“谷中:やなか” の例文
“谷中:やなか”を含む作品の著者(上位)作品数
寺田寅彦8
野村胡堂8
三遊亭円朝7
泉鏡花6
夏目漱石6
“谷中:やなか”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 演劇 > 大衆演芸12.9%
芸術・美術 > 彫刻 > 彫刻史 各国の彫刻6.2%
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.7%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
窮屈でいやだと思いましたが、致し方がありませんから、江戸谷中やなか三崎さんさき下屋敷しもやしきへ引移ります。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
また出ますと云うたら宿は何処どこかと聞いたから一両日中に谷中やなかの禅寺へ籠る事を話していとまを告げて門へ出た。
根岸庵を訪う記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
女は人込みの中を谷中やなかの方へ歩きだした。三四郎もむろんいっしょに歩きだした。半町ばかり来た時、女は人の中で留まった。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それにしても、お直の死骸をどこへか処分しなければならないので、お豊は更にお紋の母と相談の上で、谷中やなかまで出て行った。
半七捕物帳:35 半七先生 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ここの屋根の下にまかないの小川の食堂があって、谷中やなかのお寺に下宿していた学生時代に、時々昼食を食いに行った。
病院風景 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
一応、そう反駁はしてみたものゝ、この父に、それ以上理屈は通らぬとあきらめて、彼は、谷中やなか警察署にでかけて行つた。
光は影を (新字新仮名) / 岸田国士(著)
昔し三千代の兄がまだ生きていた時分、ある日何かのはずみに、長い百合を買って、代助が谷中やなかの家を訪ねた事があった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「なあに、今夜、おれがしょぴき出すから、女を一匹、谷中やなか鉄心庵てっしんあんッて古寺にかつぎ込んでくれりゃいいんだ」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
はんしたように帳場格子ちょうばごうしなかからえて、目指めざすは谷中やなか笠森様かさもりさま
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
谷中やなかなら、墓原の森の中を根岸で下りる、くらがり坂が可い。踏切の上の。あすこいらで、笹ッ葉の下へでも隠れておいで。)
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それから谷中やなかへ出て、根津ねづを回って、夕方に本郷の下宿へ帰った。三四郎は近来にない気楽な半日を暮らしたように感じた。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
四十九日の蒸物むしものを、幸さんや安公に配ってもらってから、その翌日あくるひ母親とお庄とは、谷中やなかへ墓詣りに行った。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
子雀こすずめうさまも、いとどあわれのあきながら、ここ谷中やなか草道くさみちばかりは
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
上野の大仏は首が砕け、谷中やなか天王寺てんのうじの塔は九輪くりんが落ち、浅草寺の塔は九輪がかたぶいた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
さうして秋の淋しさは人の前髮を吹く風にばかり籠めてゞもおく樣に谷中やなかの森はいつも隱者のやうな靜な體を備へてぢつとしてゐた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
「点鬼簿」に加えた三人は皆この谷中やなかの墓地の隅に、――しかも同じ石塔の下に彼等の骨をうずめている。
点鬼簿 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
すると、四、五日の後、若井氏は突然私の谷中やなかの宅に訪ねて来られました(私は、その頃は谷中茶屋町ちゃやまちに転居しておった)。
日曜の午後に谷中やなかへ行ってみると寛永寺坂に地下鉄の停車場が出来たりしてだいぶ昔と様子がちがっている。
子規自筆の根岸地図 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そして彼女は自分の住所姓名だけは確実に書きながら、先の住所は簡単に巴里パリとか、赤坂とか、谷中やなかとか、本郷と書いて置くだけだ。
春:――二つの連作―― (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その袖の香を心当てに、谷中やなかのくらがりざか宵暗よいやみで、愛吉は定子(山の井夫人)を殺そう。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
谷中やなかの某寺に下宿をきめるまでの数日を、やはり以前の尾張町おわりちょうのI家でやっかいになった。
銀座アルプス (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
義雄が家族を引連れて移り住もうとする家は上野の動物園からさ程遠くない谷中やなかの町の方に見つかった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
桜田さくらだより半蔵門はんざうもんに出づるに、新宿もまた焼けたりと聞き、谷中やなか檀那寺だんなでら手頼たよらばやと思ふ。
