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灯
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あかり
ふりがな文庫
“
灯
(
あかり
)” の例文
旧字:
燈
お吉の指す方、ドブ板の上には、向う側の家の戸口から射す
灯
(
あかり
)
を浴びて、
紅
(
あけ
)
に染んだ、もう一人の娘が倒れてゐるではありませんか。
銭形平次捕物控:066 玉の輿の呪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
ジョバンニは、せわしくいろいろのことを考えながら、さまざまの
灯
(
あかり
)
や木の
枝
(
えだ
)
で、すっかりきれいに
飾
(
かざ
)
られた街を通って行きました。
銀河鉄道の夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
母は床に這入つてもちやんと目を開けてゞもゐるやうに、呼ぶと直ぐに目をさまして枕許の蝋燭に
灯
(
あかり
)
をともして用事を聞くのである。
赤い鳥
(旧字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
城址
(
しろあと
)
の森が黒く見える。沼がところどころ闇の夜の星に光った。
蘆
(
あし
)
や
蒲
(
がま
)
がガサガサと夜風に動く。町の
灯
(
あかり
)
がそこにもここにも見える。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
気が付いた時は、
真蒼
(
まっさお
)
な何かの
灯
(
あかり
)
で、がっくりとなって、人に抱えられてる、あの人の姿を一目見たんだがね、
衣
(
きもの
)
を脱がしてあった。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
町の家々も、一軒ずつ、
灯
(
あかり
)
を消す。静かになった夜の空気を、病院から、聞えて来る重病人の陰鬱な呻き声だけが、かすかに、破る。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
どこでもすきな部屋へはいって、有合せのものを着てやすむがよい。ただ、
灯
(
あかり
)
や火の気は禁物、用がすんだらすぐ消しておくことだぞ
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
燈影
(
ほかげ
)
の見えない
二階家
(
にかいや
)
が立ちつづいていて、その下六尺ばかり、通路になった処に、「ぬけられます。」と横に書いた
灯
(
あかり
)
が出してある。
寺じまの記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
直ぐ
灯
(
あかり
)
をつけたが、下のスウィッチは
外
(
はず
)
れていた。いくら其の悪人が器用でも、電気なしで、あのクレーンは動かせないだろうぜ
夜泣き鉄骨
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
灯
(
あかり
)
も
明
(
あか
)
るき
無料
(
むりょう
)
の
官宅
(
かんたく
)
に、
奴婢
(
ぬひ
)
をさえ
使
(
つか
)
って
住
(
す
)
んで、その
上
(
うえ
)
、
仕事
(
しごと
)
は
自分
(
じぶん
)
の
思
(
おも
)
うまま、してもしないでも
済
(
す
)
んでいると
云
(
い
)
う
位置
(
いち
)
。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
街の
灯
(
あかり
)
に薄く
紅紅
(
あかあか
)
と映えてゐる潤んだ夜空に眺め入り、又その奥に何か震へる明日の心を探しはじめる、今日も
畢
(
おわ
)
れり、と思ひながら……。
海の霧
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
『どうぞお静かに、騒がないで下さい‥‥大丈夫です。今
灯
(
あかり
)
をつけます。スイッチがここにあるんですから‥‥この隅に‥‥』
探偵小説アルセーヌ・ルパン
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
細君の帰って来たのは、彼が
夕飯
(
ゆうめし
)
を済ましてまた書斎へ引き取った
後
(
あと
)
なので、もう
灯
(
あかり
)
が
点
(
つ
)
いてから一、二時間経っていた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「行きましょう! ナスターシャ! 大急ぎで上って行って、病人の傍についててくれ、
灯
(
あかり
)
を持ってだよ。僕は十五分たったら帰ってくる……」
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
半「小兼、
手前
(
てめえ
)
も縛るが
些
(
ちっ
)
と了簡がある、さア蝋燭があるから手燭をとって本堂へ
灯
(
あかり
)
を持って来い、やい坊主、さア来い」
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
昼の間は
灯
(
あかり
)
をつけることが出来ないからこの岬をまわる船のために、霧笛を鳴して海路の地理を示していたのであった。
おさなき灯台守
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
「まあ暗い、まだお
灯
(
あかり
)
も差し上げなかったのでございますね。まだお暑苦しいのに早くお格子を下ろしてしまって
暗闇
(
くらやみ
)
に迷うではありませんかね」
源氏物語:52 東屋
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
