トップ
>
田圃
>
たんぼ
ふりがな文庫
“
田圃
(
たんぼ
)” の例文
彼
(
かれ
)
は、
懐中
(
かいちゅう
)
から、スケッチ
帖
(
ちょう
)
を
出
(
だ
)
して、
前方
(
ぜんぽう
)
の
黄色
(
きいろ
)
くなった
田圃
(
たんぼ
)
や、
灰色
(
はいいろ
)
にかすんだ
林
(
はやし
)
の
景色
(
けしき
)
などを
写生
(
しゃせい
)
しにかかったのであります。
丘の下
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
それから、十分後に、二人は、もう、
田圃
(
たんぼ
)
を隔てた雑木林の中に分け入つた。朽葉を踏む音が、彼等をただ不安にするだけであつた。
落葉日記
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
田圃
(
たんぼ
)
など幾らもあるのだ、刈って
秣
(
まぐさ
)
にしてなんで悪い、馬には食わせなくてもいいというのか、法皇がお咎めになるのは筋違いじゃ。
現代語訳 平家物語:08 第八巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
そればかりではありません、
山
(
やま
)
にある
木
(
き
)
の
葉
(
は
)
、
田圃
(
たんぼ
)
にある
草
(
くさ
)
の
中
(
なか
)
にも『
食
(
た
)
べられるからおあがり。』と
言
(
い
)
つてくれるのもありました。
ふるさと
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
夜中の
喚
(
わめ
)
き
罵
(
のゝし
)
る声に驚いて雨戸まで開けた近所の人達は朝には肩を並べて牛を引いて
田圃
(
たんぼ
)
に出て行く私共父子を見て
呆気
(
あつけ
)
にとられた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
▼ もっと見る
山口の大同にあるオクナイサマは木像なり。山口の
辷石
(
はねいし
)
たにえという人の家なるは
掛軸
(
かけじく
)
なり。
田圃
(
たんぼ
)
のうちにいませるはまた木像なり。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
中空
(
ちゅうくう
)
には大なる
暈
(
かさ
)
戴
(
いただ
)
きし
黄
(
きいろ
)
き月を仰ぎ、低く地平線に接しては煙の如き横雲を漂はしたる
田圃
(
たんぼ
)
を越え、
彼方
(
かなた
)
遥かに
廓
(
くるわ
)
の屋根を望む処。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
主人
(
あるじ
)
と妻と
逗留
(
とうりゅう
)
に来て居る都の娘と、ランプを隅へ
押
(
お
)
しやって、螢と螢を眺むる子供を眺める。
田圃
(
たんぼ
)
の方から涼しい風が吹いて来る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
一枚戸を開きたる土間に、
卓子
(
テエブル
)
椅子
(
いす
)
を置く。ビール、サイダアの
罎
(
びん
)
を並べ、
菰
(
こも
)
かぶり
一樽
(
ひとたる
)
、
焼酎
(
しょうちゅう
)
の
瓶
(
かめ
)
見ゆ。この店の
傍
(
わき
)
すぐに
田圃
(
たんぼ
)
。
山吹
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「それは大丈夫で、長者丸は親分も知つての通り百姓地が多くて、何萬坪となく
田圃
(
たんぼ
)
だし、村越の家といふのは、その田圃の眞ん中だ」
銭形平次捕物控:246 万両分限
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
四ツばかり年下である私が、後を追っかけて
跟
(
つ
)
けて行きたがると、兵さんは、
田圃
(
たんぼ
)
の稲のかげなどにかくれて、すぐ私をまいて
終
(
しま
)
った。
あまり者
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
「おもしろくなくっても、
田圃
(
たんぼ
)
に麦や、米ができなきゃ困るじゃないか。……西洋の草花でも造りゃ
綺麗
(
きれい
)
でおもしろいかもしれないが」
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
これによりてシオンは汝のゆえに
田圃
(
たんぼ
)
となりて耕され、エルサレムは
石堆
(
いしづか
)
となり、宮の山は樹の生い繁る高き所とならん。(三の一二)
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
五重の塔のすてッぺんに、
鴉
(
からす
)
があくびをしていやがる、その手前はどこだろう、なんにもねえや、真っ青だ、
田圃
(
たんぼ
)
と桃の木と原ッぱだ。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
みそ
萩
(
はぎ
)
の
側
(
そば
)
には
茶碗
(
ちやわん
)
へ一
杯
(
ぱい
)
に
水
(
みづ
)
が
沒
(
く
)
まれた。
夕方
(
ゆふがた
)
近
(
ちか
)
く
成
(
な
)
つてから三
人
(
にん
)
は
雨戸
(
あまど
)
を
締
(
しめ
)
て、
火
(
ひ
)
のない
提灯
(
ちやうちん
)
を
持
(
も
)
つて
田圃
(
たんぼ
)
を
越
(
こ
)
えて
墓地
(
ぼち
)
へ
行
(
い
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
刑場から六、七町の間、皆は黙々として銘々自分自身の感激に浸っていたが、浅草
田圃
(
たんぼ
)
に差しかかると、淳庵が感に堪えたようにいった。
蘭学事始
