トップ
>
埓
>
らち
ふりがな文庫
“
埓
(
らち
)” の例文
小堀平治も、娘のあまりの美しさに、少し心配になったのでしょう、
切
(
しき
)
りに英山公を促し立てて、一刻も早く
埓
(
らち
)
を明けようとします。
新奇談クラブ:05 第五夜 悪魔の反魂香
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
永「黙れ、何だ二三百のお布施で
埓
(
らち
)
が明くかえ、貸されぬ、うーん悪い
処
(
ところ
)
へ
往
(
ゆ
)
き
居
(
お
)
って、瞽女町で芸者買うなんて不埓千万な奴じゃア」
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
彼らが山を走ることは
恰
(
あたか
)
も兎の走るがごとくで私など追いかけたところで、
埓
(
らち
)
の
明
(
あ
)
く訳でもない。また追いかけようという考えもない。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
老婆がその通り、給仕に出た小僧も亦た不愉快千萬な奴で、遙々樂しんで來たこの古めかしい山上の幻の影は
埓
(
らち
)
もなくくづれてしまつた。
樹木とその葉:28 青年僧と叡山の老爺
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
何の
彼
(
か
)
のと、
埓
(
らち
)
もないこと云われ、藤はお山へ返せなどとも云い、館を飛び出しては騒ぎ廻り、ほとほと
困
(
こう
)
じはてておりまする。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
それが今まで
埓
(
らち
)
が明かないので、おかみさんはあたしを叱って、おまえが請け合ったんだから、催促して取って来いと云う。
半七捕物帳:62 歩兵の髪切り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
狐
(
きつね
)
のごとき
怜悧
(
れいり
)
な本能で自分を救おうとすることにのみ急でないかぎり、自分の心の興奮をまで、一定の
埓
(
らち
)
内に慎ませておけるものであろうか。
片信
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
こうなると君、人間というやつはばかに臆病になるものだよ、何ごとにもおじ気がついて、
埓
(
らち
)
もなくびくびくするのだ。
去年
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
矢張
(
やは
)
り
僕
(
ぼく
)
の
友人
(
いうじん
)
だが、——
今度
(
こんど
)
は
男
(
をとこ
)
だが——
或奴
(
あるやつ
)
から
少
(
すこ
)
し
取
(
と
)
るべき
金
(
かね
)
があるのに、どうしてもよこさない。いろ/\
掛合
(
かけあ
)
つて
見
(
み
)
たが
埓
(
らち
)
があかない。
ハガキ運動
(旧字旧仮名)
/
堺利彦
(著)
いつまでたってもいっこう壺の
埓
(
らち
)
があかないとなると、そろそろ退屈してきて、
脛
(
すね
)
押し、腕相撲のうちはまだいいが
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
が、それだけなら、ともかくも金で
埓
(
らち
)
の開く事ですが、ここにもう一つ不思議な故障があるのは、お敏を手離すと、あの婆が加持も占も出来なくなる。
妖婆
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
夜になれば、白人国に買われた土人のような淋しさで
埓
(
らち
)
もない唄をうたっている。メリンスの着物は汗で裾にまきつくと、すぐピリッと破けてしまう。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
藩主の家に出入するとすればその姓名はすぐに分る。これが余の仮定である。もしあの女が浩さんと同藩でないとするとこの事件は当分
埓
(
らち
)
があかない。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
何しろ金は八十万弗渡したその中で、四十万弗の船が来た
丈
(
だ
)
けでその後は何も来ない。
左
(
さ
)
りとは
埓
(
らち
)
が明かぬから、アトの軍艦は
此方
(
こっち
)
から
行
(
いっ
)
て
請取
(
うけと
)
ろう。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
よろしう
御座
(
ござ
)
んす
慥
(
たし
)
かに
受合
(
うけあ
)
ひました、むづかしくはお
給金
(
きうきん
)
の
前借
(
まへがり
)
にしてなり
願
(
ねが
)
ひましよ、
見
(
み
)
る
目
(
め
)
と
家内
(
うち
)
とは
違
(
ちが
)
ひて
何處
(
いづこ
)
にも
金錢
(
きんせん
)
の
埓
(
らち
)
は
明
(
あ
)
きにくけれど
大つごもり
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「華族さんのお客さんがあるやろ」と訊くと、「ほら、うちかて芸者だす。
適
(
たま
)
には華族はんも呼んで呉れはります」ちゅう返事で、一向
埓
(
らち
)
が開きまへん。
黄鳥の嘆き:——二川家殺人事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
「おれは酒井侯に会って来る、きさまたちでは
埓
(
らち
)
があかぬ、おれは酒井侯に会って御所存のほどを聞いて来る」
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
咄
(
はな
)
すにぞ女房お富は
惘
