私の家は食うにも困っているということが子供の私にさえわかっているのに、母は私にビラビラの下った赤い梅の花簪を買って来てくれた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記―― (新字新仮名) / 金子ふみ子(著)
忘れ残りの記:――四半自叙伝―― (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それまでにも菓子や花簪などを持っては折おり訪ねて来たので、おせんはよく知ってもいたし母の亡くなったあとの淋しいときだったから、すぐ源六に馴ついて、夜なども抱かって寝るようになった。
大導寺信輔の半生:――或精神的風景画―― (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
なお本日、森栖校長先生のお帽子と、何処かの舞妓さんの花簪を十字架にかけました者が、わたくしに相違御座いません事は、その理由と一緒に、警官の方に白状致して置きました。