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
こんな事を思っている内に、故郷の町はずれの、
田圃
(
たんぼ
)
の中に、じめじめした処へ土を盛って、
不恰好
(
ぶかっこう
)
に造ったペンキ塗の会堂が目に浮ぶ。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
寝床から起き出して
田圃
(
たんぼ
)
や庭などをぶらぶら歩いているのであるが、それでも病人は病人に相違ないので、親たちの苦労は絶えなかった。
青蛙堂鬼談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
夕日を仰いで、
田圃
(
たんぼ
)
の中の一筋道を
辿
(
たど
)
りながらも、彼は幾度か後を振返ろうとして、そのたびにようようの思いで喰いとめた。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
田圃
(
たんぼ
)
を隔てた町のほうから、太鼓や笛の音が、高くなり低くなり、
跡切
(
とぎ
)
れたかと思うと急に拍子を早めたりして、聞えて来た。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「我輩も後へは引けない。行ったよ。当時はこの裏一帯が
田圃
(
たんぼ
)
さ。日が暮れゝば人っ子一人通らない。果し合いには持って来いのところだ」
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
漱石の内は
牛込
(
うしごめ
)
の
喜久井町
(
きくいちょう
)
で
田圃
(
たんぼ
)
からは一丁か二丁しかへだたつてゐない処である。漱石は子供の時からそこに成長したのだ。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
、叩き倒したのはえらいもんだ。よう花村やあ——と、讃め言葉がほしいねえ——
生憎
(
あいにく
)
と、
田圃
(
たんぼ
)
外じゃあ、おいら一人の見物で、物足りねえ
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
併し彼はその小頭の
半纒
(
はんてん
)
を麗々しく着ていることが何かしら気恥ずかしいというように、
田圃
(
たんぼ
)
へ出る時と同じように首に手拭いを結んでいた。
或る部落の五つの話
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
おい/\あのね、
今
(
いま
)
田圃
(
たんぼ
)
まで出て肩を
取換
(
とりか
)
へようと思つてやると
両掛
(
りやうがけ
)
が
無
(
な
)
いので
驚
(
おどろ
)
いた、
余
(
あんま
)
り急いだので
両掛
(
りやうがけ
)
を忘れました。
(和)茗荷
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
空にはお月さまが高く登つてをります。
田圃
(
たんぼ
)
の稲は色よく熟して、夜露にしつとりと
濡
(
ぬ
)
れて、何ともいへぬ静かな深い秋のながめであります。
狐に化された話
(新字旧仮名)
/
土田耕平
(著)
生れしままなれば
素跣足
(
すはだし
)
の
尻
(
しり
)
きり
半纏
(
ばんてん
)
に
田圃
(
たんぼ
)
へ弁当の持はこびなど、松のひでを
燈火
(
ともしび
)
にかへて
草鞋
(
わらんじ
)
うちながら
馬士歌
(
まごうた
)
でもうたふべかりし身を
ゆく雲
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
まはりは
田圃
(
たんぼ
)
だけの、そこで今までまつすぐに来た道路は斜めに屈折して、二つの直線をなす上の町と下の町との喰ひちがひをつないでゐた。
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
停車場に近づいた汽車はだんだんと歩度をゆるめていた。
田圃
(
たんぼ
)
のここかしこに、俗悪な色で塗り立てた大きな広告看板が連ねて建ててあった。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
腰を掛けて休む店も幾軒かありますが、それは市場を離れて大橋へ行く道の後を
田圃
(
たんぼ
)
にした辺にあって、並べた菓子類などが外から見えます。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
やがて私はまた
竹藪
(
たけやぶ
)
に沿うた坂を下って、
田圃
(
たんぼ
)
の
傍
(
そば
)
の
庚申塚
(
こうしんづか
)
のある道や、子供の頃
笹
(
ささ
)
っ
葉
(
ぱ
)
を持って
蛍
(
ほたる
)
を追い回した小川の縁へ出て来ましたが
棚田裁判長の怪死
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
そして、
田圃
(
たんぼ
)
の間を東に向って走りました。走りながら壮い男が
揮
(
ふ
)
り返って見ると、修験者は
直
(
す
)
ぐ
背後
(
うしろ
)
に迫っておりました。
宇賀長者物語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そこいらの
田圃
(
たんぼ
)
の中を歩いていると、僕はなんともいえず心なごやかな、いわばパストラアルな気分にさえなり出していた。
大和路・信濃路
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
兄の少年の眼には
曾
(
かつ
)
て栄えたところとは
何
(
ど
)
うしても見えなかつた。闇の
田圃
(
たんぼ
)
の中に、五六軒
茅葺家
(
かやぶきや
)
があつて、
其処
(
そこ
)
から灯が唯ちら/\見えた。
朝
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
お千代は気楽に
