トップ
>
磨
>
と
ふりがな文庫
“
磨
(
と
)” の例文
「あれはね、
自働革砥
(
オートストロップ
)
の音だ。毎朝
髭
(
ひげ
)
を
剃
(
そ
)
るんでね、
安全髪剃
(
あんぜんかみそり
)
を
革砥
(
かわど
)
へかけて
磨
(
と
)
ぐのだよ。今でもやってる。
嘘
(
うそ
)
だと思うなら来て御覧」
変な音
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
……刃物はきょう、
犀角散
(
さいかくさん
)
を、
削
(
けず
)
ることになって居りましたので、
磨
(
と
)
がしましたばかり。決して、血を落としたんじゃございません
乳を刺す:黒門町伝七捕物帳
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
慾が深くて
因業
(
いんごう
)
で、若い時からずいぶん人を泣かせてきた様子ですから、どこに
深怨
(
しんえん
)
の
刃
(
やいば
)
を
磨
(
と
)
ぐ者があるかもわからない情勢です。
銭形平次捕物控:021 雪の精
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
月はないが、空いちめんに
磨
(
と
)
ぎだされ、かがやかしい星の光と、ゆるやかに波を
縒
(
よ
)
る水明りに、湖は、夜明けのようにほの明るかった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それから、道具を新しく
購
(
か
)
い、毎日々々それを
磨
(
と
)
いでは柄をすげ、道具調べの方をひたすら熱心にやっていたようでありました。
幕末維新懐古談:79 その後の弟子の事
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
▼ もっと見る
かれはお津賀の家へ来ても時々に三味線を弾くことがあるので、女房も別に不思議には思わないで自分の米を
磨
(
と
)
いでしまって家へ帰った。
半七捕物帳:17 三河万歳
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ちゃりんちゃりんナイフを
磨
(
と
)
ぐ音がした。博士はナイフをひらめかしてぐさりと燻製肉の一
片
(
きれ
)
を切り取り、口の中へ放り込んだ。
時限爆弾奇譚:――金博士シリーズ・8――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
お蓮はそう
呟
(
つぶや
)
きながら、静に箱の中の物を抜いた。その拍子に剃刀の
匀
(
におい
)
が、
磨
(
と
)
ぎ澄ました
鋼
(
はがね
)
の匀が、かすかに彼女の鼻を打った。
奇怪な再会
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その月光に照らし出された豹の姿の美しさ、軟かな毛並み鮮かな斑点、人の児のような優しい手つきでセッセと爪を
磨
(
と
)
いでいる。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
奥では
弄花
(
はな
)
が始まったのか、小母さんの、いつものヒステリー声がビンビン天井をつき抜けて行く。松田さんは沈黙ったまま米を
磨
(
と
)
ぎ出した。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
これでも、まだ、前の晩から、米が
磨
(
と
)
いで、釜に仕掛けてあったり、味噌やら、豆腐やら、大根やらが、買うてあるもんじゃけ、楽なんじゃ。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
不知不識
(
しらずしらず
)
其方へと路次を
這入
(
はい
)
ると道はいよいよ狭くなって井戸が道をさえぎっている。その傍で若い女が米を
磨
(
と
)
いでいる。
根岸庵を訪う記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「そんなことはないさ。しかし実業以外の方面へ出る気があるなら、一つ外国へ行ってもう
少時
(
しばらく
)
磨
(
と
)
いで見ちゃ
何
(
ど
)
うです?」
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
況
(
いわ
)
んやその当の相手は、現在ドキドキと
磨
(
と
)
ぎ澄ました大型の西洋
剃刀
(
かみそり
)
を持って、吾輩の
咽喉
(
のど
)
の処を、ゾリゾリやっている。
山羊髯編輯長
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
薙
(
な
)
げば薙ぐほど自然に
磨
(
と
)
ぎすまされる大鎌である。それを見まいとしても見ずにはいられない。それを思うまいとしても思わずにはいられない。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
そして、指の上を、よくも
磨
(
と
)
いでない刃でやわらかくこする。むろん、刃は通りっこない。彼は押さえつける。汗をかく。やっと血が
滲
(
にじ
)
み出す。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
つかいはや間の
隙
(
ひま
)
にはお取次、茶の給仕か。おやつの時を聞けば、もうそろそろ晩のお総菜
拵
(
ごしら
)
えにかかって、米を
磨
(
と
)
ぐ。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
千里の山嶺を
攀
(
よ
)
じ幾片の白雲を踏み砕きて上り着きたる山の頂に鏡を
磨
(
と
)
