つく)” の例文
浜村蔵六が植桜之碑には堤上桜樹の生命は大抵人間と同じであるが故に絶えずこれが補植に力をつくさなければならぬと言われている。
向嶋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
しかし純忠の志を地下につくし、純誠の情涙を塵芥裡に埋めて、軽棄されたる国粋の芸道に精進し、無用の努力として世人に忘却されつつ
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
私は我子が独立し得るまでの教育にはあくまでも力をつくす覚悟でいる代りに、我子からその報償を得ようとは毛頭考えていない。
姑と嫁について (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
彼媼は又かゝる遊を喜ぶべき人とも見えぬに、男寢衣を身に着けて供せしを思へば、もはら姫を悦ばせんがために心をつくせるものなるべし。
前章に僕は外柔内剛がいじゅうないごうにつき少しく述べたが、内剛については所説のいまだつくさぬところがあったから、いま章をあらためて所感を述べたい。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
おほきな藏々くら/″\建物たてものむなしくほどさい傭人やとひにん桃畑もゝばたけに一にち愉快ゆくわいつくすやうになれば病氣びやうきもけそりとわすれるのがれいであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
兄が大勢の弟子を取立てゝ、まさかの時には御國のためにつくさうとしてゐるのを、おまへは豫て知つてゐる筈ではないか。
正雪の二代目 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
ねがわくは駑鈍どどんつくし、姦凶を攘除じょうじょし、漢室を復興して、旧都に還しまつるべし。これ臣が先帝に奉じて、しかして、陛下に忠なる所以ゆえんの職分なり。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
個人が国家に対してつくすべきの義務あるがごとく、国民といえる高等の団体もまた世界に対して負うべきの任務あり。
近時政論考 (新字新仮名) / 陸羯南(著)
○英国王、新ニ官史ヲ命ジテ此国ニ送リ、国内ニ群集シテ我州民ヲ煩ハシメ、我州民ノ膏血ヲつくサシメタリ。
たとい一日にても家の運命を長くしてなお万一を僥倖ぎょうこうし、いよいよ策つくるに至りて城を枕に討死うちじにするのみ。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
上述の嬌女神海中より出現の霊画は実にアがこのパンカステをモデルとして全力をつくし仕上げた物という。
これを表沙汰おもてざたにせば債務者は論無う刑法の罪人たらざるべからず、ここにおいたれか恐慌し、狼狽ろうばいし、悩乱し、号泣し、死力をつくして七所借ななとこがり調達ちようだつを計らざらん。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ただ百姓の力をつからし百姓の財をつくし、全国人民の肝脳を搾りてもって成就したるものなるを知るべし。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
是れ早稻田文學の沒却理想なりき。今や逍遙子はその欲無限の我を以て、絶對を研究する天職をつくさむといひ、その欲有限の我を以て相對に對する料理をなすといふ。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
極く贔屓目ひいきめに見ても、三代相恩の旗本八万騎のだらしのないのに反して、三多摩の土豪出身でありながら、幕府の為に死力をつくしたのは偉い、と云ふ評がせい/″\である。
然れども既に隈公の知をこうむり、また諸君の許す所となる余は、唯我が強勉と熱心とを以て、力をこの校につくし、その及ばん限りは隈公の知にむくい、諸君ののぞみこたうべし(拍手)。
祝東京専門学校之開校 (新字新仮名) / 小野梓(著)
……仁義を弁え忠孝をつくす。子孫永久繁昌と来たな。……それから此方は七九の間取り。……うん、そうか、あの下に、金銀が蓄えてあると見える。金気が欝々と立っている。
鵞湖仙人 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
洛陽伽藍記らくやうがらんきふ。帝業ていげふくるや、四海しかいこゝに靜謐せいひつにして、王侯わうこう公主こうしゆ外戚ぐわいせきとみすで山河さんがつくしてたがひ華奢くわしや驕榮けうえいあらそひ、ゑんをさたくつくる。豐室ほうしつ洞門どうもん連房れんばう飛閣ひかく
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
幾度いくたびと無くおそるべき危険の境を冒して、無産無官又無家むか何等なんらたのむべきをもたぬ孤独の身を振い、ついに天下を一統し、四海に君臨し、心を尽して世を治め、おもつくして民をすく
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
(七) 子夏しか曰く、さかしきをとうと(尊)び、色をあなど(軽易)り、父母につかえてく其の力をつくし、君につかえて能く其の身をささげ、朋友と交わりものいいてまことあらば、未だ学ばずというといえど
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
否、某伯爵家の如きは、その祖先が謀反人であったということを意識したがために、そのつぐないとして維新の際特に王事につくし、小藩ながら伯爵をちえたのだとの説をも聞いております。
融和促進 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
出来るかぎりの真実をつくしておりましたのに、あなたは怪しい偽道士にせどうしのいうことをにうけて、にわかにわたくしを疑って、これぎりに縁を切ろうとなさるとは、あまりに薄情ななされかたで
世界怪談名作集:18 牡丹灯記 (新字新仮名) / 瞿佑(著)