田圃
(
たんぼ
)
を眺めて、ただならぬおとよの顔には気がつかない。おとよは余儀なく襷をはずし手拭を
採
(
と
)
って二人一緒に座敷へ上がる。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
そこから小川を一つ隔てた
田圃
(
たんぼ
)
なかにある
遊廓
(
ゆうかく
)
の白いペンキ塗の二階や三階の建物を取捲いていた林の
木葉
(
このは
)
も、すっかり落尽くしてしまった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
翻って城下の形勢を観察すると、ここがやっぱり昔の往還になっていわゆる須賀口というやつは、今、
田圃
(
たんぼ
)
になっている。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
道が
田圃
(
たんぼ
)
にさしかかって、
爽
(
さわやか
)
な稲の匂を鼻に感ずる。空には月がなく、天の川が斜に白々と流れている、という趣らしい。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
二人はそれから
田圃
(
たんぼ
)
の中にある百姓家を訪れた。百姓家では薄汚い
女房
(
かみ
)
さんが、
裸足
(
はだし
)
のまゝ
井戸側
(
ゐどばた
)
で
釣瓶
(
つるべ
)
から口移しにがぶがぶ水を飲んでゐた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
六月はじめの
田圃
(
たんぼ
)
は麦の波が薄く黄褐色に
彩
(
いろど
)
られて、そよそよとしているけれど、桑は濃緑色に茂り合い、畑から溢れんばかり盛り上がっている。
しゃもじ(杓子)
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
僕も稲から米のとれる位のことはとうの昔に知つてゐたさ。それから
田圃
(
たんぼ
)
に生える稲も
度
(
たび
)
たび見たことはあるのだがね。
正岡子規
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
小屋は、
田圃
(
たんぼ
)
わきの流れを
堰
(
せ
)
き止めた、せいぜい一坪ぐらいの池の上に、
萱
(
かや
)
の屋根を葺き出して三方を藁で囲ってある。
和紙
(新字新仮名)
/
東野辺薫
(著)
そこで長蔵さんに
尾
(
つ
)
いて、横町を曲って行くと、一二丁行ったか行かないうちに町並が急に
疎
(
まばら
)
になって、所々は
田圃
(
たんぼ
)
の片割れが細く透いて見える。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
大正十二年十月二十二日 丹波竹田の泊雲居を
訪
(
と
)
ふ。旧暦九月十三夜、晴れて霧深し。泊月、
野風呂
(
のぶろ
)
と共に出でゝ
田圃
(
たんぼ
)
道を歩く。白川遅れて来る。
五百句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
片側町
(
かたかわまち
)
になって、人や車が
後
(
あと
)
へ走るのが
可笑
(
おか
)
しいと、其を見ている
中
(
うち
)
に、眼界が忽ち
豁然
(
からっ
)
と明くなって、
田圃
(
たんぼ
)
になった。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
遠賀
(
おんが
)
川の浸水区域になる
田圃
(
たんぼ
)
と、野菜畑の中を、南の方飯塚に通ずる低い堤防じみた街道の傍にポツンと立った
藁葺小舎
(
わらぶきごや
)
で、型の如く汚れた
縄暖簾
(
なわのれん
)
骸骨の黒穂
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
アズマツメクサは、明治二十一年日本に産することが、はじめて判った植物だが、これも私と池野とが
大箕谷
(
おおみや
)
八幡下の
田圃
(
たんぼ
)
で一緒に発見したものだ。
牧野富太郎自叙伝:01 第一部 牧野富太郎自叙伝
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
と、それから数丁の間は全然水を見ず、
纔
(
わず
)
かに森の辺から両側の
田圃
(
たんぼ
)
が、二三尺の深さで浸水している程度であった。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
おばこ来るかやと
田圃
(
たんぼ
)
の
外
(
は
)
んづれまで出て見たば、コバエテ/\、おばこ来もせで
用
(
よ
)
のない
煙草
(
たんばこ
)
売りなの(なのはなどの意)ふれて来る。コバエテ/\
春雪の出羽路の三日
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
なんの変哲もない
田圃
(
たんぼ
)
の中の温泉であるが、東京に近いわりには
鄙
(
ひな
)
びて静かだし、宿も安直なので、私は仕事がたまると、ちょいちょいそこへ行って
黄村先生言行録
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
“田圃(
田
)”の解説
田(た)は、穀物を栽培するための農地。日本では主に稲栽培について使用される。田圃(たんぼ:でんぼ・でんぽと読む場合は田と畑を表す)や、水を張った田は水田(すいでん)とも言う。
特に水田とそこへ通じる農業用水は、食糧生産だけで無く、治水や地下水涵養、気候調節、生物多様性の維持といった、農業・農村が持つ多面的機能において重要である。
稲以外を育てる農地を日本では「畑」と言い、田畑(たはた・でんぱた)と総称されることもある。「#定義」を参照。
(出典:Wikipedia)
田
常用漢字
小1
部首:⽥
5画
圃
漢検準1級
部首:⼞
10画
“田圃”で始まる語句
田圃道
田圃路
田圃側
田圃径
田圃面
田圃中
田圃伝
田圃向
田圃組
田圃脇