値段ねだん)” の例文
別に購ふ氣もないが、値段ねだんづけてもしてあると其も見る。カン/\日の照付るのを嫌ツて、由三は何時か日の昃ツた側を歩いてゐた。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
やはり少し涼しそうに見えて風にでもよくそよぐやつはそれ相当に値段ねだんが高い、やはり銭相当の戦ぎようをする、というのである。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
自転車屋じてんしゃやみせに、古自転車ふるじてんしゃが、幾台いくだいならべられてありました。タイヤはよごれて、車輪しゃりんがさびていました。一つ、一つに値段ねだんがついていました。
とびよ鳴け (新字新仮名) / 小川未明(著)
それに値段ねだん不廉たかいものだからといふのであつた。勘次かんじはそれでもいくぐらゐするものかとおもつていたら一罎ひとびんが三ゑんだといつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
獣医じゅういはその雌牛めうしのはづな(口につけて引くつな)をおさえていたにぶい顔の百姓ひゃくしょうに、その雌牛の値段ねだんはいくらかとたずねた。
それもお値段ねだんによりけり……川向かはむかうに二三げんある空屋あきやなぞは、一寸ちよつと紙幣さつ一束ひとたばぐらゐなところはひる、とつてた。
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私も一番よい血角を求めて来ましたが、しかしその角は余り大きくなって居らんものですから値段ねだんも少し安かった。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
値段ねだんが高ければ高いほど、それが気にいりました。それもそのはずです。職人はいつも、おかねでいっぱいのさいふをもっているようなものなんですからね。
ひげするんではない、吾身わがみいやしめるんだ、うすると先方むかうでは惚込ほれこんだと思ふから、お引取ひきとり値段ねだんをとる、其時そのとき買冠かひかぶりをしないやうに、掛物かけものきずけるんだ。
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
たぬき毛皮けがは大變たいへんやくつもので、値段ねだんたかいのです。きつねたぬきむかしひとばかすものとしんじられたりしましたが、けつしてそんなばかげたことがありるわけもありません。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
爲替相場かはせさうばあがることは日本にほん通貨つうくわ對外價値たいぐわいかちあがることであるから外國ぐわいこくから直接ちよくせつ輸入ゆにふせらるゝものはこと/″\値段ねだんやすくなる、一ヤール五ゑん羅紗ラシヤが五ゑん五十五せんであつたものが
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
正成はそれをつかまえて、物の値段ねだんをきいたり、去年の作物の刈入れをたずね、また東国のことしの正月はどんな? ——などとそれからそれへ雑談を求めてむこともない。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「こんな書籍ほんを並べて置いたって、売ると成れば紙屑かみくず値段ねだんだ」——こう言うほど商人気質しょうにんかたぎの父ではあったが、しかし三吉はこの老人の豪健な気象を認めずにはいられなかった。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ランチュウのがありまして、こいつは、うまくそだてりや、たいしたものになるでしよう。いえ値段ねだんはいいです。さしあげるんですよ。えさは、当分とうぶんのうち、たまご黄身きみにしてください。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
他の村人が、あまり値段ねだんが高いじゃないかと注意したら、売り主の曰く、そりゃちったア高いかもんねえが、何某なにがしさんは金持かねもちだもの、此様な時にでもちったうけさしてもらわにゃ、と。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
この剪定鋏せんていばさみはひどくねじれておりますから鍛冶かじに一ぺんおかけなさらないと直りません。こちらのほうはみんな出来ます。はじめにお値段ねだんめておいてよろしかったらおぎいたしましょう。
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
会堂に掛けたる『スツヂイ』二つ三つ、値段ねだん好く売れたるあかつきには、われらは七星われらは十傑、われらは十二使徒とほしいままに見たてしてのわれぼめ。かかるえりくずにミネルワの唇いかで触れむや。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
たとえば昔なら物を造る者とこれを用うる者が直接に出会であって、相談のうえに物々交換ぶつぶつこうかんを行った。こういう場合には値段ねだんを定むるに両者間の承諾しょうだくの上に成るから、互いの満足のもとに終わる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
まつたくね。これぢやだれだつて、つてけないわ。御肴おさかな切身きりみなんか、わたし東京とうきやうてからでも、もうばいになつてるんですもの」とつた。さかな切身きりみ値段ねだんになると小六ころくはうまつた無識むしきであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いつぞや小勝わたくしが牛込の夜見世を素見ひやかしたら、あッたから見ると、団扇は団扇だが渋団扇でげす、落語家がすててこを踊ッている絵が描いてあるから、いくらだと聴きましたら、値段ねだんがわずかに八厘
随筆 寄席囃子 (新字新仮名) / 正岡容(著)
『お値段ねだんのところはどうでせう、やはり前のと同じやうに……』
(新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
外国人へも売るか。「値段ねだん次第、誰にでも、又何ほどにても。 ...
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
あちらにいったり、こちらにきたりして、自分じぶんにいったうまや、うしがあると、その値段ねだんを百しょういていました。そして
百姓の夢 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ある人は、ごく安い値段ねだんで一ぴき買って帰ってみると、しっぽがにせものであったことがわかったという話も聞いた。
そのあり余る羊毛を自分の国だけで使うということになれば、また以前もとのごとくに値段ねだんが下って来るでしょう。値段が下れば遊牧民は金を得ることが出来ない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
勘次かんじ工事こうじがどんなことかもらなかつたが一にち手間てまが五十せん以上いじやうにもなるといふので、それがその季節きせつとしては法外はふぐわい値段ねだんなのにんでしまつたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さうしてると昨年さくねんの一ぐわつからの一ぐわつ十一にちまでやく箇年かねんあひだ外國ぐわいこくから直接ちよくせつ輸入ゆにふするもの値段ねだんは、六箇月かげつあひだに四りんあがつて、さうしてつぎの六箇月かげつあひだに一わりさがつたわけである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
中にすこぶる気に入ったのが一つあったから、それを取ることに定めて、値段ねだんただすと一円ということであった。すなわち懐中かいちゅうに持参の一円紙幣を払ってからの紙入れを家に持って帰ったことがある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「お値段ねだんのところはどうでせう、やはり前のと同じやうに……」
また、食料品しょくりょうひんっている場所ばしょには、とお西にしくにからも、みなみくにからも名物めいぶつあつまっていました。そして、それにもたか値段ねだんがついていました。
都会はぜいたくだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしはせっかくのおくり物が、バルブレンのおっかあのやっかいになってはならないと思う。さしあたりだいじなことは、雌牛の値段ねだんを知ることであった。
で茶二きんを固めたところの長方形の茶塊かたまり(長さ一尺幅六寸五分厚さ三寸)一個が、我々がラサ府で買います値段ねだんが二円七十五銭。それは番茶のごく悪いのである。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
かりこゝ外國ぐわいこくから輸入ゆにふする羅紗ラシヤ一ヤールの値段ねだんが五ゑんとすると、爲替相場かはせさうばが一わりさがつてればそれを五ゑん五十五せんでなければへぬのである。棉花めんくわ同樣どうやうである。輸入ゆにふてつ同樣どうやうである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
わたしはガロフォリのにたかれている古材木の出所と値段ねだんもわかったように思った。
「いいや、この子の使い道はそこいらが相応そうおう値段ねだんだ」