この方もなかなかさかんにやっている人たちがあって、その大将株の親方が谷中やなかに住まっておった。
上野公園の後の谷中やなか清水町には、清水稲荷いなりがあってもとは有名な清水がその傍にあったのです。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
上野の堂坊のいらかが、冬がすみのかなたに、灰黒く煙って、楼閣の丹朱にしゅが、黒ずんだ緑の間に、ひっそりと沈んで見える、谷中やなかの林間だ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
二十八日の夜うしの刻に、抽斎は遂に絶息した。即ち二十九日午前二時である。年は五十四歳であった。遺骸いがい谷中やなか感応寺に葬られた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「空がげるようだ。――羅馬ロウマ法王の冠かも知れない」と甲野さんの視線は谷中やなかから上野の森へかけて大いなるけんえがいた。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
田中舘たなかだて先生の肖像を頼む事に関して何かの用向きで、中村清二せいじ先生の御伴をして、谷中やなかの奥にその仮寓かぐうを尋ねて行った。
中村彝氏の追憶 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
旧弊きゆうへいな事を言つてるね、七福神ふくじんまゐりといへば谷中やなかくんだらうがしもどけで大変たいへんみちだぜ。
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
一月十八日 谷中やなか本行寺ほんぎょうじ播磨屋はりまや一門、水竹居、たけし、立子、秀好。
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
まだれたばかりの初夏しょか谷中やなかの風は上野つづきだけにすずしく心よかった。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
菅沼の家は谷中やなかの清水町で、庭のない代りに、縁側へ出ると、上野の森の古い杉が高く見えた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
――これもまだ小学校にいた時分、彼は一人母につれられて、谷中やなかの墓地へ墓参りに行った。
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
青山の墓地と、谷中やなかの墓地と所こそは変わりたれ、同一おなじ日に前後して相けり。
外科室 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
電話が切れた後のシーンとした沈黙は谷中やなかの方の夏の夜へ、明るく電燈のいた町中の自働電話室へ、その電話口に立つ節子の方へ岸本の心を誘った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
菅沼のいへ谷中やなか清水町しみづちようで、にはのない代りに、椽側へると、上野のもりふるすぎたかく見えた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
家のない私は三十前後のころ谷中やなか真如院しんにょいんという寺に仮寓かぐうしていた。
独り碁 (新字新仮名) / 中勘助(著)
何処まで行くのかと車掌にきくと、雷門を過ぎ、谷中やなかへまわって上野へ出るのだという。
寺じまの記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
名物の谷中やなか生姜は葉が青く生々していて、黒い土がおとされると、真白な根のきわにほの赤い皮が、風呂おゆから出た奇麗な人の血色のように鮮かに目立った。
まして他人のれにかかこつべき、月の十日にははさまが御墓おんはかまゐりを谷中やなかの寺に楽しみて、しきみ線香それぞれの供へ物もまだ終らぬに
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
谷中やなか天王寺てんわうじけるとむらひおくつたのである。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
昔し三千代のあにがまだきてゐる時分、ある日なにかのはづみに、長い百合ゆりつて、代助が谷中やなかいへたづねた事があつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
遠藤清子の墓石おはかの建ったお寺は、谷中やなか五重塔ごじゅうのとうを右に見て、左へ曲った通りだと、もう、法要のある時刻にも近いので、急いで家を出た。
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
谷中やなかの方にチト急な用があって、この朝がけ、出尻をにょこにょこうごかしながら、上野山内さんないの五重の塔の下までやってくると、どこからともなく、
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
谷中やなか笠守様かさもりさまの手前、木賃宿へ入ったところまで突止めましたよ」
谷中やなかの秋の夕暮は淋しく、江戸とは名ばかり、このあたりは大竹藪おおたけやぶ風にざわつき、うぐいすならぬむらすずめ初音町はつねちょうのはずれ
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
老人はただち谷中やなかへ行って、亡妻のために立派な石碑をあつらえた。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そらまた化性けしやうのものだと、急足いそぎあし谷中やなかく。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「谷という字と中という字と寺という字があって、あとは仮名が四つだ。中谷寺というのはないから、谷中やなか○○○○寺と読ませるんだろう。今晩の火は一ヶ所だけかな」
