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(七九)閭巷りよかうひとおこなひてんとほつするものは、(八〇)青雲せいうんくにあらずんば、いづくんぞく(名ヲ)後世こうせいかん
先年溜池ためいけにて愚僧が手にかゝり相果て候かの得念が事、また百両の財布取落とりおとし候さむらいの事も、その後は如何いかが相なり候と、折々夢にも見申みもうし候間
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
さるにても何処より此の状を手に入れ候おほせらるれば、薬師寺家の舊臣的場新三郎と申し候者、北の方の乳兄弟にてありけるが
天下動乱の色あらはる。いかゞ成行なりゆくべきらん。心ぼそきものなり。神慮にまかせて、明暮あけくれするまで也。無端事はしなきこと。無端事。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
正にこれ、はてしも知らぬ失恋の沙漠さばくは、濛々もうもうたる眼前に、うるはしき一望のミレエジは清絶の光を放ちて、はなはゆたかに、甚だあきらかに浮びたりと謂はざらん
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
それから「只今は帰りがけに巴里によりて遊居候その内に帰朝致久振ひさしぶりにて御伺申すべく存候御左右その後いかが被為なされ入候。三十四年八月十八くれ秀三」
呉秀三先生 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ころさゞる事分明なり斯ても菊が仕業しわざなりと疑ふと申されしかば彌吉も粂も恐れ入て今更いまさら面目なく聊かも疑念ぎねん是なき段申立たり依て越前守殿お菊が腰繩こしなは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
空中楼閣くうちゅうろうかく的模擬発明よりも奇なるホンモノの発明もまた、無からずしてならんすなわち、商工省特許局発行の広報より抜粋ばっすいして次に数例を貴覧に供せんとす。
発明小僧 (新字新仮名) / 海野十三佐野昌一(著)
「みな極楽安養すべきこと、何ぞ疑ひこれあるべく候、片時も今生の暇、こいねがふばかりに候」と結んで居る。
島原の乱 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
このおん前様御心底は奈何いかがに候。私存じ候には、同刻御自身の思召おぼしめしにて馬喰町へ御出被成候方宜敷おんいでなされそろかたよろしく候様存じ候。田原町たわらちょう一寸ちょっと御立寄被成候おんたちよりなされそうろう御出被成度おんいでなされたく存じ候。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
其時又壱人を打しが中りし分り不申処、敵壱人障子の蔭より進ミ来り、脇指を以て私の右の大指の本をそぎ左の大指の節を切割、左の人指の本の骨節を切たり。
尚々御預り申上居り候(書籍並に画の道具類)御送付可申上もうしあぐべき如何一寸御命じ被下度候
仙人掌の花 (新字新仮名) / 山本禾太郎(著)
苦楽寵辱ちょうじょく人生之呼吸也。達者ニ在ッテハ何ゾ必ズシモ其にわカニ至ルヲ驚カン
不審庵 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ことさらに皇国の歌はなど言はるるは例の歌より外に何物も知らぬ歌よみの言かと被怪あやしまれ候。「いづれの世にいづれの人が理窟を読みては歌にあらずと定め候」とは驚きたる御問おんといに有之候。
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
右の者商人の身ながら元来賄金まひなひきんを請ひ、府下の模様を内通致し、あまつさへ婦人を貪り候段、不届至極につき、一夜天誅を加へ両国橋上にさらし候所、何者の仕業に候、取片附け候段、不届かつ不心得につき
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と相変らずしとやかなものの言いよう
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
河中へ投込候ものと相見え今以て行方相知れ不申候もうさずそろ又土蔵へ忍入りしやわたくし所持の衣類金銀ともことごとく盗取り逃去り候跡へ我等参合まいりあわせきよと申す下婢かひに相尋ね候処驚怖の余りおのれの部屋に匿れ潜みおり候えば賊の申候言葉ならびいずれへ逃去候しか不相分あいわからず申出候もうしいでそろしかるに一応家内取調申候処庭前ていぜん所々しょ/\に鮮血の点滴有之これあり殊に駒の緋絹縮ひぎぬちゞみ下〆帯したじめおびりゅうの単物ひとえもの血に染み居候まゝ打棄うちすて有之候間此段御訴申上候
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
