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筵
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むしろ
ふりがな文庫
“
筵
(
むしろ
)” の例文
日向
(
ひなた
)
の
筵
(
むしろ
)
の上で、夫婦約束をしたことが忘れられず、二十三になるまで、降るほどあつた縁談を斷わり續けて來た——と
斯
(
か
)
う申します
銭形平次捕物控:331 花嫁の幻想
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
と正直に答えますと、暫く私どもの顔を見上げておりました非人は、
先刻
(
さいぜん
)
、呉れてやった味噌チリの
面桶
(
めんつう
)
を
筵
(
むしろ
)
の蔭から取出しました。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
朝
(
あさ
)
つぱらに
成
(
な
)
つたらはあ
引
(
ひ
)
つ
懸
(
か
)
けたに
相違
(
さうゐ
)
ねえつちんでがすから、なにわしも
筵
(
むしろ
)
打
(
ぶ
)
つ
掛
(
か
)
けた
處
(
ところ
)
見
(
み
)
あんした、
筵
(
むしろ
)
で
分
(
わか
)
るから
駄目
(
だめ
)
でがす
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
だが床には六フィートに三フィートの、きまった長さの
筵
(
むしろ
)
が、
恰
(
あたか
)
も子供の積木が箱にピッタリ入っているような具合に敷きつめてある。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
太吉はさっきから
筵
(
むしろ
)
をかぶって隅の方にすくんでいた。重兵衛も言い知れない恐怖に
囚
(
とら
)
われて、再びこの旅人を疑うようになって来た。
木曽の旅人
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
真雄は、
鞴
(
ふいご
)
の前へ馳け寄って、どっかと、
筵
(
むしろ
)
の上に坐ると、
金火箸
(
かなひばし
)
を
把
(
と
)
って、真っ赤な溶鉄となった玉鋼を、
火土
(
ほど
)
の中から引き出した。
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その年取った方は、
前庭
(
まえにわ
)
の乾いた土に
筵
(
むしろ
)
を敷いて、
背
(
うしろ
)
むきに
機台
(
はただい
)
に腰かけたが、トンと足をあげると、ゆるくキリキリと鳴ったのである。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
傷の縫い合わせをする、三角巾を巻きなおす、
沃丁
(
ヨーチン
)
を塗る、水をのませる、布団や
筵
(
むしろ
)
を見つけてきてかぶせる、副木を当てる。
長崎の鐘
(新字新仮名)
/
永井隆
(著)
まず芝生に
筵
(
むしろ
)
を敷き、あちこちに、枯れ枝薪などを積み集めて焚き火の用意をし、
菰被
(
こもかぶ
)
りをならべて、鏡を抜き
杓柄
(
ひしゃく
)
を添える。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「サァ
明朝
(
あす
)
は早いぞ、もう寝ようか」と、狭い
天幕
(
てんと
)
内へゾロゾロと入り込んだが、下は薄い
筵
(
むしろ
)
一枚で水がジメジメ
透
(
とう
)
して来る。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
東妙和尚は、広い庭の真中に植えられた大きな
枝垂桜
(
しだれざくら
)
の下の日当りのよいところに
筵
(
むしろ
)
を敷いてその上で、石の地蔵をコツコツと
刻
(
きざ
)
みはじめる。
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
あれは、なあ、縄を作る機械と、
筵
(
むしろ
)
を作る機械なんだが、なかなか操作がむづかしくて、どうも僕の手には負へないんだ。
津軽
(新字旧仮名)
/
太宰治
(著)
横手の草地の上には顔色のよくない若衆がいて、前日までの長雨に大湿りの来た
筵
(
むしろ
)
を何十枚となく乾し並べていたので、妾はそれに声をかけた。
三人の双生児
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
今日も陶器師は
竈
(
かま
)
の前の
筵
(
むしろ
)
の上に坐っていた。久しぶりでお山も晴れ、熱い夏の陽が広い裾野を黄金の色に輝かせている。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
夏の夜はその入口に
筵
(
むしろ
)
を
吊
(
つ
)
って戸代りにしたが、冬はさすがに余りに寒いので
他家
(
よそ
)
から戸板を二枚
貰
(
もら
)
って来て入口に押しつけて
縄
(
なわ
)
で
縛
(
しば
)
りつけた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
ある日、彼はその女中のために
蒲団
(
ふとん
)
を持って収容所を訪れる。板の間の
筵
(
むしろ
)
の上にごろごろしている重傷者のなかに黒く腫れ上った少女の顔がある。
火の唇
