
)
の奥から出て来るとまるで別な世界だった私を見る。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
▼ もっと見る
折くべ居る時しも此方の
納戸
(
なんど
)
共覺しき所にて何者やらん
夥多
(
おびたゞ
)
しく
身悶
(
みもだ
)
えして苦しむ音の聞ゆるにぞ友次郎は
膽
(
きも
)
を
潰
(
つぶ
)
し何事成んと耳を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
或は村の農家の
納戸
(
なんど
)
の奥で鉛筆を永い間かかって運びながら丹念に書く通信、小説は、たとえ現在では片々として未熟なものであろうと
一九三二年の春
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「困った熱病じゃ。とにかく、火鉢などは相ならん」と後ろへ、幾つもの箱を運んで来て、
立
(
た
)
ち
淀
(
よど
)
んでいる
納戸
(
なんど
)
の小侍たちを
睨
(
にら
)
みつけて
べんがら炬燵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして友禅の模様の上を
這
(
は
)
いながら袂の中に忍び込んだらしく、お
納戸
(
なんど
)
のたけしぼの地を透かして
仄
(
ほの
)
かに光っているのが見える。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
又、お父様は、そのあとで、
袴
(
はかま
)
をお召しになって、
納戸
(
なんど
)
のお仏壇の前で見事に切腹しておいでになったそうですが詳しい事は存じません。
押絵の奇蹟
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
というのは、お粂は見るまじきものをその
納戸
(
なんど
)
の窓の下に見たというふうで、また急いで西側の廊下の方へ行って隠れたからで。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
すると女は、男をその家の
納戸
(
なんど
)
のような部屋へ案内した。外出用の
衣裳
(
いしょう
)
が、いく通りも
揃
(
そろ
)
えてある。どれでも、気に入ったのを着ろという。
女強盗
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
長く
患
(
わずら
)
っていた。
納戸
(
なんど
)
を病室にして、母が始終看病してやった。亡くなる前の晩、忠八は僕に会いたいと言い出した。僕が枕許に坐ったら
村一番早慶戦
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
もう
明日
(
あした
)
あたりは父が歸るであらうといふ日、母はまた修驗者と二人で
納戸
(
なんど
)
へ入つたまゝ戸を閉め切つて、夕方になつても出て來なかつた。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
どうやら
納戸
(
なんど
)
らしい。宗三自身は見る影もない腰弁だけれど、家丈けは、
親父
(
おやじ
)
が
御家人
(
ごけにん
)
だったので、古いが手広な納戸なんていうものもある。
接吻
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
どこで、どんな面をして、今ごろこんなことを言えたものかと、振返って見直すと、
納戸
(
なんど
)
のしきりからたしかに半身を現わしたお雪ちゃん——
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
お
納戸
(
なんど
)
色の地にぼんやり菊の花を浮出さした着物が、私の眼を遮った。見上げると、実際の彼女が少し小首を傾げて、眩しそうに微笑んでいた。
未来の天才
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
積薪
(
せきしん
)
私
(
ひそか
)
に
怪
(
あやし
)
む、はてな、
此家
(
このいへ
)
、
納戸
(
なんど
)
には
宵
(
よひ
)
から
燈
(
あかり
)
も
點
(
つ
)
けず、わけて
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
、
別々
(
べつ/\
)
の
室
(
へや
)
に
寢
(
ね
)
た
筈
(
はず
)
を、
何事
(
なにごと
)
ぞと
耳
(
みゝ
)
を
澄
(
す
)
ます。
唐模様
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
しかしいまだに僕の家には薄暗い
納戸
(
なんど
)
の
隅
(
すみ
)
の
棚
(
たな
)
にお狸様の宮を設け、夜は必ずその宮の前に小さい
蝋燭
(
ろうそく
)
をともしている。
追憶
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
昼日中はまっくらなお
納戸
(
なんど
)
へ閉じこもったきりで、お出歩きは夜ばかり、明るいうちはひと足も外へお出ましにならず
右門捕物帖:30 闇男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
夫婦はそこから一段高い次の部屋に寝ていたが、お島は大きくなってからは
大抵
(
たいてい
)
勝手に近い六畳の
