ほこ)” の例文
しかし、信長の死後、忽ち、甲信に兵を入れて、宿望の地を拡大し、二女の徳姫を北条氏直うじなおとつがせて、その小田原とはほこを収め
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこでタヂマモリはつる四本ほこ四本を分けて皇后樣に獻り、蔓四本矛四本を天皇の御陵のほとりに獻つて、それを捧げて叫び泣いて
一時は呆気あっけに取られたが、ほこを取り直して、この意外な狼藉者ろうぜきものを取押えて、弁慶を救い出そうという途端、仏頂寺弥助が眼を怒らして
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
たいまつをつけた人がさきつと、長持ながもちのうしろには神主かんぬしがつきって、はたほこてて、山の上のおやしろをさして行きました。
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
かつてはも少しで彼とほこを交ゆるところだった。しかし祖父は敵の偉さをも認めることができた。幾度となくそれを口にした。
更にほこを転じてマジノ線以西の地区からパリに迫ってこれを抜き、オランダ侵入以来わずか五週間で強敵フランスに停戦を乞わしめるに至りました。
最終戦争論 (新字新仮名) / 石原莞爾(著)
武士たちは、こわごわちかづいて見ると、高麗錦こまにしきくれあや倭文織しずおりかとりたてほこゆきくわなどのたぐいで、いずれも権現から紛失した宝物であった。
おおせに従わない悪者どもをき従えてまいれとおおせになって、ひいらぎのほこをおさずけになり、御鉏友耳建日子みすきともみみたけひこという者をおつけえになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
二人のあとをつけて来たのは千枝松ばかりでなく、鎧兜を着けた大勢の唐人どもが弓やほこを持って集まって来て、台のまわりを忽ち幾重いくえにも取りまいた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
浮世の栄華に誇れる奴らのきもを破れやねむりをみだせや、愚物の胸に血のなみ打たせよ、偽物の面の紅き色れ、おの持てる者斧をふるえ、ほこもてるもの矛を揮え
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それが行列を為しほこを出し、やまを出し、矢台やたいを出すというような儀式、これは皆インドの儀式に相違ない。
(22)mace ——先に鉤釘かぎくぎのついたほこで、片手で振り、甲胄かっちゅうを破るなどに用いられた中世の武器。
橿原宮の御即位の式には、大伴おほとも氏、久米くめ氏、物部もののべ氏の祖は、ほこを執つて、儀衛に任じ、斎部いむべ氏、中臣なかとみ氏の祖は、恭々しく御前に進み出て、祝詞を言上し奉つてゐる。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
天下ことあればほことりたち、事なければ田畝でんぽに帰耕す、要は只時代の要求に応ずることである。
教育の最大目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
その嘶く声の響きはおそるべし、谷を脚爬あがきて力に誇り自ら進みて兵士に向かう、おそるる事に笑いて驚くところなく、剣に向かうとも退かず、矢筒その上に鳴り鎗にほこ閃爍きらめ
鱗綴うろことぢの大鎧にあかがねほこひつさげて、百万の大軍を叱陀しつたしたにも、劣るまじいと見えたれば、さすが隣国の精兵たちも、しばしがほどはなりを静めて、出で合うずものもおりなかつた。
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
いつか話のほこは、安倍誠之助に向っていたのだ。彼は何となくうなずいた。提灯ちょうちんの光りは届かない。ぼんやり白い水面のほのかなあかるみを受け、だが、安倍の動作は見て取れた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
約束的にせよ善にくみし悪をみ、美を愛し、醜を嫌うものが、単に作物の上においてのみほこさかさまにして悪を鼓吹こすいし、醜を奨励しょうれいする態度を示すのは、ただに標準を誤まるのみならず
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
第一段の上には三叉みつまたほこの形が刻まれている。登ることのできないそれらの階段はなお承口うけぐちのうちに丈夫についている。他の部分はちょうど歯のぬけたあごのようなありさまをしている。
霧島火山群きりしまかざんぐん東西とうざい五里ごりわたふたつの活火口かつかこうおほくの死火山しかざんとをゆうしてゐる。そのふたつの活火口かつかこうとはほこみねたか千七百米せんしちひやくめーとる)の西腹せいふくにある御鉢おはちと、その一里いちりほど西にしにある新燃鉢しんもえばちとである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
西山が星野を推賞した、そのほこを逆まにしてガンベは切りこんできた。星野が衆評などをまったく眼中におかないで、いきなり物の中心を見徹していくその心の腕のえかたにたじろいたのだ。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
ああ年代の歴史に書かれたる血腥ちなまぐさき画図や。サルマシヤは罪なきに亡滅したり。しかして泣く者とてはあらず。ほこを揮うてこれを救う義侠ぎきょうの友もなく、不運を憐れみ菩提ぼだいを弔う慈悲ある敵もあらず。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
世間的に美妙が蟄伏ちっぷくしていた時には、心ならずも彼女たちもほこを伏せていた、おかあさんとおばあさんは、美妙の復活を見ると、あの輝かしかった天才息子を、大切な孫を、嫁女よめじょが奪ってしまって
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
敵も味方も汝がほこ地に伏せて
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