ぎ出だせる芦の湖を見そめし時の心ひろさよ。
旅の旅の旅
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
倅
(
せがれ
)
はよくよく
磨
(
と
)
ぎたる大鎌を手にして近より来たり、まず左の肩口を目がけて
薙
(
な
)
ぐようにすれば、鎌の
刃先
(
はさき
)
炉
(
ろ
)
の
上
(
うえ
)
の
火棚
(
ひだな
)
に
引
(
ひ
)
っかかりてよく
斬
(
き
)
れず。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
ある時は団七九郎兵衛の人形を飾り、ある時はその家にちなんだお竹大日如来がお米を
磨
(
と
)
いでいて、
乞食
(
こじき
)
に自分の食をほどこしをしているのだった。
旧聞日本橋:04 源泉小学校
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
宗忠は鍋の中で米を
磨
(
と
)
ぐ、火にかける、飯が出来たらそれを深い水桶にあけて、その跡へは味噌をとき、皮もむかぬ
馬鈴薯
(
ばれいしょ
)
を入れて味噌汁をつくる。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
暁方
(
あけがた
)
近く屠者はでっかい
庖丁
(
ほうちょう
)
を
磨
(
と
)
ぎ、北の
方
(
かた
)
同道でやって来て箱の戸を明け、「灰色の坊様出てきやれ、今日こそお前の腸を舌鼓打って賞翫しょう」
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
象牙の白い
磨
(
と
)
ぎ汁が石畳の間を流れていた。その石畳の街角を折れると、招牌の下に
翡翠
(
ひすい
)
の満ちた街並が潜んでいた。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
彼は自分のナイフを持ってき、わたしも二挺もっていたので、二人はそれを地面に突っこんで
磨
(
と
)
ぐのをつねとした。彼は炊事の労をわたしと分担した。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
仄暗
(
ほのぐら
)
いうちに起きて家人の眼をかくれ井戸端でお米を
磨
(
と
)
いだりして、眠りの邪魔をされる悪口ならまだしも、私が
僻
(
ひが
)
んで便所に下りることも気兼ねして
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
僕の家では玉子の
殻
(
から
)
も決して捨てず、
蜜柑
(
みかん
)
の皮も決して捨てず、米を
磨
(
と
)
いだ
白水
(
しろみず
)
も決して捨てず、
茶殻
(
ちゃがら
)
も捨てず
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
やがて砥石の傍に水の入った桶が置れて、
小舎
(
こや
)
に行った男が土の上に
蹲踞
(
うずくま
)
って大きな鉞を
磨
(
と
)
ぎ始める。けれどこの悪者は
未
(
ま
)
だ一言も互に話し合わなかった。
捕われ人
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
今日は塾へ出ようとして、青葉に
埋
(
うも
)
れた石垣の間を通つて、久し振で城門前の踏切へ出た。並行したレールは初夏の日を受けて
磨
(
と
)
ぎすましたやうに光つて居た。
突貫
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
顔を洗うと、真裸で芝生に飛び下り、
磨
(
と
)
ぎ立ての
鎌
(
かま
)
で芝を苅りはじめる。雨の様な露だ。
草苅
(
くさかり
)
は露の
間
(
ま
)
の事。ざくり、ざくり、ザク、ザク。面白い様に苅れる。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
痩
(
やせ
)
た者かをハッキリといい
当
(
あて
)
るときが出来るほど、異状に
磨
(
と
)
ぎすまされた感覚の、所有者となっていた。
鉄路
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
仁右衛門は
逞
(
たくま
)
しい馬に、
磨
(
と
)
ぎすましたプラオをつけて、畑におりたった。耡き起される土壌は適度の湿気をもって、裏返るにつれてむせるような土の香を送った。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
眠気
(
ねむけ
)
ざましのつもりで、台所に行って翌朝の米を
磨
(
と
)
いだり、朝から食べッ放しのままの食器などを洗って片づけてやったが、おかみさんはそれをいいことにして
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
Cさんのお
家
(
うち
)
の前を通ったら、Cさんの裏の井戸端で、雨が降ってるのに
手拭
(
てぬぐい
)
を
被
(
かぶ
)
って、手を
真赤
(
まっか
)
にしてお米を
磨
(
と
)
いでいらしたの、あたしほんとにお気の毒になっちゃって
大きな手
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
(鋏)大抵なものなら
切
(
きっ
)
て見せるが、それでも
六
(
むず
)
かしいと思うならまア一遍
磨
(
と
)
いで行くさ。
三角と四角
(その他)
/
巌谷小波
(著)
氷を砕いて明鏡を
磨
(
と
)
ぐが如く為ざらん、その
夕
(
ゆふべ
)
ぞ我は
正
(
まさ
)
に死ぬべきと
私
(
ひそか
)
に慰むるなりき。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
