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蔓
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つる
ふりがな文庫
“
蔓
(
つる
)” の例文
能登の
舳倉島
(
へぐらじま
)
の
海女
(
あま
)
がフキといっているのは
薩摩薯
(
さつまいも
)
の
蔓
(
つる
)
のことで、これを塩漬にしまたはフキ汁にして食べるそうである(島二巻)。
食料名彙
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
それからまた、若い
蔓
(
つる
)
があらわれると、たちまちかぎつけて、リスのようにまっすぐ立ってつぼみと若い
莢
(
さや
)
ぐるみ食いとってしまう。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
与兵衛はさう考へながら、山の頂から
真直
(
まつすぐ
)
に川の方へ、
樹
(
き
)
の枝に
攫
(
つかま
)
りながら、
蔓
(
つる
)
に
縋
(
すが
)
りながら、大急ぎに急いで降りて行きました。
山さち川さち
(新字旧仮名)
/
沖野岩三郎
(著)
小房は恥しいほど胸が
顫
(
ふる
)
えるのを感じながら、辰之助の好きな白菊の一輪を
萱
(
かや
)
の中に活けた。柱懸けの
一節切
(
ひとよぎり
)
にはあけびの
蔓
(
つる
)
を
揷
(
さ
)
した。
柿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そうするとさすがに秀吉だ、「さようにむずかしい藤原氏の
蔓
(
つる
)
となり葉となろうよりも、ただ新しく今までになき
氏
(
うじ
)
になろうまでじゃ」
魔法修行者
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
▼ もっと見る
「ええい、智慧のねえ奴だ。せっかく
黄金
(
こがね
)
の
蔓
(
つる
)
をひいて来た福運を、
初春
(
はる
)
早々、追い払う阿呆があるか。飛んでもねえ馬鹿者ぞろいだ」
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「然うさ。知っている間柄なら話が早いけれど、今のところ些っとも切っかけがない。
蔓
(
つる
)
から蔓を辿って行くんだから、手間が取れる」
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
規矩男は小戻りして、かの女から預っているパラソルで残忍に草の
蔓
(
つる
)
を
薙
(
な
)
ぎ破り、ぐんぐん先へ進んだ。かの女はあとを通って行った。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そこでタヂマモリは
蔓
(
つる
)
四本
矛
(
ほこ
)
四本を分けて皇后樣に獻り、蔓四本矛四本を天皇の御陵のほとりに獻つて、それを捧げて叫び泣いて
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
それ、後家の後見、和尚の
姪
(
めい
)
、芸者の兄、近頃女学生のお兄様、もっと新しく女優の監督にて候ものは、いずれも
瓜
(
うり
)
の
蔓
(
つる
)
の
茄子
(
なす
)
である。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
蔓
(
つる
)
がうねうねとからまりついて解き難い
纏繞
(
てんにょう
)
の相を見せる。そこからもつれもめることの形容となり、ひいては争論の意に用いられる。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
知らず彦兵衞は金の
蔓
(
つる
)
に有り付たりと
悦
(
よろこ
)
び勇み望みの荷物を
請取
(
うけとり
)
是
(
これ
)
を
那
(
あゝ
)
して
斯
(
かう
)
してと心に
悦
(
よろこ
)
び我が
家
(
や
)
を指て
立歸
(
たちかへ
)
り淺草御門迄來懸る處を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
矢筈草はちよつと見たる時その葉
蓬
(
よもぎ
)
に似たり。
覆盆子
(
いちご
)
の如くその
茎
(
くき
)
蔓
(
つる
)
のやうに延びてはびこる。
四谷見附
(
よつやみつけ
)
より
赤坂喰違
(
あかさかくいちがい
)
の土手に沢山あり。
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
そして人気なく寂然として、
蔓
(
つる
)
蔦
(
つた
)
の壁に
這
(
は
)
うた博士邸の古びた入り口に
佇
(
たたず
)
んで待つことしばし、やがて奥に
嗄
(
しわが
)
れた声が聞えたかと思うと
令嬢エミーラの日記
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
卯平
(
うへい
)
は
狹
(
せま
)
いながらにどうにか
土間
(
どま
)
も
拵
(
こしら
)
へて
其處
(
そこ
)
へは
自在鍵
(
じざいかぎ
)
を
一
(
ひと
)
つ
吊
(
つる
)
して
蔓
(
つる
)
のある
鐵瓶
(
てつびん
)
を
懸
(
かけ
)
たり
小鍋
(
こなべ
)
を
掛
(
か
)
けたりすることが
出來
(
でき
)
る
樣
(
やう
)
にした。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
夢の中でも、私は、強情な植物共の
蔓
(
つる
)
を引張り、
蕁麻
(
いらくさ
)
の
棘
(
とげ
)
に悩まされ、シトロンの針に突かれ、蜂には火の様に
螫
(
