点鬼簿てんきぼ
僕の母は狂人だった。僕は一度も僕の母に母らしい親しみを感じたことはない。僕の母は髪を櫛巻きにし、いつも芝の実家にたった一人坐りながら、長煙管ですぱすぱ煙草を吸っている。顔も小さければ体も小さい。その又顔はどう云う訳か、少しも生気のない灰色を …