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僻
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ひが
ふりがな文庫
“
僻
(
ひが
)” の例文
想へば、
那
(
か
)
の
氣高
(
けだか
)
き
﨟
(
らふ
)
たけたる横笛を
萍
(
うきくさ
)
の浮きたる
艷女
(
たをやめ
)
とは
僻
(
ひが
)
める我が心の誤ならんも知れず。さなり、我が心の誤ならんも知れず。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
能登路の可心は、
僻
(
ひが
)
みで心得違いをしたにしろ、憎いと思った女の、
過
(
あやま
)
って
生命
(
いのち
)
を失ったのにさえ、半生を
香華
(
こうげ
)
の料に捧げました。……
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しからずば何となく気が
急
(
せ
)
いて、出て行けがしにされるような
僻
(
ひが
)
みが起って、どうしても長く腰を落ち付けている事は出来ない。
銀座界隈
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
今可愛がって戴いても、十五年二十年たつと、あの奥さんのように
僻
(
ひが
)
まなければならないでしょうから、今の中に諦めますと言い出した。
妻の秘密筥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
遠い国許にいる
知辺
(
しるべ
)
の顔が、みな
嘲笑
(
ちょうしょう
)
の歯を向けているように
僻
(
ひが
)
まれる。いや僻みではない、当然そう思われているに違いない。
死んだ千鳥
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
弁信のみが、彼女の
僻
(
ひが
)
めるすべての性格を忘れて、
本然
(
ほんねん
)
の、春のように融和な、妙麗なお銀様の本色を知ることができるらしくあります。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そりやあ、もう、新平民か新平民で無いかは
容貌
(
かほつき
)
で解る。それに君、
社会
(
よのなか
)
から
度外
(
のけもの
)
にされて居るもんだから、性質が非常に
僻
(
ひが
)
んで居るサ。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
戦勝者の持つ
復讐心
(
ふくしゅうしん
)
や侵略思想を
綺麗
(
きれい
)
さっぱりと
抛
(
なげう
)
ち、戦敗者の持つ自卑自屈と
僻
(
ひが
)
みとを一切捨て去って、愛と正義と自由と平等との中に
非人道的な講和条件
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
「そうかしら、僕はいい人かね。僕は買物をしても嘗て一度も有難うって礼を云われた験がないんだ。
僻
(
ひが
)
まざるを得ないね。」
西隣塾記
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
これなぞも
僻
(
ひが
)
んでとれば向う新家が秘かに世間に手を廻して、当てつけがましく自家に取り込んだようにしか思われなかった。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
それからも一つ
僻
(
ひが
)
まうとする
彼
(
かれ
)
の
心
(
こゝろ
)
を
爽
(
さわや
)
かにするのは
與吉
(
よきち
)
であつた。
疾
(
とう
)
から
甘
(
あま
)
え
切
(
き
)
つて
居
(
ゐ
)
る
與吉
(
よきち
)
は
卯平
(
うへい
)
の
戸口
(
とぐち
)
に
立
(
た
)
ち
塞
(
ふさ
)
がつては
錢
(
ぜに
)
を
請
(
こ
)
うた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
要するに奥さん始め
家
(
うち
)
のものが、
僻
(
ひが
)
んだ私の眼や疑い深い私の様子に、てんから取り合わなかったのが、私に大きな幸福を与えたのでしょう。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そう
仰
(
お
)
っしゃるのも一往はきこえておりますけれども、まえ/\から家来どもがじぶんをばかにするという
僻
(
ひが
)
みをもっていらっしゃるところへ
盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
今日はお店は休みだ、もう誰にも酒は売ってやらない、とひとりで
僻
(
ひが
)
んで、自転車に乗り、
何処
(
どこ
)
かへ行ってしまいました。
老ハイデルベルヒ
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
抑
(
そもそ
)
もまた文三の
僻
(
ひが
)
みから出た
蜃楼海市
(
しんろうかいし
)
か、
忽然
(
こつぜん
)
として生じて思わずして
来
(
きた
)
り、
恍々惚々
(
こうこうこつこつ
)
としてその
来所
(
らいしょ
)
を知るに
由
(
よ
)
しなしといえど、何にもせよ
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
多少の嫉妬と
僻
(
ひが
)
みとを交へた感じで白川は疎々しくなることを望ましい事とは思はぬながら足は彼の門から遠ざかつた。
瘢痕
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
「お金のことがそうだと云うんでしょう。だからあなたは素直でないのよ。お金ということにいやにこだわるのは、あなたに