江戸の東北、向島むこうじま浅草から谷中やなか根岸ねぎしへかけて寺が多い。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ところで昔、大口が谷中やなかの方で開いていたという薬屋の店はどうなったろう。
議会見物 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
もっともここに来る道で谷中やなかから朝顔の鉢を配る荷車二三台に行逢ったばかりであるから、そのまま日傘を地の上へ投げるように置いて、お夏はほっといきをついた。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
神田の半七は近所の葬式とむらいを見送って、谷中やなかの或る寺まで行った。
半七捕物帳:25 狐と僧 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
叔父にお庄と植木屋と、この三人が翌日に死んだ赤子を谷中やなかの寺へ送って、午過ひるすぎに帰って来ると、母親は産婦に熱が出たと言って、心配そうに一同を待っていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ふいと墓地の横手を谷中やなかの方から降りる、田舎道のような坂の下に出た。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
さて、谷中やなか(茶屋町)時代になってにわかに弟子がえました。
清「谷中やなか日暮ひぐらし瑞応山ずいおうざん南泉寺なんせんじと云う寺が有ります、夫に宮内健次郎みやのうちけんじろうと云う者が居ますが、夫へは多分参りますまい」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そのK―も貸家の差配を例の若い後家さんに託して、自分は谷中やなかのもといた下宿へ引き移って行ってからは、貸家にもいろいろの人が出入りしたが、明いている時の方が多かった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
また降り出さぬ間と急いで谷中やなかへ帰れば木魚の音またポン/\/\。
半日ある記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
信心深い娘で、毎月八日にきまって手拭を納めに来るので、婆とは顔馴染、素性もよく知っていた。谷中やなか延命院えんめいいんの近くに住んでいる八重やえという浪人者の一人娘。
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
それから、もう一ヶ所は谷中やなかで、団子坂を降りると石橋がある。
江戸の谷中やなかの時光寺という古い寺で不思議の噂が伝えられた。
半七捕物帳:25 狐と僧 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
谷中やなかの墓地近くになっても貸家はみつかりそうにもなかった。
貸家探し (新字新仮名) / 林芙美子(著)
谷中やなか感応寺かんおうじの五重塔は川越の源太が作り居つた、嗚呼よく出来した感心なと云はれて見たいと面白がつて、何日いつになく職業しやうばいに気のはづみを打つて居らるゝに
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
彼はまた団子坂を下りて谷中やなかの方へのぼって行った。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「まあ、仕方がねえ。ここはこの位にして、一旦引き揚げよう。おめえはそのお角という女の居どころを突き留めてくれ、おれはこれから足ついでに谷中やなかへ廻って、三崎をうろ付いてみよう」
半七捕物帳:58 菊人形の昔 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
谷中やなかの寺の下宿はこの上もなく暗く陰気な生活であった。
銀座アルプス (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
長州の兵は、根津と谷中やなかから、上野の背面を攻めていた。
甲州鎮撫隊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
谷中やなか三崎町へ着いたのは、もう薄暗くなってからでした。
銭形平次捕物控:130 仏敵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
谷中やなかの大覚寺への葬列は、秋の陽の下を、俳人、文壇人の総ざらいであった。ひつぎを埋めて、その上に置いた銅板に「子規居士」と鋳抜いた素朴な墓碑銘が、今もありありと眼の底に浮かぶ。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
私はこの老女ひと生母ははおやをたった一度見た覚えがある。谷中やなか御隠殿ごいんでんなつめの木のある家で、蓮池はすいけのある庭にむかったへやで、お比丘尼びくにだった。
鳩巣きゅうそうの『駿台雑話すんだいざつわ』にも「老僧が接木」なる一章があり、三代将軍が谷中やなか辺へ鷹狩に出た時、将軍とは知らずに今のような理窟をいって聞かした、という話が出ている。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
毎朝谷中やなかから老体を運んで来て描いてくれた。
それは何処ですと聞くと、谷中やなか天王寺てんのうじの手前の谷中谷中町三十七という所で、五重塔の方へ行こうとする通りに大きな石屋があるが、その横丁を曲って、石屋の地尻じじりで、門構えの家。
夜更けて谷中やなかの墓地の方へ散歩をする。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
そうしてそのせいか、門司から備後びんごの尾ノ道まで乗りました汽船にも酔いもせずに、三日三夜かかって新橋に着きますと、岡沢先生御夫婦のお迎えを受けまして谷中やなかの閑静なお宅に御厄介になりましたが
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
