牛鍋ぎゅうなべ
鍋はぐつぐつ煮える。 牛肉の紅は男のすばしこい箸で反される。白くなった方が上になる。 斜に薄く切られた、ざくと云う名の葱は、白い処が段々に黄いろくなって、褐色の汁の中へ沈む。 箸のすばしこい男は、三十前後であろう。晴着らしい印半纏を着ている …