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柔
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やさ
ふりがな文庫
“
柔
(
やさ
)” の例文
生れ変ったような
柔
(
やさ
)
しげな心に成ったかえと思うと、
私
(
わし
)
イはア誠に嬉しいだよ、死んだ父さまも
嘸
(
さぞ
)
悦ぶべえと思うと嬉し涙が出るだよ
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
渡左衛門尉
(
わたるさえもんのじょう
)
と云う名は、今度の事に就いて知ったのだが、男にしては
柔
(
やさ
)
しすぎる、色の白い顔を見覚えたのは、いつの事だかわからない。
袈裟と盛遠
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「駄目だよ。」と落着き払った声でKはいって女の腰でも抱える時のように
柔
(
やさ
)
しくBの腰に手を廻した。そしてすばやくBの
瞼
(
まぶた
)
を撫でた。
扉
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
橘は、いま眼がさめたばかりのような明るい瞳にいたわりといつくしみを加え、二人におおいかかる
柔
(
やさ
)
しさのなかにいていった。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
案外気立ての
柔
(
やさ
)
しそうな岡田のことゆえ、気の毒がって
他所
(
よそ
)
へ移ったのかも知れない、などとも太田には考えられるのであった。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
▼ もっと見る
この点にいたると婦人は
侮
(
あなど
)
るべからざる強いところがある。日ごろは一つの
柔
(
やさ
)
しき飾りに過ぎぬ「
簪
(
かんざし
)
も
逆手
(
さかて
)
に
持
(
も
)
てば恐ろしい」。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
柔
(
やさ
)
しく
嬉
(
うれ
)
しく勇ましき丈夫の心をも聴くことを得たる今は、又た何をか思ひ残さん、いざ、立ち帰りなんか、——帰りとも無し
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
ぶるぶるとしてハッと気が付くと、隊の伍長のヤーコウレフが黒眼勝の
柔
(
やさ
)
しい眼で
山査子
(
さんざし
)
の
間
(
あいだ
)
から
熟
(
じっ
)
と
此方
(
こちら
)
を覗いている
光景
(
ようす
)
。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
豊かなデリケエトな唇は、不思議に末子でもあり清でもある、小さな、細い〔時にきらきらと
潤
(
うる
)
んで光る〕
柔
(
やさ
)
しい眼は清にその
儘
(
まま
)
であった。
青べか日記:――吾が生活 し・さ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
殊に内氣で
柔
(
やさ
)
しくて、淫らな事を云つてからかはれでもすると、眞赤になつてうつむいてしまふ女の人達には、そんな汚ならしい心持はない。
貝殻追放:016 女人崇拝
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
良吉は若い女の手紙は、自分の女房のさへ殆んど讀んだことがないので、ぬら/\した
柔
(
やさ
)
しい文字を珍しさうに讀み下した。
母と子
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
薪とる
里人
(
さとびと
)
の話によれば、庵の中には玉を
轉
(
まろ
)
ばす如き
柔
(
やさ
)
しき聲して、
讀經
(
どきやう
)
の
響絶
(
ひゞきた
)
ゆる時なく、
折々
(
をり/\
)
閼伽
(
あか
)
の
水汲
(
みづく
)
みに、谷川に下りし姿見たる人は
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
嫋々
(
なよなよ
)
として女の如く、少し抜いた雪のえり足、
濡羽
(
ぬれば
)
いろの黒髪つやつやしく、物ごし
柔
(
やさ
)
しくしずしずと練ってゆく
蓮歩
(
れんぽ
)
!
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
一月の刺すやうな空氣に、いびつになるほど
膨
(
ふく
)
れ上つて
跛
(
ちんば
)
を引いてゐた、
憐
(
あは
)
れな私の足も、四月の
柔
(
やさ
)
しいいぶきを受けて、跡形もなく
癒
(
なほ
)
り始めた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
(何と充分に、君たちの顔は腐つてゐたことか!)——ああ、さまざまの日に、指先によつて加へられた
柔
(
やさ
)
しさよ! 火よ! 失はれた畜群の夢よ!
