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糊
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のり
ふりがな文庫
“
糊
(
のり
)” の例文
口を
糊
(
のり
)
しながら、娘の寿子を殆ど唯一人の弟子にして「津路式教授法」のせめてものはけ口を、幼い寿子に見出して来たのであった。
道なき道
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
したがって生計上に困ることは自然の理で、ようやくその日を
糊
(
のり
)
する位のもので、さらに他を顧みる
隙
(
ひま
)
もなかったことでありました。
幕末維新懐古談:76 門人を置いたことについて
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
扉
(
ドア
)
に背を向けているのは若い院長の健策で、
糊
(
のり
)
の
利
(
き
)
いた診察服の前をはだけて、質素な黒
羅紗
(
らしゃ
)
のチョッキと、ズボンを露わしている。
復讐
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
私は、まだこの口を
糊
(
のり
)
するがために貴重なる自己を売り物にせねばならぬまでにあさましくなりはてたとは、自分でも信じられない。
雪の日
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
それを
糊
(
のり
)
のついた白地の
単衣
(
ひとえ
)
に着替えて、茶の間の
火鉢
(
ひばち
)
の前に坐ると、細君はふと思い附いたように、
箪笥
(
たんす
)
の上の一封の手紙を取出し
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
▼ もっと見る
例えば「
糊
(
のり
)
つけ」という名は、ホーセー(乾せ)と聴いた人たちの想像で、それからまた「あすは天気」と鳴くのだとまでいった。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
彼の
山科
(
やましな
)
の
丿貫
(
べちかん
)
という大の侘茶人が
糊
(
のり
)
を入れた竹器に朝顔の花を生けて
紹鴎
(
じょうおう
)
の賞美を受け、「糊つぼ」という一器の形を遺したと共に
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
半蔵は宿屋のかみさんが貸してくれた
糊
(
のり
)
のこわい
浴衣
(
ゆかた
)
の
肌
(
はだ
)
ざわりにも旅の心を誘われながら、黙しがちにみんなの話に耳を傾けた。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
並
(
なみ
)
の
状袋
(
じょうぶくろ
)
にも入れてなかった。また並の状袋に入れられべき分量でもなかった。半紙で包んで、封じ目を
鄭寧
(
ていねい
)
に
糊
(
のり
)
で
貼
(
は
)
り付けてあった。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
家の柱
縁側
(
えんがわ
)
なぞ時代つきて
飴色
(
あめいろ
)
に黒みて
輝
(
ひか
)
りたるに障子の紙のいと白く
糊
(
のり
)
の匂も失せざるほどに新しきは何となくよきものなり。
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
そこらに時々見受けるのは、池田候とか、伊達候とか、松平
某
(
なにがし
)
とか、いずれも
糊
(
のり
)
付けになったような
長袴
(
ながばかま
)
の静粛な去来のみです。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
が、こう云う商売をして、口を
糊
(
のり
)
してゆくのは、決して容易なものではない。第一、十日と天気が悪いと口が干上ってしまう。
仙人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「それはね、もう一粒のごはんつぶをすりつぶし、それを
糊
(
のり
)
にして、もう一粒のごはんつぶに塗ってつけたらいいでしょう。」
花燭
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
糊
(
のり
)
のついた真白い、
上衣
(
うわぎ
)
の
丈
(
たけ
)
の短い服を着た
給仕
(
ボーイ
)
が、「とも」のサロンに、ビール、果物、洋酒のコップを持って、忙しく往き来していた。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
唐土
(
もろこし
)
から傳來の繪と違つて、元信の描いたのは紙本で、それに
糊
(
のり
)
も新しいわけですから、水で剥がすのは一番良い要領です。平次は續けて
銭形平次捕物控:226 名画紛失
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼等も、耕すか、家畜を飼うかして、口を
糊
(
のり
)
しているのだ。上等兵はそういうことを考えた。——同様に悲しむ親や子供を持っているのだ。
パルチザン・ウォルコフ
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
龍造寺主計は、やっこ
凧
(
だこ
)
のような、
糊
(
のり
)
のこわい佐吉の
浴衣
(
ゆかた
)
を、つんつるてんに着ていた。毛だらけの
脛
(
すね
)
を出して、笑っていた。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
すると私は、オブラートに
糊
(
のり
