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一所
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ひとところ
ふりがな文庫
“
一所
(
ひとところ
)” の例文
それを
私
(
わし
)
は利用した。で昨夜根岸へ行った。すると白粉が引いてあった。そこで俺はその
一所
(
ひとところ
)
へ、丹砂剤をうんと振り撒いたものさ。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
俗
(
よ
)
に言伝える。
天狗
(
てんぐ
)
、
狗賓
(
ぐひん
)
が
棲
(
す
)
む、巨樹、大木は、その幹の
肢
(
また
)
、枝の
交叉
(
こうさ
)
の
一所
(
ひとところ
)
、
氈
(
せん
)
を伸べ、床を磨いたごとく、清く滑かである。
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
もっとも目録とは云いながら、実物はすべて城中のあちこちに変な風にチラバッておったものを
一所
(
ひとところ
)
へ集めたものではあるですが。
作男・ゴーの名誉
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
それはやはり火のように
燃
(
も
)
えておりました。けれども気のせいか、
一所
(
ひとところ
)
小さな小さな
針
(
はり
)
でついたくらいの白い
曇
(
くも
)
りが見えるのです。
貝の火
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
今朝、草庵を出る時は、落葉で埋まっているほどだった門口が、きれいに掃かれていて、しかもその落葉まで
一所
(
ひとところ
)
に集めて焼いてある。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
わたくしもわたくしの同棲者も元来が
或
(
あ
)
る信念の上に立つと
従順
(
じゅうじゅん
)
な人間になり生活意識や
情操
(
じょうそう
)
が
一所
(
ひとところ
)
に
集注
(
しゅうちゅう
)
するたちと見えます。
家庭愛増進術:――型でなしに
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
石は外界の刺戟なしには永久に
一所
(
ひとところ
)
にあって、永い間の中にただ滅して行く。石の方から外界に対して働きかける場合は絶無だ。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
冬
(
ふゆ
)
の
日
(
ひ
)
は、
昼過
(
ひるす
)
ぎになると、
急
(
きゅう
)
に
光
(
ひかり
)
がうすくなるのでした。
枯
(
か
)
れ
残
(
のこ
)
ったすすきの
葉
(
は
)
が
黄色
(
きいろ
)
くなって、こんもりと
田
(
た
)
の
中
(
なか
)
に
一所
(
ひとところ
)
茂
(
しげ
)
っていました。
すずめ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
こう書くと、何だか、長く
一所
(
ひとところ
)
に立っていて、さあ御覧下さいと云わないばかりに振舞ったように思われるがそうじゃない。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ただの
一所
(
ひとところ
)
も、——思想でも、言葉でも、動作でも。——ところが、先週の月曜日以来と云うもの、私たちの間には急に隔たりが出来たんです。
黄色な顔
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
一所
(
ひとところ
)
の本屋の
主人
(
あるじ
)
である、
肥
(
こえ
)
太つた体へこてこてと着込んだ婆さんが僕をつかまへて「新しいロスタンの脚本なんかよりユウゴオ物をお読みなさい」
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
なかなかよく出来たと
嬉
(
うれ
)
しくなる。しかし、
一所
(
ひとところ
)
気に入らないところがある。初めから、すらすらと読んでゆくと、そこの所でひつかかる。ここがどうもまづい。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
一所
(
ひとところ
)
に釘づけされたようになっていた照空灯が、右に左に活溌に首をふりうごかしはじめた。監視中の日本機はどこへ行ったか、急に姿を隠してしまったのである。
浮かぶ飛行島
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それもちゃんと
一所
(
ひとところ
)
に止ったまま、ホヤを
心棒
(
しんぼう
)
のようにして、勢いよく廻り始めたのです。
魔術
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
なれどもその頃はまだ小さく
場
(
ば
)
取らず、胸に在ッても邪魔に成らぬ
而已
(
のみ
)
か、そのムズムズと
蠢動
(
うごめ
)
く時は世界中が
一所
(
ひとところ
)
に集る如く、又この世から極楽浄土へ往生する如く、又春の日に
瓊葩綉葉
(
けいはしゅうよう
)
の間
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
お色の
倚
(
よ
)
っていた欄干から、二間ほど離れた
一所
(
ひとところ
)
に、五、六人の
乞食
(
こじき
)
が
集
(
たか
)
っていた。往来の人の袖に縋り、
憐愍
(
あわれみ
)
を乞う
輩
(
やから
)
であった。
銅銭会事変
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
肉の眼で恐ろしい夢でも見るように、産婦はかっと
瞼
(
まぶた
)
を開いて、あてどもなく
一所
(
ひとところ
)
を
睨
(
にら
)
みながら、苦しげというより、恐ろしげに顔をゆがめた。
小さき者へ
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