断片
(新字旧仮名)
/
富永太郎
(著)
内には
柔
(
やさ
)
しい女房もございました。別に不足というでもなし、……
宿
(
しゅく
)
へ入ったというものは、ただ蝋燭の事ばかり。
菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その声は低かったが、
柔
(
やさ
)
しかったが、月丸は、頭から、一掴みに、身体ぐるみ、冷たい手で掴まれたように感じた。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
蒼ざめてひどく
面窶
(
おもやつ
)
れのしたナヂェージダ・イヷーノヴナは、男のもの
柔
(
やさ
)
しい声や妙な態度に合点が行かず、急いで自分の身に起こった一切を物語った。
決闘
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
私はその頃、少しでも
柔
(
やさ
)
しい言葉をかけられるとすぐ涙ぐましくなるようになっていた。腹立ちも心配もどこかへ吹ッとんで、つい家の中に這入り込んだ。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
その頃まだ十七の真珠のように、清浄な祖母の胸に、異性の
柔
(
やさ
)
しい愛情の代りに、異性の醜い圧迫や
怖
(
おそろ
)
しい慾情などが、マザマザと、刻み付けられた訳でした。
ある恋の話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
かれより四つ五つ上であつた。学問も出来て老僧の気に入つてゐた。老僧の
了簡
(
れうけん
)
では、それを
柔
(
やさ
)
しい涙を含んだ眼の持主の配偶者にしようと思つたらしかつた。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
申すのもチト
失禮
(
しつれい
)
では有りますが常にお
柔
(
やさ
)
しいお
光
(
みつ
)
さん
吾儕
(
わたし
)
は自分の子の樣に思つてゐませば
營業
(
しやうばい
)
を休んでなりと
駈歩行
(
かけあるき
)
御用を達て
上
(
あげ
)
ますよ是といふのも
親孝行
(
おやかうかう
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
熱に汗蒸れ
垢
(
あか
)
臭き
身体
(
からだ
)
を
嫌
(
いや
)
な様子なく
柔
(
やさ
)
しき手して介抱し
呉
(
くれ
)
たる嬉しさ今は風前の雲と消えて、
思
(
おもい
)
は
徒
(
いたずら
)
に都の空に
馳
(
は
)
する事悲しく、なまじ最初お辰の難を助けて
此家
(
このいえ
)
を出し
其折
(
そのおり
)
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「こらこら、そんな
所為
(
まね
)
をする
勿
(
な
)
」と二葉亭は
柔
(
やさ
)
しく制しながらも平気で舐めさしていた。時に由ると、嬉しくて堪らぬように
踵
(
あと
)
から
泥足
(
どろあし
)
のまま座敷まで追掛けて来てジャレ付いた。
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
然し、鋭さと同時に
柔
(
やさ
)
しみもある。また深みもある。この眼の閃めきは、どうしても天才的な芸術家のみが持ち得る「美しさ」である。——さういふ感じを、何よりも先にまづ受けた。
吉右衛門の第一印象
(新字旧仮名)
/
小宮豊隆
(著)
玄二郎は静かな
柔
(
やさ
)
しさに包まれながら、何のこだわりもなく微笑を泛べて言つた。
姦淫に寄す
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
湖の岸へ來て立つてゐる時、人の心はなごみ、靜まり、輕い柔しい微笑が
脣邊
(
しんぺん
)
に漂ふ。霧をくゞつて來る水の忍び寄る
柔
(
やさ
)
しい響、私はそれを耳にして暫く默つて水面を見つめて立つてゐた。
霧の旅
(旧字旧仮名)
/
吉江喬松
(著)
之が幽霊の発した初めての声で音楽の様に麗しい、余は荒々しく問い詰める積りで居たが、声の麗しさに、
聊
(
いささ
)
か気抜けがして
柔
(
やさ
)
しくなり、「今し方、大時計の針を動したのは貴女でしたか」
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
何か母が私に言いたいことがあるのだと直感された。私は非常におそろしくなった。しかし母の態度は平生よりも
柔
(
やさ
)
しかった。竹藪の片わきの、梨の木の下に来た時、母はいよいよ口を切った。
私の父
(新字新仮名)
/
堺利彦
(著)
屡〻
(
しばしば
)
自分の夢のなかにまで現はれたこともある。自らの乱行に
懶
(
ものう
)
く疲れはてた彼の夢の中で、この微笑は彼を
柔
(
やさ
)
しく
叱責
(
しっせき
)
した。あの微笑だ。彼はそれがモナ・リザの微笑であることに気づいた。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
默
(
だま
)
つて
女
(
をんな
)
を
凝視
(
ぎようし
)
してゐた
男
(
をとこ
)
は、
前
(
まへ
)
とは
全然
(
ぜんぜん
)
異
(
ちが
)
つた
柔
(
やさ
)
しさでいつた。
彼女こゝに眠る
(旧字旧仮名)
/
若杉鳥子
(著)
伝七は
四分一
(
しぶいち
)
の
煙管
(
きせる
)
をつかんだまま、
柔
(
やさ
)
しくうなずいた。
乳を刺す:黒門町伝七捕物帳
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
ただ、しかし、可愛らしい小猫の
柔
(
やさ
)
しみがなかったので
朱絃舎浜子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
案外氣立ての
柔
(
やさ
)
しさうな岡田の事ゆゑ、氣の毒がつて他所へ移つたのかも知れない、などとも太田には考へられるのであつた。
癩
(旧字旧仮名)
/
島木健作
(著)
私が大金持になつた時には、世辞も
追従
(
つゐしよう
)
もしますけれど、一旦貧乏になつて御覧なさい。
柔
(
やさ
)
しい顔さへもして見せはしません。
杜子春
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