ラジオの流れだす低い二階の窓を見上げたら、
灯
(
あかり
)
をつけない窓から半身のり出させて、若い男と女とが通りを見ていた。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
天王寺
(
てんのうじ
)
の
別当
(
べっとう
)
、
道命阿闍梨
(
どうみょうあざり
)
は、ひとりそっと床をぬけ出すと、
経机
(
きょうづくえ
)
の前へにじりよって、その上に乗っている
法華経
(
ほけきょう
)
八の
巻
(
まき
)
を
灯
(
あかり
)
の下に繰りひろげた。
道祖問答
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
大きく一廻りすると、滑走路の
灯
(
あかり
)
が二列に並んで近々と見え、やがて機は正確な着陸をした。午前零時三十分である。
アラスカ通信
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
肉親のない今松にとってはほんとうにお艶ばかりが、闇夜を照らす燈台の
灯
(
あかり
)
だった、その灯がだしぬけに今、ふッと掻き消されてゆくとしたら——。
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
用事に暇どつた為めに、
灯
(
あかり
)
がついてから程たつて鶴吉は帰つて来た。店には電灯がかん/\照つて居るが、茶の間はその光だけで間に合はして居た。
お末の死
(新字旧仮名)
/
有島武郎
(著)
蕭条たる十一月の浜べには人影一つなく、黒い上げ汐の上をペラペラとなで来る冷風のみが
灯
(
あかり
)
をつけた幾十の
苫舟
(
とまぶね
)
をおもちゃのように
翻弄
(
ほんろう
)
していた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
彼は安岡が依然のままの寝息で眠りこけているのを見すますと、こんどは風のように帰ってきて、スイッチをひねらないで電球をねじって
灯
(
あかり
)
を消した。
死屍を食う男
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
定らぬ燭の
灯
(
あかり
)
に、送る主の影も、送られる客の影もゆらぐ。そういう夜気の中に
漂
(
ただよ
)
う梅が
香
(
か
)
を感ずるのは、電燈世界にはあるまじきほのかな趣である。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
雪催
(
ゆきもよ
)
いの
曇
(
くも
)
った
空
(
そら
)
に、
教会堂
(
きょうかいどう
)
のとがった三
角形
(
かくけい
)
の
屋根
(
やね
)
は、
黒
(
くろ
)
く
描
(
えが
)
き
出
(
だ
)
されていました。そして、かたわらの
小
(
ちい
)
さな
家
(
うち
)
から、ちらちらと
灯
(
あかり
)
がもれていました。
青い星の国へ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
もとより
灯
(
あかり
)
のある場合ではない。頭はあげても顔見合すこともできず、ただ手をとり合うているばかりである。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
その下に見える
釣橋
(
つりばし
)
が戻り橋だ。川向から聞える朝々の鶏の鳴声、毎晩農村に
点
(
つ
)
く
灯
(
あかり
)
の色、
種々
(
いろいろ
)
思いやられる。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
窺
(
うかゞ
)
ふに
灯
(
あかり
)
の氣も見えず
能々
(
よく/\
)
見るに表の戸に
貸店
(
かしだな
)
と
云
(
いふ
)
紙札
(
かみふだ
)
の
貼付
(
はりつけ
)
ある故是は
門違
(
かどちが
)
ひせしかと
四邊
(
あたり
)
を
見廻
(
みまは
)
すに間違ひにも
非
(
あら
)
ず吾助は何分
不審
(
ふしん
)
晴
(
はれ
)
ねば
直樣
(
すぐさま
)
家主方を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
部屋の中から射す
灯
(
あかり
)
で、そこらは
茫
(
ぼう
)
ッと明るく、廊下の先は、夏の夜ながらうそ寒い
半暗
(
はんあん
)
に沈んでいるのだ。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ついさつきの
檀
(
まゆみ
)
の下あたりに来る頃には、麓の板橋から早川の漁村へかけて、
灯
(
あかり
)
がちかちかと輝き出す。沖の
鰤
(
ぶり
)
船にも灯が点る。かうして目が喜ぶ、目が喜ぶ。
蜜柑山散策
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
赤い
灯
(
あかり
)
が丘の間から囁きかはす。野菜畑が香気を吐く。おおさうして昼も白い月が幽かに残り、百姓の豊かな挨拶があちこちできこえ、朝もいよいよ涼しくなる。
愛の詩集:03 愛の詩集
(新字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
お月様。街の
灯
(
あかり
)
はどうしてあんなに赤くてきれいなんでせうね。
家
(
うち
)
にはみんな窓がついて、きれいだなあ。おや、あの
家
(
うち
)
の窓からかわいゝ女の子が、お月様と
僕
(
ぼく
)
とを
十五夜のお月様
(新字旧仮名)
/
村山籌子
(著)
雛段
(
ひなだん
)
はまえの半分にも足りないほど小さく、雛の数も少なかった。七重は段の上の
雪洞
(
ぼんぼり
)
に
灯
(
あかり
)
をいれながら、「たいていな雛や道具は
姪
(
めい
)
のたみにやってしまったのだ」
艶書