僻
(
ひが
)
みがあるからよ。」
反抗
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
常に心を
苛立
(
いらだ
)
たせて、神経過敏になっているその役にも立たなくなった焦噪の証拠を、何か別の事物へなすりつけようとする
僻
(
ひが
)
み根性であろうか。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
「まア黒ちゃん、ソンナこというもんじゃないわよ、あんた、あたしを疑ぐってんの、そんなに
僻
(
ひが
)
むもんじゃないわよ」
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
待っているんだと
僻
(
ひが
)
んだこともありました、けれどもそればかりじゃあありません、あっしは初めから、矢面に立つのは自分だときめていたんです
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
拳闘
(
けんとう
)
の
某氏
(
ぼうし
)
のように責任を感じて
丸坊主
(
まるぼうず
)
になったひともいましたが、やはり
気恥
(
きはず
)
かしさや
僻
(
ひが
)
みもあり張り
詰
(
つ
)
めた気も
一遍
(
いっぺん
)
に折れた、がっかりさで
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
したがって、その親たちが平生から色々の附届けをするので、師匠もかれらの贔屓をするのであろうという、一種の
僻
(
ひが
)
みも幾分かまじっているのです。
三浦老人昔話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
同時に何か
僻
(
ひが
)
んだところのなくもない侮蔑を抱いているようなところ、彼の身の上話を聞けば、はっきりそれらの心理的な原因が理解されるのであった。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
主人の肉親というものはとかく
僻
(
ひが
)
みをもって視られ易い傾向があるから、私は精一郎を褒めることは遠慮します。
一商人として:――所信と体験――
(新字新仮名)
/
相馬愛蔵
、
相馬黒光
(著)
仄暗
(
ほのぐら
)
いうちに起きて家人の眼をかくれ井戸端でお米を
磨
(
と
)
いだりして、眠りの邪魔をされる悪口ならまだしも、私が
僻
(
ひが
)
んで便所に下りることも気兼ねして
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
しかも私の
僻
(
ひが
)
みかは知らないが、例のロザリオ青年の運んで来た調査書類を繰りながらも、なんとなく私と視線を合わせることを
憚
(
はばか
)
っているかのように
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
この想像の中に、彼のあらゆる
僻
(
ひが
)
みも
傲
(
おご
)
りも、またいらだたしさもが発してゐる。曾根至はこの
登攀
(
とうはん
)
についての告知を、そ知らぬ顔で目をつむつて聞いた。
垂水
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
しかしまた籍のことなども言っていたし、初めて
逢
(
あ
)
った自分に愛情を感じたように取れば取れないこともなく、悪く取るのは
僻
(
ひが
)
みだとも思えるのであった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そんなに病気が恐いか、あまり薄情だと言ふ
僻
(
ひが
)
みも起つた。お桐は妹のお夏にこの事を話して二人で泣いた。
厄年
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
おれを
僻
(
ひが
)
ませようっていうのか。大体ふだんから、そういうところが見える。おれは
三月
(
みつき
)
も両親のそばを離れていると、もう会いたくってしょうがないんだ。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
私が何かにつけて、物事を
僻
(
ひが
)
んでいやしないかと、しょっちゅうそれを向うで僻んでいるの。父は
継母
(
はは
)
に気兼ねして、私の事は何んにも口に出して言わないの。
橋
(新字新仮名)
/
池谷信三郎
(著)
「あの人がじぶん勝手な
僻
(
ひが
)
みでどういう考え方をしようと、それにあたしたちまでひき
摺
(
ず
)
られるわけはありません。ねえ、ヤンはヤン、こっちはこっちですわ」
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
頭脳
(
あたま
)
のわるい男女、不健康な男女、酒におぼれ女におぼれて立ち帰ることを知らない人々、勝気のために臆病のためにわがままのためにいろいろの
僻
(
ひが
)
みのために
おさなご
(新字新仮名)
/
羽仁もと子
(著)
しかし腹の底にはこういう
僻
(
ひが
)
みを持っていても、人の好意に
負
(
そむ
)
くことは
甚
(
ひど
)
く心苦しく思っているのだ。
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
そしてさう云ふ馬鹿々々しい『
潔
(
いさぎ
)
よさ』に負けない丈けの強さと
僻
(
ひが
)
みを持つた人は無理に悪魔主義になつてその尊い生命を持ちくづし、
自棄
(
やけ
)
に棒に振つて了ふのです。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
両親に疎まれ、他人にあなづられて、心の
僻
(
ひが
)
み愈々
増
(
まさ
)
り
募
(
つの
)
