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欅
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けやき
ふりがな文庫
“
欅
(
けやき
)” の例文
奥庭を覆うている
欅
(
けやき
)
の新しい若葉の影が、湿った苔の上に揺れるのを眺めながら、私はよく父と小さい茶の炉を囲んだものであった。
性に眼覚める頃
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
ふと
欅
(
けやき
)
の
刳
(
く
)
り
盆
(
ぼん
)
が原氏の目にとまつた。それは田舎の村長などの好きさうな鯛の恰好をしたもので二円三十銭といふ札が付いてゐた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
セイゲン、ヤシオなど云う
血紅色
(
けっこうしょく
)
、
紅褐色
(
こうかっしょく
)
の春モミジはもとより、
槭
(
もみじ
)
、
楓
(
かえで
)
、
楢
(
なら
)
、
欅
(
けやき
)
、ソロなどの
新芽
(
しんめ
)
は、とり/″\に花より美しい。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
よそに行っていて不図わが家の情景が
髣髴
(
ほうふつ
)
する、そんな鮮やかさで、西日を受け赤銅色に燃え立っている
欅
(
けやき
)
の梢や校舎の白い正面。
雑沓
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
大きい古い
欅
(
けやき
)
の樹と松の樹とが蔽い冠さって、左の
隅
(
すみ
)
に
珊瑚樹
(
さんごじゅ
)
の大きいのが
繁
(
しげ
)
っていた。処々の常夜燈はそろそろ光を放ち始めた。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
▼ もっと見る
匕首
(
あいくち
)
の
柄
(
え
)
をみずおちに当てて、力いっぱい、板壁を
突
(
つ
)
いてみた。だが、
欅
(
けやき
)
かなんぞの厚板とみえて、刃物の
尖
(
さき
)
がツウ! と
辷
(
すべ
)
った。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そこにある広場には
欅
(
けやき
)
や桜の木がまばらに立っていて、大規模な増築のための材料が、
煉瓦
(
れんが
)
や石や、ところどころに積み上げてあった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
その日は、ひどく冷たい北風が吹き
荒
(
すさ
)
んで、
公孫樹
(
いちょう
)
の落ち葉や
欅
(
けやき
)
の落ち葉が、雀の群れかなんぞのように、高く高く吹き上げられていた。
再度生老人
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
幾たびも飛び出す樫鳥は、そんな私を、近くで見る大きな姿で脅かしながら、葉の落ちた
欅
(
けやき
)
や
楢
(
なら
)
の枝を
匍
(
は
)
うように渡って行った。
冬の蠅
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
今より十年前発行の『電報新聞』に、
欅
(
けやき
)
の怪音を発覚せし実験談を報告してあったから、これも参考のために一節だけを転載しておこう。
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
次々にほかの樹も芽を出して来て、それぞれに違った新緑の色調を見せる。並木に使ってある
欅
(
けやき
)
の新緑なども、煙ったようでなかなかいい。
京の四季
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
と突然、何の鳥か、野原の真ん中にすぐれて大きく一本立って居る、
欅
(
けやき
)
の
梢
(
こずえ
)
で鳴き声がしました。トシオはあわてて、その方を向きました。
トシオの見たもの
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
竹束の前の大きな
欅
(
けやき
)
の角材に腰をかけたインバネスに中折帽の苦み走った若い男が、青ざめた澄ました顔をして
金口煙草
(
きんくち
)
に火を
点
(
つ
)
けている。
芝居狂冒険
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
欅
(
けやき
)
のまあたらしい
飯台
(
はんだい
)
をとりまいて徳利をはや三十本。小鉢やら丼やら、ところも
狭
(
せ
)
におきならべ、無闇に景気をつけている。
顎十郎捕物帳:21 かごやの客
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
其處を切り上げると平次は庭へ出て、
欅
(
けやき
)
の並木の下で遊んでゐる、主人の一人娘お信と、金之助の弟の常吉をつかまへました。
銭形平次捕物控:285 隠れん坊
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
てらてら黒光りのする
欅
(
けやき
)
普請の長い廊下をこわごわお
厠
(
かわや
)
のほうへ、足の裏だけは、いやに冷や冷やして居りましたけれど、なにさま眠くって
葉
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そこにはおせんが居た時と同じように、大きな
欅
(
けやき
)
づくりの食卓が置いてある。黒い六角形の柱時計も同じように掛っている。
刺繍
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