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その時、あたりはもうすっかり
闇
(
やみ
)
に包まれていましたが、紳士は
灯
(
あかり
)
を
点
(
つ
)
けようともしませんでした。
メデューサの首
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
尤も梅玉は石燈籠の灯を、いつまでも
点燈
(
とも
)
しあかしにするやうな贅沢な真似はしない。いゝ加減見て娯しむと、自分から
起
(
た
)
つて往つて、ふつと
灯
(
あかり
)
を吹き消してしまふ。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
伊沢が庭から見あげたのは、つまりはこの
灯
(
あかり
)
なのだが、そんなことはともかく、この部屋全体がいかにも拵えすぎた感じで、舞台装置の中にでもいるような思いがした。
雪間
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
併
(
しか
)
しながら風が少しも吹かず、一体に空気が湿つぽく落着いて居て、夕方から
後
(
のち
)
、街に
灯
(
あかり
)
が
点
(
つ
)
くと、霧を
透
(
とほ
)
す温かい
脂色
(
やにいろ
)
の光が
凡
(
すべ
)
ての物に陽気な
而
(
しか
)
も
奥深
(
おくぶか
)
い陰影を与へ
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
嫂を送り出して、奥へ入って来ると、まだ
灯
(
あかり
)
の
点
(
つ
)
かぬ部屋には夕方の色が漂うていた。お作は台所の入口の柱に
凭
(
よ
)
りかかって、何を思うともなく、物思いに沈んでいた。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「やっぱり猿よ。きっと
東印度水夫
(
ラスカア
)
の屋根裏から
這出
(
はいだ
)
して、この
灯
(
あかり
)
にひかれてここへ来たのよ。」
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
「おはいんなさい。」と、窓にまたたいている
灯
(
あかり
)
が言いました。「おへやの中はあったかよ。」
金のくびかざり
(新字新仮名)
/
小野浩
(著)
その明滅する
灯
(
あかり
)
の下で、鮨詰めの善男善女達が、襲いかかる睡魔を避けようためにか、蚊の唸るような声をあげて、必死とナンミョウホウレンゲキョウを唱えつづけました。
旗本退屈男:06 第六話 身延に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
暑いといっても九月の
中旬
(
なかば
)
故、大通りを
外
(
はず
)
れたそのあたりは、宵にみえる
灯
(
あかり
)
の数さえめっきり減ったが、今夜はしかし観音さまの命日なので、半分だけ戸を入れた暗い軒に
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
三間ばかり前のその煙草屋の二階の窓には、その時はまだ前と同じように静かに
灯
(
あかり
)
がともっていたのだが、やがてその部屋の中に人の気配がすると、窓
硝子
(
ガラス
)
へ人影がうつった。
銀座幽霊
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
私が馬車道へ急いで下りてゆく時に、齒がガタ/\と鳴つた。門番の小屋には
灯
(
あかり
)
があつた。私達が門番小屋につくと、門番のお
内儀
(
かみ
)
さんは丁度火を
熾
(
おこ
)
しかけてゐるところだつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
読みさしの本を
傍
(
わき
)
に置いて何か考えていると、思わずつい、うとうととする拍子に夢とも、
現
(
うつつ
)
ともなく、
鬼気
(
きき
)
人に迫るものがあって、カンカン明るく
点
(
つ
)
けておいた筈の
洋燈
(
ランプ
)
の
灯
(
あかり
)
が
女の膝
(新字新仮名)
/
小山内薫
(著)
随分とみごとに面の数々がそちこちの家毎に行渡つたもので、家々の前に差かゝる度に振返つて見ると、夕餉の食卓を囲んだ
灯
(
あかり
)
の下で、面を弄んでゐる光景が続けさまに窺はれた。
鬼涙村
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
しかし戸のすき間からのぞいて見ると、中にちらちらと
灯
(
あかり
)
が見え、何やらお経のやうな文句をわめくやうに唱へてゐる声がしてゐましたので、鳥右さんがゐることはわかりました。
鳥右ヱ門諸国をめぐる
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
……といって
閨房
(
けいぼう
)
の
灯
(
あかり
)
らしい
艶媚
(
なまめか
)
しさも、ほのめいていない……夢のように淡い、処女のように人なつかしげな、桃色のマン丸い
光明
(
こうみょう
)
が、
巨大
(
おおき
)
な山脈の
一端
(
はな
)
らしい黒い山影の中腹に
白菊
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
下からスーと出たかと思うと、それが
燈心
(
とうしん
)
の
灯
(
あかり
)
が薄赤く店の方の、つまり私の
寐
(
ね
)
ていた、蒲団の
裾
(
すそ
)
の方へ、流れ込んで映っている、ここに三尺ばかり
開
(
あ
)
いてる障子のところを通って
子供の霊
(新字新仮名)
/
岡崎雪声
(著)
灯
常用漢字
小4
部首:⽕
6画
“灯”を含む語句
提灯
灯火
灯明
鬼灯
小提灯
灯影
高張提灯
大提灯
弓張提灯
遠灯
紅提灯
鬼灯提灯
岐阜提灯
電灯
御灯
酸漿提灯
挑灯
灯花
行灯
瓦斯灯
...