やりほこたねしま
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
「劉皇叔。さきに世を去り給いし劉表の公子琦君きくんをたすけて、ここに安民の兵馬をすすめ給う。ほこを投げ、城門をひらいて迎えよ」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここにオホハツセの王は、ほこを杖として、その内をのぞいて仰せられますには「わたしが話をした孃子は、もしやこの家にいるか」
民も又戦国の民なれば、一三六すきててほこへ、一三七農事なりはひをこととせず。士たるもの枕を高くしてねむるべからず。今のさまにては長く不きうまつりごとにもあらじ。
さらに弓矢や長いほこを持ち出して追い立てると、怪鳥は青いおにびのような眼をひからせ、大きいつばさをはたはたと鳴らして飛びめぐった末に、門を破って逃げ去った。
あめ浮橋うきはしという、雲の中に浮かんでいる橋の上へお出ましになって、いただいたほこでもって、下のとろとろしているところをかきまわして、さっとお引きあげになりますと
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
ほのおの息を吐き竜に乗りて左右手に旗とほこを持つと(コラン・ド・ブランシー『妖怪辞彙』五板四六頁)、アラビアの古伝にいう、ソロモン王、アスモデウスの印環を奪いこれをとらう。
南軍の将平安へいあん驍勇ぎょうゆうにして、かつて燕王に従いて塞北さいほくに戦い、王の兵を用いるの虚実をる。先鋒せんぽうとなりて燕に当り、ほこふるいてすすむ。瞿能くのう父子もまた踴躍して戦う。二将のむかう所、燕兵披靡ひびす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ほこを逆にしてブルジョアジーを亡滅に導かねばならぬ。
広津氏に答う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
敵も味方もほこ地に伏せて
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
蜀の陣で金鼓かねを鳴らすと、それをしおに、魏のほうでも引揚げの鼓を叩き、龐徳も関羽も、同時にほこを収めて、各〻の営所へ引き退いた。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
吉備きびの臣等の祖先のミスキトモミミタケ彦という人を副えてお遣わしになつた時に、ひいらぎの長いほこを賜わりました。
たちまちに横町から天狗があらわれた。足駄あしだを穿いて、ほこをついて、どこへゆくでもなし、迷うが如くに徘徊はいかいしている。一人ならず、そこからも此処ここからも現われた。みな十二、三歳の子供である。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
とおっしゃって、りっぱなほこを一ふりおさずけになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
「夷陵を落ちのびた逃げ上手の曹洪よな。さる恥知らずの敗将とほこを交えるが如き周瑜ではない。誰か、あの野良犬を撲殺ぼくさつせい」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が作り仕へまつれる大殿内とのぬちには、おれまづ入りて、その仕へまつらむとする状を明し白せ」といひて、横刀たち手上たがみとりしばほこゆけ矢刺して、追ひ入るる時に
唄〽口にはほのおの息をふき、手にはくろがねのほこをふるい、恨み重なるかたきの奴原、一人も余さず地獄へおとせと、熱湯の池、つるぎの山、追い立て追い立て急ぎゆく。凄まじかりける次第なり。
平家蟹 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
いま魏の申し入れをはねつければ、魏はかならず遺恨をむすび、或いは、蜀と一時的休戦をしてほこさかしまにするやもしれない。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここに曾婆訶里、己が王の厠に入りませるを伺ひて、ほこもちて刺してせまつりき。
日月のはた、五色の御旗、ゆるやかに春風のなぶる下には、なお御親衛の弓、ほこをたずさえる防人さきもりの隊伍が、花園の花のように揃っていた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どんな合戦かっせんも、一まいの、熊野権現くまのごんげん誓紙せいしで、ほこおさめることができた。神をなかだちにしてちかえば、大坂城おおさかじょうほりさえうずめた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あかき戦衣に、たまをちりばめた黄金の乳当を着け、背には七本の短剣をはさみ、手に一丈余のほこをかかえ、炎の如く、戦火の中を馳け廻っていた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見れば、丈八のほこを横たえ、盔を脱いで鞍にかけ、馬足をしっかと踏み揃えた大武者が、物もいわず、動きもせず、くわっと、睨みつけていた。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
掠奪結婚も、折々あるし、恋愛争奪戦争に、家人奴僕を武装させ、やじりを射つくし、ほこに血を飛沫しぶかす場合も稀ではない。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
焦触は、何をとばかり、ほこをふるって両々譲らず十数合ほど戦ったが、風浪が激しいため、舟と舟は揉みに揉みあい、勝負はいつ果てるとも見えない。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
事実、離反者は名のりもあげず、いきなりほこをさかしまに味方の腹を切り裂いてあばれ出したものであるから、明確に捕捉しえなかったのも当然だった。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)