さ
)
され続ける。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
楢
(
なら
)
の枯枝にからみつく青々とした夕顔の
蔓
(
つる
)
の下には、二尺ばかりもあろうかと思われるのがいくつか
生
(
な
)
り
下
(
さが
)
って、白い花も咲き残っている。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
茄子
(
なす
)
や
胡瓜
(
きうり
)
に水をやつてゐる男が、彼女の姿を見て叮嚀にお辞儀をした。ダリヤが一杯咲いてゐた。藪蔭には
南瓜
(
かぼちや
)
が
蔓
(
つる
)
をはびこらせてゐた。
或売笑婦の話
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
店いっぱいに拡った
錆
(
さ
)
びついた錠が、
蔓
(
つる
)
のように天井まで這い上り、隣家の鳥屋に下った
家鴨
(
あひる
)
の首と一緒になって露路の入口を包んでいる。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
所々に模様に
崩
(
くず
)
した草花が、長い
蔓
(
つる
)
と共に六角を
絡
(
から
)
んでいる。
仰向
(
あおむ
)
いて見ていると広い御寺のなかへでも
這入
(
はい
)
った心持になる。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そのたくさんの節を持った管の枝は、昔の農家の正面によじれからんでる刈り込まれた古いぶどうの
蔓
(
つる
)
をまねたものであった。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
淋しく枯れ渡った
一叢
(
ひとむら
)
の黄金色の
玉蜀黍
(
とうもろこし
)
、細い
蔓
(
つる
)
——その蔓はもう霜枯れていた——から奇蹟のように育ち上がった大きな真赤なパムプキン。
フランセスの顔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
これは冬に入って結実したが、ほとんど粒はつかなかった。朝顔はすぐ
蔓
(
つる
)
をのばし、小さいながら美しい花をつけた。葉には奇形がみられた。
長崎の鐘
(新字新仮名)
/
永井隆
(著)
母が答へる
暇
(
いとま
)
のない中に父は足早に家の方へ行つてしまひ私は
朝貌
(
あさがほ
)
の
蔓
(
つる
)
を手に持つたなりで
惘然
(
ぼんやり
)
とあとを見送つて居り升た。
黄金機会
(新字旧仮名)
/
若松賤子
(著)
そこにゃちっとばかり、
見
(
み
)
かけた
蔓
(
つる
)
があってのことよ。——のうおせん。おめえは
通油町
(
とおりあぶらちょう
)
の、
橘屋
(
たちばなや
)
の
若旦那
(
わかだんな
)
を
知
(
し
)
ってるだろう
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
窓縁には一
鉢
(
はち
)
の朝顔が絲にからんで伸びていて、ぶらさがってる
梯子
(
はしご
)
の上にその細やかな
蔓
(
つる
)
を広げていた。一条の光線がそれに当たっていた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
昨年の夏帰った時には、庭一杯に色とりどりの花が咲き乱れ、塀のぐるりには母の植えたという林檎の苗木や
山葡萄
(
モルグ
)
の
蔓
(
つる
)
がひとしお可憐だった。
故郷を想う
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
柵の向うは廓外のしもたやの縁先になっていて、
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
やへちまの棚があって、柵には朝顔の
蔓
(
つる
)
なんかが
絡
(
から
)
みついていた。
桜林
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
ウリの
蔓
(
つる
)
になったナスビというわけであった。事実、さちよは、色が黒かった。自分でも、ひどくぶ器量だと信じていた。
火の鳥
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
どうで慾得でかかった色事でしょうから、相手の隠居があんな事になってしまっちゃあ、金の
蔓
(
つる
)
も切れたというものです。
半七捕物帳:57 幽霊の観世物
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
たったひとつの金の
蔓
(
つる
)
を、いまパチンと自分で断ち切ってきてしまった以上、もはや、どこでどうしよう当てもなかった。
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
周囲十町はたっぷりとあり、
喬木
(
きょうぼく
)
灌木
(
かんぼく
)
生い繁り、加うるに
蔓
(
つる
)
草が縦横にはびこり、一旦うかうかはいろうものなら、容易なことでは出られない。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
水のなかの浮草は新しい
蔓
(
つる
)
を張り、そのなかをおたまじゃくしが泳ぎ廻っている。なみなみと満ち
溢
(
あふ
)
れる明るいものが頻りに感じられるのだった。
永遠のみどり
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
蔓
(
つる
)
が長く/\延びて居た。この辺へも、人はどよみをつくつて居る。大きな乳房の胸を
露
(
あら
)
はに一人の女が
店頭
(
みせさき
)
に、
壜詰
(