此の奴に引替えて此の娘は
柔
(
やさ
)
しくして、芸者になっても精出して能く稼いで呉れますから、何うやら斯うやら致して居ります
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
これを聞いていた
松陰
(
しょういん
)
先生は、平生は女子のごとく
柔
(
やさ
)
しくしてめったに大声だも発せぬ人であったにかかわらず、この時にかぎり声を
励
(
はげ
)
まして
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
葉と葉の
摺
(
す
)
れる音、そこには、今まで、聞えなかった
柔
(
やさ
)
しみがある。どうして、樹はこんな美妙の音を出すであろうか。
森の暗き夜
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
だから、旅行のことは私とお前との間ぎりで
祕密
(
ないしよ
)
にしといてお呉れな。
先日
(
こなひだ
)
先方の男に會つてよくよく話をして見ると、物分りのいゝそれは
柔
(
やさ
)
しい男なのだよ。
孫だち
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
汝を恋ふるばかりに、
柔
(
やさ
)
しき処女の血にさへ
汚
(
けが
)
れしを知らずやテフ声、
忽
(
たちま
)
ち
如何処
(
いづこ
)
よりか矢の如く心を射れり、山木梅子の美しき影、閉ぢたる眼前に
瞭然
(
れうぜん
)
と笑めり
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
黒い小猫のブルイスカが甘えかかって、ごろごろと
柔
(
やさ
)
しく喉を鳴らすけれど、こうして猫なんぞにちやほやされてみたところで、オーレンカにはさっぱり有難くない。
可愛い女
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
橘の顔色は二人を
褒
(
ほ
)
めるために同じくらいに見える左右の頬に、
柔
(
やさ
)
しくほほ笑みをたたえて見せた。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
やさしい星は斷層をなした
土手
(
どて
)
の眞上に瞬いてゐた。夜露が
降
(
お
)
りた、慈愛の籠つた
柔
(
やさ
)
しさをもつて。
微風
(
そよかぜ
)
もない。自然は、私の眼には、情け深い親切なものに見えた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
然
(
しか
)
しその眼元はあの
無垢
(
むく
)
な光を失って一種鋭どい酷薄な光りを帯び
柔
(
やさ
)
しく
綻
(
ほころ
)
びかかった花の
莟
(
つぼみ
)
のようであった唇の辺りには、妙に残忍な
邪慳
(
じゃけん
)
な調子が表われているのです。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
且
(
かつ
)
又
(
また
)
同
(
おな
)
じ
一國一城
(
いつこくいちじやう
)
の
主
(
あるじ
)
と
成
(
な
)
るにも
猛者
(
もさ
)
が
夜撃朝懸
(
ようちあさがけ
)
とは
質
(
たち
)
が
違
(
ちが
)
ふ。
色男
(
いろをとこ
)
の
仕
(
し
)
こなしは、
情
(
じやう
)
を
含
(
ふく
)
んで、しめやかに、もの
柔
(
やさ
)
しく、
身
(
み
)
にしみ/″\とした
風
(
ふう
)
が
天晴武者振
(
あつぱれむしやぶり
)
であるのである。
二た面
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
春亭九華などというと如何にも
柔
(
やさ
)
しげだが、九華は縦も横も
大々
(
だいだい
)
した巨漢であった。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
冥加
(
みょうが
)
にあまりてありがたしとも嬉しとも
此
(
この
)
喜び申すべき
詞
(
ことば
)
知らぬ
愚
(
おろか
)
の口惜し、忘れもせざる
何日
(
いつ
)
ぞやの朝、見所もなき
櫛
(
くし
)
に数々の花
彫付
(
ほりつけ
)
て
賜
(
たま
)
わりし折より、
柔
(
やさ
)
しき御心ゆかしく思い
初
(
そめ
)
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
思えば、朝鮮に来てからの私は
苛
(
いじ
)
められどおしであった。その間に私は一度だって
柔
(
やさ
)
しい愛を祖母たちから受けたことはなかった。それは今までの私の記録によってもほぼ諒解されると思う。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
B それから
翌月
(
よくげつ
)
の一
日
(
じつ
)
になると、『
御返事
(
ごへんじ
)
を
待
(
ま
)
つて
居
(
を
)
ります』と
只
(
たゞ
)
それだけ
綺麗
(
きれい
)
な
柔
(
やさ
)
しい
字
(
じ
)
で
書
(
か
)
いた
女
(
をんな
)
の
葉書
(
はがき
)
が
來
(
き
)
た。
男
(
をとこ
)
は
又
(
また
)
好
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
な
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つてやつておくと、
又
(
また
)
その
翌月
(
よくげつ
)
の一
日
(
じつ
)
に
葉書
(
はがき
)
が
來
(
き
)
た。
ハガキ運動
(旧字旧仮名)
/
堺利彦
(著)
私が大金持になった時には、世辞も
追従
(
ついしょう
)
もしますけれど、一旦貧乏になって御覧なさい。
柔
(
やさ
)
しい顔さえもして見せはしません。
杜子春
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
柔
常用漢字
中学
部首:⽊
9画
“柔”を含む語句
柔和
柔軟
温柔
柔弱
物柔
柔順
柔術
柔媚
柔々
柔肌
柔道
優柔
柔婉
手柔
柔嫩
柔輭
柔毛
柔手
御柔軟
柔情
...