ほう)” の例文
「それは、よくありません。むらひとのお世話せわになった、おばあさんのはかててあげないというほうはありません。」といいました。
おばあさんと黒ねこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おい、逃げるてえほうがあるかッ! この乾雲は汝の坤竜にこがれてどこまでも突っ走るのだ。刀が刀を追うのだからそう思え!」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そして後醍醐には隠岐脱出いらい、いよいよ意気おさかんで、大山だいせんの祈祷の壇に、みずから護摩ごまいて七日の“金輪こんりんほう”を修せられ
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ご近所きんじょを通りかかりましたのに、あなた様のごきげんもうかがわずに、だまって通るほうはございませんので、おじゃまにあがりました。」
ひとほうけとやら、こんな場合ばあいには矢張やは段違だんちがいの神様かみさまよりも、お馴染なじみみの祖父じじほうが、かえって都合つごうのよいこともあるものとえます。
わたしたちはそういう有名な人をたずねるのに犬をれて行くほうはないと思ったから、カピはいて行くことにして、宿屋やどやの馬小屋につないでおいた。
なんだと畜生ちくしょう!』と、このときイワン、デミトリチはきゅうにむッくりと起上おきあがる。『なん彼奴きゃつさんとほうがある、我々われわれをここに閉込とじこめてわけい。 ...
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
このときに、魔法まほうをとくほうを聞いておかねば、あの白鳥は、いつまでたっても、お姫様ひめさまにかえれないと思ったものですから、巨男おおおとこは、魔女のまくらもとによって
巨男の話 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
南無なも、当来の導師」と祈るを耳にして、「かれ聞き給へ、此世とのみは思はざりけり」と語る恋とほうとの界目さかいめは、実に主人公の風流に一段の沈痛なる趣を加え
『新訳源氏物語』初版の序 (新字新仮名) / 上田敏(著)
ものして自然に美辞びじのりかなうと士班釵すぺんさあおきなはいいけりまことなるかな此の言葉や此のごろ詼談師かいだんし三遊亭のおじ口演くえんせる牡丹灯籠ぼたんどうろうとなん呼做よびなしたる仮作譚つくりものがたりを速記というほう
怪談牡丹灯籠:01 序 (新字新仮名) / 坪内逍遥(著)
それは、子ともきに寫眞しやしん沿革えんかくから撮影さつえい現像げんぞう、燒つけほう、それに簡單かんたん暗箱あんはこつくり方までを説明せつめいしてある。たしか博文館はくぶんくわんはつ行のせう理科りくわそう書の一さつだつたかとおもふ。
専門たるりつれきえきのほかに道家どうかの教えにくわしくまたひろじゅぼくほうめい諸家しょかの説にも通じていたが、それらをすべて一家のけんをもってべて自己のものとしていた。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
それが、日本の長いあいだの慣例であり、不文ふぶんほうであった。また「公方くぼう」という名をもって、主権が行使され、「大君たいくん」という名目をもって、対外主権が行使されていた。
そして、やはり、甚兵衛じんべえ神様かみさまから人形使いのほうおそわったということになりました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
顔にさわられまいと、俯向うつむきながら、あおぎ消すやうに、ヒラヒラと払ふと、そよ/\と起る風のすじは、仏の御加護おんかご、おのづから、魔を退しりぞくるほうかなつて、蠅の同勢どうぜいは漂ひ流れ、泳ぐが如くに
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
其時そのときあつまツてツた、一どうものよろこびはくらいりましたか、商家抔せうかなどではおうおわし取扱とりあつかつてるから、醫者いしやぶもはぬとようときは、實驗上じつけんぜう隨分ずいぶんもちひて宜敷よろしほうようぞんじます。
信如しんによこまりて舌打したうちはすれども、今更いまさらなんほうのなければ、大黒屋だいこくやもんかさせかけ、あめひさしいとふて鼻緒はなををつくろふに、常々つね/″\仕馴しなれぬおぼうさまの、これは如何いかことこゝろばかりはあせれども
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あの、あなたのとまっている、志保田の御那美さんも、嫁にって帰ってきてから、どうもいろいろな事が気になってならん、ならんと云うてしまいにとうとう、わしの所へほうを問いに来たじゃて。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「戦争に行って、あいつが生きて帰ってくるというほうはないからね。どう考えても非論理的だよ。それは安芸子さんの告白小説じゃないのか。山川に逢いたい逢いたいで、祈りだしたのとちがいますか」
蝶の絵 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「牛をたたくというほうはない」
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
といっても、そこには木蔭こかげがあるわけではなく、身をかくす家があるのでもないから、もとよりどう手をくだすほうもないらしい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「みんながさわいで、わったのだから、みんなで弁償べんしょうするのがあたりまえでしょう。一人ひとり半分はんぶんさせるほうはないだろう。」と、おどすような口調くちょうで、いいました。
眼鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
逆上あがっているから耐らない、卍の富五郎ほうを忘れて切ってかかる。
およそ忍術にんじゅつというものも夜陰やいんなればこそ鼠行そぎょうほうもおこなわれ、木あればこそ木遁もくとん、火あればこそ火遁かとんじゅつもやれようが、この白昼はくちゅう、この試合場しあいじょうのなかで
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あんなになるまで、医者いしゃにかけないというほうはないのだが、もう手後ておくれであるかもしれない。」
三月の空の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それを、そなたにいうのは孟子もうしほうくようなものだが、武家ぶけつみである、群雄割拠ぐんゆうかっきょして領土りょうどと領土のあばきあいのほか、なにごとも忘れている兵家へいかの罪でなければならぬ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
和泉国の松尾寺まつのおでらでは、かねがね北条退治の如意輪にょいりんほうを修していたところ、ちょうどその満願にあたる日に、千早の囲みが解けたと、その「松尾寺文書」は仏徳をしるしている。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)