浦山うらやま)” の例文
魚津うおづより三日市みっかいち浦山うらやま船見ふなみとまりなど、沿岸の諸駅しょえきを過ぎて、越中越後の境なるせきという村を望むまで、陰晴いんせいすこぶる常ならず。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
翌日僕にニヤニヤ笑い乍ら「昨夜は最初にフランスを、次にロシアを、次に支那を」と話してくれて僕を浦山うらやましがらせ
赤げっと 支那あちこち (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
高ちやんなぞは夜るるからとても枕を取るよりはやくいびきの声たかく、い心持らしいがどんなに浦山うらやましうござんせう
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
私は彼等を浦山うらやましく思い、あるいは全行程を歩いたかも知れぬが、とにかく乗馬をならうにはこの上もない好機会なので、乗らざるを得なかった。
雲雀ひばりの鳴く田圃たんぼで、お父さんやお母さんのお手伝いをしていなさる智恵子さんが浦山うらやましくなったわ。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
かけながら入來りしに長八夫婦が巨燵こたつの中に差向さしむかひ何かむつまじき咄しの樣子ゆゑ長兵衞は見て是はしたり相惚あひぼれの夫婦はまた格別かくべつたのしみな物私は此年になつても隨分ずゐぶん浦山うらやましいと放氣おどけまじりに贅口むだぐち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
私はまたしてもこういうところへ来ると生々して来る主人を見て浦山うらやましくなった。
東海道五十三次 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
あるがなかにも薄色綸子うすいろりんず被布ひふすがたを小波さヾなみいけにうつして、緋鯉ひごひをやる弟君おとヽぎみともに、餘念よねんもなくをむしりて、自然しぜんみにむつましきさヽやきの浦山うらやましさ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
浦山うらやましく、嫉ましいものに思っていますと、嘉六も娘の表情に気付いて
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
こゑきくよすがもらざりければ、別亭はなれ澁茶しぶちやすゝりながらそれとなき物語ものがたり、この四隣あたりはいづれも閑靜かんせいにて、手廣てびろ園生そのふ浦山うらやましきものなり、此隣このとなりは誰樣たれさま御別莊ごべつさう
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
まへまつり姿なり大層たいそうよく似合にあつて浦山うらやましかつた、わたしをとこだとんなふうがしてたい、れのよりもえたとめられて、なんれなんぞ、おまへこそうつくしいや
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さびしとは世のつね、命つれなくさへ思はれぬ。擣衣きぬたおとまじりて聞えたるいかならん。くちなどはやして小さき子の大路を走れるは、さも淋しき物のをかしう聞ゆるやと浦山うらやましくなん。
あきあはせ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
とつさんは在るけれど田舎の実家へ帰つてしまつたから今は祖母おばあさんばかりさ、お前は浦山うらやましいねと無端そぞろに親の事を言ひ出せば、それ絵がぬれる、男が泣く物では無いと美登利に言はれて
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
まへ浦山うらやましいねと無端そゞろおやことせば、それがぬれる、をとこものではいと美登利みどりはれて、れはよわいのかしら、時々とき/″\種々いろ/\ことおもすよ、まだ今時分いまじぶんいけれど
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
舞ふや蝴蝶こてふそで軽く、枯木も春の六花りくくわの眺めを、世にある人は歌にも詠み詩にも作り、月花に並べてたたゆらん浦山うらやましさよ、あはれ忘れがたき昔しを思へば、降りに降る雪くちをしく悲しく
雪の日 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あなたはさう仰しやれど母などはお浦山うらやましき御身分と申てをりまする。
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あなたは左樣さうおつしやれどはゝなどはお浦山うらやましき御身分ごみぶんと申てりまする。
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
たかちやんなぞはるからとてもまくらるよりはやくいびきこゑたかく、心持こゝろもちらしいがんなに浦山うらやましうござんせう、わたしはどんなつかれたときでもとこ這入はいるとへてそれそれ色々いろ/\ことおもひます
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ねへ美登利みどりさん今度こんどしよ寫眞しやしんらないか、れはまつりのとき姿なりで、おまへ透綾すきやのあらじま意氣いきなりをして、水道尻すいだうじり加藤かとうでうつさう、龍華寺りうげじやつ浦山うらやましがるやうに、本當ほんたうだぜ彼奴あいつ屹度きつとおこるよ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
如何いかひとにもわらはれけんおもへば其頃そのころ浦山うらやまきみさま東京とうきやう歸給かへりたまひしのちさま/″\つゞ不仕合ふしあわせ身代しんだい亂離らり骨廢こつぱいあるがうへに二おやひきつゞきての病死びようしといひきことかさなる神無月かみなづきそでにもかゝる時雨空しぐれぞらこゝろのしめるれを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そこねもして愛想あいそづかしのたねにもならばはぬにまさらさぞかしきみさまこそ無情つれなしともおもこゝろに二不孝ふかうらねど父樣とゝさまはゝさまなんおほせらるゝとも他處よそほかの良人をつともつべき八重やへ一生いつしやう良人をつとたずとふものからとはおのづかことなりて關係かゝはることなく心安こゝろやすかるべし浦山うらやましやと浦山うらやまるゝわれ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なにならんと小走こばしりしてすゝりつ一枝ひとえだ手折たをりて一りんしうりんれかざしてるも機嫌取きげんとりなりたがひこゝろぞしらず畔道あぜみちづたひ行返ゆきかへりてあそともなくくらとりかへゆふべのそら雲水くもみづそう一人ひとりたゝく月下げつかもん何方いづこ浦山うらやましのうへやと見送みをくればかへるかさのはづれ兩女ふたりひとしくヲヽとさけびぬ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)