風の少ない晩であったが、動かないで長く
一所
(
ひとところ
)
に立ち尽すものに、寒さは
辛
(
つら
)
く当った。女は心持ち
顋
(
あご
)
を
襟巻
(
えりまき
)
の中に
埋
(
うず
)
めて、
俯目勝
(
ふしめがち
)
にじっとしていた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
短
(
みじか
)
いズボンをはいた、
二人
(
ふたり
)
の
少年
(
しょうねん
)
は、いつまでも
道
(
みち
)
の
一所
(
ひとところ
)
に
立
(
た
)
って、
名残
(
なごり
)
おしそうに
話
(
はなし
)
をしていました。
僕が大きくなるまで
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
綽空を初め、
蓮生
(
れんしょう
)
や、
念阿
(
ねんあ
)
などの弟子たちは、その暗い片隅に念仏の低い声がきこえたので、皆、その
一所
(
ひとところ
)
にかたまり合った。それが、師の
法然
(
ほうねん
)
だったのである。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
風のごとく駆下りた、ほとんど魚の
死骸
(
しがい
)
の
鰭
(
ひれ
)
のあたりから、ずるずると石段を
這返
(
はいかえ
)
して、揃って、姫を空に仰いだ、
一所
(
ひとところ
)
の鎌首は、
如意
(
にょい
)
に似て、ずるずると尾が長い。
貝の穴に河童の居る事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そればかりか、ふと気がつくと、
灯
(
あかり
)
の暗くなるのに従って、切り燈台の向うの空気が
一所
(
ひとところ
)
だけ濃くなって、それが次第に、影のような人の形になって来る。阿闍梨は、思わず
読経
(
どきょう
)
の声を断った。——
道祖問答
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
空色の面紗でも張り廻わしたように、蒼々と拡がっている夜光虫の光へ、
一所
(
ひとところ
)
クッキリと
斑点
(
しみ
)
を附け、桃色の灯火が燃えているのであった。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
すると
先刻
(
さっき
)
見た
梧桐
(
ごとう
)
の先がまた
眸
(
ひとみ
)
に映った。延びようとする枝が、
一所
(
ひとところ
)
で
伐
(
き
)
り詰められているので、
股
(
また
)
の根は、
瘤
(
こぶ
)
で
埋
(
うず
)
まって、
見悪
(
みにく
)
いほど窮屈に力が
入
(
い
)
っている。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それらは
一所
(
ひとところ
)
の森にかくれて、どこかで、気味のわるい夜鳥の
啼
(
な
)
き声がするなど、成程、世間の人が、
切支丹
(
きりしたん
)
屋敷という名にあわせて鬼気陰々たる所と想像しているのも
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
瞳は
一所
(
ひとところ
)
にじっと坐って、青みを
帯
(
お
)
んだ太い腕は力なげに動いていた。杉の木の闇で上下に飛んでいる羽虫のそれより無意味に、無気力に思われた。鼻が低くて丈が低い。顔は
円
(
まる
)
い。
悪魔
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
鏡に近づけた目のまわりの
白粉
(
おしろい
)
をぬぐい終わると、口びるを開いて美しくそろった歯並みをながめ、両方の手の指を
壺
(
つぼ
)
の口のように
一所
(
ひとところ
)
に集めて
爪
(
つめ
)
の
掃除
(
そうじ
)
が行き届いているか確かめた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
一所
(
ひとところ
)
、板塀の曲角に、白い
蝙蝠
(
こうもり
)
が
拡
(
ひろが
)
ったように、
比羅
(
びら
)
が一枚
貼
(
は
)
ってあった。
木の子説法
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私と甥とが足音を
偸
(
ぬす
)
み偸み、静にその小屋の前を通りぬけました時も、
蓆壁
(
むしろかべ
)
の
後
(
うしろ
)
にはただ、
高鼾
(
たかいびき
)
の声が聞えるばかり、どこもかしこもひっそりと静まり返って、たった
一所
(
ひとところ
)
焚き残してある
芥火
(
あくたび
)
さえ
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
火桶ばかりでは暖かさが足りぬと、部屋の
一所
(
ひとところ
)
に切ってある炉で、さっきから炭火を焚いていたが、兵衛はさらに炭を加えた。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
女ばかりは
恟
(
おび
)
えがちな寮に、
魁偉
(
かいい
)
な
優婆塞
(
うばそく
)
と美男の浪人が、果し合いの白刃を抜き交わしたので、老女や多くの
侍女
(
こしもと
)
は唯あれあれと、
一所
(
ひとところ
)
に群れ寄って、廊下は時ならぬ
花壇
(
かだん
)
となる。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
今迄下を向いて、眤と
一所
(
ひとところ
)
を
見詰
(
みつめ
)
ていた捕れた男は真青に血の気の失せた顔を上げて、ドシンと大地に下した鉞の方を
見遣
(
みや
)
った。が
直様
(
すぐさま
)
また下を向いて自分の膝のあたりを見詰めていた。
捕われ人
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
その裾を長く
曳
(
ひ
)
いた蔭に、円い姿見の如く、八田潟の波、
一所
(
ひとところ
)
の水が澄む。
霰ふる
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この心の底一面に