例を植物に取ると致しましょう。柔かい
桐
(
きり
)
や杉を始めとし、松や桜や、さては堅い
欅
(
けやき
)
、栗、
楢
(
なら
)
。黄色い桑や黒い黒柿、
斑
(
ふ
)
のある
楓
(
かえで
)
や
柾目
(
まさめ
)
の
檜
(
ひのき
)
。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
二人は「桔梗」の入口の戸をあけて
中
(
うち
)
へはいつた。六畳の上り
端
(
はな
)
で
欅
(
けやき
)
の
胴切
(
どうぎり
)
の火鉢のまはりに、お糸さんとおなかさんとがぼんやりして居た。
二黒の巳
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
この丘の両側にある
若蘆
(
わかあし
)
の原まで、出かけて聴くことにしていたオオヨシキリが、
僅
(
わず
)
かな間だが
地堺
(
じざかい
)
の
欅
(
けやき
)
の樹に来て啼いた。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
二人は
田圃
(
たんぼ
)
路を行きぬけて、鬼子母神前の長い往来へ出ると、ここらの気分を象徴するような大きい
欅
(
けやき
)
の木肌が、あかるい春の日に光っていた。
半七捕物帳:08 帯取りの池
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
爺さんはもう長い間木工場の手伝人夫をして、
何処
(
どこ
)
には何があるとか、何号の
小舎
(
こや
)
には
欅
(
けやき
)
の板が何枚あるとか、職工達の誰よりもくはしかつた。
ある職工の手記
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
臼は尺五寸位の
欅
(
けやき
)
、極小さなもので二升位しか
搗
(
つ
)
けない、新品だが少々ひびが入っている、杵をつけて六円で買い求めた。
百姓弥之助の話:01 第一冊 植民地の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
其
(
そ
)
の
間
(
あひだ
)
に
空
(
そら
)
を
渡
(
わた
)
る
凩
(
こがらし
)
が
俄
(
にはか
)
に
哀
(
かな
)
しい
音信
(
おどづれ
)
を
齎
(
もたら
)
した。
欅
(
けやき
)
の
梢
(
こずゑ
)
は、どうでもう
此
(
こ
)
れまでだといふやうに
慌
(
あわたゞ
)
しく
其
(
そ
)
の
赭
(
あか
)
く
成
(
な
)
つた
枯葉
(
かれは
)
を
地上
(
ちじやう
)
に
投
(
な
)
げつけた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
見たところ芋の
植
(
うわ
)
っている平凡な畑だったが、周囲に
欅
(
けやき
)
や杉の森があり近くに人家のないのが、怒るとき大きな声を出す私には好都合だと思った。
睡蓮
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
主人の仁太郎氏は丁度留守で大振りの
欅
(
けやき
)
の長火鉢の前にはお寿賀さんばかりが
坐
(
す
)
わっていたが私を見ると頷いて見せた。
温室の恋
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
すると大きな大きな
欅
(
けやき
)
の樹の、すでに立枯れになっているのが、妖魔の王の突立つ如くに目に入った。その
根下
(
ねもと
)
に、怪しい人影が一個認められた。
怪異暗闇祭
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
その後の調査によるに、ニコライ円頂の落ちしは六時ごろにして、火は間もなく収まりしも、ただ塔中には
欅
(
けやき
)
の階段、床、鐘を釣りたる
梁
(
はり
)
等あり。
地震なまず
(新字新仮名)
/
武者金吉
(著)
前に囲ってくれた旦那と二人して妨害運動をしたりしたが、律気な——鉢植えの
欅
(
けやき
)
みたいな生れつきの
妓
(
ひと
)
にも芽が出て、だんだんに
繁昌
(
はんじょう
)
して来た。
旧聞日本橋:13 お墓のすげかえ
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
貴僧
(
あなた
)
、黒門までは
可
(
い
)
い天気だったものを、急に大粒な雨!と
吃驚
(
びっくり
)
しますように、屋根へ
掛
(
かか
)
りますのが、この
蔽
(
おっ
)
かぶさった、
欅
(
けやき
)
の葉の落ちますのです。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鈴川方の塀の上に張り出ている
欅
(
けやき
)
の大木の
梢
(
こずえ
)
、その枝のしげみに、毒蛇のような一眼がきらめいて、その
始終
(
しじゅう
)
を見おろしていたことを知らなかった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
谷山の村へ入って、茶店へ来たが、いつも、茶店の脇の、大きい
欅
(
けやき
)
の木の下に、一二疋ずついる馬が、一疋も見えないので、欅の下蔭は、淋しかった。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
黄色い煙がたなびいたように青空いつぱいに若葉をひろげた
欅
(
けやき
)
の木かげの家は、ヒツソリとして人気がなかつた。
押しかけ女房
(新字新仮名)
/
伊藤永之介
(著)
宗近君は机の上にあるレオパルジを無意味に取って、
背皮
(
せがわ
)
を
竪
(
たて
)
に、
勾配
(
こうばい
)
のついた
欅
(
けやき
)
の角でとんとんと軽く
敲
(
たた
)
きながら、少し
沈吟
(
ちんぎん
)
の
体