)
をつけたものを持っていて、その風船の
肛門
(
こうもん
)
のようなところへ円い色紙をペタリと貼りつける。
柿色の紙風船
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
クリストフは
稽古
(
けいこ
)
を始めた。彼女はいやに堅くとりすまして、両腕が身体に
糊
(
のり
)
付けになり、身動きすることもできなかった。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
糊
(
のり
)
の剥げた見返しの下に、細筆で「細野源三郎」と書いてあった。女文字のような、いかにも小心な手跡で、「源」の一字だけ墨が滲んでいた。
古今集巻之五
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
船と船とは、見る見る薄い
糊
(
のり
)
のような青白い
膜
(
まく
)
に隔てられる。君の周囲には小さな白い粒がかわき切った音を立てて、あわただしく船板を打つ。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
そうすると段々粘って固って
糊
(
のり
)
のようになります。それをスープ皿へ盛って牛乳とお砂糖をかけて食べます。どんなにお
美味
(
いしゅ
)
うございましょう。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
あたしは善兵衛さんに手伝って、いつになく機嫌よく壁張りの手伝いや見物や助言をした。それは逆さまだ、こっちの
面
(
ほう
)
へ
糊
(
のり
)
をつけた方がよいのと。
旧聞日本橋:07 テンコツさん一家
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
浅草紙
(
あさくさがみ
)
のようで厚いのに色紙が張ってあるのですから、半紙の薄い中身は
糊
(
のり
)
で附ければ跡はわからなかったそうです。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
老いたる祖母は浦賀で
困厄
(
こんやく
)
の間に歿した。それでも跡に母と妻と子とがある。自己を
併
(
あわ
)
せて四人の口を、
此
(
かく
)
の如き手段で
糊
(
のり
)
しなくてはならなかった。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
醫者
(
いしや
)
は
爼板
(
まないた
)
のやうな
板
(
いた
)
の
上
(
うへ
)
に
黄褐色
(
くわうかつしよく
)
な
粉藥
(
こぐすり
)
を
少
(
すこ
)
し
出
(
だ
)
して、
白
(
しろ
)
い
糊
(
のり
)
と
煉
(
ね
)
り
合
(
あは
)
せて、
罎
(
びん
)
の
酒
(
さけ
)
のやうな
液體
(
えきたい
)
でそれを
緩
(
ゆる
)
めてそれから
長
(
なが
)
い
鋏
(
はさみ
)
で
白紙
(
はくし
)
を
刻
(
きざ
)
んで
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
白襯衣
(
シャツ
)
の角のない襟は用捨もなく押しつけるように耳朶を
撑
(
ささ
)
えて、また両頬を擦り、
糊
(
のり
)
で固めた腕飾りはまったく手頸をかくして、赤い先の曲ッた指
あいびき
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
仕入れた品は店に出す前に一冊一冊調べて、
鑢紙
(
やすりがみ
)
や消ゴムで汚れを拭きとったり、
鏝
(
こて
)
で
皺
(
しわ
)
のばしをしたり、破損している個所を
糊
(
のり
)
づけしたりしている。
落穂拾い
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
いろ/\の抱負もさる事ながら、
一人前
(
ひとりまへ
)
に自分の口を
糊
(
のり
)
することが先決問題かと
被存候
(
ぞんぜられさふらふ
)
。この頃つく/″\その様な事を考へるやうに
相成
(
あひな
)
り
候
(
さふらふ
)
。(後略)
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
ただ我画に
拙
(
つたな
)
く、画工たる能はざるを
憾
(
うら
)
む。もし自ら楽まんとならば画の拙なるを憂へず。口を
糊
(
のり
)
する能はず。
病牀譫語
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
淡島屋だけは幕府のお台を作る
糊
(
のり
)
の原料という名目で大びらに米俵を積んで置く事が出来る身分となっていた。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
そのほか、
糊
(
のり
)
のついたスカートだの、なるべく格好のいい靴だの……ほら、ぬかるみを飛び越す時に、ちょいと足を出した形の
粋
(
いき
)
に見えるようなやつをな。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
清浄な
蒲団
(
ふとん
)
。
匂
(
にお
)
いのいい
蚊帳
(
かや
)
と
糊
(
のり
)
のよくきいた
浴衣
(
ゆかた
)
。そこで一月ほど何も思わず横になりたい。
希
(
ねが
)
わくはここがいつの間にかその市になっているのだったら。
檸檬
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
糊
(
のり
)
でつながれて部厚く巻込まれた錦絵を私が手に取り上げましたら、父が片方を徐かにほぐして行きながら、縁の端まで行って立ち止まってくれるのでした。
虫干し
(新字新仮名)
/
鷹野つぎ
(著)
それに、まだ
