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歓
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よろこ
ふりがな文庫
“
歓
(
よろこ
)” の例文
旧字:
歡
老時計商は先刻
歓
(
よろこ
)
ばしい笑顔をして、その楽曲のことを言った。「実にいい。荒っぽいところがない。どの
角
(
かど
)
も丸くなってる……。」
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
また突然にこの玉鬘を見せた時の
歓
(
よろこ
)
びぶりも思われないでもない、極度の珍重ぶりを見せることであろうなどと源氏は思っていた。
源氏物語:26 常夏
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
もとより雛のお客のもてなしは、
侍
(
かしず
)
く女たちがすべてするのであったが、秀吉は彼女たちが
嘻々
(
きき
)
として離れないほど
歓
(
よろこ
)
んで見せた。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その言葉は彼の知らない世界へ、——神々に近い「
我
(
が
)
」の世界へ彼自身を解放した。彼は何か痛みを感じた。が、同時に又
歓
(
よろこ
)
びも感じた。
或阿呆の一生
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その
蒼
(
あお
)
ざめた、
浄
(
きよ
)
めてから間もない清らかな顔も、それから頭布からはみ出ている白い襟布までが何となく、
歓
(
よろこ
)
びに輝いたように見えた。
大ヴォローヂャと小ヴォローヂャ
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
▼ もっと見る
同乗すると
云
(
い
)
うことが、信一郎には、
宛
(
さなが
)
ら美しい夢のような、二十世紀の
伝奇譚
(
ロマンス
)
の主人公になったような、不思議な
歓
(
よろこ
)
びを与えて
呉
(
く
)
れた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
それがいかにも
歓
(
よろこ
)
びに
溢
(
あふ
)
れ、青春を持て
剰
(
あま
)
している食後の夜の町のプロムナードの人種になって、特に銀座以外には見られぬ人種になって
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
バッハは最もよき
慰藉
(
いしゃ
)
であり、最もよき師父である。悲しみにも、
歓
(
よろこ
)
びにも、私は自分の心の反影をバッハの音楽に求める。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
その間も、師の
蒲衣子
(
ほいし
)
は一言も口をきかず、鮮緑の
孔雀石
(
くじゃくいし
)
を一つ
掌
(
てのひら
)
にのせて、深い
歓
(
よろこ
)
びを
湛
(
たた
)
えた穏やかな
眼差
(
まなざし
)
で、じっとそれを見つめていた。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
そう
言
(
い
)
われるお
爺
(
じい
)
さんのお
顔
(
かお
)
には、
多年
(
たねん
)
手
(
て
)
がけた
教
(
おし
)
え
児
(
ご
)
の
身
(
み
)
の
振
(
ふ
)
り
方
(
かた
)
のついたのを
心
(
こころ
)
から
歓
(
よろこ
)
ぶと
言
(
い
)
った、
慈愛
(
じあい
)
と
安心
(
あんしん
)
の
色
(
いろ
)
が
湛
(
ただよ
)
って
居
(
お
)
りました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
今迄随分限りなく愛されもし、酔い
溺
(
おぼ
)
れもした。肉の
歓
(
よろこ
)
びは、じゃが、どこまで繰り返しても同じこと……私は退屈した。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
草に結んだ露は夢からさめ、
鈴蘭
(
すずらん
)
はいちはやく朝の鐘を
鳴
(
なら
)
しました。草も木も太陽の方へあたまをあげて、
歓
(
よろこ
)
びました。
朝
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
駅からすぐホテルへ来るまでの道に、太い街路樹の多く見えたのが
先
(
ま
)
ず彼を
歓
(
よろこ
)
ばしたが、それより案内された自分の部屋が何より彼の気に入った。
罌粟の中
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
撫でる様にして「秀子さんお
歓
(
よろこ
)
び成さい、あの死骸はお浦のでなく加害者も被害者も何者か分らぬと判決になりました」
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
彼はもはや青ざめてもいず、また、うち沈んでもいなかった。その
凜々
(
りり
)
しい顔は、若さの光に輝き、
歓
(
よろこ
)
びがその大きな黒い眼に生き生きとしていた。
幽霊花婿:ある旅人の話
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
わたしは街を歩む
中
(
うち
)
呉服屋
(
ごふくや
)
の店先に
閃
(
ひらめ
)
く
友禅
(
ゆうぜん
)
の染色に
愕然
(
がくぜん
)
目をそむけて去った事もあった。若き日の返らぬ
歓
(
よろこ
)
びを思い出すまいと欲したがためである。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