(
てい
)
であったが、やがて
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
十幾棟の大伽藍を囲んで、
矗々
(
ちくちく
)
と天を摩している
老杉
(
ろうさん
)
に交って、
栃
(
とち
)
や
欅
(
けやき
)
が薄緑の水々しい芽を吹き始めた。
仇討三態
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
しかしその山は松だの
欅
(
けやき
)
だのいろいろな
雑木
(
ぞうき
)
が生えている密林なんでして、その林のなかをぐる/\歩いているうちに、木に引っかかって、フンドシが解けた。
紀伊国狐憑漆掻語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
奥へ逃げこむ者、その場にへたばる者、わめきちらす者のある中を、一郎は、自分の家の庭に生えている大きい
欅
(
けやき
)
の樹を見当にして、まっしぐらに走りだした。
未来の地下戦車長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
からからに乾いて巻き
縮
(
ちぢ
)
れた、
欅
(
けやき
)
の落葉や
榎
(
えのき
)
の落葉や杉の枯葉も交った、ごみくたの類が、家のめぐり庭の隅々の、ここにもかしこにも一団ずつ
屯
(
たむろ
)
をなしている。
新万葉物語
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
そこに一軒の
門口
(
かどぐち
)
が見えて、出口に一本の
欅
(
けやき
)
があり、その欅の
後
(
うしろ
)
になった板塀の内の柱に門燈が光っていたが、それは針金の網に包んだ
円
(
まる
)
い笠に
被
(
おお
)
われたもので
蟇の血
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
楢林
(
ならばやし
)
は薄く黄ばみ、農家の周囲に立つ高い
欅
(
けやき
)
は半ば落葉してその細い網のような枝を空にすかしている。
小春
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
お島は
楆
(
かなめ
)
と
欅
(
けやき
)
の木とで、二重になっている
外囲
(
そとがこい
)
の
周
(
まわり
)
を、
其方
(
そっち
)
こっち廻ってみたが、何のこともなかった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
辻川博士の奇怪な研究室は葉の落ちた
欅
(
けやき
)
の大木にかこまれて、それらの木と高さを争うように、
亭々
(
ていてい
)
として地上三十尺あまりにそびえている支柱の上に乗っていた。
蜘蛛
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
五日市
(
いつかいち
)
街道を歩けば、樹木がしきりに彼の眼についた。
楢
(
なら
)
、
欅
(
けやき
)
、
木蘭
(
もくらん
)
、……あ、これだったのかしら、久しく恋していたものに、めぐりあったように心がふくらむ。
永遠のみどり
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
道は再び
豁然
(
かつぜん
)
として開け、やがて左側の大きな
欅
(
けやき
)
の樹陰に色
褪
(
あ
)
せた旗を立てて一軒の百姓家が往来も稀れな通行人のために
草鞋
(
わらじ
)
三文菓子なぞを商っている前へと出る。
逗子物語
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
折りしも三十有余年前の五月半ばの校庭には、葉桜と
欅
(
けやき
)
の若葉に、初夏には早い青嵐が吹いていた。
わが童心
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
崖には杉の大木にまじって象皮色の
欅
(
けやき
)
の幹が枝をひろげ、
瘤
(
こぶ
)
だらけのいたやは
犀
(
さい
)
のように立ち、朽ちはてたえのみはおおかた枝葉を落しつくして
葛蘿
(
かずら
)
にまかれている。
島守
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
欅
(
けやき
)
の若葉をそよがす
軟
(
やはらか
)
い風、輝く空気の波、ほしいまゝな小鳥の啼声……しかし彼は、それらのものに
慄
(
ふる
)
へあがり、めまひを感じ、身うちをうづかせられる苦しさよりも
哀しき父
(新字旧仮名)
/
葛西善蔵
(著)
落葉松、白樺、厚朴、かえでなどの代わりに赤松、黒松、
榛
(
はん
)
、
欅
(
けやき
)
、
桐
(
きり
)
などが幅をきかしている。
軽井沢
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
橋は一方少し坂になっている処から
橡
(
とち
)
、
欅
(
けやき
)
、
橅
(
ぶな
)
などの巨樹の繁茂している急峻な山の中腹に向って
架
(
か
)
けられてあるのだ。橋の下は水流は静かであるが、
如何
(
いか
)
にも深そうだ。
木曽御嶽の両面
(新字新仮名)
/
吉江喬松
(著)
夕日の眞赤な光が對岸の緑の平野の上に被ひかぶさつて、地平線を
凸凹
(
でこぼこ
)
にする
銀杏樹
(
いちやう
)
らしい、また
欅
(
けやき
)
らしい樹の塊りは、丁度火災の時のやうに、氣味わるく黒ずんでゐる。
少年の死
(旧字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
欅
漢検1級
部首:⽊
21画
“欅”を含む語句
山毛欅
大欅
欅板
毛生欅
毛欅
欅並木
欅作
欅山
欅竝木
欅平
欅戸
欅木群
欅扉
欅箪笥
欅横丁
欅柱
欅林
欅材
欅崎
欅原
...