(
あき
)
れ
果
(
はて
)
暫時
(
しばし
)
言葉
(
ことば
)
もなかりしが夫と云ふも皆お前が
埓
(
らち
)
も無き事を云ひ出してこんな
騷
(
さわ
)
ぎに成りしなり初めから私し
呉々
(
くれ/″\
)
口止
(
くちどめ
)
をして
置
(
おい
)
たるを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
ただ復古の夢を実顕するためには、まっしぐらに駆けり出そうとするような物を企つる心から、時には師の引いた線を
超
(
こ
)
えて
埓
(
らち
)
の外へ飛び出したものもあった。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
数十名の捕手が同時に同一の空間を占めようとするものだから、ワイ/\いう丈けで一向
埓
(
らち
)
が明かない。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
自分の心の
裡
(
うち
)
を眺め、その思想や感情を
査
(
しら
)
べ、
果
(
はて
)
しのない
埓
(
らち
)
のない、想像の荒野の中を
逍遙
(
さまよ
)
つてゐるのを嚴格な手で安全な常識の
檻
(
をり
)
の中につれ歸らうと努力した。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
『ほかでもないが、吾々共も、やがて程なく、この世の
埓
(
らち
)
も明こうかと存ずる。お礼と申すも、今更らしいが、お暇乞いに、ここで芸づくしなと御覧に入れよう』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
またそう考えることは定まらない不安定な、
埓
(
らち
)
のない恐怖にある限界を与えることになるのであった。
温泉
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
いくらあッしが掛け合いにいっても、打つ、殴る、蹴るの散々な目に会わせるだけで、一
向
(
こう
)
埓
(
らち
)
が明かねえんでごぜえますよ。いいえ、命はね、決して惜しくねえんです。
旗本退屈男:09 第九話 江戸に帰った退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
細かないざこざはもうしませんが、どうでも肚にすえかねることがござんして、その
埓
(
らち
)
をあけようと思い、ゆんべ、宵の口の五ツ半ごろここへ押しかけてまいりました。
顎十郎捕物帳:06 三人目
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
それ、
姫
(
ひめ
)
が
來
(
わ
)
せた。おゝ、あのやうな
輕
(
かる
)
い
足
(
あし
)
では、いつまで
蹈
(
ふ
)
むとも、
堅
(
かた
)
い
石道
(
いしみち
)
は
磨
(
へ
)
るまいわい。
戀人
(
こひびと
)
は、
夏
(
なつ
)
の
風
(
かぜ
)
に
戲
(
たはむ
)
れ
遊
(
あそ
)
ぶあの
埓
(
らち
)
もない
絲遊
(
かげろふ
)
に
騎
(
のッ
)
かっても、
落
(
お
)
ちぬであらう。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
こういうときにただ『早くおあがりなさいおあがりなさい』といっているだけでは
埓
(
らち
)
があかない。あまりうるさくせっついたりすると、『ご飯はもういや』といって立ってしまう。
女中訓
(新字新仮名)
/
羽仁もと子
(著)
さうして
勘次
(
かんじ
)
は
仕事
(
しごと
)
の
埓
(
らち
)
が
明
(
あ
)
いたので
又
(
また
)
利根川
(
とねがは
)
へ
行
(
ゆ
)
かれることゝ
心
(
こゝろ
)
に
期
(
き
)
して
居
(
ゐ
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
責任のある
画債
(
がさい
)
を少しずつ果していっておりますが、なかなか
埓
(
らち
)
があきません。
女の話・花の話
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
お遊さんの心のおくへ
這入
(
はい
)
ってみましたら自分で自分にゆいまわしていた
埓
(
らち
)
が
外
(
はず
)
れてしまったような気持のゆるみができまして妹の
心中
(
しんじゅう
)
だてを憎もうとしても憎めなんだのでござりましょう。
蘆刈
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
西蝦夷の生命をささえる
咽喉
(
いんこう
)
にあたっていた。従って、大きく
纏
(
まとま
)
った取引きはこの地に来なければ
埓
(
らち
)
があかないのだ。そこに
慇懃
(
いんぎん
)
を通じなければ糧米をととのえることが出来ないのであった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
が、由蔵はと見ると、只もうおろおろとしながらも、何か気になるらしく、一向湯槽へ飛び込む勇気を持とうともせず、
縁
(
ふち
)
へ
掴
(
つか
)
まったまま、左右を見廻したり、肩を振ったりして
埓
(
らち
)
が明かなかった。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
オイ、寅さん、お前さんは一体何時あの方の
埓
(
らち
)
を
火つけ彦七
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
埓
(
らち
)
のくづれを
踰
(
こ
)
えゆかば、星も照らさぬ
夜
(
よる
)
の道
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