昔の貴人公子が
佩玉
(
はいぎょく
)
の
音
(
ね
)
を楽んだように、かちりと前歯に当る陶器の
幽
(
かす
)
かな響には、鶴や若松を画いた美しい
塗盃
(
ぬりさかずき
)
の
歓
(
よろこ
)
びも、忘れしめるものがあった。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
平素
(
ふだん
)
から
退
(
の
)
け
者
(
もの
)
にされるのは其生徒。けふも寂しさうに壁に
倚凭
(
よりかゝ
)
つて、
皆
(
みんな
)
の
歓
(
よろこ
)
び戯れる
光景
(
ありさま
)
を眺め乍ら立つて居た。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
……それから数分
経
(
た
)
ってから初めて、私はやっと自分の腕の中に彼女がいることに気がついたように、何んともかんとも言えない
歓
(
よろこ
)
ばしさを感じ出した。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
人間の神経を
鏝
(
こて
)
で焼くように重苦しい、悩ましい、魅惑的な夜であった。極度の
歓
(
よろこ
)
びと、限りなき苦しみとの、どろどろに溶け合ったような一夜であった。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
突然、その深い
静謐
(
せいひつ
)
のうちに、新しい音響が起こった。天来の
聖
(
きよ
)
い名状すべからざる響きで、前の音が恐ろしかったのに比べて実に
歓
(
よろこ
)
ばしい響きであった。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
闇
(
やみ
)
にも
歓
(
よろこ
)
びあり、光にも
悲
(
かなしみ
)
あり、
麦藁帽
(
むぎわらぼう
)
の
廂
(
ひさし
)
を傾けて、
彼方
(
かなた
)
の丘、
此方
(
こなた
)
の林を望めば、まじまじと照る日に輝いて
眩
(
まば
)
ゆきばかりの景色。自分は思わず泣いた。
画の悲み
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
からだじゅうをくすぐるような生の
歓
(
よろこ
)
びから、ややもするとなんでもなく微笑が自然に浮かび出ようとした。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
甲——よし、それなら、君達は、その「苦しみ」を「苦しみ」として享け容れ、その「苦しみ」を「苦しむ」ことによつて、どんな「
歓
(
よろこ
)
び」を感じてゐるのだ。
「明るい文学」について
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
そのまま横になりて、翌朝九時
漸
(
ようよ
)
う大阪に着けば、藤井の宅の妻子および番頭小僧らまで、主人の帰宅を
歓
(
よろこ
)
び迎え、しかも妾の新来を
訝
(
いぶか
)
しうも思えるなるべし。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
老母あはれみて
四四
をさなき心を
肯
(
う
)
け給はんや。左門
歓
(
よろこ
)
びに
堪
(
た
)
へず。母なる者常に我が孤独を
憂
(
うれ
)
ふ。
信
(
まこと
)
ある
言
(
ことば
)
を告げなば、
齢
(
よはひ
)
も
延
(
の
)
びなんにと、
伴
(
ともな
)
ひて家に帰る。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
嫩葉
(
わかば
)
の
萌
(
も
)
え出る木々の
梢
(
こずえ
)
や、草の
蘇
(
よみが
)
える黒土から、
咽
(
むせ
)
ぶような
瘟気
(
いきれ
)
を発散し、寒さに
怯
(
おび
)
えがちの銀子も、何となし
脊丈
(
せたけ
)
が伸びるような
歓
(
よろこ
)
びを感ずるのであった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
その
恩滴
(
したゝり
)
は野の
牧場
(
まき
)
をうるほし、小山はみな
歓
(
よろこ
)
びにかこまる。牧場は
皆
(
みな
)
羊
(
ひつじ
)
の群を
衣
(
き
)
、もろ/\の谷は
穀物
(
たなつもの
)
におほはれたり。彼等は
皆
(
みな
)
よろこびてよばはりまた
謳
(
うた
)
ふ
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
狂女は果して
来
(
こ
)
ざりけり。
歓
(
よろこ
)
び
酔
(
ゑ
)
へるお峯も唯
酔
(
ゑ
)
へる夫も、褒美
貰
(
もら
)
ひし婢も、十時近き
比
(
ころほひ
)
には皆
寐鎮
(
ねしづま
)
りぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
顔には
歓
(
よろこ
)
ばしさに
雑
(
まじ
)
って打ち解けない表情があった。唇を動かしてはいたが声には出さなかった。彼の態度は堅苦しいものになって、はっきりと叫んで言うには
故郷
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
それだのに彼は今ここに立って、云うばかりない清新の感にうたれて子供のように
歓
(
よろこ
)
ばしくなって来た。
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
スリの御用ずみの
贓品
(
ぞうひん
)
をひそかに所持していることに、ぼくは共犯者のそれのような、あの
疚
(
やま
)
しげなスリルと、秘密の悪事に荷担する奇怪な
歓
(
よろこ
)
びをおぼえたのだ。
煙突
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