るのみなりしが、たゞ学問と、武芸の道のみは人並外れて出精し、藩内の若侍にして、わが右に出づる者無し。
白くれない
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それが彼を苦労人にも仕上げてゐるが、
僻
(
ひが
)
んだ心も植えつけてゐる。そして我儘な人だつた。その我儘は、むしろ左門が
劬
(
いた
)
はつてやりたい悲しい我儘のたぐひであつた。
吹雪物語:――夢と知性――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
「はゝゝ、閣下も、貧乏をお続けになったために、
何時
(
いつ
)
の間にか、
僻
(
ひが
)
んでおしまいになったと見える。此の荘田が、誠意誠心申上げていることが、お分りにならない。」
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
つまり夫人が余り美しかったのと、想像以上に豪奢な生活振りだったのとで、
嫉
(
ねた
)
ましくもなり、一方ではお金で外国へ追っぱらわれるというような
僻
(
ひが
)
みも出たんでしょう。
鉄の処女
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
老優は上着を着終るのも待たず
白襯衣
(
ブランシユシユミイズ
)
の上へ
袴
(
パンタロン
)
を
穿
(
は
)
いた
儘
(
まゝ
)
、ロダンの彫像が動き出した様な
悠然
(
のつそり
)
した老躯を進めて、嵐の海の様に白い大きな二つの
僻
(
ひが
)
ら目で見
下
(
おろ
)
しながら
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
そして其実、彼自身の優越から来る、一種忠告慾に駆られてゐるのだ。——とかう裏の裏を見ずにゐられなかつた。かう
僻
(
ひが
)
んで来ると、私はもう素直な答へが出来なかつた。
良友悪友
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
そこがそれ情慾に迷って、思う儘欲しいまゝに貪り、憎いの
可愛
(
かあい
)
いの、
嫉
(
ねた
)
みだの
猜
(
そね
)
みだの、
詐
(
いつわ
)
り
僻
(
ひが
)
みなどと
仇
(
あだ
)
ならぬ人を仇にして、末には我から我身を捨てるような事になり
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
安楽ばかりの生活はない、苦痛ばかりの生活もない。そこで私はお前達に云うよ。
僻
(
ひが
)
むな、そうして
物羨
(
ものうらや
)
みをするな。楽しかったと思ったものは、窮屈だったことを思うがいい。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
この静かな挨拶に、英三とても自らの
僻
(
ひが
)
んだ性根に
赭
(
あか
)
くなって恥入ったくらいだった。
雷
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それはその後
反芻
(
はんすう
)
される毎に、次第に苦味を増すかに覚える。——こういうのが恐らく落目になった老人の
僻
(
ひが
)
み根性というものであろう、しかし私はそれをどうすることも出来ない。
御萩と七種粥
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
物
(
もの
)
いはゞ
振切
(
ふりき
)
らんず
袖
(
そで
)
がまへ
嘲
(
あざけ
)
るやうな
尻目遣
(
しりめづか
)
ひ
口惜
(
くちを
)
しと
見
(
み
)
るも
心
(
こゝろ
)
の
僻
(
ひが
)
みか
召使
(
めしつか
)
ひの
者
(
もの
)
出入
(
でいり
)
のもの
指
(
ゆび
)
折
(
を
)
れば
少
(
すくな
)
からぬ
人數
(
にんず
)
ながら
誰
(
た
)
れ
一人
(
ひとり
)
として
我
(
わ
)
れ
相談
(
さうだん
)
の
相手
(
あひて
)
にと
名告
(
なのり
)
出
(
い
)
づるものなし
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
大臣は思っていることを残らず外へ出してしまわねば我慢のできないような性質である上に老いの
僻
(
ひが
)
みも添って、ある点は
斟酌
(
しんしゃく
)
して言わないほうがよいなどという遠慮もなしに雄弁に
源氏物語:10 榊
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
資通
大弐
(
だいに
)
、この琵琶を
弾
(
ひ
)
くに調べ得ず、その父
済政
(
なりまさ
)
、今日この琵琶
僻
(
ひが
)
めり、弾くべからざる日だと言うた、経信白川院の御遊に、呂の遊の後律に調べるについに調べ得ず、古人のいう事
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
だが、困つた事には、醜い
面付
(
つらつき
)
をした者は、
何
(
ど
)
うかすると心までが
僻
(
ひが
)
んで来る。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
重武の方にも
僻
(
ひが
)
みがあったし、それに何といっても行儀などは出来ていないので、召使までが蔭口をいうような有様で、重武を不良にしたのは、重行始め周囲のものの責任ともいえるのだ。
黄鳥の嘆き:——二川家殺人事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
僻
漢検準1級
部首:⼈
15画
“僻”を含む語句
偏僻
僻見
辺僻
僻境
僻郷
僻地
僻目
僻陬
僻村
僻耳
僻遠
僻事
僻論
僻説
僻在
山間僻地
僻邑
僻易
僻辺
僻言
...