煮染
(
にじ
)
んだものを、ある不可思議の力で、
一所
(
ひとところ
)
に集めて
判然
(
はっきり
)
と熟視したら、その形は、——やっぱりこの時、この場に、自分の手のうちにある鳥と同じ色の同じ物であったろうと思う。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
愛子は
一所
(
ひとところ
)
をまたたきもしないで見つめながら
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
これより少しく前のことであるが、
栗栖野
(
くるすの
)
小野の
一所
(
ひとところ
)
に、木深い野の宮が立っていて、社殿の前の荒れた庭で、一人の老婆が
焚火
(
たきび
)
をしていた。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
其
(
そ
)
の
裾
(
すそ
)
を
長
(
なが
)
く
曳
(
ひ
)
いた
蔭
(
かげ
)
に、
圓
(
まる
)
い
姿見
(
すがたみ
)
の
如
(
ごと
)
く、
八田潟
(
はつたがた
)
の
波
(
なみ
)
、
一所
(
ひとところ
)
の
水
(
みづ
)
が
澄
(
す
)
む。
霰ふる
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「見つけたら、鉄砲をぶっ放すのだ、それを聞いたら、
一所
(
ひとところ
)
へ駈けて来い」
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一所
(
ひとところ
)
闇が千切られた。そこへ
楔形
(
くさびがた
)
の穴が
穿
(
あ
)
いた。焔が楔形に燃え上がったのであった。五人の者は火を囲んだ。風に消されまいと取り囲んだ。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そして、戸棚の物、
抽斗
(
ひきだし
)
の中の物、
納屋
(
なや
)
の物など、
一所
(
ひとところ
)
へ寄せ集めて
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
對岸
(
たいがん
)
(——
橋
(
はし
)
を
渡
(
わた
)
つて
俥
(
くるま
)
は
湯
(
ゆ
)
の
原
(
はら
)
の
宿
(
しゆく
)
の
裏
(
うら
)
を
眞正面
(
ましやうめん
)
の
坂
(
さか
)
を
上
(
のぼ
)
る——)に
五層
(
ごそう
)
七層
(
しちそう
)
を
連
(
つら
)
ねた
中
(
なか
)
に、
一所
(
ひとところ
)
、
棟
(
むね
)
と
棟
(
むね
)
との
高
(
たか
)
い
切目
(
きれめ
)
に、
樅
(
もみ
)
か
欅
(
けやき
)
か、
偉
(
おほい
)
なる
古木
(
こぼく
)
の
青葉
(
あをば
)
を
卷
(
ま
)
いて、
其
(
そ
)
の
梢
(
こずゑ
)
から
兩方
(
りやうはう
)
の
棟
(
むね
)
にかゝり
飯坂ゆき
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
山気にいくらか
暈
(
ぼか
)
されながらも月はいよいよ
冴
(
さ
)
え返り、月の真下の木曽川の水は
一所
(
ひとところ
)
蛇の鱗のように
煌々
(
きらきら
)
と銀色に輝いた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
一所
(
ひとところ
)
として空に映るまで花の多い処はない。
瓜の涙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一人は例の鏡太郎であり、もう一人は見知らない女であって、髷の
一所
(
ひとところ
)
が夕日を受けて、白く光っているのが見えた。
十二神貝十郎手柄話
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
おおよそ一里も歩いた頃に、小山の上に造られてある、城めいた建物を中心に、二百軒あまりの人家が立っている、そういう町のような
一所
(
ひとところ
)
へ来た。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
一所
(
ひとところ
)
に静止したかと思うと——ヒューッと鋭い音を立てて端然と坐っているオースチン老師の
法衣
(
ころも
)
の袖へ飛び込んだ。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「あっ」と専斎は
呼吸
(
いき
)
を呑んだが老人は見返りもしなかった。白い掛け布を
一所
(
ひとところ
)
スーと小刀で切ったものである。
大鵬のゆくえ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
空には富士山が
聳
(
そび
)
えている。その山骨の
一所
(
ひとところ
)
に騎馬武者が無数に
蠢
(
うごめ
)
いている。そうしてそこから矢が飛んで来る。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
声と一緒にガチンという錠を外す音が聞こえて来たがすぐその後からギーという戸の
軋
(
きし
)
る音が幽かにして、雪で蔽われた雑木林にボーと
一所
(
ひとところ
)
火影が
射
(
さ
)
した。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その時、きょとついたダンチョンの眼がある
一所
(
ひとところ
)
に据わったので、ラシイヌは「オヤ」と呟きながら、その方角へ眼をやった。はたしてそこには婦人がいた。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
“一所”の意味
《名詞》
一つの場所や地域。
同じ場所。
一緒。
(出典:Wiktionary)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
所
常用漢字
小3
部首:⼾
8画
“一所”で始まる語句
一所不住
一所二所