“遂(つ)” の例文
其後(そのご)は物(もの)ごとに念(ねん)を入(い)れて、遂(つ)ひに麁想(そそう)をせぬやうに成(な)りぬ、世間(せけん)に下女(げぢよ)つかふ人(ひと)も多(おほ)けれど、山村(やまむら)ほど下女(げぢよ)の替(かは)る家(いゑ)は有(あ)るまじ、月(つき)に二人(ふたり)は平常(つね)の事(こと)
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
違(ちげ)えねえ、側に居たなア、何を云やアがるんで、耄碌(もうろく)ウしてえるんだ、あん畜生(ちきしょう)、ま師匠腹を立(たっ)ちゃア往(い)けねえヨ、己は遂(つ)い慌(あわ)てるもんだから凹(へこ)まされたんだ
約一年許(ばか)りもこうしてやっていたが、此の土地は非常に湿気が多い為め、遂(つ)い急性のトラホームを患(わずら)った。
私の経過した学生時代 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
飛んでもない別のことをまくしたてた挙句(あげく)に「お前のようなスネークにはもう二度と会わん」と云って、遂(つ)い又散々殴ったり蹴飛ばしたりして泣きほろめいて戻ってきた。
小さな部屋 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
狂熱(きょうねつ)し易(やす)い弱い脳の私は刺戟されて、遂(つ)いうつらうつらと酔った様になってしまう、真黄(まっきい)な濃厚な絵具を野(の)一面にブチ撒(ま)けたらしい菜の花と、例の光線が強く反射して私の眼はクラクラと眩(まぶ)しい。
菜の花物語 (新字新仮名) / 児玉花外(著)
「何アに、先生、えら酔殺(よつぱらつ)たもんだで、遂(つ)ひ、陥(はま)り込んだだア」
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
遂(つ)ひ逢はざりし人(ひと)の面影
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
その後(ご)は物ごとに念を入れて、遂(つ)ひに麁想(そさう)をせぬやうに成りぬ、世間に下女つかふ人も多けれど、山村(やまむら)ほど下女の替る家は有るまじ、月に二人は平常(つね)の事
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一体私は頭の悪い方で——今でも然(そ)うだが——それに不勉強の方であったから、学校での信用も次第と無くなり、遂(つ)いに予科二年の時落第という運命に立ち至った。
私の経過した学生時代 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
即ち自分は作家として何事にも観察者の立場に立つために遂(つ)いに恋を失ったと。なぜなら自らの恋情に当っても直ちに観察者として自らを凝視解剖する冷酷な眼を逃れることができない。
察(さつ)して下(くだ)さりませ私(わたくし)は今日(けふ)まで遂(つ)ひに原田(はらだ)の身(み)に就(つ)いて御耳(おみゝ)に入(い)れました事(こと)もなく、勇(いさむ)と私(わたし)との中(なか)を人(ひと)に言(い)ふた事(こと)は御座(ござ)りませぬけれど、千度(ちたび)も百度(もゝたび)も考(かんが)へ直(なほ)して
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
遂(つ)ひドシャ降りではあるけれど足が他処(ほか)へ向いてしまふ。
竹藪の家 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
優子(ゆうこ)不審(いぶか)しげに打(うち)まもりて八重(やへ)は何(なに)が氣(き)に障(さわ)つてか思(おも)ひもよらぬ怨(うら)み言(ごと)つもりて見(み)よかし何(なに)の隔(へだ)てゞ隱(かく)しだてをするものぞ母(かあ)さまにさへ申(まを)さぬことも遂(つ)ひに話(はな)さぬ時(とき)はなきを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
學校(がくかう)は好(す)きにも好(す)きにも遂(つ)ひに世話(せわ)をやかしたる事(こと)なく、朝(あさ)めし喰(た)べると馳(か)け出(だ)して三時(じ)の退校(ひけ)に道草(みちくさ)のいたづらした事(こと)なく、自慢(じまん)では無(な)けれど先生(せんせい)さまにも褒(ほ)め物(もの)の子(こ)を
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
合點(がてん)が行(い)つたら兎(と)も角(かく)も歸(かへ)れ、主人(あるじ)の留守(るす)に斷(ことはり)なしの外出(ぐわいしゆつ)、これを咎(とが)められるとも申譯(まをしわけ)の詞(ことば)は有(あ)るまじ、少(すこ)し時刻(じこく)は遲(おく)れたれど車(くるま)ならば遂(つ)ひ一ト飛(とび)、話(はな)しは重(かさ)ねて聞(き)きに行(ゆ)かう
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
本当に己れは木の股(また)からでも出て来たのか、遂(つ)いしか親類らしい者に逢(あ)つた事も無い
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これほど邪慳(じやけん)の人ではなかりしをと女房あきれて、女に魂を奪はるればこれほどまでも浅ましくなる物か、女房が歎きは更なり、遂(つ)ひには可愛(かわゆ)き子をも餓へ死させるかも知れぬ人
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これほど邪慳(じやけん)の人(ひと)ではなかりしをと女房(にようぼう)あきれて、女(をんな)に魂(たましひ)を奪(うば)はるれば是(こ)れほどまでも淺(あさ)ましくなる物(もの)か、女房(にようぼう)が歎(なげ)きは更(さら)なり、遂(つ)ひには可愛(かわゆ)き子(こ)をも餓(う)へ死(じに)させるかも知(し)れぬ人(ひと)
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
折(をり)ふしは遂(つ)ひに今(いま)まで見(み)し事(こと)もなき日本全圖(にほんぜんづ)などヽいふ物(もの)をお民(たみ)がお使(つか)ひの留間(るす)の間(ま)に繰(く)り開(ひろ)けて居(ゐ)る事(こと)もあり、新聞紙(しんぶんし)の上(うへ)にも札幌(さつぽろ)とか北海道(ほくかいだう)とか言(い)ふ文字(もじ)には逸(いち)はやく目(め)のつく樣子(やうす)
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其身(そのみ)もほろりとし、可愛(かあゆ)き事(こと)いふて泣(な)かし給(たま)ふな、鎌倉(かまくら)へ行(ゆ)きて歸(かへ)らぬとは誰(た)れが言(い)ひしか、夫(それ)こそは嘘(うそ)にて、遂(つ)ひ一寸(ちよつと)あそびに行(ゆ)き、其(その)うちに歸(かへ)つて來(き)まする程(ほど)に、おとなしう待(ま)ちて給(たま)はれ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
萬一(もし)身(み)にそぐなはぬ事(こと)ならばと案(あん)じられまして、此事(このこと)をおもふに今宵(こよひ)の淋(さび)しき事(こと)、居(い)ても起(た)ちてもあられぬほどの情(なさけ)なさより、言(い)ふてはならぬと存(ぞん)じましたれど、遂(つ)ひ此樣(このやう)に申上(まうしあげ)て仕舞(しまひ)ました
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
唯(たゞ)ぼんやりと過(すご)しまする身(み)の、遂(つ)ひには倦(あ)かれまするやうに成(な)りて、悲(かな)しかるべき事(こと)今(いま)おもふても愁(つ)らし、私(わたくし)は貴郎(あなた)のほかに頼母(たのも)しき親兄弟(おやきようだい)も無(な)し、有(あ)りてから父(ちゝ)の與(よ)四郎(らう)在世(ざいせ)のさまは知(し)り給(たま)ふ如(ごと)く
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)