彼女を自分ひとりの
所有
(
もの
)
にして楽しんでいる限りなき
歓
(
よろこ
)
びが、そのためにたちまち索然として、
生命
(
いのち
)
にも換えがたい大切な宝がつまらない物のような気持になった。
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
甲斐々々
(
かひがひ
)
しいゆき子の姿を、富岡は不思議さうに眺め、二人だけの
歓
(
よろこ
)
びが、ひそかに営まれてゐるのを盗人の心理で眺めてゐた。二階では犬がやかましく吠えてゐる。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
外賓に供するに現なまのトルーフルと緑色の海亀肉を用いたらそっちも
歓
(
よろこ
)
びこちらも儲けると、今更気付いた人あって、
足下
(
そっか
)
は当世の陶朱子房だから何分
播種
(
はしゅ
)
しくれと
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
車中の婦人はこれが始終を見物しながら、貴族たる権威の発表せられしを
歓
(
よろこ
)
べる色ありきという。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その様子は私をぎょっとさせた、——が、とにかくどんなことでも、いままで長く辛抱してきた孤独よりはましなので、私は彼の来たことを救いとして
歓
(
よろこ
)
び迎えさえした。
アッシャー家の崩壊
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
◯次の第七節に言う「かの時には
晨星
(
あけのほし
)
あいともに歌い、神の子たち皆
歓
(
よろこ
)
びて
呼
(
よば
)
わりぬ」
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
いかに彼のつかれけがれた脈管がしずかな
歓
(
よろこ
)
びでふくらみ、新しい日を祝福し、幼年の無邪気さをもって春の影響を感じているかを見ては、すべての彼の罪科は忘れられてしまう。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
無心なものは彼を誘って、もっと無邪気に生活の
歓
(
よろこ
)
びに浸らせようとするのだった。
苦しく美しき夏
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
そこで衆愚心理を見破つて、これを正しく用ゐるのが良い政治家や軍人で、これを吾が都合上に用ゐるのが
奸雄
(
かんゆう
)
や
煽動家
(
せんどうか
)
である。
八幡大菩薩
(
はちまんだいぼさつ
)
の御託宣は群衆を動かした。群衆は無茶に
歓
(
よろこ
)
んだ。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
隠しようのない混乱とふしぎな
歓
(
よろこ
)
びの感情を、信乃は今でもありありと思いだすことができる……それから約半年ばかり後のことだったろう、青井川の
葦
(
あし
)
の中で、ふいに信乃は知也に抱かれた。
めおと蝶
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
歓
(
よろこ
)
ばしさに若い男の
萎
(
しお
)
れた五体は
跳
(
は
)
ね起きて、女の肩へ手をかけて
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
あらゆる山が
歓
(
よろこ
)
んでゐる
山の歓喜
(新字旧仮名)
/
河井酔茗
(著)
ああ
歓
(
よろこ
)
びの朝の舞
詩
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「結構なお話です。母も聞いたら
歓
(
よろこ
)
びましょう。……けれど、親子の中にも礼儀ですから、一応、母にも告げた上でご返辞を……」
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
シュルツの
歓
(
よろこ
)
びは、満足してるクリストフの歓びよりも、得意げなポットペチミットのそれよりも、さらに楽しい深いものだった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
彼は巻煙草に火もつけずに
歓
(
よろこ
)
びに近い苦しみを感じてゐた。「センセイキトク」の電報を外套のポケツトへ押しこんだまま。……
或阿呆の一生
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
窓の外の木々の葉の
囁
(
ささや
)
きを聴き
乍
(
なが
)
ら、かの女は
暫
(
しばら
)
く
興醒
(
きょうざ
)
めた悲しい気持でいた。すると何処かで、「メー」と
山羊
(
やぎ
)
が風を
歓
(
よろこ
)
ぶように鳴いた。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
『これで
漸
(
ようや
)
くトーキーができ
上
(
あ
)
がった……』
私達
(
わたくしたち
)
はそんな
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
って
歓
(
よろこ
)
んだものであります。『
小櫻姫
(
こざくらひめ
)
の
通信
(
つうしん
)
』はそれから
以後
(
いご
)
の
産物
(
さんぶつ
)
であります。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
歓
常用漢字
中学
部首:⽋
15画
“歓”を含む語句
歓喜
合歓
歓待
歓迎
歓楽
歓語
合歓花
歓呼
歓声
合歓木
歓迎会
歓宴
大歓喜
歓心
交歓
歓喜天
大歓迎
歓会
鬼歓
歓送迎門
...