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
禰宜様宮田は、広場へ
筵
(
むしろ
)
を拡げて、
桵
(
たら
)
の根を乾かしながら、大変仕合わせな、へりくだった心持で考えていたのである。
禰宜様宮田
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
雪庇いの
筵
(
むしろ
)
やら
菰
(
こも
)
やらが汚ならしく家のまわりにぶら下って、刈りこまない粗葺きの茅屋根は朽って凹凸になっている。
贋物
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
窓の中には尼が一人、破れた
筵
(
むしろ
)
をまとひながら、病人らしい女を介抱してゐた。女は夕ぐれの薄明りにも、無気味な程
痩
(
や
)
せ
枯
(
が
)
れてゐるらしかつた。
六の宮の姫君
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
少女
(
おとめ
)
は紫色に
鉄漿
(
かね
)
を染めた栗の実や赤く色づいた柿の実を
筵
(
むしろ
)
の上に乱して、まりと一しょに何心地なく遊んでいます。
嵐の夜
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
貰うものの種類によって、——魚だとか、タロ芋だとか、亀だとか、
筵
(
むしろ
)
だとか、それに依って「貰う」という言葉が幾通りにも区別されているのだ。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
頃
(
ころ
)
は夏なりしゆゑ
客舎
(
やどりしいへ
)
の
庭
(
には
)
の
木
(
こ
)
かげに
筵
(
むしろ
)
をしきて
納涼
(
すゞみ
)
居しに、
主人
(
あるじ
)
は酒を
好
(
この
)
む人にて
酒肴
(
しゆかう
)
をこゝに開き、
余
(
よ
)
は酒をば
嗜
(
すか
)
ざるゆゑ茶を
喫
(
のみ
)
て居たりしに
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
其中、此針の
筵
(
むしろ
)
の上で、
兵部少輔
(
ひょうぶしょう
)
から、
大輔
(
たいふ
)
に昇進した。そのことすら、益々脅迫感を強める方にばかりはたらいた。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
とにかくに穀物の穂の部分を広い
筵
(
むしろ
)
の上などに集めて、棒で打ち
叩
(
たた
)
いて脱穀させる方法は、かつては稲にも行われていた土地が有るらしいのである。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
ひた土に
筵
(
むしろ
)
しきて、つねに机すゑおくちひさき
伏屋
(
ふせや
)
のうちに、竹
生
(
お
)
いでて長うのびたりけるをそのままにしおきて
曙覧の歌
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
右は僕の村の農家が冬の副業に
筵
(
むしろ
)
を織ったり縄を
綯
(
な
)
ったりして働く労賃が、幾らになるかを調べて見たのである。
雪
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
壁は自分で塗り、床には自分で作った
筵
(
むしろ
)
を敷きました。この国には麻が多いので、それを打って、蒲団のおゝいを作り、その中に鳥の羽毛を詰めました。
ガリバー旅行記
(新字新仮名)
/
ジョナサン・スウィフト
(著)
鹿喰では金魚池の
傍
(
そば
)
まで庭口から行つて見るだけで、龍源の家ででもお雛様の時の
外
(
ほか
)
は大抵遊ぶのは裏庭の蔵の蔭で、
筵
(
むしろ
)
を敷いて小樽を幾つも並べたり
私の生ひ立ち
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
ちょうどその下が鉄道線路になって、十数間先に第二のトンネルがあった。と見ると、トンネルの入口に
筵
(
むしろ
)
が敷いてあって、数人の男がその傍に立っている。
暴風雨に終わった一日
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
とが/\しきに胸を痛めて答うるお辰は薄着の寒さに
慄
(
ふる
)
う
歟
(
か
)
唇
(
くちびる
)
、それに
用捨
(
ようしゃ
)
もあらき風、邪見に吹くを何防ぐべき骨
露
(
あらわ
)
れし壁
一重
(
ひとえ
)
、たるみの出来たる
筵
(
むしろ
)
屏風
(
びょうぶ
)
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
そうして、
愈
(
いよい
)
よ二人きりになりました時も、私にとっては、あの柔かい
褥
(
しとね
)
がいわば針の
筵
(
むしろ
)
で御座いました。
秘密の相似
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
「梅子さん、
貴嬢
(
あなた
)
が
此辺
(
このあたり
)
に
在
(
い
)
らつしやらうとは思ひ寄らぬことでした、」と篠田は
池畔
(
ちはん
)
の石に腰打ちおろし「どうです、天は
碧
(
みどり
)
の幕を張り廻はし、地は
紅
(
くれなゐ
)
の
筵
(
むしろ
)
を ...
