遠山とほやま)” の例文
建續たてつゞいへは、なぞへにむかうへ遠山とほやまいて、其方此方そちこちの、には背戸せど空地あきちは、飛々とび/\たにともおもはれるのに、すゞしさは氣勢けはひもなし。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ゆづりしとぞこゝに又丁山と小夜衣の兩人はほどなく曲輪くるわを出てたり姉の丁山二世と言替いひかはせし遠山とほやまかん十郎と云し人も病死なせしかば其跡を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
丁度ちやうどその頃高等師範をお出になつた遠山とほやまさんと云ふ方が東京から私等の先生になりに来て下さいました。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
土井は大目附時田肇ときだはじめに、岡野小右衛門こゑもん、菊地鉄平、芹沢せりざは啓次郎、松高縫蔵まつたかぬひざう安立讃太郎あだちさんたらう遠山とほやま勇之助、斎藤正五郎しやうごらう、菊地弥六やろくの八人を附けて、これに逮捕を命じた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
くもかゝる遠山とほやまはたといふのは、くものかゝつてゐる景色けしきが、えてゐるのではありますまい。おそらく西行さいぎようつたひとが、西行さいぎようおなじように、遠山とほやまにかすかな修道しゆどう生活せいかつをしてゐる。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
遠山とほやまに沈む斜陽のうす黄色の中に、うすら寒い谷の影を、描き出されるやうになつた。
天竜川 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
遠山とほやまゆきのはるけさ。
第二海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ふく姿すがた高下かうげなくこゝろへだてなくかきにせめぐ同胞はらからはづかしきまでおもへばおもはるゝみづうをきみさまくはなんとせんイヤわれこそは大事だいじなれとたのみにしつたのまれつまつこずゑふぢ花房はなぶさかゝる主從しゆうじうなかまたとりや梨本なしもと何某なにがしといふ富家ふうかむすめ優子いうこばるゝ容貌きりやうよし色白いろじろほそおもてにしてまゆかすみ遠山とほやまがたはなといはゞと比喩たとへ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
はじめ遠山とほやまくも薄衣うすぎぬすそに、ちら/\としろく、つめたひかつてはしした、みづいろはるかのぞんだときは、にしきふすまけた仙宮せんきうゆきうさぎた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その遠山とほやまばた——このはたは、やまそばといふことでなく、やはり、やまはたけでせう——そのあきくもが、えずかゝつてゐるはずの、とほ山家やまがはたけのあるところが、あきるといふと
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
なほ見ゆ、遠山とほやまさきごとそばだつ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
秩父ちゝぶ遠山とほやま筑波山つくばやま
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
司馬相如しばさうじよつま卓文君たくぶんくんは、まゆゑがきてみどりなることあたか遠山とほやまかすめるごとし、づけて遠山ゑんざんまゆふ。武帝ぶてい宮人きうじんまゆ調とゝのふるに青黛せいたいつてす、いづれもよそほふに不可ふかとせず。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
遠山とほやまに沈み去り
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
みちにさした、まつこずゑには、むさらきふじかゝつて、どんよりした遠山とほやまのみどりをけた遅桜おそざくらは、薄墨色うすずみいろいて、しか散敷ちりしいた花弁はなびらは、ちりかさなつてをこんもりとつゝむで、薄紅うすあかい。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
遠山とほやまひだ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
やなぎおくに、けて、ちひさな葭簀張よしずばり茶店ちやみせえて、よこ街道かいだう、すぐに水田みづたで、水田みづたのへりのながれにも、はら/\燕子花かきつばたいてます。はうは、薄碧うすあをい、眉毛まゆげのやうな遠山とほやまでした。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
またてく/\とぬま出向でむく、と一刷ひとはいたかすみうへへ、遠山とほやまみねよりたか引揚ひきあげた、四手よつでいてしづめたが、みちつてはかへられぬ獲物えものなれば、断念あきらめて、こひ黄金きんふなぎんでも、一向いつかうめず
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
遠山とほやまゆきかげすやうで、夕餉ゆふげけむり物寂ものさびしうたにおちる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)