谷中やなかから駒込こまごめまでぶらぶら歩いて帰る道すがら、八百屋の店先の果物や野菜などの美しい色が今日はいつもよりは特別に眼についた。骨董屋の店先にある陶器の光沢にもつい心を引かれて足をとめた。
ある日の経験 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
蘭「谷中やなか瑞林寺ずいりんじで」
女だわい――谷中やなかの延命院の坊主は、寺の内へ密会所を作って、身分ある婦人を多く引入れた。これはしまいがまずかったが、もっと高尚な、巧妙な方法で大奥を動かして、権勢を握った坊主がいくらもある。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
谷中やなかの五重の塔も焼けてしまった。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
けれども谷中やなかへは中々来ない。
点鬼簿 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
どこかねえ、谷中やなかの方です。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
初冬や谷中やなかあたりの墓の菊
鴉片 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
私はこれでは画家としての眼を自分は備えていないのかと思ったりしてふさぎ込み、下宿へ帰って一晩中考えて見た事さえあったが、しかし、翌日、谷中やなかの墓地を通って見ても、木の幹の影はやはり紫では決してなかった。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
そこに立ちますと、団子坂から、蛍の名所であった蛍沢や、水田などを隔てて、はるかに上野谷中やなかの森が見渡され、右手には茫々ぼうぼうとした人家の海のあなた雲煙の果に、品川しながわの海も見えるのでした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
しかしその分類は例えば谷という処に日比谷ひびや谷中やなか渋谷しぶや雑司ぞうしなぞを編入したように、地理よりも実は地名の文字もんじから来る遊戯的興味にもとづいた処がすくなくない。
谷中やなか、藪下の菊人形。
顎十郎捕物帳:22 小鰭の鮨 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
この物語では、萩原の裏店うらだなに住む伴蔵ともぞうと云う者がのぞいて、白翁堂勇斎はくおうどうゆうさいに知らし、勇斎の注意で萩原は女の住んでいると云う谷中やなか三崎町みさきちょうへ女の家を探しに往って
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
谷中やなかです」
半七捕物帳:58 菊人形の昔 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
谷中やなか三崎さんさきへ参り、だいなしのいえ這入はいって居りまして、私が手内職などをして、どうかうか暮しを付けていますが、お嬢様は毎日々々お念仏三昧ざんまいで入らっしゃいますよ、今日は盆の事ですから
あゝ此行このかう氷川ひかはみやはいするより、谷中やなかぎ、根岸ねぎし歩行あるき、土手どてより今戸いまどで、向島むかうじまいたり、淺草あさくさかへる。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
というので是から訴えになりましたが、葛籠に記号しるしも無い事でございますからとんと何者の仕業しわざとも知れず、大屋さんが親切に世話を致しまして、谷中やなか日暮里にっぽり青雲寺せいうんじへ野辺送りを致しました。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
谷中やなかから上野を抜けて東照宮の下へ差掛さしかかった夕暮、っと森林太郎という人の家はこの辺だナと思って、何心なにごころとなく花園町はなぞのちょう軒別けんべつ門札もんさつを見て歩くとたちまち見附けた。
鴎外博士の追憶 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
新旧思想の衝突――さまざまな家族苦難の一節の、そんなことを話すように、口がほぐれて来たのは、記念の写真をとったり、お墓へ参ったりしたあと、谷中やなか名物の芋阪いもざか羽二重団子はぶたえだんごなどを食べだしてからだった。
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
それは、谷中やなかに蓮華往生のあった少し前のこと、疑うことを知らない江戸の人達は、ささやかな天霊様の祈祷所を、瞬く間に三倍五倍に拡張させ、疑懼ぎくと好奇まで手伝って、天霊様を素晴らしい魅力にこしらえ上げてしまったのでした。
泣いて泣いて泣き盡くして、訴へたいにも父の心はかねのやうに冷えて、ぬる湯一杯たまはらん情もなきに、まして他人の誰れにかかこつべき、月の十日に母さまが御墓まゐりを谷中やなかの寺に樂しみて、しきみ線香夫々の供へ物もまだ終らぬに
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
と、青松院せいしょういん墓所はかしょで腹を切ろうとする処へ、墓参りに来たのは、谷中やなか七面前しちめんまえ下總屋惣兵衞しもふさやそうべえと云う質屋の主人あるじで、これを見ると驚いて刄物をもぎとってう云う次第と聞くと、
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
もとこれ、米価の沸騰より飢餓にせまるに耐へかねて、かかる挙動に及べるなれば、かく是等を救助せずして静まるべきの筋にあらずとて、先づ救民小屋造立つくりたての間、本所回向院えこういん谷中やなか天王寺、音羽おとは護国寺
一と谷中やなかあにさんの方へ連れて行って、時節を待ったら宜かろう、其のうちにはまた出入をさせる事もあるじゃアねえか、と斯う仰しゃるのだ、うむ、それから、なんだ斯ういう事も云った、何分うちの奉公人や何かの口がうるせえから
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)