福円の妻女は至って優しい慈悲深きたちゆえ親も及ばぬほど看病に心をつくし、桃山ももやまの病院にまでいれて、世話をしてやった、するとある夜琴之助が帰りきたり、全治なおりましたからお礼に来ましたと
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
私には政治上の位地を占有した婦人は比較的深い注意と興味とをもつて婦人自身の義務につくす事が出来ない様に見えます。と云つて私共婦人を退化した因循いんじゆん卑屈の人種であると思ふのでは無いのです。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
全力というよりもむしろ死力をつくして奪い合っているほどの怪奇を極めた精神科学の実験そのものの魅力のために私の魂がもう
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一座は此遊の可笑をかしき話柄わへいを得たりとて打ち興じ、杯を擧げて、此迷失兒まよひごの健康を祝しつ。こゝの葡萄酒はいと旨きに、人々醉を帶び、歡をつくして分れぬ。
うしておつぎは卯平うへいむかつてかれ幾分いくぶんづゝでも餘計よけい滿足まんぞく程度ていどにまでこゝろつくすことが、善意ぜんいもつてしてもむし冷淡れいたんであるがごとえねばならなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
彼はそのいつはりまこととを思ふにいとまあらずして、遣る方も無き憂身うきみの憂きを、こひねがはくば跡も留めず語りてつくさんと、弱りし心は雨の柳の、漸く風に揺れたるいさみして
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
別段力をその馴養につくさなんだので、その上野驢や花驢しまうまの諸種は、専らその肉を食いその皮を剥がんため、斟酌なく狩り殺さるるから、人さえ見れば疾走し去るのだ。
彼らは懇請せり、哀愬あいそせり、その有る限りの力をつくして相談せり、しかれども頑として動かざるなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
正弘は柏軒に信頼して疑はず、柏軒も亦身命を賭して其せめつくしたのである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
出来るかぎりの真実をつくして居りましたのに、あなたは怪しい偽道士えせどうしのいうことをに受けて、にわかにわたくしを疑って、これぎりに縁を切ろうとなさるとは、余りに薄情ななされかたで
のち、太子高熾こうし羣小ぐんしょうためくるしめらるるや、告げて曰く、殿下はただまさに誠をつくして孝敬こうけいに、孳々ししとして民をめぐみたもうべきのみ、万事は天に在り、小人は意をくに足らずと。識見亦高しというべし。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
勘次かんじあさのまだすゞしい、しめりのあるあひだかまどはひつてつてけてだけ手數てすうつくしたのである。それでいくらでも活溌くわつぱつ運動うんどうする瓜葉蟲うりはむしふせがれた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それを眼の前に見ながら昂作は、なおも新しい血を吐くべく、死力をつくして胸を押し曲げた。
童貞 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
再び手出しもならざらんやう、かげながら卑怯者ひきようものの息の根をめんと、気もくるはしく力をつくせり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
こは車の大道を去るべき知らせなり。我は道の傍にきづきたる壇に上りぬ。脚下には人の頭波立てり。今やコルソオの競馬始らんとするなれば、兵士は人をはらはんことに力をつくせり。
これ父清正常にるところ、賤岳しずがたけに始まり征韓に至る大小百余戦、向うところ敵なし、庚子の役また幕府のために力をつくし以て鎮西ちんぜいの賊を誅す、伝えて忠広に至り、以て大阪に従役す
しかりといえども光陰の潮流ははしりてやまず。武備的の機関すでにその効用を社会の進化につくし、これがために社会が一歩を転ずるのときにおいては社会の境遇も一歩を転ぜざるべからず。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
実に話術の妙をつくしたものと云ってよい。
寄席と芝居と (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
同時にその間に於て翁が如何に酬いられぬ努力をつくし、人知れぬ精魂を空費して来たか。国粋中の国粋たる能楽の神髄を体得してこれを人格化し凜々りんりんたる余徳を今日に伝えて来たか。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
一時の戦略は如何ようとも出来申すべく候えども、永世へ掛け始終海岸防禦にのみ財力をつくし、国貧しく民窮するに至り大敵来攻ども致し候わば、一人の取籠者と同日の談にこれ有るべく候。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
金翅鳥その翼力をつくし飛び進むとその下にある亀がわれの方が早くここにあると呼ばわる、いかに力を鼓して飛んでも亀が先に走り行くように見えて、とうとうヒマラヤ山まで飛んで疲れ果て
願わくは御手おんてに随従して微力をつく
鬼桃太郎 (新字新仮名) / 尾崎紅葉(著)
へや附きのボーイが発見して大騒ぎとなり、吾が鬼課長狭山九郎太氏が出動して検屍したるに、同岩形氏の横死の裏面に重大なる犯罪の伏在しおるを認め、全力をつくして活動の結果
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
泣血漣々れんれんとして、思う所をつくあたわざるなり。頑児矩方、泣血拝白。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
御手おんて隨從ずゐじゆうして微力びりよくつく
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)