待乳山
(
まつちやま
)
から、河向うの隅田の木立ちへかけて、米の
磨
(
と
)
ぎ汁のような
夕靄
(
ゆうもや
)
が流れている。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
私が一度でもそのような気持ちの影をでもあらわしたことがありますか? 私はあなたがお米を
磨
(
と
)
いだり、着物を
洗濯
(
せんたく
)
したりなさるのをまことにかいがいしく美しく感じています。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
糯米
(
もちごめ
)
を
磨
(
と
)
ぐことから
小豆
(
あずき
)
を煮ること餅を
舂
(
つ
)
くことまで男のように働き、それで苦情一つ言わずいやな顔一つせず客にはよけいなお世辞の空笑いできぬ代わり
愛相
(
あいそ
)
よく茶もくんで出す
置土産
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
いつまで
饒舌
(
しやべ
)
つて
居
(
い
)
やがるのだ、
井戸端
(
ゐどばた
)
は米を
磨
(
と
)
ぐ所で、油を売る所ぢやねえぞと。
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
磨
(
と
)
ぎ澄ました霞が浦の鏡一面、大空につく息白く立ち上る頃は、遠かった筑波も毛穴の見える位近々と歩み寄って、夕日の頃は、其の下に当る
相見崎観音
(
あいみざきかんのん
)
の石段の数も殆どよまれる。
漁師の娘
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
わざとらしく境の
襖
(
ふすま
)
が明け放しになっていて、長火鉢や
箪笥
(
たんす
)
や
縁起棚
(
えんぎだな
)
などのある八畳から
手水場
(
ちょうずば
)
の
開戸
(
ひらきど
)
まで見通される台処で、おかみさんはたった一人
後向
(
うしろむき
)
になって米を
磨
(
と
)
いでいた。
雪解
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
薄暗闇
(
うすくらやみ
)
なので、その男の年齢も容貌もよくは分らないが、片手に縄を持ち、片手に
磨
(
と
)
ぎ澄ました大きな海軍ナイフを握りしめ、蒲団の上をきっと睨んだ、やがてナイフを逆手に持ち直し
鳩つかひ
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
そして彼の大きなナイフを
磨
(
と
)
ぎながら、彼等の背後に腰を卸して待つてゐた。
氷島の漁夫:01 氷島の漁夫
(旧字旧仮名)
/
ピエール・ロティ
(著)
そこから黒く
逞
(
たくま
)
しい馬に乗って馬丁に馬の口を取らせ、自分は陣笠をかぶって、筒袖の
羅紗
(
らしゃ
)
の羽織に
緞子
(
どんす
)
の馬乗袴をつけ、
朱
(
あか
)
い
総
(
ふさ
)
のついた
勝軍藤
(
しまやなぎ
)
の鞭をたずさえ、
磨
(
と
)
ぎ澄ました
鐙
(
あぶみ
)
を踏んで
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
一人前の侍となして置いて
仇
(
かたき
)
と名告り討たれんものと心組んだる其の
処
(
ところ
)
へ、國と源次郎めが密通したを
怒
(
いか
)
って、二人の命を絶たんとの汝の心底、最前庭にて錆槍を
磨
(
と
)
ぎし時より
暁
(
さと
)
りしゆえ
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
たとえば母親から慰められずに置き去りにされた子供が独りで玩具を
弄
(
もてあそ
)
んでいるうちにいつか涙が乾いてくるように、米を
磨
(
と
)
いだり菜を刻んだりしていると、僕の気持もようやく
紛
(
まぎ
)
れてくる。
落穂拾い
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
磨
(
と
)
ぎすました斧を右手にさげた芳夫が暗い廊下に立っていた。さすがに丈夫な建物も嵐の吹きつける度毎に不気味に鳴り、横なぐりの雨は雨戸にすごい音をたてた。芳夫は静かに障子を開いた。
抱茗荷の説
(新字新仮名)
/
山本禾太郎
(著)
夫人は、心の爪は、油断なく
磨
(
と
)
いで、しかも
面
(
おもて
)
は、笑みこぼれながら
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
彼はそこの照明棚にうずくまると、古いお芝居の化け猫そっくりの
形相
(
ぎょうそう
)
で、
爪
(
つめ
)
を
磨
(
と
)
ぎ、
牙
(
きば
)
をむき、
燐光
(
りんこう
)
の燃える両眼をらんらんとかがやかせて、
遥
(
はる
)
か眼下に群がる人々の気勢をうかがうのであった。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
刀の
身
(
み
)
を
磨
(
と
)
ぐことは知らぬが、
鞘
(
さや
)
を塗り
柄
(
つか
)
を巻き、その外、
金物
(
かなもの
)
の細工は田舎ながらドウヤラコウヤラ形だけは出来る。今でも私の
塗
(
ぬっ
)
た
虫喰塗
(
むしくいぬ
)
りの
脇差
(
わきざし
)
の鞘が宅に一本あるが、随分不器用なものです。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
磨
常用漢字
中学
部首:⽯
16画
“磨”を含む語句
磨上
達磨
磨滅
銷磨
琢磨
消磨
磨臼
本磨
播磨
磨硝子
切磋琢磨
達磨船
歯磨
磨針峠
研磨
銀磨
達磨茶屋
磨製石斧
米磨桶
磨師
...