納戸
(
なんど
)
に
寝
(
ねか
)
されていた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
春吉は、
納戸
(
なんど
)
の座敷で、二人を待っていた。無言で、茶と、菓子と、煙草とを供してから、突然、怒ったような口調で
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
降
(
ふ
)
ってわいた大変ごとというべきは、むすめのお艶がある夜殿様の源十郎にさらわれて来て奥の
納戸
(
なんど
)
へとじこめられた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「あすこの土間で、お
納戸
(
なんど
)
色の羽織をきて、高島田に
結
(
い
)
つてませう。いまちよいと中腰になつてます、あれですよ、」
二黒の巳
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
女房はそれと見るとすぐ
納戸
(
なんど
)
から、どてらと枕を持ってきて、
無造作
(
むぞうさ
)
なとりなしにいかにも妻らしいところが見えた。
落穂
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
狭い家ではあるが奥に四畳半の
納戸
(
なんど
)
がある。お時も綾衣に因果をふくめて、そのひと間の内に封じ込めてしまった。
箕輪心中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
と云つて、
一
(
ひと
)
汽車の客が皆左の窓際へ
集
(
よ
)
つて眺めるのであつた。自分は
秋草
(
あきぐさ
)
を染めたお
納戸
(
なんど
)
の
絽
(
ろ
)
の着物に、同じ模様の
薄青磁色
(
うすせいじいろ
)
の
絽
(
ろ
)
の帯を結んで居た。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
夕日はしだいに低く、水の色はだんだん
納戸
(
なんど
)
色になり、空気は身にしみわたるようにこい深い影を帯びてきた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
あかずの間やかくれ
納戸
(
なんど
)
や飛び降り障子や、ふしぎな造りになっている。何故そんな造り方をしたのか。密航者のためのものだという以外には考えられない。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
納戸
(
なんど
)
部屋の隅に伊丹樽を隠しておいて、そのなかへ醪を造り、その上へ
茣蓙
(
ござ
)
の蓋をして置く。それを、一日に何回となく
杓子
(
しゃくし
)
で酌み出しては鍋にいれてくるのだ。
濁酒を恋う
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
暗い
納戸
(
なんど
)
にでもつけたらしい小さな小窓が一つ切り開けてあるだけというような結果になってしまった。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
とお嬢様は
口早
(
くちばや
)
に云つた。山崎は目で
点頭
(
うなづ
)
いて駆けて行つた。平井は其跡を追つて行かうとした拍子に、手に
持
(
もつ
)
たお
納戸
(
なんど
)
のとクリイム色のと二本の傘を下に
落
(
おと
)
した。
御門主
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
こう言っている時に、
淡
(
うす
)
お
納戸
(
なんど
)
色の男の帯が尚侍の着物にまといついてきているのを大臣は見つけた。
源氏物語:10 榊
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
糸織の
衿懸
(
えりか
)
けたる
小袖
(
こそで
)
に
納戸
(
なんど
)
小紋の縮緬の羽織着て、
七糸
(
しつちん
)
と
黒繻子
(
くろじゆす
)
との昼夜帯して、
華美
(
はで
)
なるシオウルを携へ、髪など
撫付
(
なでつ
)
けしと
覚
(
おぼし
)
く、
面
(
おもて
)
も見違ふやうに軽く
粧
(
よそほ
)
ひて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
お
納戸
(
なんど
)
、利久、御幸鼠、鶯茶、それにはなほ
青柳
(
あをやぎ
)
の色も雑つて、或は虫ばみ、或はねぢれたのもあり、斑らに濃い地面の色の上に垂れ流れるのは自らなる絵模様である。
本の装釘
(新字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
お
納戸
(
なんど
)
の横手の電話のところまで参りますと、その時家の中の電燈が一時に消えてしまいました。
偽悪病患者
(新字新仮名)
/
大下宇陀児
(著)
将監癇癖つのって、
納戸
(
なんど
)
よりこちらへちかづきくるものは、だれかれの容赦なくブッタ斬ると、召使一同にふれておけ! 竜胆寺どの若党が、
供侍
(
ともざむらい
)
部屋にひかえておるはず。
亡霊怪猫屋敷
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
二人は黙つて奥へ通るので、五郎兵衛は先に立つて、
納戸
(
なんど
)
の小部屋に案内した。五郎兵衛が、「どうなさる
思召
(
おぼしめし
)