久しく御消息に接せず御近況如何いかがに候。本年は残暑の後意外の冷気に加へて昨今の秋霖しゅうりん御健康如何やと懸念けねんに堪へず候。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
中央の知識人でさえ「——いかゞ成行なりゆくべきらん」とたほどのおびえを抱いたのであるから、地方民の心には、もっと恟々きょうきょうとしたものがあったであろう。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御辺の行跡何とも無分別むふんべつに候、行末何になるべき覚悟に……弓馬は男の業也わざなり器用も不器用も不入候可いらずそうろうべく稽古事也、国をおさむ文武二道なくては更にかなうべからず候
桶狭間合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
水のあわとなし其上此度の大罪私しに於ても何故なにゆゑに右樣所業しよげふ致し候更々さら/\分明わかり申さず候と申立る依て一同へも段々だん/\手續てつゞき尋問たづねに相成翌日又々久八六右衞門兩人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
徴士横井平四郎を殺害に及候儀、朝憲を不憚はゞからず以之外之もつてのほかのことに候。元来暗殺等之所業、全以すべてもつて府藩県正籍にれつし候者には不可有事あるべからざることに候。万一壅閉之筋ようへいのすぢを以て右等之儀に及候
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
その罪のゆゑに男は苦み、その苦の故に女は憂ふるとば、彼等は誠に相愛あひあいするの堅き者ならず
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
おくし候とお尋ねなされ候ところ、につことゑみを浮べ給ひ、何しに臆しはべらん、されど此の死顔のていを御覧ぜよ、定めし坊主は生きたる空もなき心地にて侍らんものを
なんとくしたがそのもつとおほい(五三)彰明しやうめい較著かうちよなる者也ものなり近世きんせいいたるがごとき、(五四)操行さうかう不軌ふきもつぱ(五五)忌諱ききをかし、しか終身しうしん逸樂いつらくし、富厚ふうこうかさねてえず。
乍失敬しっけいながら俳句を十分に研究せずして、蕪村の句も月並宗匠の句も大同小異位に思はるるには無之候。歌よみが歌を天下第一の如く思ふと同じく、詩人が詩を天下第一の如く思ふも珍しき事にはあらず。
人々に答ふ (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
しかる処また/\別のかんがえいつともなく胸中きょうちゅうに浮び来り申候。それはの金子今も果して樹上の穴に有之候否や。
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
但馬殿も我なから我をわすれられ候、さて上手かなと被申まをされ候つる、藤永、朝長、いづれも/\出来申候、不存候者之ぞんぜずさふらふものの目に、さあるべきやうに見申みまをすかよき上手と申候間
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
嫡子ちやくしに立られ候然耳しかのみならず藤五郎ならびに藤三郎儀は先平助實子に付始終しじうすけ五郎ため相成あいなり申さずと存じられ候藤五郎は座敷らう押入おしいれ食物しよくもつを相とゞめ藤三郎儀は幼少えうせうに之有候を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
孔子こうしいにしへ仁聖じんせい賢人けんじん(一七)序列じよれつする、太伯たいはく伯夷はくいともがらごときもつまびらかなり。ところもつてすれば、(一八)由光いうくわういたつてたかし。(一九)其文辭そのぶんじすこしも概見がいけんせざるはなん
如此申上候へ、私も其事に関係仕候者に右様申上候と御疑も可被為あらせらるべく在奉存候ぞんじたてまつりそろ
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
かの烈々れつれつたる怨念おんねんの跡無く消ゆるとともに、一旦れにし愛慕の情は又泉のくらんやうに起りて、その胸にみなぎりぬ。苦からず、人き後の愛慕は、何の思かこれに似る者あらん。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
余コレヲ留メテ曰クメヨ止メヨト。毅堂大声ニ曰ク朋友ほうゆうノ誼ハ重シ。瑣々ささタルノ禁何ゾ意トスルニ足ラン。春濤ラ要シテ遂ニ止ム。ともづなたつノ口ニ解ク。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
生死のほども如何いかが相なり候と、恐る/\のぞき申候に、崖はなか/\険岨けんそにて、大木たいぼくよこざまに茂り立ち候間より広々としたる墓場見え候のみにて、一向に人影も無御座ござなく候。
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)