びんづめ
)
の酒を日に透して見て居た。
茗荷畠
(新字旧仮名)
/
真山青果
(著)
それをきいたかぼちやの
怒
(
をこ
)
つたの
怒
(
をこ
)
らないのつて、
石
(
いし
)
のやうな
拳固
(
げんこ
)
をふりあげて
飛
(
と
)
び
懸
(
かか
)
らうとしましたが、
蔓
(
つる
)
が
足
(
あし
)
にひつ
絡
(
から
)
まつてゐて
動
(
うご
)
かれない。
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
豆腐の
粕
(
かす
)
と
薩摩芋
(
さつまいも
)
の
蔓
(
つる
)
とが、山羊夫妻の大好物である。豆腐の粕はまだ三太が床のなかにいる時分豆腐屋から毎朝一個ずつ規則的に届けてくれる。
南方郵信
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
攀縁性の
蔓
(
つる
)
植物の緊密なしばりで、おそらく倒れずにそのまま
辷
(
すべ
)
るのだろう——と考えたが、それも瞬時に裏切られた。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
蔓
(
つる
)
は皮を
剥
(
む
)
いて水に浸すと、粘りのある汁が出て、髪を
梳
(
くしけず
)
るのに用いられるというので美男葛の名があるのでした。一に
葛練
(
くずねり
)
などともいいました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
蔓
(
つる
)
に紙ぎれを結びて夜会草と書いつけしは口をしき花の名なめりと見るにその傍に細き字して一名夕顔とぞしるしける。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
かかる思想家の思想が掴まるれば、その流派というようなものは、
恰
(
あたか
)
も
蔓
(
つる
)
をたぐるように理解せられて行くのである。
読書
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
江戸へ行けば、お前は人気の神様で、金の
生
(
な
)
る
蔓
(
つる
)
を持っているのに、なんだってこんなところに隠れてるんだい。さあ、叔父さんと一緒に帰らねえか
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
うめいた源三郎を先頭に、一行はガサガサと
藤蔦
(
ふじつた
)
の
蔓
(
つる
)
につかまり合って、断崖をよじ登りだした。萩乃やお藤姐御まで、かいがいしく裾をからげて。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
瓜の
蔓
(
つる
)
は朝々伸びて、とめてもとめても
心
(
しん
)
をとめ切れぬ。二三日打っちゃって置くと、
甘藷
(
さつまいも
)
の蔓は八重がらみになる。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
土瓶の
葢
(
ふた
)
の形、つまみの形——さうして、大いにさうして、耳に
蔓
(
つる
)
をつけて、完成した土瓶の形は安定してゐるか。
やきもの読本
(旧字旧仮名)
/
小野賢一郎
(著)
ここも同じく、人の手の
入
(
はい
)
った様子がないので、草や
蔓
(
つる
)
が
伸放題
(
のびほうだい
)
、入って行くのも
一寸
(
ちょっと
)
気味が
悪
(
わ
)
るいほどであった。
怪物屋敷
(新字新仮名)
/
柳川春葉
(著)
莟
(
つぼみ
)
の出来ただけを
悉
(
ことごと
)
く花にし、その花も千切ったりせずに、皆実になるに任せて置いて、
蔓
(
つる
)
ごと引たぐるという意味であろう。平凡なる駄朝顔である。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
俗にいう瓜の
蔓
(
つる
)
には茄子はならぬと申しますように、瓜は瓜にちゃんと生まれついておるのですから、いまさら瓜に茄子がなるはずがないのであります。
習書要訣:――美の認識について――
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
唯、
野葡萄
(
のぶだう
)
か何かの
蔓
(
つる
)
が、灌木の一むらにからみついてゐる中を、一疋の狐が、暖かな毛の色を、傾きかけた日に
曝
(
さら
)
しながら、のそりのそり歩いて行く。
芋粥
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そして、金の鎖を
蔓
(
つる
)
に持ったフロリダ黄蘭のように宙乗りをして、そこから静かに得意の夢を
謳
(
うた
)
いつづけていた。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
風の荒かった冬のあいだに北側の屋根ひさしは落ちかかり、壁の穴に
零余子
(
むかご
)
の
蔓
(
つる
)
はこぞのままの枯れ葉をつけて、
莢豆
(
えんどう
)
の
莢
(
さや
)
のように干からびて鳴っていた。
荻吹く歌
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
“蔓(つる植物)”の解説
つる植物・蔓植物(つるしょくぶつ、en: climbing plant)は、自らの剛性で体を支えるのではなく、他の樹木や物体を支えにすること(つる性)で高いところへ茎を伸ばす植物のことである。蔓草(つるくさ、まんそう)、葛・蔓(かずら・かつら)などともいう。
(出典:Wikipedia)
蔓
漢検準1級
部首:⾋
14画
“蔓”を含む語句
藤蔓
蔓延
蔦蔓
葡萄蔓
葛蔓
手蔓
蔓葛
蔓草
通草蔓
蔓菁
金蔓
蔓薔薇
芋蔓
蔓茘枝
通蔓草
蔓衍
滋蔓
豆蔓
蔓苔桃
日影蔓
...