か」と問ふと、平八郎は
只
(
たゞ
)
「当分厄介になる」とだけ云つた。
大塩平八郎
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
納戸
(
なんど
)
から取り出して貰って、明るい所で
眺
(
なが
)
めると、たしかに
見覚
(
みおぼえ
)
のある二枚折であった。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
家内を見れば
稿筵
(
わらむしろ
)
のちぎれたるをしきならべ(
稲
(
いね
)
麦
(
むぎ
)
のできぬ所ゆゑわらにとぼしく、いづれのいへもふるきむしろ也)
納戸
(
なんど
)
も
戸棚
(
とだな
)
もなし、たゞ
菅縄
(
すげなは
)
にてつくりたる
棚
(
たな
)
あるのみ也。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
家のものは今
蚊帳
(
かや
)
の中に入った所らしかった。
納戸
(
なんど
)
の入口に
洋灯
(
ランプ
)
が細くしてあった。
恭三の父
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
十六
日
(
にち
)
の
朝
(
あさ
)
ぼらけ
昨日
(
きのふ
)
の
掃除
(
そうぢ
)
のあと
清
(
きよ
)
き、
納戸
(
なんど
)
めきたる六
疊
(
でう
)
の
間
(
ま
)
に、
置炬燵
(
おきごたつ
)
して
旦那
(
だんな
)
さま
奧
(
おく
)
さま
差向
(
さしむか
)
ひ、
今朝
(
けさ
)
の
新聞
(
しんぶん
)
おし
開
(
ひら
)
きつゝ、
政界
(
せいくわい
)
の
事
(
こと
)
、
文界
(
ぶんくわい
)
の
事
(
こと
)
、
語
(
かた
)
るに
答
(
こた
)
へもつきなからず
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
と、庄屋は、炉へ投出していた脚を、
周章
(
あわて
)
て引込めると、
襟
(
えり
)
を合せて、坐り直した。下男は、牛小屋へ引込むし、子供は、母親に引張られて、
吃驚
(
びっくり
)
しながら、
納戸
(
なんど
)
へ逃込んでしまった。
大岡越前の独立
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
縁側の突き当たりに
階子段
(
はしごだん
)
があったり、日当たりのいい
中
(
ちゅう
)
二階のような
部屋
(
へや
)
があったり、
納戸
(
なんど
)
と思われる暗い部屋に屋根を打ち抜いてガラスをはめて光線が引いてあったりするような
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
わたしが、彼女の手なみにさも感服したような顔をすると、彼女はまた赤くなって、何やら母親の耳へささやいた。母親もぱっと顔を輝かせて、わたしを
納戸
(
なんど
)
へ案内しようと言いだした。
嫁入り支度
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「父ちやん」と筒袖のあぶ/\の寢卷を着た子供が
納戸
(
なんど
)
の方から走つて現れた。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
納戸
(
なんど
)
の隅に折から一挺の大鎌ありなんぢが意志をまぐるなといふが如くに
樹木とその葉:03 島三題
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
ようやく火を貰ってその棺桶を
納戸
(
なんど
)
に
匿
(
かく
)
して置いたのを、正月になってからそっと開けて見ると、中には
黄金
(
こがね
)
・
白金
(
しろがね
)
が一ぱいという類の、人が夢見得る限りの美しい空想が是に続いたのである。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
朱
(
しゅ
)
とお
納戸
(
なんど
)
の、二こくの
鼻緒
(
はなお
)
の
草履
(
ぞうり
)
を、
後
(
うしろ
)
の
仙蔵
(
せんぞう
)
にそろえさせて、
扇
(
おうぎ
)
で
朝日
(
あさひ
)
を
避
(
さ
)
けながら、
静
(
しず
)
かに
駕籠
(
かご
)
を
立
(
た
)
ち
出
(
で
)
たおせんは、どこぞ
大店
(
おおだな
)
の
一人娘
(
ひとりむすめ
)
でもあるかのように、
如何
(
いか
)
にも
品
(
ひん
)
よく
落着
(
おちつ
)
いていた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
阪井さんは二階の
納戸
(
なんど
)
か便所だろ。心配しないでいゝよ。
疵だらけのお秋
(新字旧仮名)
/
三好十郎
(著)
“納戸”の意味
《名詞》
物を入れておく屋内の部屋。
(context、dated)(夫婦の)寝室または産室。
(出典:Wiktionary)
“納戸”の解説
納戸(なんど)とは、住宅において普段使用しない衣類や家具・調度品などを収納するための空間。建築基準法で「居室」の基準に適合しないものを言う。
(出典:Wikipedia)
納
常用漢字
小6
部首:⽷
10画
戸
常用漢字
小2
部首:⼾
4画
“納戸”で始まる語句
納戸色
納戸役
納戸頭
納戸方
納戸縮緬
納戸襖
納戸船
納戸献上
納戸口
納戸部屋