「五臓の疲れじゃ。
埓
(
らち
)
もない」
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
訳が有って三藏どんが
己
(
おら
)
が
処
(
とけ
)
え頭を下げて来て、
偖
(
さて
)
作右衞門どん、
何
(
ど
)
うも
他
(
た
)
の者に話をしては
迚
(
とて
)
も
埓
(
らち
)
が明かねえ、人一人は大事な者なれども
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
けれども、お葉の方はまだ
埓
(
らち
)
が明かぬ。
彼女
(
かれ
)
は依然として
生贄
(
いけにえ
)
の冬子を掴んでいるのであった。市郎は気が気でない。忙しい中にも駈け寄って
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
もし誤って無思慮にも自分の
埓
(
らち
)
を越えて、差し出たことをするならば、その人は純粋なるべき思想の世界を、不必要なる差し出口をもって混濁し
広津氏に答う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
一向
埓
(
らち
)
があかないが……こうと生酔いというやつは……
妾
(
めかけ
)
の顔形ということであり……その顔形は美人でなくては
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それはどうも
埓
(
らち
)
が明かないから、その紙に
礬水
(
どうさ
)
をして、
夫
(
そ
)
れから筆は
鵞筆
(
がぺん
)
で以て写すのが
先
(
ま
)
ず一般の風であった。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
今日はどうあっても調達しなければ……と与吉を供に出かけて来たのだが、
埓
(
らち
)
のあかないことおびただしい。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「なに、何でもいい、法律上の術語だから——それでね、糸公、いつまで行っても
埓
(
らち
)
が明かないから、
一
(
ひ
)
と
思
(
おもい
)
に打ち明けて話してしまうが、実はこうなんだ」
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
『そうでもしなければ
埓
(
らち
)
は明くまいが、まだ、御本家の方へお
縋
(
すが
)
りに行った使者が帰って来ぬうちは』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
未練が出て今一度老婆に滯在のことを頼んでみたが生返事で一向
埓
(
らち
)
があかず、幾らか包んでやれば必ず效能があつたのだと、あとで合點が行つたが最初氣がつかなかつた。
比叡山
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
きて、二本さした浪人ふう……と、まあ、言うんですが、これも、チラと見かけたばかり。……あんまり、きっぱりしたことも言われねえ。……まったく、
埓
(
らち
)
のねえ話で……
顎十郎捕物帳:08 氷献上
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
讓り申べしと
聞
(
きゝ
)
て左京は大に
悦
(
よろこ
)
び
然
(
さら
)
ば早々
埓
(
らち
)
明
(
あけ
)
んと立上るを大膳は
暫
(
しば
)
しと
押止
(
おしとゞ
)
め先々待たれよ今宵の仕事は
袋
(
ふくろ
)
の物を取り出すよりも
易
(
やす
)
し
先々
(
まづ/\
)
一
盃
(
ぱい
)
呑
(
のん
)
だ上の事とて是より
酒宴
(
しゆえん
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
それぞれに人生の
埓
(
らち
)
の外へはみ出た、一言にして云えば
落魄
(
らくはく
)
した者ばかりであったことだ。
溜息の部屋
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それは私が主として樂しんでゐた興味であり、またいつも私が
埓
(
らち
)
を越えないやうにしてゐる確かな本能でもあつた。私はもう一歩で相手を
怒
(
おこ
)
らせるといふ
間際
(
まぎは
)
で踏み止まつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
峠からは牛行司の利三郎、それに
十二兼村
(
じゅうにかねむら
)
の牛方までが、呼び寄せられる。峠の組頭、平助は見るに見かねて、この紛争の中へ飛び込んで来たが、それでも
埓
(
らち
)
は明きそうもない。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
とて
下
(
した
)
を
向
(
む
)
いて
歎息
(
たんそく
)
の
聲
(
こゑ
)
を
洩
(
も
)
らすに、どうも
何
(
なん
)
とも、
私
(
わし
)
は
悉皆
(
しつかい
)
世上
(
せじやう
)
の
事
(
こと
)
に
疎
(
うと
)
しな、
母
(
はゝ
)
もあの
通
(
とほ
)
りの
何
(
なん
)
であるので、
三方
(
さんばう
)
四方
(
しはう
)
埓
(
らち
)
も
無
(
な
)
い
事
(
こと
)
に
成
(
な
)
つてな、
第一
(
だいいち
)
は
此娘
(
これ
)
の
氣
(
き
)
が
狹
(
せま
)
いからではあるが
うつせみ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
埓
部首:⼟
10画
“埓”を含む語句
埓明
放埓
不埓
埓内
不埓者
不埓千万
埓外
一埓
不埓千萬
不埓奴
不埓至極
埓口
埓無
埓門
放埓者