慣
(
な
)
れないうちは、
糊
(
のり
)
がよくついていないといって、
問屋
(
とんや
)
に
持
(
も
)
っていってから、
母
(
はは
)
は、
小言
(
こごと
)
を
聞
(
き
)
かされて、しおしおと
帰
(
かえ
)
ってきたこともあります。
おさくの話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
氏は新政府に出身して
啻
(
ただ
)
に口を
糊
(
のり
)
するのみならず、
累遷
(
るいせん
)
立身
(
りっしん
)
して特派公使に任ぜられ、またついに大臣にまで昇進し、
青雲
(
せいうん
)
の
志
(
こころざし
)
達
(
たっ
)
し得て
目出度
(
めでた
)
しといえども
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
空気が濃く重くドロリと液体化して、生温い
糊
(
のり
)
のようにねばねばと皮膚にまといつく。生温い糊のようなものは頭にも浸透して来て、そこに灰色の
靄
(
もや
)
をかける。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
今のヤマト
糊
(
のり
)
が一般に普及する前は、子供が何か
貼
(
は
)
る場合も、ひめ糊がなければ
続飯
(
そくい
)
を用いたものである。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
しかも紙はぬらさなければならないし、
汚点
(
しみ
)
をつけてはいけないし、
糊
(
のり
)
は熱くしておかなければならないし、まったくやりきれません。そして日に四スーです。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
大晦日
(
おおみそか
)
の夜の十二時過ぎ、障子のあんまりひどく破れているのに気がついて、
外套
(
がいとう
)
の
頭巾
(
ずきん
)
をひっかぶり、
皿
(
さら
)
一枚をさげて
森川町
(
もりかわちょう
)
へ五厘の
糊
(
のり
)
を買いに行ったりした。
どんぐり
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
やがてドクトルは
糊
(
のり
)
に
硬張
(
こわば
)
った診察着でやって来て、ベッドの傍に
膝
(
ひざ
)
をついて聴診器をつかいはじめた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
羽には全部
糊
(
のり
)
がつけてある。そして
尖
(
とが
)
った翼の先で地面に筋を引く。自分の通る道をちゃんと描いておくようだ。彼女は必ずその道を進み、決してわきへは行かない。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
金五郎から、手出しするな、といわれて、台所で、大釜に、
糊
(
のり
)
をたぎらせていたのである。暴漢どもが
闖入
(
ちんにゅう
)
して来たら、
柄杓
(
ひしゃく
)
で、それを
打
(
ぶ
)
っかけてやるつもりだった。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
「知らないわけはない……
糊
(
のり
)
売ばばあの奥どなりの、……源吾とかいう子供とふたり暮しの……」
顎十郎捕物帳:08 氷献上
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
早速お湯を沸かし、その湯気を封にあてていると、やがて
糊
(
のり
)
がゆるんで来て、難なく開封出来た。
ボロ家の春秋
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
白い縫い模様のある
襟
(
えり
)
飾りを着けて、
糊
(
のり
)
で固めた緑色のフワフワした
上衣
(
うわぎ
)
で骨太い
体躯
(
からだ
)
を包んでいるから、ちょうど、空に漂う風船へ頭と両手両足をつけたように見える。
糸くず
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
例の慢心和尚はこの時、
点心
(
てんじん
)
でありました。膳に向って
糊
(
のり
)
のようなお
粥
(
かゆ
)
のようなものを一心に食べていました。その食事の鼻先へ、ムク犬が
呻
(
あえ
)
ぎ呻ぎ逃げ込んで来ました。
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
米一粒でさえ用を
全
(
まっと
)
うしないで、捨て去ってしまうのはもったいない。
雀
(
すずめ
)
にやるとか、魚にやるとか、
糊
(
のり
)
をこしらえるとか、工夫するのも料理人の心がくべきことだと思う。
残肴の処理
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
第一の種類に属するものは、極めて大胆で、死体に湧く
青蠅
(
あおばえ
)
のように物事にしつっこい。第二の種類に属するものは、極めて臆病で、
糊
(
のり
)
の足らぬ切手のように執着に乏しい。
死の接吻
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
地中の球根を
搗
(
つ
)
きつぶせば強力な
糊
(
のり
)
となり、女の
乳癌
(
にゅうがん
)
の
腫
(
は
)
れたのにつければ
効
(
き
)
くといわれる。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
糊
漢検準1級
部首:⽶
15画
“糊”を含む語句
糊口
糊塗
糊付
血糊
糢糊
糊刷毛
糊附
糊米
模糊
糊気
糊紅
糊細工
曖昧糢糊
曖昧模糊
姫糊
糊精
糊壺
糊屋
糊目
糊臭
...