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
丈余の雪上に舞台を設え、観客も亦雪原に
筵
(
むしろ
)
をしき、持参の重箱をひらいて酒をのみながら見物する。
閑山
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
余震が恐いといって皆庭に
筵
(
むしろ
)
を敷いて夜を明したが、私だけは家の中にいて揺れるのを楽しんでいた。
牧野富太郎自叙伝:01 第一部 牧野富太郎自叙伝
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
それで竹の
筵
(
むしろ
)
のようなものの上に梅を干すと、その梅についている紫蘇の汁が庭に垂れるというのである。地上を赤く染めている、紫蘇の汁も想像されるのである。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
そうすると直ぐ悲しくなって眼には涙を催してまいりますが、坐らない訳にはまいりませんから、針の
筵
(
むしろ
)
にいる気で楼主の前に坐り下を向いたまゝで顔を上げない。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
壻
(
むこ
)
は卑しき農夫なりき。
婦
(
よめ
)
は貧しき家の子ながら、美しき
少女
(
をとめ
)
なりき。侯爵の殿は婚禮の
筵
(
むしろ
)
にて新婦が踊の相手となり、宵の間にしばし花園に出でよと誘ひ給へり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
で、私はまた上り口へ行って、そこに畳み寄せてあった薄い
筵
(
むしろ
)
のような
襤褸
(
ぼろ
)
布団を持ってきて、それでも
敷
(
しき
)
と
被
(
かけ
)
と二枚延べて、そして帯も解かずにそのまま横になった。
世間師
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
「何によ。——見れ、この
籾
(
もみ
)
。」——母は
筵
(
むしろ
)
の上にたまった籾を掌でザラザラやって見せた。——
不在地主
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
下男は私たちを導いて
筵
(
むしろ
)
を敷いた廊下を通ってゆき、ついに大きな書斎へと案内した。書棚がぎっしりと列んでいて、その一つ一つの書棚の上には胸像が置いてあった。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
「
他人様
(
ひとさま
)
にお見せすべきものではありませんが、
貴方
(
あなた
)
がたには特別お出し致しましょう」。そういって主人が奥の方へ入った。
暫
(
しばら
)
くして携えて来たのは、新しい
筵
(
むしろ
)
である。
陸中雑記
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
貴顕富豪
宴游
(
えんゆう
)
の
筵
(
むしろ
)
を開くそのためには。この東京に二とは下らぬ。普請の好み料理の手ぎわは一きわなるに。今日は祝いの
席
(
むしろ
)
とて。四時過ぎころより入り来る馬車人力車は。
藪の鶯
(新字新仮名)
/
三宅花圃
(著)
やがて母は箒で籾を掃き寄せ、
筵
(
むしろ
)
を揚げて取り集めなどする。女達が
是方
(
こっち
)
を向いた顔もハッキリとは分らないほどで、冠っている手拭の色と顔とが同じほどの暗さに見えた。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
特
(
こと
)
に
舅姑
(
きゅうこ
)
の福田に対する挙動の、
如何
(
いか
)
に
冷
(
ひや
)
やかにかつ
無残
(
むざん
)
なるかを見聞くにつけて、自ら浅ましくも牛馬同様の取り扱いを受くるを
覚
(
さと
)
りては、針の
筵
(
むしろ
)
のそれよりも心苦しく
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
狡
(
こす
)
いものには
賺
(
だま
)
され、家禄放還金の公債も
捲
(
ま
)
きあげられ、家財を売り
食
(
ぐい
)
したり、娘を売ったり、
鎗
(
やり
)
一筋の主が白昼大道に
筵
(
むしろ
)
を敷いて、その鎗や刀を売ってその日の
糧
(
かて
)
にかえた。
旧聞日本橋:09 木魚の配偶
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
私はそれから足に怪我をしている客を負ぶって伴れて来たが、後の激震が気がかりであるから、地震の静まるまでそこにいることに定めて、家へ入って往って
筵
(
むしろ
)
を持って来た。
死体の匂い
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
お堂を降りた処には
筵
(
むしろ
)
を敷いて、白髪の老婆のどこやら品のあるのが、短い琴を弾いて、低い声で何か歌っていました。小さな子が傍にいて、人の投げてくれる銭を拾います。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
それがすむと形のごとき焼香があって、やがて棺は裏の墓地へと運ばれる。墓地への路には新しい
筵
(
むしろ
)
が敷きつめられて、そこを
白無垢
(
しろむく
)
や羽織袴が雨にぬれて
往
(
い
)
ったり来たりする。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
室は板敷の上に
筵
(
むしろ
)
が敷いてある。正面の舞台には毒々しい
更紗
(
さらさ
)
模様
(
もよう
)
の幕が下りている。
土淵村にての日記
(新字新仮名)
/
水野葉舟
(著)
彼は漸く浮き上った心を静に愛しながら、
筵
(
むしろ
)
の上に積っている銅貨の山を親しげに覗くのだ。そのべたべたと押し重なった鈍重な銅色の体積から奇怪な塔のような気品を彼は感じた。
街の底
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
“筵(
莚
)”の解説
莚(むしろ、筵・席・蓆)とは、藁(わら)やイグサなどで編んだ簡素な敷物。
(出典:Wikipedia)
筵
漢検1級
部首:⽵
13画
“筵”を含む語句
花筵
講筵
法筵
古筵
薦筵
新筵
筵圍
筵掛
荒筵
筵張
藁筵
筵席
破筵
婚筵
賀筵
祝筵
離筵
一筵
筵会
藺筵
...